こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。

みなさまは、腎盂腎炎といった病気はご存じですか。

ちょっと聞きなれない言葉だな…という方もいるのではないでしょうか。

腎盂腎炎は女性に多い病気であることが知られています。そのため女性は知っておきたい病気の一つでもあります。

筆者が20代の頃に女性の上司から「発熱と背中の激しい痛みで出勤ができない」と連絡を受けたことがあります。診断の結果、腎盂腎炎だったそうで、その時はじめて腎盂腎炎について知りました。

腎盂腎炎は早期に気がつき、きちんと治療すれば治る病気です。

一方で、放っておくと重症化し、命の危険にまで及ぶも恐ろしい病気でもあります。

もし、ご自身やご家族が腎盂腎炎かもしれないと思ったとき、どのように対処すれば良いのでしょうか。

「腎盂腎炎は移るの?」
「腎盂腎炎の原因や症状は?」
「ストレスで腎盂腎炎になるの?」
「一度、腎盂腎炎になると繰り返すのか?」
「腎盂腎炎かどうかのチェック方法はあるのか」
など、疑問が生まれてくるのではないかと思います。

今回は、腎盂腎炎の前触れや腎盂腎炎を予防するための生活上の注意点についてご紹介します。

1. 腎盂(じんう)腎炎とは

腎臓

腎盂(じんう)腎炎とは、腎臓への細菌感染により引き起こされる感染症の一つです。

腎臓は、血液中の老廃物や有害物質をろ過して尿を作る働きがあります。

腎臓の中で作られた尿は、腎臓内の尿を溜める役割の腎盂(じんう)を経て、尿管、膀胱、尿道を通り排泄されます。

この尿の排泄に使われる通り道の尿路には、本来病原性の細菌はいません。

しかし、主にこの尿道の出口から細菌が侵入し、膀胱を経て、尿管を逆行し、腎盂内に細菌が増殖し腎臓にまで炎症が及んだ場合を腎盂腎炎といいます。

2. 腎盂腎炎の原因や特徴

2-1. 特徴1:腎盂腎炎の主な感染経路

臓器

<主な感染経路>
・尿道から細菌が侵入し、膀胱、尿管、腎盂とさかのぼり感染する上行性感染

<まれに起こる原因>
・他の感染部位の細菌が血流にのって腎盂に到達した血行性感染
・リンパ管にのって腎盂に達したリンパ行性感染

<原因菌>
大腸菌(主)、緑膿菌、腸球菌、ブドウ球菌など

腎盂腎炎の原因は、尿道から細菌が侵入し、膀胱に感染し、尿管から腎臓へさかのぼって感染する上行性感染がほとんどです。

細菌が尿道から侵入し、膀胱や腎臓へ細菌が感染したものは、総じて尿路感染症と呼ばれます。

尿路感染症は細菌が感染した部位によって、下部尿路感染症と上部尿路感染症に分かれ、膀胱までの感染症は、下部尿路感染症です。膀胱に起こる感染症が、膀胱炎ですね。

また、細菌が尿管からさかのぼり、腎盂にまで達し、腎臓まで炎症が及んだ感染を腎盂腎炎と呼びます。こちらは、上部尿路感染症です。

多くの場合は、まず、膀胱炎があり、それが悪化すると腎盂腎炎になります。

まれに、他の感染症から感染する血行性感染やリンパ行性感染などがあります。

2-2. 特徴2:単純性腎盂腎炎と複雑性腎盂腎炎に分けられる

腎盂腎炎は基礎疾患の有無により単純性腎盂腎炎、複雑性腎盂腎炎に分けられます。

1. 単純性腎盂腎炎

妊婦

基礎疾患がない場合に起こる腎盂腎炎を単純性腎盂腎炎と呼びます。
一般的に、急性に発症する急性腎盂腎炎の多くは、単純性です。

性的活動期の女性や閉経後の女性に多く発症するといわれています。

理由としては、女性の方が男性に比べ尿道が短く、大腸菌などが潜む肛門と距離が近いことがあげられます。

また、妊娠中の女性においても腎盂腎炎を発症しやすいといわれています。

理由としては子宮が圧迫され、尿の流れが悪くなることから膀胱炎や腎盂腎炎を引き起こすリスクが高まります。

2. 複雑性腎盂腎炎

尿路結石などの尿路通過障害や尿道カテーテルを入れていると、細菌が繁殖する原因になりやすいため、腎盂腎炎が起こることがあります。

この尿道カテーテルを入れている、結石などの尿路障害や糖尿病、ステロイド内服などによる全身性易感染状態などといった、全身に基礎疾患を有する腎盂腎炎を「複雑性腎盂腎炎」と呼びます。

男性患者の場合、一般的には膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症を起こしにくいことから、多くは、複雑性として扱われます。

3. 腎盂腎炎の主な症状

医師

腎盂腎炎は、膀胱炎と比べて重症度が圧倒的に高く、危険な疾患です。

炎症が全身に広がり悪化すると、細菌が血液に侵入し、敗血症と呼ばれる急な血圧の低下や多臓器不全など命の危機にかかわる怖い病気です。

3-1. 膀胱炎症状(排尿時の痛み、頻尿、残尿感、尿の濁り)

腎盂腎炎は膀胱炎と同じ尿の通り道に起こる感染症であるため、膀胱炎をベースにしていることがほとんどであるため、膀胱炎症状である頻尿、排尿痛、残尿感、尿の濁りなどが起こることがあります。

ただし膀胱炎の症状がでる個人差があり、自覚症状がある人もいればない人もいます。

膀胱炎の詳しい症状はこちらをご参照ください。

▼女性の身近な病気「膀胱炎」にかからないための生活習慣9つのポイント
https://wellmethod.jp/cystitis/

3-2. 38℃以上の発熱、全身の倦怠感

発熱

膀胱炎では発熱はありませんが、腎盂腎炎は高熱となるのが特徴です。全身の倦怠感があります。

細菌が腎臓にまで感染した腎盂腎炎は、膀胱炎や尿道炎よりも圧倒的に症状が重いことが多く、震えが止まらないほどの悪寒や高熱が特徴です。

3-3. 背中や腰の痛み

腎臓は、左右の背中側にあり、腎盂腎炎の場合、通常は片方の腎臓に炎症が起こります。

そのため、炎症がある方、左右どちらかの腰痛や背部痛を自覚していることが多いのですが、「腰痛かな?」と勘違いして原因に気づかないこともあります。

3-4. 側腹部の叩打痛(こうだつう)

腎盂腎炎の症状の目安として、炎症を起こした側の腎臓の位置にあたる背中の部分をたたくと痛みが増すというものがあります。

診察にも基本的に用いられます。ただし、叩打痛がないからといって腎盂腎炎を否定できるわけではありません。

3-5. 悪心、嘔吐などの消化器症状

まれに、吐き気や嘔吐などの消化器症状が出ることもあります。

4. 腎盂腎炎の検査や診断

4-1. 尿検査

尿検査

まず尿の状態を検査するために尿検査を行います。

尿の中に細菌が混入しているかの有無、炎症が起きる指標の一つである白血球の数を確認します。

過去に、急性腎盂腎炎や膀胱炎を起こしたことがあれば、尿路感染症が疑われます。

4-2. 血液検査

炎症の状態を調べるために、血液検査を行います。
膀胱炎では、炎症反応はありませんが、腎盂腎炎では炎症反応の上昇が起こります。
また、敗血症が疑われる場合、血液の中に細菌が侵入して感染を起こしていないか調べます。

4-3. 細菌培養検査

腎盂腎炎と診断された場合、感染を起こしている原因菌を特定するために尿から細菌培養検査を行います。

膀胱炎の原因菌は、抗生物質に耐性を持つ場合も多いため、抗生物質の感受性を調べて選択に役立てます。

4-4. 超音波検査、腹部造影CT検査

超音波検査や腹部CTにて、原因となる尿管結石の有無。また、腹部CTにて腎臓に炎症があるかどうかを確認します。

5. 腎盂腎炎の治療方法

5-1. 抗菌薬が第一選択

薬

腎盂腎炎の治療は、抗菌薬を使用して、感染を起こしている細菌を排除することが基本です。

抗菌薬は、まず想定されるさまざまな菌に効果のあるβ-ラクタム系抗菌薬・キノロン系抗菌薬(※)と呼ばれる幅の広い抗菌薬を使います。

しかし、薬剤耐性菌も多いため、細菌培養検査の結果をみて、必要であれば原因菌に合わせて効果のある抗菌薬に変更します。

症状が軽症の場合、内服の抗菌薬を使用することもありますが、多くの場合は入院治療が必要となります。中等度あるいは重症になると点滴を使用します。

治療期間は、概ね1週間程度から長い場合は2週間を超える場合もあります。
複雑性尿路感染症は慢性化しやすく、耐性菌が原因であることも多いため、治療に難渋することがあります。

尿に細菌が混ざっていても、膀胱炎や腎盂腎炎など炎症を起こしていなければ、無症候性の細菌尿として、抗菌薬治療の適応はされていません。

膀胱炎の場合も、必ずしも抗生物質が必要なわけではありませんが、腎盂腎炎は重症度が高いため、基本的には抗生物質の治療が必要になります。

(※)妊婦の腎盂腎炎の場合は、β-ラクタム系やキノロン系抗菌薬ではない別の抗菌薬を使用することがあります。

5-2. 抗菌薬はしっかり飲み切りましょう

抗菌薬による治療を行う場合、指定された期間と量、回数に従い、きちんと服用しなければ十分な効果は得られません。

また、排尿痛や背中の痛みがとれたからといって、自己判断で薬の服用を止めてしまうと、体の中に残った菌が再び増えてしまい感染を繰り返してしまうことがあり危険です。

腎盂腎炎を繰り返すと、抗菌薬を多用することになり、耐性菌の出現で治りにくくなったり、一時的な症状が慢性的に発症することが多くなります。

そのため、医師から処方された薬は、説明を受けた期間を必ず守り、きちんと飲み切るようにしましょう。

6. 注意! こんな前触れがあったら腎盂腎炎の可能性かも

腎盂腎炎による背中の痛み

・膀胱炎症状(排尿時の痛み、頻尿、尿の濁り)
・発熱、悪寒
・腰や背中の痛み

腎盂腎炎は、重症度が高い病気です。

腎盂腎炎になり、症状が悪化すると細菌が血液に侵入し、発症する敗血症などといった命が危険な状態に陥ることがあります。

そのため、腎盂腎炎にならないためには、まず膀胱炎の段階で放置しないことです。

膀胱炎の症状としては排尿時の痛み、頻尿、尿の濁りなどがあります。
トイレを我慢せず、水分を十分にとって症状が改善する場合もありますが、長期間長引く場合は、病院での抗生物質治療が必要になることもあります。

発熱や悪寒、腰や背中の痛みがふたたび強くなるようであれば、腎盂腎炎にまで悪化している可能性があります。

腎盂腎炎を放置すると危険ですから、たかが膀胱炎と放置せず、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

7. 腎盂腎炎にならないための予防法

7-1. 陰部を清潔に保つ

腎盂腎炎は、本来病原性の細菌がいない膀胱に細菌が侵入し、増殖した細菌が腎臓にまで達することで起こります。

まずは膀胱に細菌が侵入しないよう、陰部を清潔に保つことが大切です。

こまめなシャワーや入浴は効果的です。

また、生理用のナプキンやおりものシートも長期間つけることで雑菌が繁殖する原因になるため、こまめに取り換えることが重要です。

7-2. 水分を多くとる

水分を摂る女性

細菌の侵入を防ぐためにも、尿道にいる菌を尿で流して外に排泄することも大切です。

尿量を確保するためにも、日頃から水分を多めにとるように心がけましょう。

7-3. トイレを我慢しない

トイレを我慢すると細菌が増殖する原因となるため、トイレを我慢しないようにしましょう。

7-4. 性交後の排尿

性行為の後は、膀胱内に細菌が侵入するリスクが高いため、性交後は排尿することで感染を予防することができます。

8. 腎盂腎炎にならないためには、日頃の心がけから

腎盂腎炎は、日頃から尿道からの細菌の感染を防ぎ、発症させないことが大切です。

私たち40~50代の女性は仕事や介護・家事などに手がかかり、自分のことはどうしても後回しにしがちです。

「仕事中はトイレに行きづらい」「少しの尿意であれば我慢して、家事を優先してしまう」という方も多いのではないでしょうか。

筆者自身も、忙しいときこそ「自分の体を大切にする」ということを心に留め、尿意を感じたらこまめにトイレにいくようにしています。

日常のちょっとした心掛けが、体の健康につながります。

毎日を健やかに過ごしていくためにも、みなさまも意識してみてはいかがでしょうか。

また、少しでも残尿感や痛みなど、いつもと違うなぁ…と感じるがあれば、我慢せずに内科または泌尿器科を受診しましょう。

デリケートな部分だからこそ、毎日のちょっとした心掛けで、体を大切にしていきたいものですね。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

和重 景

【ライター】

主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。

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