もう炭水化物は抜かなくていい! ダイエットの味方「レジスタントスターチ」の魅力
こんにちは。WELLMETHODライターの廣江です。
皆さまは「健康維持のために炭水化物を減らしましょう」などと耳にしたことはありませんか。
近年、糖質制限ダイエットや低炭水化物ダイエットなどが流行し、ご飯や麺類などの主食を控える人が多くなりました。
実は、筆者も年齢を重ねるにつれて痩せにくくなった体が気になり、食事量を減らしてみたり炭水化物を控えてみようかなと考えていた時期がありました。
しかし、最近の研究では、炭水化物の中には消化酵素に負けず腸まで届く「レジスタントスターチ」という成分が含まれることが分かってきました。
レジスタントスターチは腸内環境を整え、体の健康維持や美容に効果があるとして、今大変注目されている成分です。
炭水化物が健康や美容にも良いとは一体どういうことでしょうか。今回はこの新常識である「レジスタントスターチ」について詳しくご紹介したいと思います。
https://wellmethod.jp/hiyagohan_diet/
目次
1.日本人は炭水化物摂取量が低下している
炭水化物は、私たちの基本となる必須栄養素の一つです。
炭水化物に含まれる糖質は全身の細胞のエネルギー源となる重要な役割を担っています。
近年の日本では低炭水化物ダイエットや糖質制限ダイエットが注目されるようになり、米や麦・イモなどの炭水化物を積極的に摂らない人が多くなりました。
全身の細胞は、糖質の他にも、脂質やタンパク質をエネルギー源とすることもでき、特に、糖質を制限することで脂質由来のケトン体をエネルギー源として燃焼し、効率よく脂肪燃焼し、エネルギーに変えていこうと言うダイエット法です。
ただし、誤った方法で、単純に炭水化物をカットしてしまうと、大きな弊害があります。
それは、食物繊維の摂取量が減ってしまうことです。
炭水化物には食物繊維も含まれており、近年の日本における食物繊維の摂取量低下は、この炭水化物の摂取量の低下が関係しているともいわれています。
(厚生労働省の食物繊維の摂取基準は、男性が1日20g以上、女性が18g以上(いずれも18~60歳まで)と示されているが、2014年国民健康・栄養調査結果によると、成人日本人の実際の摂取量は年代により12.8g~16.4g(男女合わせた平均値)と、どの年齢でも目標量を下回っていることが明らかになっている)
そして、この炭水化物に含まれる食物繊維こそが、今話題の「レジスタントスターチ」と呼ばれる栄養素です。
レジスタントスターチは、便通を改善し、便秘・腸内環境の改善・糖尿病や高血圧などの生活習慣病予防、免疫機能の調整、美肌などの美容につながるものとして、期待が高まっています。
1-1.新常識「レジスタントスターチ」とは
レジスタントスターチ(Resistant Starch)とは別名「難消化性デンプン」のことをいいます。
これまで、炭水化物に含まれるデンプンはすべて人の消化酵素により分解され、吸収しやすいブドウ糖になり、小腸より吸収されてエネルギー源に代わるものだと考えらえていました。
しかし、最近の研究により、摂取しても消化・吸収されずに大腸にまで到達するデンプンがあることが分かりました。
これが「レジスタントスターチ」とよばれるデンプンです。
このレジスタントスターチは普段私達が食べている米など穀物類・イモ類・豆類などに多く含まれています。
お腹の調子を整える働きがあるといわれ、腸活やメタボ対策、肌など美容効果に対しても有効であると期待されています。
2.腸内環境を整える腸活とは
腸内にはさまざま常在細菌が存在し、体に良い効果をもたらす「有用菌」、増えすぎると体に良くない影響を与える「悪玉菌」、優勢のほうに味方する「日和見菌」などが腸内フローラ(細菌の集団)を形成しています。
腸内フローラにおいて、体に良い働きをする有用菌が優位になると、便通が改善し、免疫力の強化や肌状態が安定するなど健康維持や美容にプラスの効果があると考えられています。
一方で、悪玉菌が増えすぎると下痢や便秘など便通の悪化だけではなく、免疫力低下や肌荒れなど健康や美容の面でマイナスなる影響があります。
ただし、悪玉菌とよばれる細菌であっても、適正なバランスを保っていれば必要な働きを担っていると考えられているため、日頃から腸活など意識し、有用菌が優位な状態になるように腸内細菌のバランスを保てるように心がけていくことが大切です。
3.消化に“抵抗”するレジスタントスターチの働き
3-1.食物繊維と似た働き
小腸で消化・吸収されなかったでん粉、すなわちレジスタントスターチは、化学的な性質や難消化性の観点から、消化酵素に影響を受けない成分として有名な「食物繊維」の役割ととても似た働きをすると考えられています。
食物繊維とは、水に溶ける「水溶性食物繊維」、水に溶けない「非水溶性食物繊維」の2つに分けられ、それぞれ腸内での働き方は異なります。
3-1-1.水溶性食物繊維の役割
小腸で消化・吸収を受けない水溶性食物繊維は、大腸で有用菌のエサとして働きます。
有用菌が水溶性食物繊維をエサとして食べると、酢酸・酪酸・プロピオン酸などといった短鎖脂肪酸とよばれる有機酸を生成します。
この有機酸こそが、腸内バランスを良好に保ち、免疫系や代謝系・脳機能など人の健康維持に役立つ働きをすると考えられています。
水溶性食物繊維が多く含まれる食品は、果物(特にリンゴや柑橘類・プルーンなど)、イモ類・野菜類(キャベツや大根)、海藻類(昆布やワカメ)、穀類(麦類)、豆類などがあります。
3-1-2.非水溶性食物繊維の役割
非水溶性食物繊維は、水溶性食物繊維に比べ有用菌のエサとしての役割はあまりありません。
しかし、便のかさ増し効果や、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発化させ排便を促すなど便秘を解消させる効果があり、腸内バランスを整える上で大切な役割を担っています。
非水溶性食物繊維が多く含まれる食品として、穀物類(白米より玄米など未精製のものに多く含まれる)、豆類、野菜類(ゴボウなど)、微細藻類(クロレラ・スピルリナ)などがあげられます。
食物繊維は水溶性か非水溶性かで役割が違いますが、レジスタントスターチは水溶性食物繊維のもつ「プレバイオティクスとしての効果」や非水溶性食物繊維のもつ「便のかさを増して、腸の蠕動運動を活発化させる特徴」などの両者の特徴をほぼ網羅しているといわれており、私たちの体に対し健康や美容面でプラスの効果があるのではと期待されています。
3-2.腸内細菌の有用菌の増殖を助ける
レジスタントスターチは水溶性食物繊維と同様、ビフィズス菌や酪酸菌などの有用菌の増殖を促し、腸内環境を整える効果があります。
また、悪玉菌などの腸内細菌により生成されるアンモニアやインドール 、フェノール、2次胆汁酸などの毒素(体にとって良くないもの)に対しては、レジスタントスターチを摂取することで発生量を低下させる効果もあり、腸内環境のバランスを良好な状態に保つ働きがあります。
3-3.有機酸(短鎖脂肪酸)の生成を促し、腸内環境を整える
レジスタントスターチは、常在細菌の有用菌のエサとしても働きます。
有用菌によりレジスタントスターチが分解され発酵を受けると、プロピオン酸、酪酸、乳酸等の短鎖脂肪酸が産生されます。
この短鎖脂肪酸は、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発化させ、腸内環境を酸性に傾けて悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を改善するためには欠かせない役割を担っています。
▼【医師が解説】肌だけじゃなく腸内環境も「弱酸性」が健康の秘訣
https://wellmethod.jp/intestinal_environment/
3-3-1.有機酸の一つ、 酪酸は大腸疾患にも有効
短鎖脂肪酸の中でも酪酸は、大腸にとって主要なエネルギー源であり、正常な細胞を形成するためには必要な役割を担う大変重要な働きをしているといわれています。
また、酪酸は大腸の疾患や免疫系に関しても有用に働くことがわかっており、注目されています。
https://wellmethod.jp/short_chain_fatty_acids/
4.レジスタントスターチに期待される4つの効果
レジスタントスターチは、食物繊維のような腸内環境の改善の効果の他に以下のような効果があるといわれています。
4-1.食後の血糖値の上昇を抑制する効果
レジスタントスターチはほとんど消化されず腸内を移動するため、血糖値の上昇をゆるやかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があると考えられています。
4-2.便通の改善効果
レジスタントスターチにより便のかさが増え、有用菌により産生された短鎖脂肪酸により腸の蠕動運動が活発化することで便秘などの便通改善効果が期待できます。
4-3.美肌などエイジングケア効果
肌の健康は腸内環境と密接に関係しています。腸内環境が整うと、悪玉菌の活動が減るため毒素が体に回りにくくなります(エイジングケア効果)。そのため、腸内環境を整えることは美肌効果においても期待ができるようになります。
4-4.体重増加抑制(ダイエット効果)
脂肪細胞の肥大化を防ぎ、エネルギー代謝を高めて肥満を予防します。
また、食事由来のコレステロールの排泄を促します。
他にも免疫機能の調整や免疫力の強化などがあるといわれており、レジスタントスターチは腸内環境だけではなく人の健康維持そのものに重要な役割を果たすものであると考えられています。
5.レジスタントスターチを含む食品
レジスタントスターチは、デンプン質を豊富に含む米やトウモロコシ、ジャガイモ等の以下の食品に多く含まれています。
・インゲン豆
・トウモロコシ
・大麦
・白米
・全粒小麦
・ジャガイモ
・タピオカ
白米についてですが、残念ながら私たち日本人が好きなもちもちした品種のデンプンはレジスタントスターチになりづらいものです。
タイ米やインディカ米など、ポソポソしたお米や、コシヒカリ系よりもササニシキ系のあっさりした品種の方を選ぶ方が、レジスタントスターチの効果を得られやすいと言えます。
5-1.(摂取ポイント1)出来たてより、冷めた状態をチョイス
レジスタントスターチは消化されにくい成分ですが、熱を加えると構造が変化し、消化されやすくなり、その後再び冷めると消化されにくい成分に戻るという性質があります。
そのため、加熱調理するような穀物やイモ類は、出来立てを食べるよりも冷めた状態で食べなければ、レジスタントスターチの効果は得られません。
ご飯はおにぎりやお寿司、野菜であればサラダにして食べる方法がおすすめです。
5-2.(摂取ポイント2)プロバイオティクスと合わせたシンバイオティクスで相乗効果を狙う
レジスタントスターチを効果的に摂取するための方法として“シンバイオティクス”といった食事法があります。シンバイオティクスとは、有用菌そのものの数を増やすプロバイオティクスと、有用菌のエサとなるプレバイオティクスを同時に摂取する方法です。
プロバイオティクスとプレバイオティクスの相乗効果は、より効果的な腸内環境改善効果が得られるため、おすすめです。
レジスタントスターチもプレバイオティクスとしての作用があるため、プロバイオティクスと一緒に摂取し、シンバイオティクスの効果を得ることは大切です。
6.レジスタントスターチを意識した食生活で、理想的な肌になりましょう
いかがでしたか。
レジスタントスターチは腸内環境を整えるだけではなく、肌などの美容効果や、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を予防といった健康維持につながる効果も期待される大切な栄養素であることが分かりました。
ダイエットというと、ついカロリーに目にいきがちで、「炭水化物を控えめにすれば良い」と考えてしまう方が多いのではないでしょうか。
筆者自身も今まで炭水化物=エネルギー源で、できるだけ控えよう、なんて思っていたため、この話を知ったときは目から鱗でした。
またこのレジスタントスターチを多く含む食品は、私たちに馴染みがある日本食に多いことで、和食の大切さを改めて再認識しました。
主食はパンよりもできるだけ米にする、出来立てよりも少し時間をおいて少し冷めた状態で食べる。
ご自身にとって、できることから少しずつ食生活を改善・実践してみましょう。
正しい食生活を通し、改めて自分の体の健康について考えてみることで、私たちの未来が輝ける日々になりますように。ハツラツした毎日をすごしましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか