こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

みなさまは肺炎という病気をご存じでしょうか。

「風邪をひいてから咳だけがずっと続く」
「痰を絡んだ咳がなかなか治らない」

そんな経験がある方は、風邪以外の原因も考えられます。

肺炎というと一般的に体力のない高齢者がなるイメージあります。

しかし実は、肺炎は身近に存在し、誰しもがかかる可能性のある病気です。

実は筆者も、社会人のころ風邪をひいてから3週間ほど咳が止まらず、たまらず医療機関を受診したら「肺炎だね」と診断され、びっくりしたことがあります。

肺炎は風邪と見分けのつきにくい症状ですが、病態としては全く違います。

また、一般的に軽い症状のものもあれば、入院が必要とされるほどの重篤な程度のものまでさまざまあります。

肺炎とは、一般の風邪や咳とどのような違いがあるのでしょうか。また、自分でも見分けることができるのでしょうか。

今回は肺炎について、肺炎の咳の特徴や症状、治療法について解説したいと思います。

1.肺炎とは

肺炎

肺炎とは、名前の通り肺という臓器に炎症が起こる病気です。

人の体は、鼻や口から呼吸によって酸素を取り込み、気管や気管支を通り、肺の中の肺胞で酸素と二酸化炭素のガス交換を行っています。

この肺胞になんらかの細菌やウイルスが感染すると肺炎が起こります。

細菌やウイルスは多くはのどや鼻の粘膜から侵入します。

しかしながら、肺には本来、感染を防ぐ機能が備わっています。

そのため、体に吸い込まれた細菌やウイルスなどの微生物は、体の中に一時的に侵入しても体の免疫系が反応して攻撃し、咳や痰とともに排泄される働きがあります。

しかし、なんらかの理由で体の防御機能がしっかり機能しない場合や、一度に大量の細菌やウイルスが侵入し、本来もっている防御機能で防ぎきれない場合、感染性の高い細菌やウイルスが侵入した場合などに肺に炎症が起こります。

2.肺炎の特徴的な症状

肺炎で胸が苦しい女性

肺炎でもっともよくみられる症状は「粘り気の強い黄色~緑色の痰を絡んだ咳」です。
(微生物の種類によっては、喀痰を伴わない場合もあります)

この咳は風邪よりも長い期間続きます。
通常は、高熱を伴いますが、伴わない場合もあります。

また、肺の広い面積が障害されると、酸素飽和度が低下し、呼吸困難、息切れの症状が現れます。
場合によっては、肺の痛みや痰に血が混じると言った症状を伴うこともあります。

2-1.風邪との違い

肺炎と風邪とは似たような症状で見分けることが難しいですが、実際は大きく異なる点があります。

大きな違いは感染する部位です。

空気中の細菌やウイルスの多くはのどや鼻の粘膜から侵入し、感染して炎症を引き起こします。

炎症部位がのどや鼻とよばれる上気道の場合が、急性上気道炎(風邪を含む)です。

さらに細菌やウイルスが鼻やのどを越えて気管支まで到達し、炎症を起こした病気が気管支炎、細菌やウイルスが気管支炎の奥にある肺まで到達し、炎症をおこした状態が肺炎です。

肺炎、風邪、気管支炎はそれぞれ重症度も異なります。

呼吸を行う場所で炎症が起こる肺炎では悪化すると入院が必要となり、命にかかわるレベルになることもあるため、注意が必要です。

風邪や気管支炎との違い、肺炎の特徴的な症状について下の表にまとめました。

肺炎・風邪・気管支炎の症状

2-2.肺炎に似た疾患

肺炎 ぜんそくで咳がひどい女性

咳が3週間以上続く場合、肺炎や風邪以外の疾患である可能性もあります。

1.咳ぜんそく

長引く咳の疾患として、咳ぜんそくがあります。

咳ぜんそくは、肺ではなく気道の粘膜に炎症が起こっている状態です。

気管支喘息と同様に「気道過敏性」と言って、気管支が過敏な状態により、少しの刺激で空咳がでます。しかし、気管支喘息とは違い、気道が狭くなることはないため、呼吸困難とはなりません。

多くは、風邪の後に数ヶ月以上咳が長引きます。ホコリ・湯気・冷気・花粉などちょっとした刺激に反応し起こります。

咳ぜんそくは、気管支喘息の前段階の疾患で、3人に1人の割合で気管支喘息に移行するといわれています。

2.COPD

咳が長引く疾患として外せないのがCOPDです。

COPDは慢性閉塞性肺疾患と呼ばれ、タバコの煙など有害物質を吸引することで肺に炎症がおこる病気です。

COPDは症状が悪化すると、酸素吸入が必要になり、肺機能が著しく低下し生死にかかわるような疾患です。

喫煙歴が長く、1日に吸う本数が多ければ多いほど重症化する傾向にあります。

タバコ

3.肺炎の種類

肺炎は、肺炎を引き起こした環境や条件により、大きく「市中肺炎」「院内肺炎」「誤嚥性肺炎」の3つに分けられます。

これは肺炎の種類によって、原因となる菌やウイルスが異なることが多く、治療の方向性や薬の選択を決定する上で大切な情報です。

3-1.市中肺炎

一般的な生活をする中で起こした肺炎を「市中肺炎」と呼びます。

市中肺炎は、重症度は様々で、「歩く」肺炎(walking pneumonia)と呼ばれるほど軽症な方もみられます。

入院ケースから、日常生活に従事できるようなケースもみられます。

3-2.院内肺炎

入院中の病院内で起こした肺炎は「院内肺炎」と呼ばれます。

院内肺炎では、一般の生活では出会わないような菌や抗菌薬に耐性をもつ菌による肺炎の場合があります。

耐性菌の場合は、使用する抗生物質も市中肺炎と違う耐性菌にも効果を発揮するものを使用します。

3-3.誤嚥性肺炎

誤嚥とは、口から食べ物を飲み込み食道に運ばれるはずのものが、誤って気管にはいってしまうことをいいます。

誤嚥性肺炎とは、その嚥下機能(食べ物や唾液を飲み込む力)の低下のために唾液や食べ物などと一緒に細菌やウイルスも気道に入ってしまうことで引き起こされる肺炎です。

誤嚥性肺炎は通常の生活ではあまりみられませんが、嚥下機能が低下した高齢者や、脳卒中などの疾患による嚥下機能の低下、アルコールなどにより意識レベルが低下したような人にみられます。

4.肺炎の原因となる微生物

細菌 ウイルス

肺炎の原因となる代表的な微生物は大きくは「細菌」「ウイルス」「マイコプラズマ」に分けられます。

4-1.細菌

肺炎の代表的な原因微生物の一つです。

細菌による炎症が肺で起こっている場合、通常は抗生物質により治療を行います。

原因菌はさまざまありますが、もっとも多い原因細菌としては肺炎球菌です。

4-2.ウイルス

肺炎はウイルスにより起こることもあります。

ウイルスによる肺炎の場合、抗菌薬が効きません。

とくに毎年流行するインフルエンザにかかると、体力の低下などにより肺炎につながるケースがみられます。新型コロナウイルスが重症化するケースでは、肺炎を伴います。

4-3.マイコプラズマ

細菌でもウイルスでもないマイコプラズマという病原性微生物がいます。

マイコプラズマは数年に1度大流行するといわれており、潜伏期間が4週間と長く、発症すると高熱が出てその後、乾いた咳が1カ月以上続くことがあるといわれています。

4-4.その他の肺炎

細菌やウイルスやマイコプラズマでもない肺炎、アレルギーによる肺炎があります。

過敏性肺炎と呼ばれ、カビなどに対して肺が過剰反応するため、その後も同じものを吸入した場合に肺胞に炎症が引き起こされます。

5.肺炎の検査

肺炎検査 聴診器

・聴診
・胸部X線検査

肺炎かどうかを診断するためには、肺炎以外の疾患との鑑別が必要です。

まずは聴診により胸の音を聴いて肺炎特有の音がきこえるか確認します。

また、胸部X線検査において肺炎の診断が確定します。

・微生物を特定するための検査

入院が必要になるほど肺炎が悪化した場合、痰、血液をとり原因となった微生物を特定するための検査が行われます。
培養検査や顕微鏡による検査で、細菌の種類や薬剤の感受性を確認します。

肺炎を起している微生物をきちんと特定し、その微生物に合った抗生剤を使用することが大切になります。

6.肺炎の治療

肺炎の基本的な治療は薬物治療です。

原因になる微生物が、細菌性の場合は抗生物質、ウイルスの場合は抗ウイルス薬など、原因の微生物に対しての薬剤が使用されます。

6-1.抗生物質(抗菌薬)・抗ウイルス薬・抗真菌薬

抗生物質は、肺炎の種類や原因菌・患者の年齢・免疫機能が低下しているのか・肺炎の重症度など総合的にみて判断します。

抗菌薬には飲み薬と点滴があり、患者が薬を服用できるか、重症度によって選択されます。

また、肺炎の原因菌が細菌ではなくウイルスや真菌の可能性がある場合は、抗ウイルス、抗真菌薬を使用します。

6-2.重症の場合は酸素の投与なども  

パルスオキシメーター

肺炎の重症度は、年齢・脱水の有無・酸素状態・意識障害・血圧低下など総合的に状態を確認し、呼吸がしやすくなるように気道の分泌物(痰など)をスムーズに取り除く薬や、血液中の酸素レベルが低い場合は酸素が投与されます。

7.肺炎を予防するためには

肺炎の主な原因は細菌やウイルスによる感染です。

日頃から感染しないように心がけることが大切です。

7-1.感染対策を行う

手洗い

日ごろから感染対策を徹底し、外部からの細菌やウイルスの侵入を防ぐようにしましょう。

帰宅後は必ず手洗い、うがいを行い、風邪などが流行しているときはできるだけ人込みを避けるようにしましょう。マスク着用も効果的です。

食後や寝る前の歯磨きは、口の中を清潔に保つために大切です。

口腔内が不衛生になると風邪や誤嚥性肺炎の原因になるため、口の中は常に清潔を保つように心がけましょう。 

ただし、口腔内の常在細菌は、病原性の微生物の侵入から粘膜を守っています。無闇に殺菌剤入りのオーラルケア用品を使うことはあまりお勧めしません。

1.正しい手洗いを意識する

肺炎を予防するためには、普段から正しい手洗いを行い、細菌やウイルスなどが付着した手指で口や鼻を触らないことが大切です。

また、手洗いは肺炎だけではなく、普段の感染対策としても大切な要素です。

以下に、厚生労働省が勧める手洗い手順を紹介します。きちんと手洗いの手順が守られているか、一度チェックしてみましょう。

<厚生労働省が進める手洗いの手順>
1. 流水で手を濡らし、石鹸をつける
2. 手のひらをよくこすり合わせる
3. 手の甲を伸ばすようにこする
4. 指先、爪の間を念入りにこする
5. 指の間を洗う
6. 親指と手のひらをねじり洗いする
7. 手首も忘れずに洗う

現在、「除菌」や「殺菌」の効果をうたうさまざまな製品が出回っています。

その中でも「殺菌」効果のある石けんは、殺「菌」であるためウイルス対して効果が発揮できないばかりか、手の常在細菌のバランスを崩れさせてしまう原因にもなりかねません。

手の常在細菌は、皮膚の上をベールのように覆い、病原性の微生物の侵入を防いでいます。
通常は、病原性の微生物は、付着しているだけですから、しっかり洗えば流れていきます。

手洗いには通常の石けんを使用し、きちんとした手順で手洗いすることが大切です。

一方、手洗いができない場合は、アルコール消毒剤などを携帯し、しっかり手に刷り込み乾かすことで代用も可能です。

除菌シートなどさまざまな除菌や消毒の製品が市販されていますが、手洗いが基本であることを大切に、目的にあった製品を正しく選び、正しい方法で使用しましょう。

2.口腔ケアは3つのプロセスを意識する

口腔ケアグッズ

肺炎の原因となる微生物は鼻や口から侵入し感染するため、口の中を清潔に保つことは肺炎を予防するためには大切な要素です。

ここでは口腔内を清潔に保つための3つのステップについてご紹介します。

「口腔ケア=歯磨き」と思われがちですが、歯磨きをするだけでは磨き残しが発生すると報告されています。(※日本歯科保存学雑誌48(2):272.2005)

口の中が不衛生であると、肺炎の予防はもちろんのこと、歯周病や口臭の原因にもなりかねません。

まずは以下にご紹介する3つのステップを意識してケアを行いましょう。

<自宅でできる口腔ケア3つのプロセス>
1. ブラッシング:歯磨き
2. フロッシング:歯間ケア
3. イリゲーション:水流洗浄

ブラッシングとは、いわゆる歯ブラシを使用した歯磨きです。

この段階で、4割ほどのプラークは残るといわれています。

さらにデンタルフロスや歯間ブラシを使ったフロッシングを行い、残りのプラークを除きましょう。

それでも1割ほどはプラークが残ると報告されています。3つ目の水流洗浄は高圧洗浄機のようなジェット水流のことを指します。

日本ではまだ馴染みがありませんが、欧米では多くの家庭が取り入れており、おすすめです。

7-2.規則正しい生活を心がける

体の免疫力を健康な状態に維持することは、細菌やウイルスなどの侵入を防ぐことにつながります。
不規則な生活が続くと免疫力が低下してしまいます。
早寝早起きを心がけ、規則的な正しい生活を行うように意識しましょう。適度な運動も効果的です。

なかなか時間が取れない方は、寝る前にストレッチなどを行うだけでも良いでしょう。 

7-3.禁煙する

タバコは肺炎になる発症リスクを高める要因の一つです。

肺炎を予防するためには、まず喫煙習慣をやめ、禁煙できるように努めてみましょう。

自分一人ではなかなか禁煙ができない方は、専門の医療機関にてサポートを受けて禁煙にチャレンジしても良いでしょう。

また、タバコは肺炎だけでなく、あらゆる持病の発症リスクを高める要因ともなっています。 

8.肺炎はかかる前に予防することが大切です

肺炎 病院

肺炎というと高齢者や免疫力が低下した人が発症するイメージがありますが、実は風邪の延長線上にあったり、健康な人でも感染しうる微生物によることがあるため、気づいたら肺炎になっていたというケースも多くみられます。

私たち40~50歳代の女性は仕事、家事、育児、介護となかなか自分の時間をとれる人は多くありません。

ちょっとした風邪や体の不調であれば、「そのうち治るだろう」と様子をみる人も多いのではないでしょうか。

しかし肺炎の場合、治療が遅くなると完治が遅くなり、最悪命を落としかねないケースもあります。

もし痰がからむ咳が長く続くといった場合は、はやめの受診が必要です。

「肺炎は、いまの自分には関係がない」とそう思っていても、誰でもかかる病気です。

まずは肺炎にならないように、規則正しい生活を心がけましょう。私も早寝早起きや毎晩のストレッチなど規則正しい生活を心がけるようになりましたが、風邪をひきにくい体質に変わっただけではなく、自分の体調と対話できる大切な時間であると感じるようになりました。

みなさまも、まずは予防する習慣から身に着けてみてはいかがでしょうか。

これから健やかに日々をすごせるように、自分の体は自分で大切にしていきましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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