【医師解説】ゆらぎ世代の女性は特に注意! 頭皮臭の原因とニオイを防ぐ4つの対策
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
さて、頭からもわわ〜んと、くぐもったニオイが発生する季節になりましたね。
どんなに美しく着飾っても、頭からはむれたニオイが!となると、残念です。
もちろん、生理現象の一環ではありますが、自分で感じてしまうと気になってしまいますね。
特に、毛量の多い女性の皆様は、「自分には関係ないわ」とは言えませんし、更年期に差し掛かりホットフラッシュの症状がある場合、頭からの汗をかきやすいものです。
目次
1. 誰にでも発生する頭臭の原因と対策
他人の鼻に近いところで発生する頭の匂いは、特に気になりがちですね。
「ご主人の枕臭が気になる」という方、何も、ご主人だけではありませんよ。
1-1. 頭は蒸れて細菌が増えやすい
頭皮臭も体臭の一種です。
体臭とは、毛穴や皮膚から立ち上る皮膚ガスです。汗や皮脂を原料に、皮膚の上に暮らす常在細菌がニオイ物質を作り出しているのです。
常在細菌は、皮膚を守る役割がありますから、「悪役」ではありませんが、ニオイの原因にはなります。
頭は、高温多湿である上に、不毛の原因になる角質やアカなど豊富で高栄養です。
細菌は、適度な温度と湿気た環境を好みます。
角質(アカやフケ)などのタンパク質は大好物です。
角質が多い上に、皮脂や汗の分泌が多く、毛髪によって蒸れた頭皮の上は、細菌にとって超快適な環境。
靴を履いた足の裏と同様の条件!
いわば、細菌の培養装置とも言えるのです。
1-2. 男性よりも女性の方がリスキーな場合
男性は女性よりも皮脂や汗の分泌が多いので、より頭がニオイやすくなりがちです。
特に、40代をピークにした後頭部の汗と皮脂の混合臭「枕臭」は、男性に発生しやすいとされています。
が、女性の場合も、髪が長く毛量が多い人は油断できません。
その上、更年期障害によって、ホットフラッシュがある場合、頭から汗が大量に発生します。
この場合、蒸れて頭からニオイが発生しやすくなります。
1-3. 頭皮臭とは皮脂と汗の混合臭
頭皮のニオイは、皮脂と汗の混合臭です。
1. 頭からの汗臭と皮脂臭
夏場だけでなく、運動をしたり、ホットフラッシュで頭から汗をかく場合。
毛髪のせいで汗が乾きにくいので、蒸れた汗臭が発生します。
同時に、頭はTゾーンと同じく皮脂分泌が多い場所。
これらがミックスされたニオイが発生します。
2. ミドル脂臭は女性にも
40代をピークに発生する汗と皮脂の混合臭は、「ミドル脂臭」です。
特に、男性ホルモンの影響で、男性は皮脂の分泌量が女性より多いため、男性特有とされるものの、実際には、女性にも発生しています。
汗の中の乳酸を頭皮の表面に暮らすブドウ球菌が分解し、ジアセチルという物質が発生し、これが皮脂の中の中鎖脂肪酸と併さって、独特の脂臭いミドル脂臭となります。
後頭部を中心に発生しやすく、いわゆる「枕臭」と呼ばれます。
女性は、特にこのミドル脂臭を嫌いますが、自分にも発生している可能性があります。
混同しやすいのは、「加齢臭」です。
50代以降に発生する加齢臭は、皮脂が酸化して発生する「ノネナール」のニオイですが、ちょっと鄙びた(ひなびた)枯れ草や古本と称されるニオイです。
後頭部ではなく、背中周りの体幹から発生します。
女性の場合は、閉経を機に発生しやすくなります。
▼【教えて先生!!カンナさんの更年期相談室Vol.1】~女の加齢臭について教えて!~
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2. 頭皮臭の対策のポイントは?
頭皮のニオイを発生させる要因は、
・汗と皮脂
・角質やアカ
ですから、これらを適度にコントロールするのがポイントです。
2-1. 1)シャンプーの選び方やポイント
1. 油分の多い整髪料を使っている場合
まず、油分の多いヘア用のオイルや整髪料を使用している場合は、まずは残らないようにしっかりと洗浄しましょう。
これらを使っている場合、頭皮には塗らないようにして、毛髪だけにつけるなど、使う際にも工夫を。
洗浄力の弱いアミノ酸系シャンプーでは落ちづらいため、この場合は、高級アルコール系シャンプーを選ぶ方が良いかと思います。
2. 油分の多い整髪料を使っていない場合
これらの整髪料を使っていない場合は、洗浄力のマイルドなアミノ酸系シャンプーで優しく洗い、皮脂を落とし過ぎない方がベターです。
皮脂や角質は、皮膚の保護膜の役割もあるため、乾燥させてしまうと余計に皮膚を守ろうとして、逆に皮脂の分泌やフケが増えてしまう可能性があります。
乾燥しているのに、油っぽくフケが出るのであれば、逆に洗い過ぎの可能性がありますよ。
皮脂分泌が多い夏に、頭皮をしっかりと洗い、皮脂や角質を取り除いた後は、乾燥を防ぐために頭皮用保湿ローションで保湿をした方がベター。
室内は、エアコンによって乾燥していますから、夏場でも乾燥させてしまう可能性があります。
シャンプーを使う頻度は、夏場であっても1日1回までを目安に。
それ以上頭を洗いたい場合は、お湯で洗い流すだけでも、皮脂や汚れ、汗は落ちます。
2-2. 2)汗をコントロールする
頭からの汗はなかなかコントロールしづらいものですが、最近では、頭用の制汗スプレー剤もあります。全身の発汗は体温調節のためですので、制汗しすぎることはお勧めしませんが、ポイント使いであれば体温調節にも影響はありません。
汗をかく前に事前にスプレーしておくことがポイント。
更年期障害でホットフラッシュがひどい場合は、更年期障害自体の対策を。
自律神経の乱れによる症状ですから、自律神経を乱さないようにしながら、漢方薬やサプリメント、また重度の場合は産婦人科治療などがあります。
▼ホットフラッシュってどんな症状?発症する原因や対策を知っておこう
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2-3. 3)皮脂分泌を増やさず酸化を予防する
皮脂の分泌や皮脂の酸化には、食生活が影響しています。
皮脂の原料となる、血液の中の中性脂肪を増やすのが、脂っこい食事や砂糖や果糖たっぷりの甘いもの、アルコールです。揚げ物だけでなく、菓子パンやデニッシュ、ドーナツ、洋菓子などにも、マーガリンやショートニングなどの酸化しやすい油がたっぷり含まれている可能性があります。忙しくてつい手を出しがちな、インスタントラーメンなども麺の揚げ油が酸化しているため、摂り過ぎには注意したいところです。
砂糖だけでなく、特に果糖は中性脂肪に変わりやすいため注意が必要です。
お菓子やジュース類だけでなく、様々な加工食品やソースなどにも使用されている果糖が多い「異性化糖」や人気のアガベシロップも果糖80%です。
▼アガベシロップは肥満の元?砂糖よりも危険な果糖を控えるべき理由【医師解説】
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2-4. 4)頭皮の新陳代謝を改善する
頭皮の血流が低下して新陳代謝が低下すると、角質が蓄積しやすくなります。
毛穴詰まりや皮脂分泌の異常などの原因にも。
頭皮の血行を改善することがポイントです。
パソコンやスマホの使い過ぎや長時間のデスクワークなどで頭や首回りの筋肉がこり固まり、頭の血流が低下している人は要注意です。
1時間に1回は休憩を取り、首や肩周りだけでなく、頭皮もマッサージするなど、凝り固まらないように予防しましょう。
入浴時は、シャワーだけで済ませず、首までしっかりとお湯に浸かり、全身の血流を促しましょう。
さらに、頭にホットタオルを巻き、数分間頭を蒸らすと血流が良くなります。
汚れも浮き易くなります。
頭皮臭だけでなく、肩こりや頭痛、不眠の予防にもなりますから、入浴は大切な習慣です。
3.生理的なニオイには寛容な社会を
ただし、ニオイを気にしすぎるのも少々窮屈ではないでしょうか?
生理的な頭皮臭は誰にでもあるものですから、本来は恥ずかしいものではありません。
「無臭を目指す」必要もありませんし、自然に発生したニオイを「スメハラ」という社会は不寛容だなという気が致します。
かといって、放置して不潔にしなさいというわけではありません。
ニオイの感じ方は、あくまでも個々人によって違いますから、正解はありませんが、自分自身や周りの人たちが心地よく過ごせるよう、また、自分自身の内側を健康に保つことで体臭の悪臭化を予防することは、生涯のために意味があることではないかと思います。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか