早期診断が大切! ゆらぎ世代に多い「関節リウマチ」の治療法と更年期の関節症状
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
皆さまは、関節リウマチという病気をご存じですか?
詳しい症状はわからないが名前は聞いたことがあるという方が多いかもしれません。
女性は更年期に入ると、体のあちらこちらに不調がでたりしますよね。
更年期に入った40~50代の私たち女性の中で知っておきたい病気の一つに、関節に痛みがでる「関節リウマチ」があります。
「関節リウマチ」はあまりなじみのない病気だな…と思う方もいるかもしれません。
ですが、関節リウマチは更年期世代以降の女性に起こりやすく、推定患者数は70万人ともいわれており、意外と身近な病気でもあります。
筆者の周りにも、関節リウマチで通院している人が何人かいますが、思えば更年期を過ぎたあたりから、増えたように思います。
筆者自身も40代をすぎ更年期に入った頃、心当たりがないのに、急に手首の関節に痛みを感じる時期があり「リウマチかもしれない」と急に不安になったこともありますし、同年代の友人との会話で「手首に違和感があって…」「肩の関節が痛い」なんて話をよく耳にするようになりました。
そんな関節リウマチですが、治療しないとどうなるのでしょうか。
症状や原因・最新の治療方法、治療薬など、さまざまなことが気になりますよね。
今回は、関節リウマチと更年期の女性の体の関係についてご紹介したいと思います。
目次
1.関節リウマチとは
関節リウマチとは、全身の炎症性自己免疫疾患で、膠原病(※)の代表的な疾患の一つで体の免疫の異常によって全身に炎症が起こります。
関節リウマチの場合、関節滑膜の炎症が起こり、進行すると関節が破壊されて、手指・手・肘・肩・足・膝・股などの関節が腫れて痛みや障害を引き起こします。
(※)膠原病(こうげんびょう)とは 膠原病とは、皮膚や内臓の結合組織(いろいろな組織の間にあるコラーゲン線維などからなる部分)や血管に炎症・変性を起こし、さまざまな臓器に炎症を起こす病気の総称です。 これら膠原病に共通する症状として、発熱・関節炎・全身倦怠感などの全身症状、皮膚症状、さまざまな内臓への症状など多くの臓器に影響があります。 |
1-1.関節リウマチが発症しやすい年齢・性別・患者数
関節リウマチの好発発症年齢は40~60歳であり、関節リウマチの男女比は3:7程度で女性が多いとされています。
日本には、70万人余りの患者がいると推測されています。
参考)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-10.pdf
特に、好発年齢である更年期の女性は、女性ホルモンの低下による関節症を引き起こしやすく、関節リウマチと鑑別した上で慎重に診断・治療することが必要です。
2.関節リウマチの発症する原因とは?
関節リウマチの原因となる体の免疫異常のメカニズムについては完全に明らかにはされていません。
しかし近年では「遺伝的要因」「感染症」「腸内細菌の異常」「環境因子」などの関係が指摘されています。
最近では、「エストロゲンの低下」が、免疫の暴走を引き起こし、関節リウマチやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患の発症を促進する要因になっている可能性も指摘されています。
これらの原因が相互に作用しあい、関節リウマチの発症に関連すると言われています。
詳しくは4章にて後述いたします。
2-1.遺伝的要因
関節リウマチは遺伝のみが関連するわけではありませんが、なりやすい体質は遺伝します。
関節リウマチを引き起こしやすい要因の一つに、HLA-DR4という遺伝的な因子があります。
HLAとは(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)という白血球を含む人の全身の組織の特徴を現す型で、HLA-DR4という型を持っていると、関節リウマチになりやすいと考えられています。
患者さんの約70%がHLA-DR4を持っているとされています。
2-2.「細菌感染」「ウイルス感染」
関節リウマチの関節炎を引き起こす要因の一つに、細菌感染やウイルス感染などがあります。
歯周病の原因菌として代表されるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)などの細菌感染や、マイコプラズマやEBウイルスなどのウイルス感染が、関節リウマチを発症させる要因の一つであるとも報告があります。
参考)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/10/101_2824/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/61/3/61_142/_pdf/-char/ja
2-3.腸内細菌の異常
最近の研究では、腸内フローラとの関連も指摘されています。
関節リウマチ患者さんの腸内フローラの解析では、プレボテラ・コプリを代表としてプレボテラ属の細菌が優位に多く、これらが免疫系を介して、炎症・自己免疫反応に関連している可能性が考えられています。
※「Annals of the Rheumatic Diseases」2020 Jan;79(1):103-111.
2-4.エストロゲンの低下
近年の研究において、関節リウマチの発症に関係する自己免疫の異常は、女性ホルモンであるエストロゲンの低下が関係する可能性が指摘されています。
免疫は、抑制と攻撃のバランスで成り立っていますが、エストロゲンの低下は免疫を攻撃に傾けます。
上記に示した要因に、エストロゲンの低下が加わることで、自己免疫が刺激され、関節リウマチの発症を促進する可能性が考えられています。
ただし、更年期に起こるその他の関節症とも鑑別が難しいため、慎重に判断する必要があります。
エストロゲンと関節リウマチの関係については詳しく4章に後述します。
3.関節リウマチの検査・診断・治療について
関節リウマチの検査は、血液検査や画像検査を組み合わせ診断します。血液検査で行う主な項目について、次にまとめてみました。
3-1.血液検査
血液検査では、関節リウマチの診断に必要な「リウマトイド因子(RF)」「血液沈降速度」「CRP」などを調べます。また、最近では、特徴的な抗体である「抗CCP抗体」を測定します。
1.リウマトイド因子(RF)
体が自分の体を攻撃する抗体の一つです。関節リウマチを発症すると3/4程度の症例で陽性となりますが、他の病気でも陽性となることがあるため、陽性だからといって必ずしも関節リウマチであるとは限りません。
また、陰性だからと言って関節リウマチでないとも言えません。
2.抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体:ACPA)
抗シトルリン抗体は、関節リウマチに対する特異度(陰性の場合に正しく陰性と判定する確率)が高いため、リウマトイド因子と組み合わせて判定に使用します。
ごく早期から陽性になり、抗体の量が多いと病気の勢いが強く重症化しやすい抗体です。
3.赤血球沈降速度(血沈)
試験管内で赤血球が1時間にどれだけ沈降するか測定すること。関節リウマチを発症している場合、値が高くなることがあります。
急性ではなく、慢性の炎症を示す数値で、慢性的に炎症が進行する膠原病の際にはしばしば上昇します。
4.CRP
CRPとは体のどこかで炎症が起きているときに肝臓で生成されるタンパク質です。炎症の程度に比例して数値が上がります。
感染症や炎症性疾患であればなんでも上昇しますので、「炎症がある」という判断材料にはなりますが、「関節リウマチである」ことの証明にはなりません。
3-2.関節リウマチの治療
関節リウマチは、痛みを抑えるだけで、治療法のない難病とされていました。しかし現在は、早期の段階で診断をし、抗リウマチ剤や生物学的製剤を使用することでコントロールも可能になってきました。
ですので、早期にリウマチの診断をすることが重要です。
関節リウマチと診断された場合、ガイドラインに準じて、疾患の活動性と関節破壊の程度を評価した後で、適宜抗リウマチ剤や生物学的製剤を使用します。必要に応じて、痛みや炎症を抑える非ステロイド炎症薬やステロイド薬を加えます。
いずれも、副作用がある薬剤ですので、慎重に投与を検討します。
主な働きは以下にご紹介します。
1.抗リウマチ薬
治療の主体となる薬で、免疫異常を抑えることで、軟骨や骨の破壊を抑える働きがあります。
ゆっくりと効果が発揮され、直接的に炎症を抑える働きはないため、効果があらわれるまでは非ステロイド性抗炎症薬やステロイドが併用されます(効果がではじめたらこれらは止めることも可能です)。
また、治療の効果を高めるために2剤以上併用することもあります。
有効率が高く、関節破壊の進行を遅らせることができますが、骨髄抑制、肝障害、間質性肺炎などの副作用が起こる可能性があるため、定期的な検査をしながら服用することが大切です。
2.生物学的製剤
生物学的製剤は、軟骨や骨の破壊の進行を大きく抑制し、炎症を抑える働きがあります。
抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に用いられ、点滴注射や皮下注射で投与します。
一方では、感染症をはじめとする副作用や高価であることなど、いくつか問題点もあります。
3.非ステロイド性炎症薬
非ステロイド性炎症薬は、痛みに関連するプロスタグランジンという物質ができるのを防ぎ、リウマチの痛みや炎症を軽くする働きがあります。
しかし、病気の進行を止めることはできません。
胃潰瘍や腎障害などの副作用もあります。
4.ステロイド
抗リウマチ薬の補助として用いられる薬で、速効性があるため、日常労作を改善することができます。
ただし、ステロイドを長期間使用することで、糖尿病や骨粗しょう症、白内障、感染症などを合併する危険性がありますので、抗リウマチ薬が効きはじめたらすみやかに減量または中止することが必要です。
4.関節リウマチと更年期の関節症状はよく似ている
更年期には、関節リウマチと似た手のこわばりや末梢関節痛などの関節症状が起こることがあります。
関節リウマチと更年期の関節症状はよく似ており、診断するのは難しいとされています。
4-1.更年期の女性に起こりやすい関節リウマチと似た関節症状の特徴
更年期に起こる関節症状のうち、関節リウマチと似た関節症状は、主にこれらの特徴があります。
・朝に体や関節周囲がこわばる「朝のこわばり」
・指先を中心とした関節痛
これらは、関節リウマチの初期症状ととても似ています。
関節リウマチのような変形はありませんが、さらに手首・肘・肩・腰部・膝・足首など全身に関節痛が出現することがあります。
物が持てない、立てない、うまく歩けないなどの症状を訴える人もいます。
自己判断では関節リウマチと区別することは難しいため、専門家を受診して血液検査などを行うことが必要です。
1.更年期の女性に起こりやすい手の疾患
更年期以降の女性に起こりやすい手の疾患はさまざまあり、女性ホルモンの減少が大きく関係しています。
・へバーデン結節・ブシャール結節
・ばね指・腱鞘炎
・ドケルバン病
・手根管症候群
▼ブシャール結節の原因は女性ホルモンの低下!? ゆらぎ世代から起きる手や指の変形
https://wellmethod.jp/bouchard_nodule/
4-2.関節リウマチと更年期の関節症状を見極めるには
関節リウマチを発病した初期では、症状はあってもリウマチ因子が陰性であることは多くあります。
また、リウマチ因子が陽性でも、関節リウマチではなく、更年期関節症であることもあります。
その場合、患者が45〜55歳であった場合は、更年期による関節症の可能性も考えられます。
現状では、関節リウマチの初期症状と更年期の関節症状は見極めが難しいのですが、閉経後の患者にHRT(ホルモン補充療法)(※)をすることで症状が良くなるのであれば更年期による関節症状であり、明らかな関節リウマチの場合であればHRTでは良くならないため、その場合には関節リウマチと診断されます。
(※)ホルモン補充療法とは
ホルモン補充療法とは、Hormone Replacement Therapy(以下、HRT)の略です。
女性は更年期を迎えると、体で分泌される女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少します。
そのエストロゲンの減少により起こる体の不調を予防・補うためにエストロゲンを薬で補充する治療法のことをいいます。
▼体調が悪いのは女性ホルモンが原因? 海外期待の“ホルモン補充療法”という可能性
4-3.HRTは関節リウマチの発症を予防する
さらに近年の研究では、HRTは更年期による関節症を治療するだけではなく、関節リウマチの発症を予防する可能性も報告されています。
エストロゲンが減少すると、免疫が攻撃的に傾くところを、HRTによるホルモン補充で抑制できるというメカニズムが考えられています。
ただし、関節リウマチと更年期関節症は鑑別が難しいため、慎重に検討する必要があります。
参考)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/10/108_2107/_pdf/-char/ja
4-4.エストロゲンの減少とリウマチ発症の関係
2章でも触れましたが、エストロゲンの減少と関節リウマチの発症には関わりがあるとされています。
1.エストロゲンの減少がリウマチの発症にかかわるメカニズム
関節リウマチのなりやすさに大きく関わるのは、2章でもお伝えしたとおり、「リウマチの感受性遺伝子の有無」、ストレスなどの「環境因子」、「ウイルスや細菌感染」「腸内細菌の異常」などがあります。これらの要因が組み合わると、体の中でリウマチが発症する準備が整います。
この状態に、更年期などの理由によって体内のエストロゲンが低下すると、関節リウマチは準備段階でとどまらずに刺激が増幅され、自己免疫現象を誘導することで発症してしまうというメカニズムが考えられています。
2.エストロゲンが低下する更年期と産後の女性は注意
関節リウマチは、男性よりも女性のほうが発症しやすく「性差のある病気」といわれています。
この理由は前述のとおり「エストロゲンの減少」が大きく関連しているためです。
関節リウマチが好発する代表的な年代は、エストロゲンの減少と大きく関係する更年期世代の女性です。
さらに、関節リウマチ発症の好発期として産後の女性も注意が必要です。
妊娠中は上昇していたエストロゲンが産後に低下し、とくに授乳中はエストロゲンの分泌が抑制されるため、関節リウマチや関節痛が発症する可能性が高まります。
5.迷ったら早めに受診をしましょう
いまの症状が、関節リウマチなのか、更年期による症状なのか自己判断はせずに、もしご自身にこれらの症状の心当たりがある場合には、生活に支障が出る前に一度、膠原病内科、整形外科を受診してみましょう。
とくに関節リウマチは早期の治療が大切です。
6.手の違和感を見過ごさず、自分の体と付き合っていきましょう
手が少し痛くても、「手を使いすぎたかな」「腱鞘炎かな」などと見過ごしてしまうことも多いのではないでしょうか。
しかし、万が一関節リウマチだった場合は早期に治療を行うことが大切です。
40~50代の年齢になると体のあちらこちらに不調がでるうえに、家庭や仕事・介護問題などで自分自身に構う時間をつくることが難しいです。
そのため、知らぬ間に自分の体に負担をかけてしまっていることがあります。
なかなか時間を取ることは難しい世代ではありますが、少しでも自分のための時間をとり、体を労ってくださいね。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。