肌にいい日焼け止めとは? 人にも環境にも安全な選び方のポイント
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
皆さまは、毎朝日焼け止めを使用していますか?
また日焼け止めを選ぶときは、何を基準にして選んでいますか?
筆者にとって日焼け止めは、季節を問わず毎朝のスキンケアに欠かせないアイテムです。
そのため年に何回か日焼け止めを購入するのですが、ドラッグストアやデパートなどに行くと数多くの日焼け止めが並んでおり、以前は何を選んだら良いのか迷うことがありました。
現在は日焼け止めを選ぶ際のルールを決めたことで悩まずに選ぶことができています。
さまざまな日焼け止めがあるからこそ、肌にいい日焼け止めの選び方を知っておくことが大切だと思います。
そして毎日使うものだからこそ、肌にやさしい日焼け止めを使いたいですよね。
しかし紫外線から肌を守ってくれるはずの日焼け止めが、環境に悪影響を与えているという事実があります。
近年、海外のリゾート地などではある特定の成分が配合された日焼け止めの使用・販売が中止されるなど、日焼け止めによる海洋汚染が世界的な環境問題となっています。
肌にも環境にもやさしいプラネタリーヘルスを意識した新しい素材の開発が進められています。
私たちがどのような商品を選ぶのかによって、未来の地球環境に大きな影響を与えてしまうのではないでしょうか。
今回は肌にも地球にもやさしい日焼け止めの選び方と、日焼け止めが海洋汚染の原因となる理由についてご紹介します。
目次
1.肌にいい日焼け止めとは
肌にいい日焼け止めとは、どのようなものをイメージしますか。その基準は人によって異なるかもしれません。
・ニキビができにくい
・肌荒れしない
・超敏感肌でも使える
このようなイメージを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日焼け止めの役割は紫外線から肌を守ることですが、その日焼け止めが肌に負担をかけていては肌にやさしいとはいえません。
肌にいい日焼け止めといわれるポイントは主に4つあります。
1-1.紫外線吸収剤を使用していない
日焼け止めには「紫外線吸収剤」を使用しているタイプと「紫外線散乱剤」を使ったタイプがあります。
紫外線吸収剤は一旦、肌に受けた紫外線を吸収してから放出することで紫外線のダメージから肌を守るのですが、人によっては紫外線吸収材で肌が赤くなったり、かゆみが出たりすることがあります。
一方、紫外線散乱剤は肌に受けた紫外線を散乱・反射させることで紫外線のダメージから肌を守るため、肌への負担が少ないタイプといえます。
日焼け止めは「紫外線吸収剤不使用」と表示されているもの使用をおすすめします。
1-2.アルコールが含まれていない
市販の日焼け止めには、アルコールが配合されているものがあります。
アルコールには日焼け止めの品質を維持したり付け心地をよくしたりするために配合されていますが、人によって合う・合わないがあります。
アルコールが配合されていることが気になる人は「アルコールフリー」と書かれた日焼け止めを使用するようにしましょう。
1-3.伸びが良い
日焼け止めは毎日使うものだからこそ、使い心地の良いものを選びましょう。
成分の安全性が高くても、環境に配慮されていても、伸びが悪いと肌に日焼け止めをつけたときに手と肌の摩擦が大きくなり、肌に負担をかけてしまうことになります。
1-4.高すぎるUV効果は肌への負担になることも
日焼け止め選びにもう一つ欠かせない要素は、UVカット効果ではないでしょうか。
日焼け止めを選ぶ際にUVカット効果の高いものを選ぶという方も多いと思います。
紫外線にはUVA・UVB・UVCの3つありますが、人体にとって有害といわれるのはUVAとUVBです。
これらの紫外線から肌を守る効果の目安となるのが、SPFとPAの値です。
1.SPF:Sun Protection Factor
SPFはUVBを防ぐ効果の目安です。
日光に当たったときに、日焼け止めを塗らない場合と比較し、肌が赤くなるまでの時間が何倍かを示した数値です。
「1~50」の数値で表示され、数字が大きくなるほどUV効果が高くなります。
2.PA:Protection Grade of UVA
PAはUVAを防ぐ効果の目安です。
4段階の「+」マークで「+」の数が増えるにつれ、防御効果が高くなります。
しかしSPFやPA値が高い日焼け止めは、肌に負担をかけてしまうことがあるのです。
紫外線量や時間にもよって異なりますが、買い物や通勤・散歩程度であればSPF20・PA++程度、軽いスポーツならSPF30・PA+++程度までのものを選ぶことをおすすめします。
毎日UV効果が高いものを使用するよりも、シーンや時間を考慮して選ぶようにしましょう。
2.日焼け止めの塗り方にも気をつけよう
また、いくら肌にいい日焼け止めを選んでも、誤った塗り方をしていれば、その効果は半減してしまいます。
日焼け止めの塗り方のポイントとしては、これらが挙げられます。
2-1.使用量を守る
使用量が少ないと、日焼け止めの効果が半減してしまいます。必ず商品に記載されている使用量を守りましょう。
2-2.日焼けしやすい部分は重ね塗りをする
特に、鼻・額・頬・あごなどは日焼けをしやすい部分のため、日焼け止めを全体に塗ったあとにさらに重ね塗りをするようにしましょう。
塗るときは手のひらではなく、手のひら全体を使って均一に伸ばすようにすると、ムラなく塗ることができます。
2-3.塗り残しやムラになりやすい場所に気をつける
首・首の後ろ・あご・耳・耳のうしろ・肩などは、つけ忘れやムラになりやすい箇所です。日焼けを防ぐためにも、念入りにチェックするようにしましょう。
2-4.塗り直しは使用するシーンに合わせて
日焼け止めは、シーンに合わせて塗り直しをするようにしましょう。たとえば、運動中や汗を書いたときには2〜3時間ごとに。海やプールに入るときは30分を目安にしましょう。
3.肌を守るはずの日焼け止めが珊瑚にとっては悪影響
ここまでは、肌にいい日焼け止めの選び方についてお伝えしてきました。
日焼け止めは、私たち人間の肌を健やかに保つために、いまや欠かせないスキンケアとなっています。
しかし実は、その日焼け止めが、環境問題の原因にもなっているのです。
日焼け止めの悪影響を受けているのは珊瑚です。
すべての日焼け止めが珊瑚に悪影響を与えているわけではなく、影響を与えているのは紫外線吸収剤が使用されている日焼け止めです。
本章からは、日焼け止めが与える環境への影響と、どうしたら私たち人間にとっても、地球にとってもやさしくできるのか、その課題と、双方にとってやさしい画期的な成分である「酢酸セルロース」についてお伝えしていきます。
3-1.紫外線吸収剤によって珊瑚が受ける影響とは
珊瑚が紫外線吸収剤によって受ける影響は主に2つあります。
1.珊瑚の白化現象
珊瑚の色は、珊瑚と共生している「褐虫藻(かっちゅうそう)」と呼ばれる藻類の色がもととなっています。
そのため珊瑚から褐虫藻がいなくなると、珊瑚は白くなり褐虫藻の光合成によるエネルギーを得ることができずに、最後には死んでしまいます。これを珊瑚の白化(はっか)現象といいます。
2.珊瑚の成長を妨げる
珊瑚に悪影響を与える紫外線吸収剤の種類にはオキシベンゾンという成分があります。特に、このオキシベンゾンは珊瑚のDNAにダメージを与え、珊瑚の赤ちゃんに悪影響を与えるといわれています。
3-2.日焼け止めの使用・販売禁止の国もある
世界各国のリゾート地の一部では、海洋汚染や珊瑚に悪影響が与える日焼け止めの使用や販売が禁止になっています。
1.使用禁止の地域
サンゴ礁に囲まれているパラオでは約10種類の指定物質を配合した日焼け止めをはじめとしてスキンケア製品の販売や使用が禁止されています。
指定物質は以下のとおりです。
・オキシベンゾン:UV-A・UV-B吸収剤
・オクチノキサート:UV-B吸収剤
・オクトクリレン:UV-B吸収剤
・エンザカメン:UV-B吸収剤
・メチルパラベン:防腐剤
・エチルパラベン:防腐剤
・ブチルパラベン:防腐剤
・ベンジルパラベン:防腐剤
・フェノキシエタノール:殺菌・防腐剤
2.販売禁止の地域
ハワイやカリブ海に浮かぶボネール島ではオキシベンゾンとオクチノキサートが使用されている日焼け止めの販売が禁止されています。
またアメリカのフロリダ州にあるキーウェストビーチでは2021年から珊瑚にダメージを与える日焼け止めの販売が禁止となりました。
4.人にも地球にもやさしい注目の「酢酸セルロース」
日焼け止めには紫外線のダメージから肌を守る役割がありますが、肌トラブルを起こしたり地球環境に悪影響を与えるものは、肌にいい日焼け止めといえないのではないでしょうか。
世界的にも人にも地球にもやさしい日焼け止めが注目されてきています。その中でも今回ご紹介するのは「酢酸セルロース」です。
4-1.酢酸セルロースとは
酢酸セルロースとは、自然の木材由来の繊維であるセルロースに酢の酸っぱい成分である酢酸を結合させた安全な成分です。
セルロースアセテートともいいます。
酢がベースになっていると聞くと、酸っぱい臭いが気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、酢特有の臭いはありません。
4-2.環境保全に配慮した天然由来の素材だから地球にやさしい
酢酸セルロースは木材から取れるパルプからセルロースを取り出し、酢酸を結合させ微粒子化したものです。
パルプは、環境保全に配慮された森林から生産された木材を利用し、FSC® COC認証※を取得しています。
※Forest Stewardship Council®(森林管理協議会)の定めた基準のもと、責任ある管理がなされた森林に由来するものであることを消費者に保証する認証システムです。
水に触れると加水分解しセルロースと酢酸に分解され、その後セルロースは細かく分解されます。
セルロースは天然の植物に含まれる細胞壁や食物繊維の主成分で、海に生息する藻類や海藻・微細藻類にも含まれています。つまりセルロースは海にあって当たり前のものといえます。
4-3.機能性を備えた使い心地の良い使用感を実現した新素材
人にも地球にもやさしい素材であることに加え、毎日使用する日焼け止めに求めることは使い心地ではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、株式会社ダイセル(本社:大阪市北区)が開発したセルロースアセテート(酢酸セルロース:商品名 BELLOCEA®︎)です。
化粧品の伸びを良くするために使用されるナイロン・アクリル・シリコンなどのマイクロプラスチック基材と、天然ミネラル成分であり基材としても使用されるシリカ(セルロースアセテート(BELLOCEA®︎)に含まれる成分)との伸びを比較すると、伸びは同じくらいかそれ以上であり、デイリーユースにおすすめの日焼け止めです。
ムラなく均一に伸ばすことができるため、均一に紫外線をブロックすることができ、日焼け止めの基材として最適です。
BELLOCEA®︎は海洋環汚染だけではなく、使用される木材に関しても伐採しすぎないように環境に配慮し管理された木材を使用しています。
人にも環境にも配慮したプラネタリーヘルスを意識した地球にやさしい日焼け止めとなっています。筆者の最近のお気に入りの日焼け止めです。
5.肌にも地球にもやさしい商品選びを
私たち個人が環境問題に対して何ができるのかを考えたとき、地球規模で考えると個人で行うことは小さなことに思えるかもしれません。
しかしその積み重ねが環境問題への改善へとつながります。自分の肌のケアのためにしている日焼け止めが、実は肌トラブルの原因であることも少なくありません。
いま、世界的に環境問題が大きく取り上げられている中、私たちができることは人にも地球にもやさしい商品を選ぶことではないでしょうか。
自分のお気に入りのアイテムが地球の環境にもつながっているなんて、素敵なことですね。
筆者は年齢を重ねていく中で、こうした環境問題にも関心をもつようになりました。
大切な地球で快適にそして楽しく生活を送るためにも、プラネタリーヘルスを意識した商品を選びをしてみませんか?
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。