こんにちは。
医師で、予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

疲れには、心と体の2つがあることを普段から感じていると思います。

心の疲れを自覚しやすい人、しにくい人。
体の疲れを自覚しやすい人、しにくい人。

いずれも、ストレスがかかった時には、適正に疲労を感じ取り、適度に休養をとり、心身を休める必要があります。

根っからの楽天家であれば、日常的にストレスをリリースできているかも知れません。
でも、自覚しにくい人ほど、閾値を超えてから、急に倒れるということになり兼ねませんね。

特に、普段から「私は強い!」と思っている人ほど、実は鈍いだけということもあるかも知れません。
女性の場合は、ストレスは女性ホルモンを乱し、放置すると若年性更年期障害にもなり兼ねません。

疲れを適度にリリースするべく、まずは自覚することから始めましょう。

1.心の疲れが起こりやすい人とそのリリース

ストレスフルな世の中ですから、よほど社会から切り離された生活をしていない限り、心の疲れは誰しもが感じているはずです。

ニュースをつけるだけで、ネガティブな情報ばかりが入ってきます。

心の疲労

2.心の疲れのチェックリスト10

心の疲れをチェックしてみましょう。

1.体がだるく無気力である
2.イライラして怒りっぽくなる
3.不安になりやすい
4.呼吸が浅い、息苦しさを感じる
5.寝付きに時間がかかる・朝早く目が覚める
6.寝ても疲れが取れない
7.訳もなく落ち込む
8.これまで楽しかったことに興味がなくなっている
9.集中力がなくなった
10.本や人の話が頭に入ってこない

1つでも当てはまる場合は、心の疲れがあると考えましょう。

3.心の疲れやすい性格やシーン

心が疲れやすい性格傾向やシーンはどんなものでしょうか?

3-1.心が疲れやすい性格

日本人的な性格は、どちらかというと心が疲れやすいと言えます。
心が疲れる時とはどんな時かというと、自分が「嫌だな」「不快だな」と感じる状況にさらされた時です。

人は誰しも、得意不得意がありますし、価値観も違います。
自分の中にこの範囲は「OK」という「心のものさし」があり、その基準を超えた「NG」領域に触れると、ストレスを感じます。

心のものさし

その心のものさしは、絶対的な基準ではなく、社会や家庭環境、経験などから作られた個々人のもので、「絶対正しい!」と人に押し付けると、不調和の原因になります。

でも、ストレスを抱えやすく心が疲れやすい人の多くは、この自分の「心のものさし」の基準を明確に自覚できていません。

自分よりも他人を優先して、周りに合わせることが「良し」とされる日本においては、自分の基準がはっきりとわからないままに、他人の基準や社会的なルールや規則などのグループの基準に合わせながら生きることが求められてきました。

そのため、本来は自分にとっては「NG」という領域に触れているのに、それが自覚できないでいると、気づかない心のストレスになってしまいます。

幼い頃から自己主張することが良しとされるアメリカとの大きな違いです。
自己主張ばかりしていると、今度はまとまりがなくなりますから、「良い塩梅」であることが大切で、どちらかが良いというわけではありませんけれども、自分のことをはっきり自覚するということが、まず第一段階として必要だと思います。

3-2.心が疲れやすいシーン

心と社会的グループ

自分の心のものさしが曖昧なままに、違う価値観を持った人たちが集まる会社やグループなどに身を置くこと自体が、ストレスになります。

特に周りに「良い人」と言われる人ほど、八方美人になりがちで、NG領域に突っ込んでしまうために、心が疲れます。

「苦手だな」と感じる人とも人当たりよく付き合っている場合や、「本当は違う」と思いながらも意見を合わせている場合。
周りからは「協調性がある」と思われる反面、自分の個性は死に、心が疲れていきます。

また、自分の適性に合わないことをしている場合も同様です。

例えば、本当は整理整頓が苦手なのに、事務的な仕事をしているケース。
本当は、極めて感覚的なタイプなのに、論理的な頭脳労働をしているケース。
人を束ねるよりもムードメーカーの方が向いているのに、〇〇長を任されているケース。

など、いくらでも考えられます。

そうは言っても、仕事上、自分に合わない人ととも付き合わなければいけない場合もありますし、自分に合わない作業もやらざるを得ない場合もあります。

でも、自分自身のことを自覚できているかいないかで、心の疲れを自覚し、リリースできるかどうかが変わってきます。
自覚できれば、コントロールができますが、自覚できなければ、振り回されてしまいます。

4.心の疲労は体に現れる

心の状態が自覚できない場合も、心と体は自律神経や内分泌などを通じて常に双方向に情報交換をしていますから、日常的な不調や心身症と呼ばれる病態として、体に現れてきます。

4-1.体に現れる症状や心身症

心の疲労の症状を抱える女性

・頭痛、耳鳴り、めまい
・胃痛、腹痛、腹部膨満感、便通異常
・呼吸困難、過換気
・皮膚炎、痒み
・痛み
・筋肉痛、こり
・倦怠感
・高血圧
・胃十二指腸潰瘍、ストレス性胃炎
・過敏性腸症候群
・アトピー性皮膚炎
・気管支喘息

さらに、女性の場合は、更年期障害の悪化や若年性更年期障害としても現れてきます。

4-2.心の疲れと更年期障害

若年性更年期症状の女性

女性のバイオリズムにとって重要な女性ホルモンは、ストレスホルモン・コルチゾールと同じ原料でできています。

生命維持のためにどちらが重要かと言えば、ストレスに立ち向かうことですから、優先順位としては、ストレスホルモン>女性ホルモンということになります。

ですから、ストレスがかかると女性ホルモンの分泌は低下します。
更年期に差しかかって、ただでさえ不安定な時期に心の疲れが加わると、更年期症状が悪化しやすくなります。

また、卵巣機能が充実した20代〜30代であっても、ストレスが加わることで、卵巣の機能が低下してしまうことで、若年性更年期障害を引き起こす可能性があります。

「ストレスがかかり過ぎて、生理が止まった」という話がありますが、心からの危険信号を体が教えてくれているのです。
月経が乱れることに加えて、更年期同様に、ホットフラッシュや頭痛、肩こり、不眠など、更年期障害と同じような症状が現れてきます。

思い当たる方は、セルフチェックをしてみましょう。

▼20~30歳代に起こる若年性更年期症状の原因を解説

https://wellmethod.jp/youthful/

5.心の疲労を予防する3つの心の持ち方

5-1.心のものさしを自覚し境界線を明瞭にする

心のものさし

まず、自分自身の心の疲れを引き起こす原因を知る必要があります。
心のものさしの基準をはっきりと自覚することが大切です。

以前に、失感情症についてお話しました。
自分の感情が分からなくなってしまうほどに、麻痺している状態です。

【医師解説】自分の感情が分からない「失感情症」とは?感情を回復する5つのステップ

https://wellmethod.jp/emotional-disorder/

ここでご紹介した、感情を見つけるステップは、自分の心のものさしを自覚するためにもとても有効ですので是非ご参考になさってみてください。

ファーストステップとして、今の状況が自分にとって「快」か「不快」か。
この簡単な振り分けをすることで、自分のものさしの基準が明確になってきます。

心を疲れさせるストレスとなる「不快」な対象を自覚することで、自分自身の境界線が浮き彫りになってきます。

自分自身の境界線が不明瞭だと、知らず知らずに受け入れ過ぎてしまうため、心が疲れてしまいます。

5-2.捨てる勇気を持つ

連絡先を捨てる

心のものさしがはっきりすると、目の前にある自分にとってのストレスの原因がはっきり見えるようになります。

分かりやすくは、部屋の中。
眺め回すと、趣味ではないのに、誰かからもらった小物や、好きではないのに、流行りだからと買った服など、たくさん溜め込んでいることに気づくと思います。

また。携帯電話の電話帳をみてみましょう。
過去の彼氏や嫌いなあの人など、別にもはや連絡する必要がない人の連絡先がずらずらと出てくると思います。

勇気を持って、自分にとって、不要なもの、人を一旦捨てること。
それによって、部屋の中も人間関係も整理され、ゴミだらけだった心もすっきりとします。

余裕がなくパンパンの状態では、新しい良い情報も人も、入ってきません。
隙間を設けることで、これらを呼び込むこともできますから、是非、断行することをお勧めします。

私も、境界線が曖昧で、受け入れすぎる性格傾向ですが、大学時代から蓄積し続けてきた1000件にも及ぶ携帯電話の連絡先を一斉消去しました。

するとスッキリ!

連絡が来た人から再登録していけば、いま必要な人だけに整理されます。
古くからの友人も、仲の良い人とはSNSで繋がっているため、特に困ることもありません。

5-3.いい加減になろう

いい加減を実現する女性

「いい加減」という言葉は、ネガティブなイメージがあるかもしれませんが、「良い加減」「良い塩梅」で、つまり「適度」「適正」であるということです。
心が疲れやすい人は、自分の「いい加減」を知らずに、限界を迎えてしまいがちです。

仕事においても「みんなに迷惑がかかる」とか「私がいなければ仕事が回らない」などの責任感を一旦、手放して、「いい加減」になってみましょう。

休憩もせずに仕事に追われていると、逆に良い仕事もできません。
適度に休憩して集中からリラックスに切り替えることで、パッと新しい発想が湧くのが、脳のシステムです。

集中している状態をエグゼクティブ・モード、ボーッとしている状態をデフォルト・モードと言いますが、このバランスが大切なのです。

持続可能な心

持続可能な心と体を維持するために、心身のサインを見逃さず、「いい加減」を目指しましょう。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか