こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

突然ですが、みなさまは日本人の3大死因をご存知でしょうか。

一つは“がん”とわかっても、残りの2つはすぐにピンとこないかもしれません。

厚生労働省の調査結果によると、死因の原因第1位はがんであり、2位は虚血性心臓疾患(狭心症・心筋梗塞症)そして3位が老衰、となっています。

老衰は抗えない自然死だとしても、がんや心臓疾患は日頃の習慣による影響も大きいため気を付けなくてはなりません。

とくに心臓疾患は普段の食生活や運動習慣、ストレスなどが大きく影響し、ライフスタイルの変化が多いゆらぎ世代の女性は注意が必要です。

また心臓疾患の中でも、心筋梗塞は発症から時間が経過するにつれ死亡率が急激に上がる、恐ろしい病気です。

今回はこの心筋梗塞の原因や治療法、心筋梗塞を発症しないための予防法について詳しく紹介します。

参考)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth1.html

1.そもそも心筋梗塞とはどういう病気か

心筋梗塞

ニュースなどでも、著名人が「心筋梗塞を発症し…」といったことを見聞きすることがあります。

恐ろしい病気というのはわかるものの、そもそも心筋梗塞とはどのような症状が起こるのでしょうか。

まずは、心筋梗塞とはどのような病気なのか、ご説明します。

1-1.心筋梗塞は心臓の血管が詰まることで起こる病気

心筋梗塞は心臓の血管に血液の塊(血栓)ができ、それにより血流が途絶えることで、心筋の細胞が壊死してしまう病気です。

そもそも心臓は24時間休むことなく拍動を続けるポンプであり、それを動かすエネルギーを作るには、冠動脈からの血流が不可欠です。

しかし人は年齢を重ねると冠動脈に動脈硬化が起こりやすくなり、血管の内部が狭くなります。

動脈硬化が進行して、冠動脈がさらにふさがり、完全に血液が通らない状態になると、その部分の心筋細胞が壊死してしまいます。

すると激痛を伴う心臓の発作が起こります。これが心筋梗塞です。

1-2.狭心症との違い

心筋梗塞と混同されやすい病気として「狭心症」があります。

狭心症も冠動脈の血流が悪くなることで、心筋細胞への血流が低下することで起こります。

原因は、血管の痙攣によるものと、動脈硬化によるものがあります。
いずれの狭心症の場合も、完全に血流が途絶えた状態ではなく、狭くなった血管内部を血流がギリギリ通っている状態です。

冠動脈が痙攣するように縮んでしまうことで血流が低下するタイプは、「異型狭心症」と呼ばれ、安静時に発作が起こります。

動脈硬化によって起こるものは、運動などの労作によって胸の痛みや圧迫感を中心とした症状が起こります。
そのうち、症状が安定している「安定狭心症」と、症状が不安定な「不安定狭心症」があります。

後者は、虚血により数日~数週間のうちに急変する可能性があり、急性心筋梗塞に極めて移行しやすく、さらには心臓突然死を引き起こす可能性もあります。
重症な病態を総称して、急性冠症候群と呼ばれます。

狭心症における胸の圧迫感は、長くとも15分程度で消えることが多いです。

ただ、狭心発作が心筋梗塞に移行しやすい危険な状態かどうかは、判断が難しいため、放置することは危険です。胸の痛みや違和感を覚えた場合は、速やかに病院を受診しましょう。

1-3.心筋梗塞が起こる前兆とは!?

心筋梗塞を起こす人のおよそ半数には前兆があるといわれています。

・病気を発症する1~2ヵ月ほど前から、胸の痛みや圧迫感・締め付けがある
・不整脈が出る
・急に激しい動悸に襲われる 

心筋梗塞の前兆として多いのが、胸の締め付けや動悸といった症状です。

始めは5分程度で気にならなかったものが、日が経つにつれ10分程度になり、繰り返す頻度も多くなることがあります。
こうした症状の変化が不安定狭心症の特徴です。

放置してしまうと急性心筋梗塞として激しい発作に襲われることもあるため、必ず無視せずに循環器科を受診しましょう。

心筋梗塞の前兆を感じる女性

1-4.急性心筋梗塞を引き起こすとどうなる?

動脈硬化が進行し、血栓が完全に血流を塞いでしまうと、急激な心臓の圧迫感や痛みに見舞われ、重篤な不整脈や血圧低下からショック状態になることもあります。これを、急性心筋梗塞といいます。

【急性心筋梗塞の症状】
・一般的に30分以上胸部に強い痛みや締め付けがある
・胸の痛みや圧迫感による恐怖から強い不安感に陥る
・首や背中、左腕や上腹部に痛みを生じることもある
・冷や汗、嘔吐、呼吸困難が生じるケースもある

急性心筋梗塞は寝ているときや体を動かしているときに限らず、ある日突然胸部の痛みを中心とした発作に襲われます。

そのような症状が出た場合は、ためらわずすぐに救急車を呼びましょう。

コントロール不良の糖尿病があると、痛みを全く感じないこともありますので注意しましょう。
軽度であれば気づかずに経過してしまうこともありますが、大きな発作であれば急な不整脈や嘔気嘔吐など何かしらの急激な症状が起こる可能性があります。

2.心筋梗塞を引き起こす原因の大部分は動脈硬化

動脈硬化

心筋梗塞を引き起こす原因の大部分は動脈硬化です。

動脈硬化は、血管の柔軟性がなくなって硬くなり、うまく血液を運べなくなる状態をいいます。

特に、リスクがあるのは、粥状硬化(じゅくじょうこうか)と呼ばれる状態です。動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなるドロドロした粥状の物質がたまってアテロームと呼ばれる塊ができ、次第に肥厚することで動脈の内腔が狭くなります。

これが破裂するなどして、急性心筋梗塞が起こります。

動脈硬化は遺伝的な要因もあるものの、喫煙や高血圧、脂質異常症、糖尿病、歯周病といった生活習慣病が原因となります。

つまり、日頃から意識して生活習慣病を予防することにより、心筋梗塞を防ぐこともできます。

3.日頃から気を付けよう。心筋梗塞の予防方法

心筋梗塞を予防するには、普段から良い生活習慣を心がけ、動脈硬化を予防することが大切です。

それにはまずタバコを吸わない、適度な運動をする、暴飲暴食を防ぐといったことが大切です。

ここからは、心筋梗塞の具体的な予防方法を紹介していきます。

3-1.禁煙する

禁煙

日本人の喫煙率は昔に比べると下がってはいるものの、女性の喫煙率は若い人を中心に微増しています。成人女性の平均喫煙率は8.7%であり、ほぼ横ばいといった状況です。

※「全国たばこ喫煙者率調査(2018:最終版)

タバコの煙には多くの有害物質が含まれており、吸うことで血管の内皮にも影響します。

ニコチンや一酸化炭素を吸うことで血管収縮が起こり、様々な有害物質が血管内皮を傷つけることで動脈硬化につながります。

また喫煙すると血圧の上昇や脈拍数も増えることから、心筋梗塞のリスクも高まります。

心筋梗塞をはじめとした心臓疾患を予防するには、タバコを吸わないことは基本と言えるでしょう。

3-2.食事に気を付ける

心筋梗塞が起こりやすい原因として、高血圧・肥満・糖尿病・脂質異常症などが挙げられます。

これらは食塩の多い食事、糖質と質の悪い脂質が過剰な食事によって引き起こされることが多いです。

これらが多く含まれる悪い食事例として、次のようなものが挙げられます。

・インスタント食品
・ファストフード
・加工食品
・ラーメンなど塩分を多く含む麺類
・糖分の多い飲料や菓子類、パン類など

昔の日本人は、欧米人に比べると心筋梗塞の発症率は低い傾向にありました。

しかし時代とともに食事の内容が欧米化し、徐々に心筋梗塞を起こす人が増えてきました。

そのため、いまでは伝統的な和食の重要性が見直されています。

健康的な和定食

【良い食事例】
・肉中心から魚中心の食生活にする
・食物繊維やカリウム、カルシウム、マグネシウムを豊富に含む食材を食べる
・野菜・海藻・きのこ類・豆類・ナッツ類などを積極的に。

魚に含まれるEPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸は、血栓を溶かし動脈硬化を改善します。

カリウムは血液中のナトリウムを排出し、血圧を下げる効果があります。

またカルシウム不足は血栓ができやすくなる原因になりますが、マグネシウムも同時にバランスよく摂取することが大切です。

また食物繊維の多い食品は、腸内環境を改善し、腸の炎症を抑え、全身の炎症を抑えることで動脈硬化の予防に繋がります。
満腹感があって過食を防ぎ、血糖値の上昇も抑えることから心筋梗塞の予防にも役立ちます。

3-3.適度な運動

心筋梗塞の予防として、適度な運動が注目されています。おすすめは、軽く汗をかく程度の有酸素運動です。

・ゆっくりとしたジョギング
・軽い水泳
・ウォーキング など

反対に、重量挙げや短距離走といった瞬発力が必要な運動は、急に多くの血液を心臓に送る必要があるため、心筋梗塞を予防する観点ではおすすめできません。

ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、内臓脂肪を減らし、血液の循環をよくする効果が期待できます。

運動時間は週3~4回を目安に30分以上、可能なら毎日30分程度行いましょう。

運動で胸に圧迫感がある場合は、狭心症の可能性があります。
この場合は運動がリスクになりますので、無理な運動を避け、精密検査を受けましょう。

3-4.ストレスを避ける

心筋梗塞はストレスと深い関係があります。

人は精神的、肉体的ストレスを受けると血液中のコレステロール値が上昇し、動脈硬化が進行しやすくなります。

そしてストレスを受けると交感神経系ホルモンが増え、血圧の上昇にもつながるのです。

ストレス解消法というのは人によってさまざまで違いもありますが、まずは日常生活において次のようなことを意識して行動してみましょう。

・一度に多くのことをやろうとしない
・明日できることは今日しない
・イライラしたらゆっくりと深呼吸をする

また、毎日ゆっくりとお風呂に浸かり、睡眠時間をしっかり確保することも心がけましょう。

このように意識して行動すると、のんびりとした生活リズムが身に付き、ストレスを軽減することにつながります。

3-5.口腔内・腸内環境を改善する

デンタルケア

歯周病や腸内環境の悪化による炎症がある場合、動脈硬化のリスクになります。
歯周病菌は、血管内に侵入し、血栓の原因になります。

歯ブラシだけでなく、歯間ケア、また定期的な歯科検診で口腔内のフローラバランスを整えましょう。

また、腸内フローラがバランスを崩し腸に炎症が起きると、血管にも炎症が起きて動脈硬化の原因になります。
普段から、シンバイオティクス食品を意識して、腸内環境を整え、動脈硬化を予防しましょう。

4.心筋梗塞の治療方法とは

心筋梗塞の治療

心筋梗塞は日頃から正しい生活習慣を行い、予防することが大切です。

しかし、自分はそう心がけていても、ある日突然家族などが心筋梗塞を起こしてしまうこともあります。

そのようなときにパニックにならないためにも、ここからは身近な人が心筋梗塞を起こした場合の対処法や、具体的な治療法について解説します。

4-1.急性心筋梗塞が起きた場合はどうする

心筋梗塞は、時間が経過するとともに死亡率が上昇する恐ろしい病気です。

身近な人が急に息苦しさや強い胸の痛みを訴えた場合、ためらわず救急車を呼びましょう。

たとえ発作が早い時間で治まっても、危険な不整脈などが引き起こされることもあります。

迅速に医療機関に相談することが大切です。

4-2.心電図や血液検査が行われる

心筋梗塞が疑われる場合、まずは心電図でその状態を確かめます。

狭心症の場合、発作中は心電図変化が現れますが、15分以内に症状が消失するので病院に着いた時には元に戻っていることが多いです。

しかし、心筋梗塞の場合は特徴的な心電図変化が現れ、その変化は元に戻ることなく波形に残るため、多くの場合容易に診断がつきます。

また、血液検査によって、心筋壊死のバイオマーカーである「トロポニンT」や「クレアチンフォスフォキナーゼ(CPK)」などの酵素や白血球などの数値を調べます。

呼吸状態が悪い場合には、酸素吸入を行ったり、不整脈やショック状態である場合はそれらに対処します。

4-3.カテーテル検査

心筋梗塞では、閉鎖箇所を発見するために一般的にカテーテル検査が行われます。

カテーテルとはごく細いチューブを手足の静脈から心臓へ送り込み、血管の狭くなっている場所や詰まっている箇所を見つける方法です。

心筋梗塞の治療

4-5.治療

閉塞した冠動脈を再開通させる方法は、急性冠症候群の種類と、発症後どれくらいの時間が経過しているかによって変わります。
閉塞した冠動脈を開通させる方法には、以下があります。

1.経皮的冠動脈インターベンション:PCI
2.血栓溶解薬
3.冠動脈バイパス術

一般的に病院到着後90分以内であれば、血管形成術やステント留置術などの経皮的冠動脈インターベンションが最適とされています。それが行えない場合に、血栓溶解薬で血栓を溶かす治療が選択されます。それらが緊急で行われない場合もあります。

経皮的冠動脈インターベンションや血栓溶解薬の代わりに、発症中に冠動脈バイパス術を行う場合もあります。

状況やタイプによって様々な治療法の選択があります。

5.心筋梗塞は怖い! だからこそ普段からの予防が大切

心筋梗塞の予防のため運動をする女性

心筋梗塞は胸に突然強い違和感や痛みを覚え、周りも発症した人もパニックになってしまうケースが少なくありません。

そのうえ時間の経過とともに死亡率も上がるため、病気のなかでも恐ろしいものといえます。

しかし、心筋梗塞は普段から良い生活習慣を心がけ、動脈硬化を防ぐことで回避できる病気ともいえます。

それにはまずタバコを吸わない、適度な運動をする、暴飲暴食を防ぐ、口腔内環境や腸内環境を改善するといったことを心がけましょう。

また、年に一度は健康診断を受けることも大切です。

心臓疾患を予防するためにも、不整脈や胸の違和感を感じた際には、ためらわず病院へ相談するようにしましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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