夜中にまたトイレ…「夜間頻尿」を改善する5つの生活習慣と原因別治療法
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
年齢を重ねていく中で、若いときにはなかった悩みが増えてきました。
その悩みの一つが、夜間トイレに起きてしまうことです。
以前は夜中にトイレで目が覚めるなんて考えられませんでした。
夜中トイレに行くのはおばあちゃん世代になってからと思っていたのですが、まさか40代で悩むことになるなんて、症状を感じた当時は少しショックを受けてしまいました。
症状に悩まされていた当時は夜中に目が覚めるので朝起きてもぐっすり寝た気がせず、昼間眠くなることも。
そんな毎日を送っていると、少しずつストレスを感じるようになりました。
「眠くてやる気が出ない」
「でも、相談するのは恥ずかしい」
モヤモヤした思いを抱えたまま、自分の症状を調べてみた結果「夜間頻尿」の疑いがあるとわかったのです。
そこで、生活習慣を見直すことで改善できる可能性もあるため、まずは自分でできることから試してみました。
その結果、夜中にトイレで目が覚めることが減り、いまでは改善されました。
今回は、夜間頻尿の原因とその改善法についてご紹介します。
目次
1.夜間頻尿とは?
夜間頻尿とは、「就寝後にトイレに行くために1回以上起きてしまうこと」と定義とされています。
しかし実際には、夜間にトイレに行く回数が2回以上になり、本人が苦痛に感じている場合に治療の対象となります。
排尿に関わる症状のなかで夜間頻尿はもっとも頻度が多く、年齢とともに悩む人が多くなるといわれています。
1-1.症状
夜間頻尿の症状は、夜寝たあとに尿意を催し、トイレに起きることです。トイレに行く回数が1日8回を超えると頻尿といい、そのうち就寝後に頻繁にトイレに行くことを夜間頻尿といいます。
あくまでもトイレに行く回数は目安です。
夜間頻尿は、その名のとおり夜間にトイレに行くため、不眠・睡眠不足・日中の眠気・転倒などのケガの危険性・不安・ストレスなどが引き起こされる可能性もあります。
さらに免疫力の低下や自律神経が乱れることもあります。
2.夜間頻尿の原因は?
夜間頻尿の原因はさまざまですが、「多尿・夜間多尿」「膀胱蓄尿障害」「睡眠障害」の大きく3つに分けることができます。
それぞれの原因について詳しくご紹介します。
2-1.多尿・夜間多尿
尿量が多くなり、夜間にトイレに何度も起きてしまいます。朝の起床時の尿量も含めた夜間の尿量が1日の総尿量の1/3以上となります。
1回の排尿量は150~200mlと正常ですが、睡眠中の総量として多くなるという意味です。
若年者では夜間尿量が1日の総尿量の1/5以上とされています。
多尿の原因は、糖尿病などの内分泌疾患や水分の摂り過ぎ、また加齢現象などです。
とくに夜間に尿量が多くなる夜間多尿の場合は、高血圧やうっ血性心不全・腎機能障害などの全身性疾患などが原因となっています。
加齢とともに、夜間の尿量を調整するホルモン分泌が悪くなることも原因の一つです。
2-2.膀胱蓄尿障害
膀胱蓄尿障害とは、膀胱に十分に尿を溜めることができない状態のことをいいます。膀胱蓄尿障害の主な原因は、過活動膀胱や間質性膀胱炎などで膀胱が過敏になることがあげられます。
とくに女性の蓄尿障害の原因には、神経因性膀胱、過活動膀胱、加齢などが多く見受けられます。
女性に多く見られる過活動膀胱とは、特定の原因がないにも関わらず尿が少量しか溜まっていないのに勝手に膀胱が収縮してしまう病気の総称です。
失禁の原因にもなる為、QOLを損ねてしまいます。
また加齢とともに膀胱やその周囲の骨盤内の筋肉が減少し、収縮力や尿を保持する蓄尿機能が低下していきます。
さらに神経も徐々に細く弱くなるため、膀胱自体への神経伝達も劣化してきて機能的な膀胱容量が減ってくるのです。
これらは、過活動膀胱の原因となっています。
何か用事があるたびに「心配だから」と事前にトイレに行くという習慣も、膀胱の容量を小さくし、蓄尿障害の原因になります。
2-3.睡眠障害
睡眠障害とは、寝ているときに何度も目が覚めてしまったり、なかなか眠れなかったりと睡眠をうまくとることができない状態のことです。
年齢を重ねるとともに、眠りが浅くなり目が覚めるためトイレに行く回数が増えてしまいます。
また睡眠時無呼吸症候群やストレス、精神疾患などで睡眠が安定せず、トイレに行く回数が増えることもあります。
尿意を感じて目が覚めるというよりも、不本意に目が覚めそのついでにトイレに行く場合も多く見受けられます。
3.夜間頻尿の検査
夜間頻尿で医療機関を受診すると、最初に問診を行います。症状の詳細な評価とともに他の病気があるか、服用している薬の確認、水分やアルコールの摂取状況を確認します。
その後、医師の判断のもと必要に応じてさまざまな検査が行われます。
3-1.排尿日誌
排尿日誌は医療機関を受診した際に行われますが、医療機関を受診する前に自分でできるチェック方法の一つです。
「夜間頻尿かも?」と思った場合は、排尿日誌をつけて自分の排尿の状況を確認することも大切です。
排尿日誌とは朝起きてから翌朝まで排尿した時刻とメモリ付きのコップなどで測定した排尿量を日記のように記録するものです。
1回の排尿量と排尿回数を把握することができ、医療機関では夜間頻尿の診断に欠かせない検査です。
3-2.腹部超音波検査
腹部超音波検査では、残尿量検査と同時に、膀胱内に結石や腫瘍がないか調べます。膀胱内に結石や腫瘍があると膀胱が刺激を受け、蓄尿障害を引き起こしてしまいます。
3-3.その他検査
医師の診察のもと必要と判断されたときは、その他の検査を行うこともあります。
膀胱に刺激を与える原因に尿路感染も考えられるため、尿検査を行うことがあります。
また生活習慣病の有無を確認するために採血を行うこともあります。
4.夜間頻尿の治療
夜間頻尿は、原因によって治療法は異なります。
原因別に治療法をご紹介します。
4-1.多尿・夜間多尿の場合
多尿の治療では、適切な飲水量を知り、守ることが大切です。そのため、飲水に関する指導が行われます。
適切な飲水量は一般的には24時間の尿量が「20~25ml×体重(kg)」とされており、飲水量を守る以外にもアルコールやカフェインをできるだけ避けるようにすることも大切です。
飲水量の指導での改善が難しい場合は、薬物療法で改善を目指します。必要に応じて利尿薬や抗利尿ホルモン剤を使用して尿量を調節します。
また、精神的なストレスから、水分をたくさん飲んでしまう「多飲」が起こることもあります。
こうした場合は、精神疾患自体を治療することが必要です。
4-2.膀胱蓄尿障害の場合
膀胱に尿を溜めることができない蓄尿障害の治療には、尿意を我慢し膀胱容量を大きくする膀胱訓練や薬物療法を行います。
過剰な膀胱の活動を押さえたり、膀胱の筋肉を抑える薬剤を選択します。
排尿と関連する骨盤底筋を鍛えるトレーニングを併用することもあります。
4-3.睡眠障害の場合
睡眠障害の原因となるような身体疾患や精神疾患がある場合は、それらの基礎疾患を治療することから始めます。
原因となる疾患がない場合は、まず自分の生活パターンを把握し睡眠を妨げていることがないかをチェックし、改善します。
睡眠を妨げる生活パターンには、運動不足や長時間の昼寝などがあげられます。
睡眠障害の薬物療法は、不眠のタイプが入眠障害・中途覚醒・早期覚醒・熟眠障害のどれにあたるのかを把握してから、それぞれに合った睡眠薬が処方されます。
5.夜間頻尿を改善する生活習慣のポイント
夜間頻尿を改善するには、毎日の生活習慣を少し見直すだけで効果を得られることがあります。
夜間頻尿の7割は夜間多尿が原因といわれています。
普段何となく行っていることが、夜間頻尿の原因になっているかもしれません。
では、心がけたい3つのポイントを見ていきましょう。
5-1.適度な水分・塩分摂取を心がけましょう
忙しい毎日を過ごす中で、寝る前にお酒を飲むことが楽しみになっていたり、息抜き、ストレス発散になっている方もいると思います。
しかし寝る前のお酒やカフェイン摂取は夜間頻尿の原因になることがあります。
ほぼ毎日寝る前に飲んでいる方は、控えるようにしましょう。
水分だけではなく塩分の摂取量にも気を付けましょう。
夜間多尿の方は塩分排出が低下していることも多く、その場合は塩分摂取量を減らすことで夜間の尿量を減らすことが期待できます。
5-2.夕方に散歩をしましょう
下半身に水が溜まってむくんでいる人は、夕方に散歩をしたり適度な運動を心がけましょう。
できれば30分以上歩くと効果的です。
下肢の筋肉運動をすることで水が溜まりにくくなり、夜間の尿量を減らすことができます。
散歩が難しい場合は、弾性ストッキング(むくみ防止の着圧式の靴下)を普段から履いたり、シャワーだけでなく湯船に使って水圧でむくみをとることもできます。また、家の中で足踏みをしたり、座るときに座布団を利用して足をお尻より少し高くするだけでも効果が期待できます。
腎疾患の場合には、主治医と相談しましょう。
5-3.暖かくして寝ましょう
質の良い睡眠をとるために、眠りやすい環境を整えることも大切です。
睡眠環境を整えて、寒い時期は湯たんぽなどを使用することもおすすめです。
寝る1~2時間前の入浴や20分程度の足湯も効果的です。
▼【医師解説】秋冬の不眠の解決策とは?“光と温度環境”の設定がカギ
https://wellmethod.jp/insomnia-in-fall-winter/
5-4.骨盤底筋トレーニング
また、女性の尿の悩みは、骨盤の底にある筋肉の損傷と関連しています。
骨盤底の筋肉は、膀胱や尿道を支えているため、筋力が弱ると尿道が緩み、頻尿や尿もれが起こりやすくなります。年齢を重ねると筋力は落ち、出産でも弱くなります。
改善するためには、骨盤底の筋肉を鍛えるトレーニングが有効です。
①まず、仰向けの姿勢になり、両膝を軽く曲げた状態で立てて肩幅に開きます。このとき、体をリラックスさせましょう。
②下腹部の上に片手を乗せ、10〜20秒程度を目安とし、じわじわと肛門や膣をお腹の方に引き上げるように締めます。きつく感じる場合には5秒程度から始めましょう。
③締めたあとには、力を抜いて40〜50秒程度、体をリラックスさせます。
④この「締める」「ゆるめる」動作を1分間のサイクルで10回繰り返しましょう。
合計で10分を目安に行います。
その他の骨盤底筋トレーニングの方法はこちらの記事をご参照ください。
https://wellmethod.jp/pelvic-floor-muscles/
6.夜間頻尿が治まると生活の質が変わる?
夜間頻尿で夜中に何度も目が覚めてしまうと、日中活動にも影響を及ぼしてしまいます。
生活習慣を改善してみても、症状が改善しない場合は医療機関を受診してみましょう。
医師の診察を受け、適切な治療や生活指導を受け夜間頻尿が改善されると生活の質が上がります。
とくに40~50代の女性の場合「医療機関に行くにはまだ早い」「恥ずかしい」という思いが先に立つかもしれませんが、日常生活に支障をきたすような場合は早めに受診してはいかがでしょうか。
7.自分らしく笑顔あふれる毎日のために!
夜間にトイレに何度も行く。
このようなことは、高齢になってからだと勝手に思っていました。
夜間にトイレに何度も目が覚めてしまうリスクは、日中にも大きな影響を与えます。
仕事や家事、育児など自分がしなければいけないことがあるのに眠気に襲われ、やる気が出ないこともあります。
「やらなければいけないことが、できなかった…」
そんな風に自分を責めてしまっては、せっかくの毎日が辛くなってしまいます。
人生の中でいまの年齢で過ごすことができるのは、たった1年しかありません。
毎年、違う自分がいることが当たり前なのだと思うようになりました。
同じ場所で桜や紅葉を見ていても、毎年違う景色を楽しむことができます。それと同じように自分の人生も毎年違います。
それを楽しむためにも、夜はしっかり寝て昼間は元気に活動することが大切なのではないかと思います。
自分らしく素敵に年齢を重ねるためにも体と心の健康は大切ですね。
無理せず、体の声に耳を傾け、ゆっくりと自分らしい毎日を送りましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。