皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

「普段何食べてるの?」というご質問を良く頂くことから、私自身が普段作っている“シンバイオティクス料理”とレシピをご紹介します。

有用菌自体を含む発酵食品などの「プロバイオティクス」と腸内の有用菌のエサになる「プレバイオティクス」。これを組み合わせたのが、「シンバイオティクス」です。

腸内環境は、人を育む土壌ですが、その土壌を改良するのが、シンバイオティクス料理です。
普段のレシピをちょっと工夫することで、腸が圧倒的に元気になりますよ。

1.マルチに応用可能な基本の玉ねぎ塩麹

玉ねぎ塩麹

塩麹はとても便利な調味料ですが、さらに、旨味と香り、そして、腸内細菌のエサであるプレバイオティクス・フラクトオリゴ糖も加わった「玉ねぎ塩麹」をご紹介します。
玉ねぎの水分と栄養成分を丸ごと生かし、さらに麹菌による発酵で栄養価と旨味が増します。

ドレッシングの種や、漬物の素、スープの素、漬けだれなど、マルチに活用ができてとても便利です。

1-1.材料

材料

1. 玉ねぎ 大2個程度 300g程度
2. 米麹 100g
3. 塩(精製塩は使わない) 35g

水は入れず、玉ねぎの水分を使います。
塩麹と比べて、玉ねぎが入っている分、腐敗もしやすいため、塩分濃度はあまり低くできません。

その分、ナトリウムの血圧上昇効果に拮抗する働きを持つ、カリウムや、血管を広げる働きを持つマグネシウムなども含む自然海塩を選ぶとベターです。

玉ねぎ麹は、旨みが豊富なため、塩よりも使用量を抑えられます。

特に、食を重視している医師仲間の間では、沖縄の塩「ぬちまーす」が高評価です。
マグネシウム3326mg、カリウム1140mg(100gあたり)と他の海塩と比べて抜きんでて多いのが特徴です。

1-2.作り方

1. 分量の米麹と塩を手でよく揉み込みます。全体がしっとりするまで。
2. 玉ねぎは、水にさらさず、フードプロセッサーで水分が出るまで細かく、もしくはおろし金ですり下ろします。
3. 容器とスプーンを熱湯消毒します。
容器は、耐熱容器であれば何でもOKです。
沸騰したお湯を容器に注ぎ、10分間放置します。
80度10分間の処理でほとんどの細菌やウイルスは死滅、不活化できます。
4. 塩と麹とおろした玉ねぎを、スプーンで混ぜ合わせます。
5. フタは閉めずに乗せるだけにして室温に放置し、1日1回、熱湯をかけて消毒したスプーンで全体をかき混ぜます。
発酵の段階では呼吸をしているため、密閉はしないようにしましょう。
6. 夏場は、4〜5日ほど。冬場は、1週間ほどで、琥珀色に変わればできあがり。
7. フタをして冷蔵庫で保存して、活用を。

冷蔵庫で1ヶ月程度は保ちますが、使いきれない場合は、冷凍庫で3ヶ月程度は保管ができます。製氷皿を使って1回分をキューブ状に固めておくのも便利です。

1-3.シンバイオティクス&ヘルシーなポイント

1.米麹の生み出す健康成分

米麹は、大量の酵素により米のデンプンやタンパク質を分解し、甘みや旨味としての糖質やアミノ酸を有無だけでなく、ビタミンB群などを生み出します。

麹が生み出す、有機酸の一種、コウジ酸は、メラニン色素の産生を抑制する働きでも注目されています。

一般的な塩麹にもこれらが含まれますが、玉ねぎを加えることでさらにアップグレードしたのが、玉ねぎ麹です。

2.玉ねぎの健康成分、シンバイオティクス力アップ

玉ねぎには、腸内細菌のエサとなる、フラクトオリゴ糖が含まれます。
玉ねぎに含まれる豊富なアミノ酸が、塩麹以上の旨味となり、旨味調味料として活用できます。
また、「ケルセチン」と「アリシン様物質」が含まれます。

玉ねぎは、細かくすることで、アリシン様物質が発生し、放置することで、血液サラサラ効果のある「硫化プロペニル」に転換されやすくなります。

水にさらすと、成分が流出するため、そのままを使いましょう。
「ケルセチン」は、高い抗酸化力があり、動脈硬化を防ぎます。

「ケルセチン」は、玉ねぎの皮に多いものの、軒先につるすなどして、日干ししながら保管することで、白い部分にも成分が増えます。

3.非加熱でも加熱でも

玉ねぎ麹に含まれる食物酵素を活かして、消化を促進するという意味では、非加熱での使用したら良いですが、麹菌は、仮に生きて摂取したとしても胃酸で殺菌されますので、生きたまま摂る必要はありません。

加熱して摂ることで、玉ねぎの健康成分「硫化プロペニル」を増やすこともできます。

なので、非加熱でも加熱でも、作りたい料理に合わせてどちらの使い方をしても良いというのが結論です。

1-4.アレンジは自在

玉ねぎ麹は、旨み調味料のようなものなので、何にでも使えます。

1.スープのベースに

野菜スープ

スープストックの代わりに使うことができますので、水を入れてスープを煮込む際に、玉ねぎ塩麹を投入しましょう。

例えば、こちらは、無水鍋で煮込んだ、野菜たっぷりスープです。
全部の材料を切って、塩と玉ねぎの代わりに玉ねぎ麹を入れて、蓋をして煮込むだけです。
煮込み料理の際は、玉ねぎを事前に炒めて甘みと旨味を出しますが、玉ねぎ麹を使えば、その工程を省いても十分に美味しく調理ができます。

2.発酵ドレッシングのベースに

発酵ドレッシング

発酵玉ねぎドレッシングも簡単に作ることができます。

目安は、玉ねぎ麹:お酢:オイル=1:2:1

少し甘みをつけたい場合は、蜂蜜やオリゴ糖を加えても。
写真は、マルベリー( 桑の実)とジンジャーの5倍希釈シロップを頂いたので、こちらを玉ねぎ麹と等分で加えました。

3.お漬物(ピクルス)のベースに

ピクルス

玉ねぎ麹:酢=1:2の分量で入れ、野菜をつけます。
1時間程度の浅漬けでも良いですし、2〜3日置いたらさらに馴染んで美味しくなります。

こちらの豆カレーに添えてあるのは、インドのお漬物(ピクルス)・アチャールです。

日本で和定食を注文するとお漬物が添えてあるように、インドでは、このアチャールを食べます。
インド風にしたい場合は、クミンシードやコリアンダーシード、マスタードシード、カイエンペッパー (赤唐辛子)などのスパイスを加えます。
ナスのアチャールは、ごま油で炒めてから、同様に漬けます。

4.カレーなど煮込み料理の旨みもアップ

カレーなどの煮込み料理のベースにも、もちろん使用できます。
こちらの豆カレーは、玉ねぎやスパイス、諸々の野菜を炒めた後に、玉ねぎ麹を投入しています。

水分は、野菜と玉ねぎ麹だけ。
カレールーを使わずにスパイスを使ったカレーは、あっさりサラリとしがちですが、水を加えず、野菜と玉ねぎ麹の水分のみで煮込むことでコクと旨味が増します。

その他、煮込み料理の調味料として、マルチで活用ができますよ。

シンバイオティクスな万能旨味調味料、一度作ると便利です。
ぜひ、お試しくださいね。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか