皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

豪雨被害に遭われた皆様に、心からお見舞い申し上げます。

気候変動の影響で、日本も亜熱帯化していると思わざるを得ないような天候が続いていますが、梅雨が終われば、度重なる台風の到来と、夏は特に気候の影響に抗えない季節です。

私と栗本編集長は、だいたい同じタイミングで「調子が悪い」と声を揃えます。

二人とも、天候の変化に体が敏感に反応するタイプです。
「この頭痛は、低気圧が近づいてるからだな」「この重だるさ、雨が降るな」などが体感で分かります。

女性に多いと言われる、この「気象病」。

病気というほどではなく、環境に対する体の反応ですが、天候と共に体と心がどんよりして日常生活や仕事にも支障が出てしまうこともあるため、何とか対処したいと思う方も多いと思います。

台風シーズンに備えて、気象病に対処していきましょう!

1.「気象病」とは何か?

頭痛

「雨で古傷がシクシク痛む」「今日は頭痛、低気圧がきてるな」など、天候の変化を敏感に感じる人は、必ず、どなたの周りにもいると思います。

天候による不調を「気象病」と言ったり、頭痛や関節痛など痛みを伴う場合、「天気痛」と言います。

日本で初めて、「天気痛外来」を開設した愛知医科大学の佐藤純教授が名付けたものです。

1-1.気象病チェックリスト

以下の項目に当てはまる項目が多いほど、気象病リスクがあります。

1. 天候や季節の変わり目に体調が悪い
2. 朝起きづらく血圧が低め
3. 乗り物酔いしやすい
4. めまいや頭痛が起こりやすい
5. 普段からストレスがある
6. 運動不足である
7. 日常的にストレスが多い
8. 過去に事故などの影響でムチウチがある
9. 肩こりや首こりがある
10. 更年期である

さらに、男女比では、女性:男性=7:3と女性に多く、排卵日や月経前の高温期では悪化しやすいことから、女性の方がリスキーであると言えます。

1-2.気象病の症状とは?

気象病、天気痛は、気圧が低下することで、次のような症状が起こります。

・頭痛
・関節痛
・めまい
・嘔気
・全身倦怠感
・血圧の変動
・動悸
・精神的な不安や落ち込み
・アレルギー症状の悪化
など

人によって、起きる症状が違いますが、本人にとっては、とても不快で、辛いものです。

1-3.気圧は体への巨大なストレス

てるてる坊主

気圧、つまり、大気圧は、地球を覆う空気の重さによる圧力のことです。
普段は全く感じませんが、地球上に暮らすということは、常に、重力だけでなく、空気の重さによる圧力も体に受けているということです。

だいたい、体表面積1㎡辺り、10トン程度とされています。

身長150cmで体重 50kg の人の体表面積は約1.4㎡で、1.4トンもの気圧を常に受けています。
それなのに、体が押し潰されてしまわないのは、体の内側から、同じ程度の圧力で押し返しているためです。

トン単位の力が、常に拮抗し合っている体は、気づかずにストレスを受けています。
更なるストレスになるのが、気圧の変動です。
気圧の変動を受けて、体もそれに負けないように体内を調整して、なんとかバランスを取ろうとします。

この調整が上手くいかない場合や、変化に敏感な場合に、気象病として症状が現れます。

1-4.平衡感覚と自律神経のバランス

鉄棒をする子ども

気圧の変化は、耳の奥の「内耳(ないじ)」という場所で感知しています。

内耳には、三半規管(さんはんきかん)という平衡感覚を司る器官があり、ここから来た信号と視覚から得た情報、手足などの体の動きを脳で統合して処理しています。

天地がひっくり返った時に、どちらが天井でどちらが地面か、などの情報を統合して環境に体を適応させます。

子供の頃できたでんぐり返りや鉄棒も、大人になってやってみると、目がグルグル回って吐きそうになったりした経験がある人もいると思います。
それは、内耳の機能が衰えている証拠です。

乗り物酔いをしやすい人も、内耳の機能の低下を疑いましょう。

気圧の変化を内耳が感知して脳に信号を送る働きは、体を環境に適応させるためにあります。
環境に応じて、自律神経を通して、体の働きを調整します。

内耳の機能が低下していると、この信号が上手く伝わらず、環境への適応が上手くいかなくなります。

また、信号が伝わったとしても、自律神経が乱れている人も、上手く適応ができません。

さらに、気圧が下がると、内耳から「環境が変化した」という信号がありますが、視覚的には特に「異常なし」と、信号にズレが生じる場合があります。

すると、内耳からの情報と視覚からの情報が上手く処理できずズレによるめまいが起きたり、情報のズレによって自律神経が乱れて、気象病の症状を引き起こすというメカニズムも考えられています。

1-5.「気のせい」「精神的なもの」ではない

天候の変化によって心身が浮いたり沈んだりする反応は、こうした症状が起きない人たちに理解してもらえないのが困りものです。

家族間や職場などでも、敏感な人と感じない人の間では、摩擦が生じやすいものです。

環境への適応が下手な人や自分の体の変化に敏感な人は、影響を感じやすく、環境への適応が上手な人や自分の体の変化に鈍感な人は、影響を感じにくくなります。

我が家は、私が「超敏感ちゃん」で、夫は「超鈍感くん」です。

天気予報を全くみなくても、まだ晴れている段階から、低気圧の発生が発生していると心身がどんよりと重く、思考が回らなくなり、作業効率が落ちてしまいますが、どうにもこれが夫には理解できないらしく、「サボっている」と思われてしまいがちです。

決して気のせいでも、精神的なものでも無い!ということが前々から言いたかったものですが、「気象病」や「天気痛」と名付けてもらい、一般認知が進むことで、「ほれ、みたことか!」と堂々と言えるのが、ありがたいと考えています。

周りに理解してもらえると、圧倒的に日常生活も仕事も気が楽になりますね。

あまり意識し過ぎるのも、条件反射により反応を増長するリスクがあるためよく無いので、知った上で囚われすぎないでバランスを取ることが大切です。

2.気象病への対処

気象病への対処は、内耳機能の改善と自律神経の調整が主体です。

2-1.内耳機能の改善

1.肩こりや首こりの改善を

肩マッサージ

内耳の血流低下は、機能低下に繋がります。

肩こりや首こりが昂じると、内耳の血流低下にも繋がりますので、マッサージや入浴などでしっかりと筋肉をほぐし、血流を改善することです。

2.耳マッサージ

しばしばおすすめするのは、耳マッサージです。
肩こりや首こりにも効果的です。

両耳タブを、手で掴み、ぐいーっと床と平行に10秒ほどひっぱり、離します。
これを、1セット5回、1日3回ほど行いましょう。

3.でんぐり返りや鉄棒で三半規管を鍛える

できなくなってしまったでんぐり返りや鉄棒に果敢に挑戦することをおすすめしています。
体の機能は使わなければサボるもの。三半規管も同様です。
皆さん、どちらかと言えば、運動不足で安静にし過ぎの方が多い印象です。

辛い時に行うと症状を悪化させますので安静にした方が良いですが、普段、元気な時には積極的に天地をひっくり返してトレーニングすることです。

おそらく、一回転するだけでも、目が回ってしまうと思いますが、続けるうちに、段々と三半規管が鍛えられて慣れてきます。

めまい症の改善や乗り物酔いの予防にも効果的です。

2-2.自律神経を整える

自律神経を整える方法は、いずれも効果的です。

自律神経は、活動する昼間は交感神経モード、リラックスする夜間は副交感神経モードに切り替わるというリズムがあります。

気象病の場合は、このリズムがアンバランスになりガチです。

1.睡眠リズムから自律神経を整える

スマートフォン

リズムを整えるには、睡眠のリズムを整えて体内時計を乱さないことです。

簡単な体内時計の整え方は、まず、朝しっかりと起きて明るい日差しを浴びること。次に、日が暮れたら頭を使う作業を一切やめ、ゆったりして眠りにつくことです。

特に、スマホやPCのブルーライトは、交感神経を刺激するため、夜は意図的に離れましょう。

こちらの記事に詳しく解説しています。
「【医師が解説】“良質な睡眠”をつくるために毎日やるべき習慣・やめるべき習慣」

https://wellmethod.jp/sleep_hormones/

【医師が解説】“良質な睡眠”をつくるために毎日やるべき習慣・やめるべき習慣

2.シャワーと入浴の切り替えで自律神経を整える

キャンドル

朝は、43度程度の熱いシャワーを浴びることで、交感神経のスイッチを押すことができます。
夜は、40度前後のぬるめのお湯にゆったり浸かることで、副交感神経モードに切り替えることができます。

メリッサやカモミール、ラベンダーなどのアロマも、リラックスを促します。

煌々とした電球を消して、キャンドルを焚き、ゆらゆら揺れる炎をぼんやりと眺めることも癒しに繋がります。

睡眠のためには、少し内臓の温度が冷えることが必要です。
睡眠の1時間ほど前までには入浴を終えましょう。

3.夜は血糖値が上がる糖質を控える

夜の血糖値にも注意が必要です。

夕食に血糖値が上がりやすい炭水化物や砂糖入りの甘いものを食べることで血糖値が上がると、睡眠時に分泌されるはずの成長ホルモンが上手く分泌されず、睡眠の質が悪くなります。

高血糖の後は、インスリン分泌が刺激されて低血糖になりやすいのですが、夜間に低血糖になると交感神経が刺激されて睡眠が浅くなったり覚醒してしまったりします。

夜の炭水化物や糖質は控えめに。
また、熟睡のためには、入眠の3〜4時間前までには食事を終えたいものです。

2-3.薬物療法

気象病については、専門外来を受診した方が良いでしょう。

「気象病」「天気痛」については、新しいカテゴリーであるため、専門家の方が診断や対処に慣れています。

1.薬物療法

薬物療法は、基本的には対症療法になります。

痛みがあれば、痛み止めを用い、めまいがあれば、めまいの治療薬を用います。

偏頭痛の場合は、痛み止め(消炎鎮痛剤)だけでなく、偏頭痛用の治療薬を用いることもあります。

根本解決はなかなか難しいため、内耳機能の改善や自律神経を整えるセルフケアは必須になります。

2.漢方薬

漢方薬

漢方薬は、原因によって使い分けます。

東洋医学では、気(き)・血(けつ)・水(すい)の滞りによって症状が起きると考えられています。

気の滞り、神経の興奮がある場合は、抑肝散(よくかんさん)や抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)、温胆湯 (うんたんとう)など。

血の滞りがある場合は、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など。

水の滞りがある場合は、五苓散(ごれいさん)や半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などが用いられます。

更年期障害を伴う場合は、血の滞りを改善する桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を選択する場合が多くなります。

2-4.自分のパターンを記録する

アプリを利用して、気圧と自分の体調の変化を記録し、客観的に観察することも、自己管理に役立ちます。

頭痛などの症状の起こった日時、程度や、天気や睡眠不足、ストレスなど関連しそうな出来事を記録します。

1.気象予報士が開発した「頭痛ーる」

気象病や天気痛の対策にと、気象予報士が開発した管理アプリ「頭痛ーる」が便利です。

気圧予報グラフによって、気圧の変化が簡単に分かり、頭痛の起こりそうな時にはプッシュ通知でお知らせしてくれます。

自分のタイミングや程度、その他の症状などとの関連や、お薬の内服記録などができ、外出時に「今日は危険だ気をつけよう」と備えができます。

https://zutool.jp/about
「頭痛ーる」

2.知って備えた上で気にしない

リラックス

管理ツールを使うことで、気圧と症状の関連が明確になると、周りの人の理解も得やすくなります。
日常生活や仕事は、一人で行うわけではありませんから、辛い時にはサポートが必要ですよね。

ただし、変化を知り、備えることは安心に繋がりますが、一方で、人の脳と神経ネットワークは、条件づけによる体の反応をプログラミングして記憶しやすい性質があります。

「低気圧がくる!」という恐れを持ってしまうと、それだけでプログラムが作動して、具合が悪くなってしまうことも実際に起こります。

このバランスを取ることは難しいものですが、知って備えた上で、気にし過ぎないことも大切です。

セルフケアを行うことで症状が緩和されてくると、低気圧の際にも気にせずに過ごせるようになる可能性も十分あり得ます。

気候変動の影響から、今後も、ゲリラ豪雨や台風などが夏の日常になると考えられます。

気圧が低く症状が辛い時は、自分をいたわり、症状がない普段は、少々「鍛える」という発想も取り入れながら、ヘルスケアにいそしみたいところです。

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詳しくは→ https://wellmethod.jp/present/

医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

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