こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

更年期と閉経期、合わせて「メノ期」には、気分の落ち込みや不安定さが生活の質(QOL)低下の大きな要因となります。
日本人女性の閉経年齢の平均は約50歳。人生100年と考えると、人生の半分はメノ期です。

メノ期をポジティブに過ごすためのメンタルケアについて、今日はお伝えしたいと思います。

1.メノ期とメンタルヘルス

メノ期メンタルヘルス

メノ期の女性ホルモンの変化は、気分の落ち込みや不安感の一因となる可能性があります。
メンタルの安定に欠かせないセロトニンの分泌をサポートする女性ホルモン・エストロゲンの分泌が低下し、自律神経のバランスが崩れることで、メンタルも落ち着かなくなります。

加えて、これまでできたことができなくなる、心身の衰えを感じるなど、ネガティブな変化が訪れることで、メンタルを直撃します。
「更年期」「閉経」「加齢」という言葉のネガティブイメージが、ますます、沼へと引きずるかも知れません。

1-1.メノ期の感情のゆらぎ

メノ期の最初、更年期のはじまりの数年間は、ホルモンのアップダウンが感情をアップダウンさせる可能性があります。

喜んだと思ったら、次の瞬間は怒りや不安、苛立ちへと変化する可能性があります。
感情の変化に、自分も周りもついていけなくなり、摩擦を生むかもしれません。

特に、感情をぶつけやすい家族に対して、ひどい言葉を投げかけてしまって後悔したことはありませんか?
でも、それは自分の本心ではなく、女性ホルモンの影響による一時的な感情のゆらぎかもしれません。

1-2.メノ期の抑うつと不安

女性ホルモンの変化は、メノ期に起こりやすい抑うつや不安感の原因になっているかもしれません。

本格的なうつ病や不安神経症と区別がつきにくいものですが、特定の理由がないのに精神的に不安定になる原因は、メノ期の場合、女性ホルモンの変化かもしれません。

ホットフラッシュなどの更年期症状は、自律神経の乱れによって起こります。
自律神経の乱れが、精神的な乱高下の原因になり、不安定さにつながる可能性があります。

また、身体的な更年期症状も気分に影響を及ぼす可能性があります。
自律神経の乱れや不快な症状によって、不眠にもなりやすく、不眠が原因で抑うつやイライラに悩まされることもあります。

更年期の女性ホルモンの乱高下が終わり、閉経期となると、女性ホルモンが低値のまま安定します。
自律神経の乱れによる精神的なアップダウンからは解放されるでしょう。

ただし、女性ホルモンは、不足すると抑うつ的になるセロトニンの分泌を後押ししているホルモンです。
女性ホルモンが低値になることで、気分が低空飛行のまま上がらなくなってしまうこともあります。

1-3.メノ期のメンタル不調その他の原因

メノ期のメンタル不調の原因として、女性ホルモンの変化は大きな要因になります。
それ以外にも原因になるものがあり、その場合は、女性ホルモンを安定化させるだけでは対処が不可能です。

・血糖値の乱高下

スイーツ

糖尿病リスクのある人は発症しやすい年齢です。
そうでなくとも、甘いものや生成された炭水化物を好んで食べる糖質ラバーは、食後高血糖と反応性の低血糖が起こっている可能性があります。
すると、イライラや抑うつ、無気力などの気分障害が起こりやすくなります。
糖質を摂りすぎていないか、見直してみましょう。

・栄養素の不足

精神を安定させるセロトニンの分泌には、原料となるタンパク質とビタミンB群、そして鉄分が欠かせません。
閉経すると、月経がなくなり鉄分は徐々に充足していくものですが、食事のバランスや腸内環境が悪く、タンパク質の不足や吸収不良、またビタミンB群の摂取不足や腸内環境の悪化による腸内での分泌不足などがあると、セロトニン不足となり、メンタルに影響する可能性があります。
食事や腸内環境を整えることはいつの時期も基本と考えましょう。

・腸内環境の悪化とエクオール産生能の低下

大豆 エクオール

メノ期の女性ホルモンの低下の影響を補う成分として、エクオールがあります。

エクオールは、豆に含まれるイソフラボンが腸内のエクオール産生菌によってエクオールに代謝されることでできる成分で、女性ホルモン様作用があります。
エクオール産生菌が機能せずエクオールがつくられないと、更年期の不調が顕著に現れやすくなります。
豆製品の摂取が不足するだけでなく、ライフスタイルの乱れによる腸内環境の悪化はエクオール産生菌の機能を低下させることが指摘されています。

しかし、機能を戻す方法は確立していません。それに代わる方法として、エクオールのサプリメントがあります。
産婦人科などでも、ホルモン補充療法に加えて、エクオールのサプリメントを勧める医療機関が増えています。

・ストレス

子供の受験や就職、ライフスタイルの変化、仕事などメノ期には色々なストレスがあります。
特定のストレス要因があれば、その対処が必要になるでしょう。
メノ期にストレスが加わると、より更年期に伴う症状も悪化する可能性があります。

・自己肯定感の低下

メノ期には、「更年期」「閉経」「加齢」などのネガティブなイメージが自己肯定感を低下させる可能性があります。
シミやシワが増えて外見的な衰えを感じたり、普段できていた動きが楽にできなくなり身体的な衰えを感じることで、一気に老け込んだセルフイメージを持ち、心身にハリがなくなるかもしれません。

メノ期の世間的なイメージはさておき、「老けた」ではなく「年を重ねて熟成した」と捉えてみましょう。

閉経を「女として終わり」ではなく「人生後半の新しい誕生」と捉えてみましょう。
人生100年時代に、閉経を50歳で迎えたとしたら、あと半分の人生がスタートです。

・うつ病の既往歴

うつ病

過去のうつ病と診断された既往歴がある場合、メノ期における変化は再発のリスクにもなります。
完璧主義で融通が効かない性格やストレス耐性のなさがベースにある場合、リスクになります。
「なんだか鬱々とする」という抑うつ気分の先に本格的なうつ病となると、抜け出せなくなる可能性もあります。

女性ホルモンのゆらぎに伴う抑うつの場合、ホルモン補充療法や加味逍遙散などの漢方薬を内服することでコントロールできる可能性があります。
食事や栄養を整え、ストレス環境から離れても改善しない場合で、以下の症状があれば注意が必要です。

・心の症状 = 抑うつ、気力がない、やる気がしない、不安、イライラ、自分が悪いと思いがち、ネガティブに捉えがち、眠れない
・体の症状 = 食欲がない・逆に過食ぎみ、だるい、疲れやすい

・外科的閉経や早期閉経は高リスク

また、手術によって卵巣を摘出して閉経を迎えた外科的閉経や年齢より早い閉経・早期閉経の場合は、一般的な閉経女性よりも抑うつを経験する可能性が高いとされています。
これは、卵巣を摘出する原因となる癌などの原疾患による心への影響や、女性ホルモンの急激な低下の影響があると考えられています。

2.メノ期を迎える心の反応

更年期と心

メノ期を迎えるにあたって、心がどう反応するかは人それぞれです。
さまざまな条件や状況が影響し、自分の内側にあるメノ期やそれにまつわるエピソードへのイメージが刺激されます。

例えば、

・バリバリのキャリアウーマンで昇進がかかっている時期に更年期障害による不快な症状で仕事がままならない
・子供が欲しいと不妊治療を頑張っていたのに、更年期にさしかかってしまい妊娠をあきらめるよう医師に言われた
・更年期の不快な症状で誰かに頼らないと生活ができなくなった

自分が達成したいことがままならなくなったり、自分の力だけで生活ができないなど自己の力が弱められる場合、自己肯定感が低下し、メンタルにも影響を及ぼしやすくなります。

また、同じ状況でも価値観やイメージが影響します。

・更年期や閉経という言葉にネガティブなイメージを持っている
・子供が産めないと女性として終わりだと思っている
・若さこそ価値であると考えている
・シミやシワ、たるみ、白髪などの加齢に伴う変化によって自分が醜いと感じている

内側にあるイメージがネガティブである場合、自己嫌悪感や拒否感が強くなりストレスに感じやすくなります。

さらに、周りの人間関係も影響します。

・家族が更年期症状や閉経に伴う変化に無理解で協力的でない
・職場の人たちが更年期症状や閉経に伴う変化に無理解で協力的でない
・周囲に相談できる家族や友人がいない

3.メノ期と文化

更年期と文化

文化や社会的背景の違いも、女性のメノ期の人生に大きく影響します。

女性は家族にとって子供を産むための道具だと考える文化圏もまだまだ存在します。
幸い、日本はそこまでではないものの、「若さが価値だ」という考えは根深い上に、メノ期に対する無理解は深刻です。
年齢を重ねた女性を敬い、いくつになっても恋を楽しむ文化圏ほど先進的ではないと言えるでしょう。

世界的に、まだまだメノ期はタブーの領域であり、口にすることも憚られるエリアが多いようですが、最近では、先進国を中心に、メノ期をオープンに口にしてポジティブに転換しようという動きも見られています。

自分だけが経験するわけではないメノ期についてもっとオープンに話題にできる社会の寛容さが必要ではないでしょうか。

4.メノ期に始めたい自分と向き合うこと

日記をつける女性

多くの人は、自分の内側よりも外側ばかりに目を向けています。
でも、心の変化を感じたら、その心の声に耳を傾けてみてほしいのです。

恐らく、メノ期を迎えた多くの女性は、自分のために生きてこなかった人が多いのではないかと思います。
子供のため。夫のため。親のため。仕事のため。

それは尊いことですが、自分を置き去りにしたままにせず、再誕生のつもりで、メノ期から本当の自分を生きませんか?

そこで心に問いかけてみていただきたいのです。

・私は今、どう感じている?
・自分の本当の気持ちは?
・本当はなんて言いたいの?
・本当は何が好き? 何が嫌い?
・今、我慢してない?

そして、ネガティブな感情とともに、身体のどこに反応があるかも観察してみてください。
もしかすると身体の反応は心の現れかもしれません。

そして、観察のために、日記をつけてみてください。
自分の心と身体を知るために、観察日記は役に立ちます。

無理に仕事をつめたり、誰かのために動くことを一旦控えて、スケジュールは自分を中心に組み立ててみてください。
のんびりした時間を持って、自分自身のために時間をとって、自分にとって心地よいことをするようにしてください。

メノ期の心の変化を、自分の心と身体と向き合う手段と捉えてみると、これからの長いメノ期に本当の自分を生きるためのきっかけになると思いますよ。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか