こんにちは。WELLMETHODライターの廣江です。

新型コロナウイルスの感染拡大にともなう外出自粛期間がようやく解除され、少しずつ外出できるようになりました。今回のことで普段とは違う新たな環境や生活の変化を経験した方は多いかと思います。

私自身も今回の新型コロナウイルスの流行をきっかけに、今まで以上に健康に気遣い、ウイルスや細菌から自分の身を守るためにはどうするべきかと考えるようになりました。

また体の健康だけでなく、心の健康や見た目の健康にもより意識が向くようになりました。いつも明るく溌剌とした印象の方は、美容への意識が高く、女性らしさを感じさせる方が多いからです。

見た目の健康といえば、皆さんは「肌フローラ」といった言葉をご存じでしょうか。

現在健康や予防医療が注目されてきている中で、もしかしたら「腸内フローラ」という言葉はご存じの方もいるもかもしれません。

実は「フローラ」は腸だけではなく肌にも存在しています。

「お肌にやさしい弱酸性」なんてフレーズを謳っている商品も多く存在していますが、この弱酸性にも肌フローラは関係しています。肌フローラはいつまでもキレイでありたい女性にとって大切なテーマです。

今回は美容に関係ある肌フローラについて、また健康的な肌を整える方法についてご紹介したいと思います。

これから暑くなる季節、真夏の紫外線ダメージにも負けないような安定した肌状態にしておきたいところです。ぜひ参考にしてみてください。

1.肌フローラとは

肌フローラ

肌フローラとは、私たちの肌に住んでいる細菌集団のことです。

近年、健康維持のために「腸内フローラ(=腸にたくさんの菌がいること)のバランスを整えること」が注目されています。

このフローラは腸だけではなく、肌にも存在します。肌の健康にかかわる細菌数は、現在分かっているだけでも約30種類以上かつ1兆個以上。肌1㎠辺り100~1,000個程度の非常に多種多様な細菌により構成されています。

いわゆる「善玉菌」「悪玉菌」のように分けることは難しく、例えば、ニキビを起こす「アクネ菌」も皮膚の潤いを保つために重要な働きをする菌の一種ですが、増え過ぎると炎症性のニキビを引き起こします。

バランスを保ち、肌環境を整えることで、肌フローラの健康を保つことに繋がります。

2.肌は「弱酸性」の状態が健康な常在細菌がいる証拠

「お肌を健康に保つ弱酸性」などと、TVコマーシャルや雑誌でも謳われているように、健康な肌を保つためには弱酸性であることが欠かせません。ではなぜ、健康な肌の維持には弱酸性が必要なのでしょうか?

2-1.有用菌が暮らしやすい環境をつくる「有機酸」

肌フローラ
▲正常な肌の断面図(適切な皮脂分泌がされている状態)

 

私たちが理想とする健康な肌は、さまざまな常在細菌によりバランスが保たれています。

皮膚に良い働きをするとされる常在細菌(いわゆる有用菌や善玉菌と呼ばれるもの)として代表的な細菌といえば「表皮ブドウ球菌」などがあります。

これらの菌は皮膚に分泌された皮脂をエサにして、「〇〇酸」と呼ばれる有機酸を作り出します。

汗を放置すると酸っぱい匂いがしますが、これは、表皮ブドウ球菌が有機酸の一種である酢酸を作り出したためです。

この有機酸こそが、肌が弱酸性に保たれる理由です。

この産生された有機酸は、肌を弱酸性にすることで一層有用菌が暮らしやすい環境を整え、アルカリ性の環境が好きな病原性をもつ細菌の繁殖を防ぎます。

つまりメカニズムとしては、“弱酸性が健康”なのではなく、「皮膚の常在細菌のバランスが保たれていると有機酸が分泌され、その有機酸がお肌を弱酸性にする=有用菌が暮らしやすい環境を整えてくれる=健康な状態が保たれる」ということなのです。

▼【医師解説】腸内環境も肌も「弱酸性」が健康の秘訣!

https://wellmethod.jp/intestinal_environment/

【医師が解説】肌だけじゃない! 腸内環境も発酵食品も「弱酸性」が健康の秘訣

2-2.乾燥肌が招くトラブル

乾燥肌の断面図
▲乾燥肌の断面図(過剰な皮脂分泌により菌のバランスが崩れ、有機酸が産生されず、アルカリ性に傾いている状態)

 

一方、皮膚が乾燥すると、外からの刺激を受けやすい状況になるため、防御反応として皮膚の乾燥を補うために皮脂が分泌されます。

さらに乾燥が進んで皮脂が過剰に分泌されると、菌のバランスが崩れてしまいます。

乾燥により適切な皮脂分泌がされないと有用菌が酸を分泌できなくなるため、有機酸が産生されません。

有機酸が産生されないと、肌は弱酸性状態にならず、アルカリ性に傾きます。アルカリ性に傾いた肌では、黄色ブドウ球菌や、真菌(水虫、白癬菌、カンジタ菌など)などの増え過ぎると病原性を持つ細菌が繁殖しやすくなるので注意が必要です。

これらの菌は、潤った健康な肌フローラのバランスが保たれた状態では、少量存在はしてものの悪さはしません。バランスが大切なのです。

さらに、有機酸だけでなく、皮膚の表皮ブドウ球菌やアクネ菌などの健康的な肌フローラは、皮脂を分解して、グリセリンやスクワランなどの潤い成分を生み出します。

美しい肌を保つためには、肌フローラのバランスが保たれていることが大切ですし、肌フローラのバランスを保つためには、潤った美しい肌を保つことが大切です。

3.肌フローラを整えるための心がけ

前章では、肌の乾燥を防ぎ、適切な皮脂分泌がされている状態が健康的な肌を作るということがわかりました。

では、どのようなことをすれば、適切な皮脂分泌を保つことができるのでしょうか?
この章では、2つのポイントをお伝えしていきます。
どちらも日常のちょっとした心がけで取り組めることですので、ぜひ今日から取り組んでみてくださいね。

3-1.適切な洗顔をすること

適切な洗顔

肌フローラのバランスを保つためには、「洗いすぎない」洗顔が大切です。洗浄力の強い洗顔料でゴシゴシと洗うと、肌に必要な菌や皮脂まで洗い流してしまう恐れがあるからです。

洗顔から完了までの適切なポイントは、この4つになります。
1回1回の洗顔を丁寧に行うことで、適切な皮脂バランスを保つことに繋がります。

①洗顔の前の予洗い
②しっかり泡立てた濃密泡を使用
③洗う順番は皮脂の多いTゾーンから
④すすぎの温度はぬるま湯の30~34℃
⑤タオルで拭く時は優しく

忙しいからといってあまり泡だてずにゴシゴシと洗ってしまうと、摩擦で皮膚を痛めつけてしまう可能性があります。
必ず濃密な泡をつくり、手が直接触れないように泡をクッションにしながら、優しく洗いましょう。

また、皮脂汚れの少ないあごなどのUゾーンから洗ってしまうと、余分な皮脂まで落としてしまう可能性があるので、一番初めに皮脂分泌の多いTゾーンに泡をのせ、次に毛穴や小鼻など汚れが気になる部分を丁寧に洗い、Uゾーン、最後に目元や口元など皮膚が薄い部分へと移りましょう。

また、洗顔回数は朝1回、夜1回で十分です。皮脂や毛穴汚れが気になると、つい何度も洗いたくなるものですが、皮膚のバリア機能を壊さないよう適度な洗顔を心がけましょう。

より詳しい洗顔の方法は、こちらをご覧ください。

▼洗顔の手順で肌質が変わる![タイプ別・洗顔料種類付]

https://wellmethod.jp/facewash/

洗顔手順で肌質が変わる! 美肌を作る5ステップ[タイプ別・洗顔料種類付き]

3-2.しっかり保湿すること

水

洗顔をしたあとは保湿も忘れずに行いましょう。

なぜなら、洗顔後や入浴後は肌が乾燥しやすい状態にあるからです。梅雨の時期や夏場のジメジメ・ベタつきが気になる季節であっても、肌は気づかないうちに乾燥が進んでいます。

時間をおかずにすぐに、化粧水や乳液などの基礎ケアで肌のうるおいを補ってあげましょう。

よりしっかりと保湿するためには、次の方法がおすすめです。
①手のひらの温かさを感じる
②事前に体を温める
③化粧水はたっぷり多めに
④オイルまたはクリームで仕上げる

丁寧な洗顔の後は、丁寧な保湿の時間を自分にとってあげましょう。
化粧水をより浸透させるために、顔につける前に手のひらの熱で温めてから化粧水をつけるようにしましょう。

肌は、冷えると血管が収縮して細胞の働きが低下します。すると化粧水の浸透率も下がってしまうので、この一手間がより浸透させるために大切な工程となります。
また、手のひらの温かさにより血行促進やリラックス効果も期待できるので、ぜひ取り入れてみてくださいね。

また、さらに浸透率をアップさせたい場合は、事前に体を温めることが大切です。お肌は温めるとより美容成分を吸収しやすくなります。

事前に体を温める方法としては、夜でしたらぬるめのお湯にゆっくり浸かり、体全体を温めましょう。忙しい朝は、化粧水の前に蒸しタオルで温めることもおすすめです。

さらに、丁寧なスキンケアの方法を知りたいという方は、こちらをご参照ください。

▼いつものスキンケアを“ご自愛タイム”に変換する洗顔・化粧水との付き合い方

https://wellmethod.jp/skincare/

いつものスキンケアを“ご自愛タイム”に変換する洗顔・化粧水との付き合い方

4.内側からのアプローチも一緒に

外的アプローチにより肌フローラが整ったとしても、腸内環境が悪ければ肌にも悪影響が及ぼされる可能性があります。

腸内の悪玉菌が優勢になると、悪玉菌や日和見菌が身体にとって悪い代謝物を出し、その毒素が肌にも悪い影響を与える可能性があるためです。

いつまでもイキイキとしていたいという方は、外的アプローチだけでなく、食生活の改善などによる内側からのアプローチも一緒に行いましょう。

美容や健康維持のためにも、食事によって腸内の常在細菌のバランスを整えることはとても大切です。

4-1.腸内環境を整える方法

腸内環境を整える方法として、食事を通した「シンバイオティクス」という食事法が注目されています。健康的な腸内環境とは、常在細菌の中でも有用菌が優勢であり、悪玉菌ができるだけ劣勢である環境のことをいいます。

シンバイオティクスとは、生きた有用菌自体を含む食品「プロバイオティクス」と腸内の有用菌を育てる食品「プレバイオティクス」の両方を組み合わせた製剤または食品を一緒に摂取する方法です。

つまり、シンバイオティクスはプロバイオティクスとプレバイオティクスの相乗効果を得ることができるため、腸内環境を整えることに非常に有効とされています。

4-1-1.プロバイオティクス

納豆

生きた有用菌を含む食品とは、乳酸菌・ビフィズス菌、麹や酵母により発酵した発酵食品やこれらを含む製剤などがあります。

具体的には、発酵調味料としては納豆・麹漬け、甘酒、味噌や塩麹などがあります。またヨーグルトや発酵飲料などもプロバイオティクスと呼ばれています。スーパーに置いてあるものが多く、毎日の食生活に取り入れやすいことが特徴です。

4-1-2.プレバイオティクス

プレバイオティクスとは、腸内の有用菌が腸内代謝物を生み出すために必要なエサになる食品です。プレバイオティクスを食べることで、腸内の有用菌は発酵を起こし腸内代謝物を産生し、腸内環境を整えます。

腸内の有用な常在細菌を育てるプレバイオティクスとして代表的な食品が食物繊維やオリゴ糖です。

4-1-3.食物繊維(水溶性・非水溶性の違い)

キャベツ

食物繊維は人の消化酵素で消化されずそのまま大腸まで届き、腸内の常在細菌(有用菌)のエサとなって腸内環境を改善する効果があります。食物繊維は水に溶ける「水溶性」と水に溶けない「非水溶性」の2つのタイプに分けられます。

水溶性食物繊維は、腸内の有用菌のエサとなるため、有用菌が腸内代謝物を産生し、腸内環境を整える要因になるものです。

一方で非水溶性食物繊維は、有用菌のエサにはならないものの、腸運動を活発化させ便通を改善させる必須な栄養素です。また有用菌が快適に過ごせる環境を作り与えます。

プレバイオティクスとして代表的な食物繊維は以下の通りです。

・水溶性食物繊維…リンゴ・プルーンなどの果物類、わかめ・昆布などの海藻類、こんにゃく、キャベツ・大根などの野菜類

・非水溶性食物繊維…きのこ、豆類、雑穀類、葉物野菜など

ゴボウやニンジンなどの根菜類やアボカド、納豆などは水溶性と非水溶性食物繊維の両方が多く含まれています。

4-1-4.オリゴ糖

オリゴ糖は砂糖の代わりとなる自然界に存在する甘味料です。シロップタイプや顆粒・粉末タイプなど用途により使い分けできるようにさまざまな形で販売されています。

オリゴ糖を選ぶ際のポイントは、原材料表示をきちと確認することです。大半のオリゴ糖は問題ありませんが、「イソマルトオリゴ糖」は一部小腸で消化され大腸まで届かないことがあるため効果が不十分といえます。

また「オリゴ糖」と表示されていても原材料に「ブドウ糖」や「人工甘味料」が含まれているものがあります。必ずオリゴ糖の純度が100%のものを選びましょう。

5.毎日の小さな心がけが大切

いかがでしたか。

健康的で美しい肌を保つには、「肌フローラ」のバランスを保つことが大切だということがわかりましたね。

そして、肌フローラのバランスを整えるには、「適切な洗顔と保湿」が必要で、これを守り続けることで適切な皮脂分泌が保たれる。

皮膚の常在細菌が皮膚に分泌された皮脂をエサにすることで有機酸をつくりだし、この有機酸がお肌を「弱酸性」に導く、というメカニズムでした。

腸内だけでなく、肌にも存在する、たくさんの細菌。
私たちの肌の健康は、この細菌たちの連携プレーによって守られているということですね。

そのためにできることとしては、「毎日の丁寧なスキンケア」。
そして、内側からのアプローチとして、腸内環境を整える「シンバイオティクス」という食事法もおすすめです。

どちらも、毎日の小さな心がけですが、肌も腸も、そして細菌も、“大切に育む”という意識をちょっと持つだけで、なんだか自分が愛おしくなるような感覚になります。

ぜひ、今より少しだけご自分を丁寧に扱うことで、心も体もいつまでも健やかな日々が送れますように。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

廣江 好子

【ライター】

美容・健康ライター。
ダイエッター歴○十年から脱却した、美を愛するアラフォー健康オタク。
趣味は料理と筋トレ。

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