3回にわたってお届けする、“幸せな女性の在り方”。

1回めは、“自分を愛する”ことが大事であること。

2回めは、“なぜ自分をなかなか愛せないのか”その原理を知ること。

など、主にマインドにアプローチした内容をお贈りしました。

3回めは、“身体から自分を愛する”ことについて。

この世にたったひとつしかない、あなたの身体。大切にしていきたいですよね。

でも、どのようにして扱えば良いのかわからない。最近あまり調子が優れず、元気になりたいけれど方法がわからない。

そんな、WELLMETHOD世代のみなさんに深く関わってくる生活習慣病や更年期障害などを中心に、“身体を愛する”食事や必要な栄養素について桐村先生にインタビューしてきました。

1.まずは血糖値を安定させることから

ーーWELLMETHOD世代にとって、今すぐやめた方が良い生活習慣について教えてください。

特にこの世代は更年期も絡んでくると思うのですが、まず食事によって自律神経を乱す一番の原因は血糖値です。

炭水化物だけ摂ったり、甘いものを日常的に食べ過ぎると血糖値が急激に上がって急激に下がるという乱高下が起こります。

血糖値は常に安定していた方が良いのですが、上がった時はまだ良いんです。問題なのは、下がった時に身体が低血糖になるという危機的状況なので、交感神経をすごく刺激してしまい、動悸や発汗、手の震えも出ます。ひどい人はパニック症状みたいになるんですよ。

そうなってくると、一番自律神経を乱す原因になっているので、より更年期の症状を悪化させてしまいます。

まずは糖の摂り方に気をつけてください。例えば、砂糖を使った甘いものを摂りすぎない。やりがちなのは、ランチでパスタやおにぎりだけといった炭水化物オンリーランチはやめましょう。


▲(写真)医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗先生(tenrai株式会社代表取締役医師)

 

――では、どのような食事が良いでしょうか?

まずは、食べる順番を気にしていただけるだけでも良いです。

はじめに野菜やおかずを食べておいて、最後に炭水化物でもいいですし、あと砂糖はちょっと摂り過ぎですよね。砂糖や炭水化物が腸のカンジダ菌を増やしてしまうんです。

女性にとってカンジダは膣の病気と思いきや、どこにでもいるもの。糖質が好きなので、糖を与えていると増えてしまうんですね。

さらに、カンジダはアルカリ性環境をつくるので、悪玉菌を増やしてしまう。そうすると、腸内環境が悪くなりますね。カンジダがつくるアラビノースという糖で低血糖が起きてイライラしたり。あとはミトコンドリア。カンジダのつくる代謝物で細胞のエネルギー代謝がまわらなくなり、さまざまな弊害が出てきます。

砂糖を摂るより、腸内環境を考えてオリゴ糖のような善玉菌の餌になるような糖を摂取しましょう。

――オリゴ糖はスーパーに売っているようなものでも大丈夫ですか?

大丈夫です。一点だけ、裏を見てイソマルトオリゴ糖というものだけ消化されてしまうので気をつけましょう。

小腸で消化されると人間のカロリーにはなるものの、大腸の善玉菌のエサにはなりません。

イソマルトオリゴ糖は安いのですが、それだけ効果が薄いです。それ以外でしたら大丈夫です。

あとは、オリゴ糖と見せかけてほかの甘味料やブドウ糖などが入っているものもあるので、それは避けてください。オリゴ糖と書かれたものだけを選びましょう。

2.まずは腸内環境を良くすることから

ーー女性はいつまでも健康で美しく在りたいものですが、WELLMETHOD世代が意識するべき食事について教えてください。

どんなに良い栄養を摂っても、腸内環境が悪いと全部栄養を奪われてしまいます。ですので、まず腸内環境を良くすることです。

あとは、先ほどお話した、糖をなるべくオリゴ糖に切り替えることです。

更年期食事法

それから、食物繊維を摂るようにしましょう。特に善玉菌の餌になるのは水溶性の食物繊維なので、海藻類や蒟蒻が良いですね。野菜全般、水溶性と非水溶性両方含まれていますね。

そういったものをしっかり食べて、自分の中の良い菌を育成して、腸の土壌をフカフカにする。腐葉土のような感じで、菌が食物を発酵させてくれる良い栄養豊かな土にすること。これらが一番最初に大事なことです。

3.タンパク質が女性ホルモンをつくる

また、エンプティフードと言われるものには気をつけましょう。これらは、糖や油などカロリーは高いのに、ビタミンやミネラルが不足しています。ジャンクフードのようなものですとか加工食品が該当します。そういったものは、そろそろこの年代になったらやめていきましょう。

若いころはなんとかなっていたのですが、年を重ねるとなんとかならなくなってきますね。ですので、そこをやめていきましょう。

それから、特に不足しがちなのがタンパク質です。

神経伝達物質も免疫細胞が出す攻撃物質も、全身の細胞の働きに不可欠な酵素もタンパク質で作られています。また、女性ホルモンをつくる材料を運搬するにも、タンパク質が不可欠ですので、バランス良く摂ることが大事です。

4.老化を招く油と質の良い油の違い

それから、盲点なのは油です。

最近は、美容にも油が大事だと知られているので、油抜きダイエットをする方は多くないと思います。

なぜ油が大事かというと、必須脂肪酸は細胞の膜の原料になるので、細胞そのものの原料なんです。ですので、摂取しないと細胞の膜がうまくつくれなくなります。

細胞はどんどん老化しますし、特に脳は6割油で4割はタンパク質なので摂取しなければなりません。

では、どのような油を摂取すれば良いのか? 質が悪いから病気になってくるのであって、選ぶことが大事です。

更年期障害食事法

まず、オメガ6とオメガ3が必須脂肪酸になります。これらは外から摂らなければなりません。両方必須な栄養素なのですが、オメガ6:オメガ3を4:1くらいで摂るとバランスが良いです。

今は10:1〜30:1のバランスで摂取していることが多いです。オメガ6がアレルギーや老化、認知症、動脈硬化などを起こす油なので、こちらは控えめにしてオメガ3を摂るようにしましょう。

オメガ3は、亜麻仁油や荏胡麻油、ヘンプシードオイル、魚の油であるEPAやDHAが該当します。これらを意図的に日常的に取り入れましょう。

オメガ6は、サラダ油や紅花油、ひまわり油、ごま油、グレープシードオイルなど。こちらは外食をしたら勝手に入ってきます。特に、家畜がコーンなどの飼料を食べているので、そもそもお肉の油もオメガ6が多くなっています。

オメガ6を控えめにしてオメガ3を意図的に摂取する。油の質を考えると細胞の質が変わってきます。

5.日常使いのおすすめの油

――普段料理をする時の油はどのようなものが良いでしょうか?

オメガ3も6も両方酸化しやすいので加熱に向かないんですよ。

サラダ油などは揚げ油にしてしまいますよね。オメガ3も酸化しやすいので加熱には向かないです。どちらかというと我が家では、オメガ3は和え物に使っています。我が家では納豆に入れたりしています。あとはサラダのドレッシングにするという使い方も良いですね。

更年期障害食事法

必須の油ではないのですが、酸化に強いのはオリーブオイルや国産の菜種油、米油などといったオメガ9を多く含む油です。あとは流行っている中鎖脂肪酸の油。加熱に使うのでしたらこれらが良いです。

6.更年期になる前に出来ること

ーーこれから更年期を迎える女性に向けて、いまからできる身体づくりの秘訣とメンタル的な心構えを教えてください。

とにかく、ベースを整えることです。更年期と更年期ではない、いわゆる自律神経失調症と不定愁訴は似通っているためです。更年期と見せかけて、ベースが崩れて余計ひどくなっている場合もあります。

まずは、基礎的な食生活や生活習慣、それからストレスリリースをすることです。ライフスタイルを整える土台をまずつくって、「それでもある症状は何か?」と、更年期を見ていった方が良いです。

更年期障害食事

メンタル的な心構えとしては、例えば、うつっぽくなったからと言って、更年期のホルモンや抗うつ剤を補えば良いという話でもないんです。実は鉄不足かもしれない。鉄やタンパク、ビタミンB6が足りないとセロトニンがうまくつくれないので不具合が起きます。あとは、腸内フローラもうつに関わってきます。

メンタルがおかしくなると“自分が悪い”と思い込んでしまうというようなことがあるんです。

“こんな風になってしまって、私はもうダメだ”といった感じに、自分が悪いと思ってしまいがちですが、原因があって起きていることなので、その根本やホルモンを整えていったら改善も出来ることなので、自信を失わなくても良いよとお伝えしたいです。

7.更年期障害の症状はほぼない!?

ーーすでに更年期障害などで悩まれている方は、病院に通うことはもちろん、日常ではどのようなケアが必要でしょうか?

基本的には更年期にしかない特徴的な症状はほとんどないんですよ。

女性ホルモンが乱れることは自律神経が乱れるということを引き起こすので、やはり基本的には自律神経をしっかり意図的に整えるようにしないといけないですよね。

自律神経って人間のバイオリズム。朝になったら交感神経が起き上がってきて起床して、日中活動すると神経が高まって活動して、夜になったら副交感神経が高まる。

まず一番はじめに生活においてリズムを整える。朝しっかり起きることからはじまって、一定時間眠るように努める。

食事のリズムも、ちゃんと内臓の時計を合わせるために良くする。というように、まずはバイオリズムをしっかり整えるように意識することが大事です。

8.“いまの私”を愛するということ

ーーそれでは最後に、WELLMETHOD世代のみなさんにメッセージをお願いします。

まず自分をお祝いしましょう。

私でいいんだということ。今の私が最高に楽しくて最高に素敵。“今の私をお祝い”しようというところからはじめましょう。

もちろん、生まれた時点で死に向かっていきますし、どんどん機能も衰えます。例えば卵巣で言えば、一番はじめに生まれた時にたくさん卵を持っていて、どんどん減らしながら生きていき、停止するというプログラムが備わっていますね。こればかりは自然の摂理なのでどうしようもありません。かといって、出来ることもたくさんあります。

まずは、“こんなにがんばってきた”と褒めること。出来ないことも増えてくるとはいえ、そこは適切にメンテナンスして長生きするようにちゃんと労りましょう。

無駄に老化をさせないことが大事です。意識しないですとか、生活リズムを乱すような雑に過ごすことは選択しない。運動も大事なのでしましょう。

人生100年と考えると長いですよね。時々油なんかも差しながら。油も潤滑油になるんです。そういったところを補いながら、出来ることを楽しみながら心を豊かにすることはいくらでも可能です。

そして自分を、「いまここ最高に」祝いながら生きていきましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

はやかわちえ

【ライター】

“女性に生まれたよろこび”をテーマに、性・パートナーシップ・自己表現などの分野で活動するフリーライター。
ライフワークは歌・音楽活動。

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