こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

皆様、1ヶ月の基礎化粧品代、おいくらかけておられますでしょうか?
コロナ禍の中、変化があった方もおられるでしょうが、年齢と共に悩みが増えるお肌のケアに、機能性の高いプログラム化粧品に頼りたい!とお金をかけている方もおられると思います。

実際の費用対効果を考えると、ケアはもっとシンプルでも十分かも知れませんよ。
私自身がプログラム化粧品をやめて、シンプル美容を選んでいる訳をお話ししたいと思います。

1. 基礎化粧品の効果と実際

高級基礎化粧品

1-1. 金額に応じて効果が得られるとは限らない

デパートに並ぶ各ハイブランドの化粧品の中には、美容液だけで1万円台を超え、数万円台から10万円越えをする商品も。

化粧水、乳液、美容液、クリームに加え、さらに目元ケア用やしみケア用などポイント美容液に、マスクやパック、マッサージクリームなど。
プログラムされた基礎化粧品を積み重ねると、キリがありません。

日中ずっと家にいて、通販番組を日がな一日つけているうちの母親など、説明のままに「これはいいわ!使ってみなくちゃ!」という気持ちになるらしく、みる度に新たなブランドの新たなアイテムが増えていきます。

1本が何万円もする大手の高級化粧品は、もちろん然るべき基礎研究を基に商品化されているので、しっかりと効果が実感できるものももちろんあります。

ただ、かける金額に応じて、お肌が若返りキレイになれば甲斐がありますが、実際にはお金をかけたからと言ってそこまでの劇的な違いはわからないこともよくあります。

なぜかと言えば、それは、「化粧品」だからです。

1-2. 化粧品・医薬部外品・医薬品の違い

皮膚は、人の臓器の一部です。
ですから、ここに実際に作用するものであれば、薬事法的に「医薬品」に分類されなければなりません。

1. 強力な医薬品には作用も副作用も

医薬品は、治療目的で使用されるものです。

例えば、シミを消す成分「ハイドロキノン」。
これは、強力なシミ取り効果と同時に、正常な皮膚に付着すると皮膚の色が抜けてしまう「白斑」を引き起こす劇薬です。

つまり、医薬品には、強力な作用がある分、副作用もあるため、医師が慎重に処方し指導する必要があるものです。

2. 化粧品「有効成分」は謳えない

化粧品とはその逆に、一般の人が安全に使える一方で、作用が穏やかで、効果も医薬品に比べると劣ります。

基本的には、シミを消す、シワを改善するなどの効果効能や「有効成分」を謳うことはできませんが、肌の保湿やキメを整えるなどの皮膚を健やかに保つ効果は謳うことができます。

例えば、「肌に潤いを与え、健やかに保ちます」のようなイメージです。

ただし、後でお話ししますが、美肌のために「保湿」は極めて重要なポイントなので、これだけでも十分にお肌が美しくなります。

3. 薬用化粧品(医薬部外品)は「有効成分」あり

薬用化粧品は、医薬部外品と表示されています。
化粧品と医薬品の間にあるのが、薬用化粧品です。
厚生労働省が認めた効果・効能に有効な成分が配合され、肌荒れなどの諸症状の予防や衛生を目的に作られる製品です。

アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、尿素、イオウ、サリチル酸、リボフラビン、トラネキサム酸などの成分が厚生労働省の許可した規定量以下で配合されています。

例えば、有効成分「トラネキサム酸」を配合した薬用化粧品では、「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」と言った効果が表示できます。

「治す」と表現は、医薬品になってしまいますので、あくまでも「予防」効果ということになりますが、商品によって効果は様々と言えます。

4. 費用対効果を考えて選ぶ

高級な化粧品の中には、「肌が美しくなった」と実感できるものも多くありますから、自分に合っているのであればそれを使えば良いかと思います。

ただ、特にプログラム化粧品を全て揃えて重ね付けしても相加相乗効果が得られるかと言えば、そうでもないことが多いため、自分に合った成分や必要な成分を配合したものを選択して使うのが賢明かも知れません。

また、大枚をはたいて本気でシミやシワのお悩みを解決したいのであれば、化粧品よりも皮膚科で処方できる医薬品や美容医療にお金を使う方が費用対効果は良いのではないかと思います。

逆に、プチプラ化粧品であってもしっかりと潤うものを選べば満足がいく結果を得られると思います。

1-3. 皮膚を触りすぎるリスク

スキンケアで皮膚に触りすぎる女性

プログラム化粧品は、何がデメリットになりうるかというと、皮膚を触りすぎることです。
皮膚は、マッサージをしたり、化粧水をパッティングで叩き込んだり、手をかけてあげると良いというイメージがあるかも知れません。
実は、それが間違いの元です。

私は、医師人生の最初は、皮膚科におりました。
その時に叩き込まれた教えの一つが、「摩擦NG!」というものがあります。
皮膚科的な常識では、「皮膚は擦ってはならない」つまり「触りすぎてはならない」のです。

コットンや手による摩擦によって皮膚が刺激を受けると、色素沈着がおき、くすみやシミ、肝斑、またコラーゲンなどの弾性線維の劣化によるたるみやシワなどが起こりやすくなります。
実は、マッサージも摩擦を起こすという点ではあまりよくありません。

特にデリケートな顔の皮膚には、刺激を与えないことが大切なので、化粧品を塗り重ねるプロセスが多いことはデメリットになります。

2. 美肌にはこの3つのポイントを押さえる

美肌のために、外側からたくさんのものを塗り重ねる必要は実際にはありません。
皮膚には、古い皮膚を排泄し新しい皮膚に再生するターンオーバーのしくみや、水分をしっかりと保持する構造が備わっていますので、皮膚が本来持つポテンシャルを失わないようにすることが最も大切です。

ケア不足の人は、このポテンシャルが損なわれている状態なので、マイナスの状態を本来の状態に戻してあげるだけで、皮膚の自助作用が発揮されます。

そのためのポイントは、3つ。

1.保湿
2.紫外線ブロック
3.内側からのインナーケア

この基本中の基本の3つのポイントを真摯に実践していれば、同年代と比較して十分に美しい肌を保つことができます。

2-1. 1にも2にも保湿

1. 皮膚バリアを守ることがポイント

肌のバリア機能

皮膚のダメージを防ぎ、皮膚の持つ本来の機能をしっかりと発揮してもらうためには、とにかく皮膚のバリア機能を保つことが欠かせません。

皮膚のダメージは、主に外的な刺激によって起こります。
それを守るのが、皮膚のバリア機能です。
皮膚のバリアは、皮脂膜、皮膚常在細菌叢(そう)、角層で成り立っています。

皮脂膜と角層の中にあるセラミドなどの細胞間脂質や天然保湿因子によって角層内に水分を保持することで構造が保たれます。
皮脂膜は、皮脂を食べた皮膚常在細菌が分泌するグリセリンや脂肪酸と汗と乳化することで作られる天然の保湿剤です。
皮膚が乾燥すると皮膚常在細菌のバランスが崩れて、皮膚のpHが上がり皮膚の弱酸性環境が失われてしまいます。

皮膚が乾燥すると、皮膚のバリアがバランスを崩し、角層の下の表皮や真皮を刺激を受けることで、皮膚で炎症が起こります。

炎症が起こることで活性酸素が発生し、細胞やコラーゲンがダメージを受け、炎症後に色素沈着を起こして皮膚のくすみに繋がります。

2. 保湿のためにたくさんのステップは不要

皮膚を保湿するには、不足した水分を補い、蒸発しないように油分でベールを作ること。
それができれば、1ステップか2ステップで十分です。

化粧水で水分を補い、乳液やクリーム、オイルなどの油分を含むものでベールをする。
これが最も基本的です。
もしくは、全てが含まれたオールインワンゲルで1回ですませる。
この1〜2ステップで十分に保湿ができます。

私は、たいそう雑なタイプですので、あまりステップが多いと面倒になり、塗り方も雑になり摩擦をも気にせず擦ってしまうことが目に見えています。
そのため、オールインワンゲル1本にしています。

その1本で効果的に保湿ができるよう、角層に届いて水分を保持するセラミドが配合されたものを選んでいます。
何か一つ高機能な成分を選ぶのであれば、外用することでもしっかりと効果を発揮するセラミドが優秀だと思います。

乾燥の強い冬場にも、これ1本で乾燥知らずです。

3. 分子量の大きな成分は吸収されない

保湿のためにヒアルロン酸が配合された化粧品は多いと思います。
本来は、表皮の下の真皮の水分保持に必要な成分です。

皮膚バリアは、外の環境の余分なものを内側に入れないように、かなり分子量の小さな物質しか入れないフィルターのようになっています。
表皮を通過できるのは、分子量3000以下のもの。真皮を通過できるのは、800以下のものとされています。

分子量が100万程度のヒアルロン酸は、分子量が大きすぎて表皮を通過できません。

皮膚の表面に止まって水分のベールを作る働きはありますので意味がなくはありませんが、本来の真皮に届くことはありません。

これを届けようと思えば、美容医療のお世話になるしかありません。

2-2. 紫外線ブロックは必須

紫外線対策

どんなに保湿をしても、紫外線を防がなければ、皮膚へのダメージは免れません。

紫外線B波が皮膚にあたることでビタミンDが生成されるという極めて大切な働きがありますので、美容目線だけで「百害あって一利なし」とは言えません。
なので、全身ブロックするのは避けたいところですが、せめて、顔だけは防ぎたいところです。

紫外線は、直接的に、また、活性酸素を発生させて間接的に、皮膚の細胞やコラーゲン、エラスチンなどを破壊し、シワやたるみの原因になります。
また、浴び続けることで皮膚を紫外線から守るはずのメラニン色素が皮膚に沈着してシミを作ります。

皮膚表面で日焼けを起こす紫外線B波を防ぐ強さを表す表示は、「SPF」。
皮膚深く真皮まで届いてコラーゲンなどにダメージを与える紫外線A波を防ぐ強さを表す表示は、「PA」。

SPFは数値が高いほど防ぐ時間が長いもので、日本では最大50です。
PAは、UVAを防ぐ強さによって「+」〜「++++」があります。

日常生活であれば、SPF30,PA+++程度のものでも効果がありますが、2~3時間おきには塗り直す必要がありますが、クリームタイプを塗り直すというわけにはなかなかいかないと思います。
朝はクリームタイプを、外出時には、パウダータイプが便利です。

2-3. 皮膚は臓器、インナーケアが不可欠

皮膚は、臓器です。
臓器である限り、細胞の原料は内側から供給されるのが本来であって、外側から供給されるものではありません。

どんなに外側からケアしても、細胞の原料の供給が不足したり、細胞の周りの体液・血液の環境が悪化すると、皮膚の細胞は劣化します。

1. 皮膚のためにもまずは腸活

腸活

その根っこを辿ると、腸内環境が大切です。
食事が消化され腸内細菌によって発酵されることで作られる腸内環境です。

腸内環境が良いと、有用菌の働きで食事に含まれる栄養以上に栄養が豊かになります。
腸内環境が悪いと、腐敗菌の働きで腐敗が起こり、栄養が奪われます。

食事から十分な栄養素を摂ることはもちろん大事ですが、同時に腸内環境も改善しないと、血液環境が悪化し、皮膚の細胞に十分な栄養が供給されません。

皮膚のためにも、まずは腸内環境を改善することが重要です。
そのためには、シンバイオティクス食品を毎日しっかりと摂取することです。

2. 皮膚に必須の栄養素

その上で、皮膚に不可欠な必須栄養素をしっかりバランスよく摂りましょう。

・ビタミンA、βカロテン(プロビタミンA)…皮膚の生成に不可欠
・ビタミンC……コラーゲンの生成、シミを防ぐ
・ビタミンE…血流を改善し細胞の酸化を抑制
・鉄・亜鉛…活性酸素を消去する酵素の元
・タンパク質…コラーゲンやエラスチンの原料
・オメガ3系・オメガ6系脂肪酸…皮膚の細胞膜の原料。1:4程度が理想のバランス

これらはいずれも、体内では合成できず、食事から毎日絶対に摂らなければならない栄養素です。

3. 効果的なサプリメントは?

サプリメント

さらに、美容効果を高めるには、皮膚の潤いやハリの元となる素材を補うことです。
サプリメントや美容ドリンクなどがありますね。

■コラーゲンは意味がある?

コラーゲンは、これまで経口摂取してもアミノ酸に分解されてしまうので、コラーゲン補給ではなくアミノ酸補給の意味しかないと考えられてきましたが、最近では、半分消化されたコラーゲンペプチドの状態のままに吸収され、皮膚にも届くことがわかっています。
経口摂取で補うことは、化粧品として皮膚から塗るよりも真皮に届きやすいでしょう。

■コラーゲン合成には鉄分も不可欠

皮膚のコラーゲン合成を助けるには、その原料であるタンパク質、合成をサポートするビタミンCや鉄をしっかり摂ることです。
月経がある女性は特に鉄不足になりやすいので、コラーゲン合成が低下している可能性があります。

ぶつけた覚えもないのに、足によくあざができるという人は、血管のコラーゲン合成が低下している可能性があります。
皮膚のコラーゲン合成も同様に低下していると考えられますので、注意が必要です。

■セラミドは経口摂取も効果的

セラミドは、経口摂取することで、内側からのセラミド産生を促進し、皮膚の水分保持に役立つことがわかっています。
「皮膚バリア機能改善」目的の「機能性表示食品」として「肌の潤いを保つ」作用が確認された製品が販売されています。

『医師の私がこれだけは手放せない!乾燥対策に本当に潤う成分とは?』

https://wellmethod.jp/measures-against-dryness/

シンプルケアをする女性

お金をかければかけるほどに美肌が叶うとも限りません。
化粧品は、自分に合う「この1本」が見つかれば良いのではないでしょうか。

丁寧に基本を大切にするシンプルなケアで、いくつになっても美しいと言われる肌は作れますよ。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか