皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

夜、寝ようとしてウトウトし始めると、脚に虫が這ったようにむずむずして眠れない。
そんな奇妙な症状に悩む人が増えています。

私の母も、まだその病名がつかない時代に、症状に悩み、ずっと不眠に苦しんでいました。

「むずむず脚症候群」、現在では、「レストレスレッグ症候群(下肢静止不能症候群)」と呼ばれるこの病態は、原因不明とされていますが、女性に多く、鉄不足などとの関連も指摘されています。

今日は、本人にとって、本当に辛く苦しいながら、他人にはなかなか理解されない、この病態についてお伝えします。

むずむず足症候群の対処法

1. むずむず脚症候群・レストレスレッグ症候群とは

むずむず脚症候群(RLS)は、欧米では、人口の5〜10%の割合で罹患しているとされていますが、日本人は、3〜4%程度とされています。
ただし、潜在患者さんはもっといるのではないかと考えられています。

1-1. むずむず脚症候群(RLS)の典型症状

むずむず脚症候群、レストレスレッグ症候群(RLS)は、下半身の不快な感覚が原因で、制御不能なほどに脚を動かしたい衝動を引き起こす状態です。

1. 夜間に起こる下半身の不快感

活動していたり、脚を動かしていると不快感を感じないのに、座ったり横になったり、特にリラックスしっている夜間を中心に発生します。

その為、寝ようとすると、むずむずと虫が這うような不快感に襲われる為、不眠になり、眠れたとしても眠りが浅く、日中も倦怠感が続き、日常生活に大いに支障をきたすことになります。

足の不快感

2. むずむず脚症候群の不快感表現

むずむず脚症候群(RLS)の人の不快感は、「何とも表現し難い」もので、他人になかなか伝えることができません。

それが、周囲の不理解を引き起こし、本人を余計に苦しめる原因になっています。

敢えて、表現するならば、以下のようになります。

・むずむずする
・虫が這うような
・じんじんする
・ピリピリする
・掻きむしりたいような
・電気が走るような
・ピクピクする
・ほてるような
・針で刺すような

これらが、皮膚表面ではなく、内部の方で起こる感覚があります。
こうした異常な感覚が襲うことで、脚を動かさないではいられない、身の置き所のなさに苦しみます。

足の不快感
3. 不眠症との合併は必須

夕方から夜間を中心に、特にゆったりとリラックスしていると起こるため、ほとんどの患者さんは、不眠症に悩んでいます。

・入眠障害:眠りにつくことができない
・熟眠障害:ぐっすり眠れない
・中途覚醒:途中で起きてしまう
・早朝覚醒:朝早くに起きてしまう
など、いずれのタイプの睡眠障害の原因になります。

睡眠は、生物にとって、最も基本的で最も必要な毎日のセラピーですので、睡眠がとれないことは、心身、脳のバグを引き起こします。

集中力、記憶力、認知力、行動力、判断力など、あらゆる脳機能を低下させ、活動レベルが低下し、体が重たすぎて動かせず、仕事上でもミスが増え、心はうつうつとし、何もかもが回らなくなってしまいます。

周囲の人に、サボっているとか、だらしない、能力がないなどと誤解されがちで、理解されないことが本人をますます追い詰めます。

足が痛い4. 異常感覚は脚以外にも

人によっては、下肢以外の、腰や背中、腕などにも同様の異常感覚が現れることがあります。
その為に、脚や手を動かしたり、擦り合わせたりしないと落ち着かず、常に動いていなければなりません。

1-2. むずむず脚症候群の診断は?

最近はようやく、この病態に病名がつき、医師の間でも、この病名の認知が拡大してきたとは言え、まだまだマイナーであるために、一般的な内科では診断がつかなかったり、医師に理解してもらえなかったりすることも稀ではありません。

むずむず脚症候群を疑う場合、神経に伴う疾患であることから神経内科や、睡眠障害を伴うことから精神科で診断を行います。

むずむず脚症候群は、問診や自覚症状についての質問票から診断を行います。

むずむず足症候群の診断

1. 4つの診断基準

1.  下肢を中心とした異常感覚と脚を動かしたいという強い欲求がある
2. 
安静にしている状態で始まる
3.  脚を動かすことにより症状が消失または緩和する
4.  症状が現れやすい時間帯がある(昼間よりも夕方、夜間の方が増強する)

これに加えて、睡眠の深さや睡眠中の筋肉の動きの測定を行う睡眠時ポリグラフィなどの検査を行う場合もあります。

1-3. 発症しやすい年齢や性差は?

むずむず脚症候群(RLS)は、中年以降に多く、男性よりも女性に1.5倍多いのが特徴です。

一般的に年齢とともに悪化する傾向にあります。
症状の重症度は変動するのが一般的で、時々、症状が消えてから、また戻ってくることもあります。

女性に多い原因として、月経による鉄の喪失に伴う鉄欠乏との関連が指摘されています。
貧血と診断されてない場合でも、潜在性の鉄欠乏(かくれ貧血)は、むずむず脚症候群( RLS)のリスクになります。

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診断

1-4. むずむず脚症候群の原因は?

はっきりとした特定の原因は明らかになっていない一方で、神経伝達物質の一種で、筋肉の動きを制御するメッセージを送信するドーパミンの機能障害と鉄不足が原因ではないかと考えられています。

1. ドーパミンと運動機能

神経伝達物質のうち、ドーパミンは、「幸福感」「集中力」「やる気」などを生み出すことが知られていますが、主な働きとして、筋肉の円滑な運動にも大いに関係しています。

ドーパミンが欠乏した疾患の代表は、パーキンソン病です。

パーキンソン病では、ドーパミンの分泌低下に伴って、運動症状として、「筋固縮(筋肉が収縮して固まってしまう)」「無動(動けない)」「振戦(震え)」などの典型症状が起こります。

2. ドーパミンと鉄不足

そして、ドーパミンの合成には、鉄を含めた栄養素が不可欠です。
ドーパミンの原材料は、食品のタンパク質です。

それを胃酸で分解し、消化し、アミノ酸のうち、Lフェニルアラニンになります。
それから、酵素の働きを経て、ドーパミンが合成されるのですが、酵素が機能する為に不可欠なのが、鉄。そしてビタミンB群のうち、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6になります。

特に、月経がある女性の多くは、潜在的な鉄不足を起こしやすい為、ドーパミン分泌が低下しやすくなります。

ドーパミン だけでなく、神経伝達物質のうち、精神の安定と抑うつの予防に欠かせないセロトニンや睡眠ホルモン・メラトニンの合成のためにも、同様に鉄やビタミンB群が不可欠になります。

鉄不足が原因で、ドーパミンが減少している場合、抑うつや不眠なども同様に起こしやすい状態になっていると言えます。

貧血

3. 遺伝的な要因

患者のおよそ3分の1では家族歴があるとされ、常染色体優性遺伝と考えられています。
特に、40歳より前に発症する場合は、遺伝的な要因の可能性もあります。

日本人の遺伝子との関連についてはまだ研究途上ですが、中国やヨーロッパなどでは関連する遺伝子がいくつか特定されています。

4. 妊娠期は要注意

妊娠やホルモンの変化により、一時的にむずむず脚症候群( RLS)が起きたり、症状が悪化することがあります。妊娠中に起きた場合、産後には改善することが一般的です。

妊娠中は、女性のライフステージにおいて、鉄が最も不足する時期になります。

妊婦

5. 更年期も無縁ではない

一般的に、月経量が減り、鉄不足が解消されてくる更年期から閉経後には、鉄不足由来のむずむず脚症候群(RLS)は軽減される傾向があります。
ただし、更年期には、月経量が減るだけでなく、女性ホルモンのアンバランスから月経量が逆に増えてしまい、鉄不足が悪化する場合もあります。
同時に、セロトニン分泌も減りやすく、うつ病や不眠症も合併しやすくなります。

この場合は、鉄を補給しながら、更年期を乗り切ることが必要です。

むずむず脚症候群(RLS)は、中年以降に起こりやすいため、体の変化を「更年期障害かな?」と勘違いしてしまうケースもあるようです。もし、典型症状に当てはまる場合は、むずむず脚症候群(RLS)を疑ってみましょう。

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1-5. その他、リスク因子となるのは?

その他のリスク因子とされているものもあります。

・末梢神経障害・・・糖尿病やアルコール依存症などの慢性疾患で、末梢神経障害がある場合など
・脊髄の損傷・・・脊髄の損傷やけがによる脊髄の病変や脊髄ブロックなどの麻酔後
・腎不全
・慢性関節リウマチ
・パーキンソン病
・加齢
・喫煙
・肥満
・運動不足

基礎疾患がある場合は、基礎疾患の治療が第一になります。

しかし、多くは、これと言って基礎疾患がないものですが、この中にも栄養不足などの隠れた要因が含まれていると考えられています。

2. むずむず脚症候群の治療やセルフケア

むずむず脚症候群を疑う場合に、まず、基礎疾患がないか、リスクとなる要因がないかを探し、それを改善するアプローチを行います。

セルフケアやライフスタイルの改善を行い、改善がない場合は、薬物治療も行われます。

2-1. 家庭でできるセルフケアとライフスタイル改善

自宅でできる改善方法

1. 鉄不足はまず改善を

まず、鉄不足は、必ず解消すべきです。

平成18年の国民健康・栄養調査によると、20〜49歳までの閉経前の女性では、69.5%もの人が貯蔵鉄・フェリチンが30ng/ml未満の重度のかくれ貧血と言われています。
このうち、約30%は10ng/ml未満という枯渇状態であり、むずむず脚症候群のリスクにも十分になり得る状態です。

はっきりとした「鉄欠乏性貧血」と診断される状態であれば、医療機関でも診断、治療が可能ですが、貧血の手前の状態でありながら、体内の貯蔵鉄、フェリチンが枯渇した「かくれ貧血」であれば、十分な診断、治療が行われない場合もあります。

以下の記事に詳しく解説していますので、月経のある女性でむずむず脚症候群を疑う場合は、まず、鉄不足がないかどうかを確認して、対処してください。

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その他、家庭でできるセルフケアについては、むずむず脚症候群の専門家と専門チームが指導にあたる、アメリカのMayoクリニックの方法を参考にお伝えしましょう。

2. お風呂やマッサージ

血流を改善するために、お風呂やマッサージが推奨されています。
温かいお風呂につかり、足をマッサージすると、筋肉がリラックスできます。

入浴

3. 温感・冷感交互のパック

温める温感と冷やす冷感で交互に刺激することで、むずむず脚の症状が改善することがあります。
ホットタオルで温めた後に、冷たく冷やしたタオルで冷やすことを交互に行う方法などがあります。

4. 質の良い睡眠の確保

症状が重度の場合は、症状自体が不眠の原因になるため、「質の良い睡眠を確保しましょう」と指導しても、「それができないから辛いんです」という言葉が返ってきます。

重度の場合は、睡眠剤などを処方して、まず眠りを第一に確保する必要があります。

軽度から中等度で、毎日症状がない場合には、睡眠不足や睡眠環境が悪化要因になります。

適温が保たれ、静かで快適な睡眠環境整え、就寝し、毎日同じ時間に起床して、睡眠リズムを作ること。また、少なくとも7時間は睡眠をとることが推奨されています。

睡眠

5. 適度な運動

適度で定期的な運動によって、症状が緩和される場合があります。
逆に、過度の運動や夜間の運動によって、症状が悪化する場合もあります。

夕方までの適度な有酸素運動が勧められています。

6. 避けるべきドリンク

カフェインを避けることで、症状が緩和することがあります。
チョコレート、コーヒー、緑茶、エナジードリンクなどのカフェインを含む飲食物を数週間は避けて、効果があるか確認しましょう。

7. 弾性ストッキングの着用

むずむず脚症候群の人は、下肢の血流が悪く、静脈瘤を合併することがあります。
こうしたケースでは、適度に圧のかかる弾性ストッキングを履くことで、症状が緩和する場合があります。

医療用のものを正しく着用することが望ましいため、調剤薬局や医師に相談してください。

ストッキングを着用した足

2-2. 薬物治療の選択

セルフケアや非薬物治療で改善しない場合は、薬物治療が検討されますが、一長一短です。
根治治療となるものはなく、基本的には対症療法ですが、症状の劇的な改善につながるため、患者さんの苦痛の改善になります。

・ドーパミン作動薬
パーキンソン病の治療に使われる薬剤。
ドーパミンアゴニスト、レボドパ製剤などがあります。
長期の投与で効果が減弱しやすいことなどが問題になります。

・ガバペンチンエナカルビル(一般名)
興奮性神経伝達物質の遊離を抑制することで、 足の異常感覚をおさえます。
ドーパミン作動薬が無効であったり、使用できない場合に使います。

・ベンゾジアゼピン系薬剤
てんかんに処方される薬剤ですが、軽症から中等症で使用されます。

・オピオイド
リン酸コデインが使用されますが、早期に効果がなくなりやすいことと依存性が問題になります。

これに加え、不眠の場合には、睡眠薬も処方されます。
まずは、睡眠を確保して、生活を取り戻すことが大切です。

健康的な生活

2-3. 周りの人に症状や情報を共有する

最後に、とても大切なことは、症状を一人で抱え込まないことです。

なかなか理解されない病態ですが、慢性的であるため、症状と長期に付き合うことになるケースが多いものです。
生活の質が低下しやすく、日常生活や仕事にも支障が出るため、周りのサポートが必須です。

むずむず脚症候群についての情報サイトを共有して、自分自身に起きている症状が、決して「気のせい」でも「精神的なもの」でもなく、サボっているわけではないということをわかってもらいましょう。

家族や友人、仕事仲間の理解が得られると、脚をそわそわ動かしたり、やたらに手足を擦ったりする行為や、椅子にずっと座っていることがとても辛いということを受け入れてもらいやすくなるでしょう。

私自身も、母がこの症状に苦しんでいたのは、私が小学校3年生くらいからのことでした。当然、私も理解できませんし、父も理解ができず、この当時は、病院でも診断がつかなかったために「精神的な病」などと医者に言われて、母は毎晩泣いていました。

体の内側の症状の辛さは、本人にしか感じられませんが、知識を持つことで周りに受け入れる環境ができることで、生活の質が全く変わります。

この記事も、ご自身の理解だけでなく、周囲の方々の理解に繋がればと願っています。

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医師

桐村 里紗

【総合監修医】
tenrai株式会社代表取締役医師
愛媛大学医学部医学科卒。
臨床現場において、生活習慣病から在宅医療、分子栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、ヘルスケアの「意味」を再定義し、様々なメディアでの発信やプロダクト監修を行っている。
ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の化学』(光文社新書)ほか多数。

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