40代で歯がぐらぐらする人が急増! 歯周病対策には丁寧な歯磨きと乳酸菌が重要
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
みなさまは、自分の歯に自信はありますか?
歯科医院によると、更年期は歯周病になる人が増加するそうです。
虫歯だと思って慌てて歯科医院に行くと、歯周病により歯茎が腫れている…なんてこと、ゆらぎ世代は少なくないようです。
しかも歯周病の多くは自覚がないため、急に歯がぐらぐらしてから歯科医に駆けむ人が多いとか。
そうなると状況によっては抜歯するしかなく、40代でほとんどの奥歯がない、という人も。
そんな恐ろしいことにならないよう、普段から歯周病対策を行うことが重要です。
また、最新の歯周病対策には、バクテリアセラピーという乳酸菌を用いた予防方法もあります。
今回は、最新の歯周病対策方法や、自分でできる予防方法について詳しく紹介します。
目次
1. 40代・急に歯がボロボロになる人が増えている
40代の女性は更年期症状が始まるケースも多く、心身になんらかの不調がある人も多いでしょう。
まずは更年期特有のイライラや疲れを改善したいため、なかなか「歯」の健康にまで気が回らないかもしれません。
しかし、40代になって急に歯がボロボロになったり、前触れもなく歯が抜けた、という人が増えています。
その主な原因は歯周病です。
若い頃から歯のメンテナンスを怠ってしまうと、将来的には自分の歯がほとんど残らないこともあるのです。
1-1. マスクに口臭がある場合は歯周病の可能性も
歯周病の多くは自覚症状がなく、歯が痛むといったトラブルが起きない限り、自分で気づくことは難しいかもしれません。
ただ、いまはマスクをつける機会が増えています。
マスク内で自分の口臭が気になる場合は、歯周病になっている可能性が高いです。
厚生省の調査によると、35歳以上の人のおよそ8割は、なんらかの程度の歯周病があるとわかっています。
普段身につけているマスク内が臭ったら、まず歯周病を疑って対策を行いましょう。
※厚生労働省.歯科疾患実態調査.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-17.html
2. 40代・歯周病が起こる原因とは
歯周病はどの年代にも起こる歯茎から始まり、最終的には歯の周りの骨までもとかす疾患です。
しかも、歯周病菌は簡単に血管に侵入して全身をめぐって炎症を起こす全身病とも言えます。
様々な疾患の原因になります。
とくに40代になると歯周病が悪化する原因は、加齢によって唾液の分泌機能が低下し、ドライマウスが起きやすくなるためです。
40代は更年期症状によって心身にさまざまな不調が起こりやすくなりますが、歯周病のリスクが高まることも忘れてはいけません。
ドライマウスの詳しい解説はこちらをご参照ください。
https://wellmethod.jp/dry-mouth/
2-1. 歯垢(しこう)の蓄積が主な原因
そもそも歯周病の原因となるのは、歯垢(しこう)と呼ばれる細菌のかたまりが歯周の炎症を引き起こすためです。
歯垢は食べ物のカスなどが歯に付着することでどんどん蓄積します。
毎日ていねいに歯磨きをして磨き残しがないつもりでも、歯垢は、歯と歯茎の間に蓄積されるので、確実に磨き残しが発生すると考える必要があります。
実際には自分の歯に合った正しいブラッシングをできている人は少ない上、ブラッシングだけでは、歯垢の4割を磨き残してしまうとされています。
そのため、歯垢が日々蓄積されて歯周病を引き起こしてしまうのです。
2-2. 生活習慣の影響も大きい
歯周病は、正しい歯ブラシだけで防げるものではありません。
そして体への悪影響が大きい生活習慣も、歯周病を悪化させる要因になります。
例えば、歯にヤニがつくことでもわかる通り、喫煙は歯周病を悪化させる大きな原因です。
タバコを吸っていても歯がキレイという人はほとんどいないでしょう。
また暴飲暴食を続けて万が一糖尿病などの大きな病気になると、全身の防御機能が低下してしまうため歯周病にかかりやすくなります。
そして、口呼吸も歯周病の大きな原因です。
口呼吸によって口腔内が乾燥してしまうと、殺菌効果のある唾液が減少し、歯周病を発症しやすくなります。
また、歯周病があると全身疾患を引き起こしやすいこともわかっています。
歯周病は、脳梗塞や心筋梗塞、大腸がんやアルツハイマー型認知症などの原因にもなります。
健康な体を維持するためにも、正しい生活習慣を意識して歯周病を予防することが大切です。
詳しい解説はこちらをご参照ください。
▼【医師解説】感染対策に「口腔ケア」こそまずやるべき理由と3つのステップ
https://wellmethod.jp/corona-oral-care/
3. いますぐ始めよう! 自分でできる歯周病対策
歯周病は放置すればするほど進行し、いつの間にか歯がぐらぐらする、抜け落ちてしまう、といったことも少なくありません。
歯周病は35歳以上のおよそ8割が罹患しているともいわれており、自分は大丈夫といった考えは危険です。
体の健康を維持するためにも、さっそく今日から歯周病対策を行いましょう。
3-1. まずは歯科医へ行こう
歯周病対策には、まずは歯科医院へ足を運ぶことが大切です。歯科医院へ行くと、次のようなメリットがあります。
・歯周病がどの程度進行しているかわかる
・自分では落としきれない歯垢を除去してもらえる
・隠れていた虫歯を見つけることもできる
・正しいブラッシング方法を教えてもらえる
歯周病の原因は歯に歯垢がつくことですが、蓄積された歯垢はいくら歯みがきをしても自分で取り除くことはできません。
定期的に歯科医院へ行って歯垢を取り除いてもらうことが、歯周病予防のもっとも有効な方法といえます。
3-2. 歯周病をケアするために必要な3つの対策
歯科医院で正しいブラッシング方法を教えてもらったら、毎日必ず実践しましょう。
例えば、ドラッグストアには実にさまざまな歯ブラシが売られていますが、どれが自分の歯に合うのか自分で判断するのは難しいでしょう。
歯科医院の歯磨き指導では、どの歯ブラシが自分に合い、どのように磨くのかをしっかりと教えてくれます。
しかし歯周病は、歯磨きだけでは対策ができません。
そのポイントは3つあります。
1.ブラッシング:歯磨き
2.フロッシング:歯間ケア
3.イリゲーション:水流洗浄
歯周病のケアは、この3つを行うことが大切です。
1. ブラッシング:歯磨き
正しい歯磨きを実践していれば、ブラシが届くところの汚れやプラークは落とせますが、歯周ポケットに溜まっている汚れやプラーク、歯間の食べかすを落とすことはできません。
実際、歯磨きだけでは4割のプラークを磨き残しているという報告があります。
また、食後に歯を磨く方が多いと思いますが、食後は食事や唾液で口腔内の細菌が一番少なくなっている時間帯です。このタイミングで行うべきは次に紹介する歯間ケアです。
最も効果的な歯磨きの時間帯は、口腔内の唾液が減り、細菌が増える就寝時間の前後と起床時です。この2回は必ず歯磨きをしましょう。
2. フロッシング:歯間ブラシ・デンタルフロス
食後には、歯間ケアを必ず行いましょう。歯磨きと歯間ケアまで行ってようやく8割のプラークを落とせます。
歯間ケアにはデンタルフロスと歯間ブラシを使用しますが、歯間を広げずにケアすることがとても大切ですので、サイズやタイプ選びには注意しましょう。
・デンタルフロス(ヒモ状):歯間が狭い人向き。必要な長さを切り取り指で操作するタイプ。ヒモにはワックスタイプとアンワックスタイプがある。
・ホルダータイプ(Y型フロスなど):ある程度歯間に隙間ができたらY型フロスの方が使いやすい。
・歯間ブラシ:ブラシ状。4S〜2Lまでサイズがあるので、無理なく歯間に入るものを選ぶ。フロスより洗浄効果が高い。毛先の性状はナイロンタイプとゴムタイプがある。
どれを選べば良いかわからない場合は、歯科で自分に合ったものを選んでもらうと良いでしょう。
3. イリゲーション:水流洗浄
水流洗浄機は日本ではあまり馴染みがありませんが、高圧洗浄機のような強いジェット水流で口腔内を洗浄できる機械です。
欧米では各家庭で一般的に使用されています。日本でも家電量販店などで購入可能です。
歯磨き・歯間ケアでも落としきれない、歯と歯茎の間の歯周ポケット内のプラークや汚れを洗浄できます。
上記3つのケアが、日常でできる歯周病ケアです。
この3つの歯周病ケアをすることで、9割のプラークを落とすことができます。
しかし、残りの1割を家庭でケアすることは難しいので、3〜6ヶ月に1回は歯科検診に行き、クリーニングをしてもらいましょう。
詳しくはこちらをご参照ください。
https://wellmethod.jp/bad_breath/
3-3. 普段の生活改善も歯周病対策になる
2章で解説した通り、毎日の生活習慣は歯周病と密接した関係があります。
例えばタバコを吸うだけで口腔内の雑菌は増え、血流も悪化することから、歯周病の大きな原因になります。
歯周病は心身の状態が悪いと悪化し、歯周病が悪化すると体へにも悪影響が出るなど、密接した関係があります。
歯周病を防ぐためには、普段から次のような行動を心がけましょう。
・禁煙する
・糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化によって歯周病を悪化させるので、普段の食事に気を使い、生活習慣病を予防する
そして最新の研究では、腸内環境を整えるのに有効なプロバイオティクスが、歯周病治療や口臭治療にも有効であることがわかってきました。
(注:腸内用のプロバイオティクスが、口腔内にそのまま使用できるわけではなく、口腔内は口腔内用のプロバイオティクスがあるという意味です)
次の章で詳しくみていきましょう。
4. 乳酸菌で歯周病改善
乳酸菌は腸内環境を整えることで有名です。
そもそも私たちの腸内には500兆個以上の細菌があり、バランスを保ちながら生息しています。
菌は大きく分けて3種類、腸内環境を整えてくれる善玉菌、反対に下痢や腹痛などの原因にもなる悪玉菌、そしてそのどちらにも属さない日和見菌があります。
乳酸菌はヨーグルトなどに含まれる菌ですが、食物繊維などのバランスの良い食事と一緒に取ることで、腸内環境を整えることに役立ちます。
そして乳酸菌の一種には、歯周病を改善するものがあることが近年の研究結果によりわかってきました。
(注:ヨーグルトに含まれる乳酸菌が口腔内環境を整えるわけではありません)
4-1. 乳酸菌によるバクテリアセラピーとは
私たちの歯の表面には、バイオフィルムという細菌膜があります。
これは虫歯や歯周病の住みかになっており、ヌルヌルとした粘着質であるのも特徴です。
バイオフィルムは歯ブラシだけでは落としきれず、歯の隙間や歯周ポケットの中にも潜んでいます。
そのため抗菌物質をバイオフィルムの中で作り、内側から病原菌へダメージを与える治療が注目されています。
この治療方法が「バクテリアセラピー」です。
バクテリアセラピーで有効な抗菌物質となるのがL.ロイテリ菌をはじめとした乳酸菌です。
4-2. 口腔内専用の乳酸菌サプリメントで歯周病予防
ノーベル医学・生理学賞を受賞したカロリンスカ医科大学では、プロバイオティクスの働きに注目し、歯周病治療・口臭予防に役立つプロバイオティクスを発見しました。
これを応用したメディカルサプリメントは、現在世界52カ国の医療現場ですでに歯周病対策などに活用されています。
日本でもプロバイオティクスにおける歯周病予防を取り入れているクリニックは増えています。
口腔内環境を整えるプロバイオティクスを含むサプリメントやカプセルを服用することで、歯周病予防に役立つことが期待されています。
5. 歯周病に関する疑問
ここからは、歯周病に関するよくある疑問について考えていきます。
歯ブラシなどのCMではよく「歯周病に良い働きがある」といった宣伝もありますが、それは本当なのでしょうか。
5-1. 歯周病によって歯がぐらぐら…抜かなくても治る?
歯周病が進行すると、歯茎がやせ細り、歯がぐらぐらになってしまうこともあります。
そのような場合、症例にもよるものの、歯周組織再生療法によって歯を抜かなくても治療できることがあります。
ただ、歯周組織再生療法の場合、健康保険の対象外となって高額になるケースが多いです。
また治療が終わったあとも定期的にメンテナンスを受けないと、再び歯周病になる可能性もあります。
またぐらぐらした歯は、症例によっては抜かなくてはなりません。
大切な歯を残すためにも、まずは歯にぐらつきが生じる前に、歯科医院の定期検診を受けましょう。
5-2. 歯磨き粉で歯周病を治すことはできるか
結論からいうと、歯磨き粉ですでにできてしまった歯周病を治すことはできません。
歯磨き粉には殺菌作用や歯周病予防を宣伝するものも多くありますが、その歯磨き粉を使ったからといって歯周病が完治することはないのです。
むしろ、殺菌成分は、口腔内を病原菌から守る口腔内の常在菌のバランスも乱す可能性があります。
歯周病の予防でもっとも大切なのは、口腔内フローラを整え、歯についている歯垢を除去することです。
そのためには歯科医院で歯垢を除去し、正しい歯みがきを毎日続けることが大切です。
歯磨き粉は歯を磨いた後の爽快感や、研磨剤による色素沈着の除去に役立つものととらえたほうが良いでしょう。
5-3. 毎食後に歯磨きをしないと防げない?
食事をしたあとの口内は、唾液の働きによる、最も細菌が少ない時間帯です。
慌てて毎食後に歯みがきをするより、まず、歯間ケアで歯垢の原因となる食べかすを除去し、寝る前にしっかりと時間をかけて歯みがきをした方が効果的です。
寝ている間は口内における唾液の分泌が減り、細菌が繁殖しやすくなります。
日中に歯みがきができない人は、寝る前にていねいな歯みがきを時間をかけて行いましょう。
6. 歯周病対策には歯科の定期健診と正しいライフスタイルが大切
人生100年といわれるいま、女性がいつまでも健康でいるためには、歯の健康を守ることも大切です。
歯周病は虫歯と違って痛みや違和感も感じにくいため、つい放置してしまう人が多いです。
しかし気づいたときには歯がグラついて、40代でどんどん歯を失ってしまうというケースも少なくありません。
ここ数年歯科医院から遠ざかっているという人は、ぜひ歯科医院に足を運び、歯周病のチェックや正しい歯ブラシ方法を教わりましょう。
また最新の研究では、歯周病予防に有効な乳酸菌も発見されています。
健康な体を維持するためにも、乳酸菌を意識して取り、腸内環境を整えることが大切です。
普段から食生活やストレスをためないライフスタイルを意識し、体の内側からも歯周病を予防していきましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
- facebook
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。