生理前に続く微熱…毎月続くつらい症状を乗り切るために必要な7つの知識
こんにちは。WELLMETHODの廣江です。
一般的に、女性の体は生理前になると体温が上がり、微熱が生じます。
体が少し温かくなるだけなら良いのですが、人によっては熱っぽくなったり、頭痛や腹痛など、さまざまな症状が出ることもあります。
しかも、風邪が流行っている時期に体温が上がると、生理前の影響なのか、それとも風邪をひいてしまったのかわからず、心配になることもあるでしょう。
とくに新型コロナウイルスが問題になっている最中では、微熱でもウイルスに感染してしまったのではないかと不安になりますよね。
そもそも、女性はなぜ生理前になると微熱がでてしまうのでしょうか。
今回は生理前に微熱がでてしまう原因や、正しい基礎体温を測る方法などを紹介します。
また、生理以外の微熱の見分け方や、生理前に起こる微熱以外のつらい症状などについても、詳しく解説します。
目次
1.微熱とは?
一般的に微熱は37.0~37.9℃の体温を指し、体熱感がある場合をいいます。
ただし人によって個人差があり、もともとの体温によっても違いがあります。
例えば平熱が35℃台といった低い人の場合は、36.5℃程度になると微熱だと感じることもあるでしょう。
(低体温は、免疫機能や卵巣機能など体のあらゆる機能が低下しますので放置することはよくありません。)
また、季節や時間帯によっても体温は変化するため、37.0℃以上が必ずしも微熱とはいえません。
女性が微熱を出す要因は、生理前や妊娠中といった生理的現象が原因である場合と、風邪をひくなどといった軽い体調不良や治療が必要な慢性炎症を伴う疾患が挙げられます。
ただ、生理前の微熱は一般的に毎月起こるため、この時期に風邪をひくと病気かどうかの判断がつきにくくなってしまいます。
2.生理前に微熱が続く原因
女性が生理前に微熱が続くのは生理的な現象の一つです。
そもそも女性は生理の周期的なリズムで体温が変動します。
とくに、排卵後から生理前は黄体ホルモンであるプロゲステロンが体内にたくさん分泌放出され、これにより体温が上がります。
この体温が高くなる時期を「高温期」といい、普段より体が火照ったり、イライラしたりする人もいます。
プロゲステロンはたくさん放出されると脳の体温中枢に「基礎体温を上げなさい」という指令を出します。
これにより生理前になると体温が上がり、元々の体温によっては37度を超える微熱が続くこともあるのです。
そしてプロゲステロンの量が減り、生理が始まると、体温も下がります。
生理中は体が冷えやすいともいわれますが、その原因の一つとして高温期が終わったことが挙げられるでしょう。
2-1.微熱が生理によるものなのか判断するには基礎体温を測る
女性の場合、高温期で微熱が続いているのか、それとも体調不良で微熱が続いているのか、わかりにくいこともあります。それを判断するには、基礎体温を測ることが大切です。
基礎体温計は一般的な体温計よりも細かな体温を測ることができます。
生理前の高温期の体温は、一般的に36.7℃~37.0℃といわれています。
もちろん個人差があり、これよりも低温だったり高温だったりすることもあります。まずは基礎体温を測り続け、自分の低温期と高温期における体温を調べましょう。
そして、生理前の微熱なのかそれ以外の原因なのかを判断するには、体に起きている症状から総合的に判断する必要がありますが、一つの判断材料として、低温期と高温期の体温の差がポイントになります。
高温期の体温は、低温期と比較して、0.3~0.5℃程度上昇します。
1℃以上高くなるのであれば、月経周期に伴う体温上昇というよりも、風邪をひくなど、何らかの体温上昇を起こす感染症が起きている可能性もあります。
また、高温期以外の時期に微熱が続く場合も、なんらかの炎症を引き起こす慢性の感染症や免疫疾患などが隠れている可能性が考えられます。
3.基礎体温の測り方
基礎体温は朝起きたらすぐに舌の下に婦人体温計を挟んで、検温します。
婦人体温計以外の体温計は誤差が出て正確に測れませんので、必ず婦人体温計を使用しましょう。
起きてすぐに布団の中で体温を測る理由は、正しい基礎体温を知るには安静時の体温を測る必要があるからです。
基礎体温とは、体が必要最小限のエネルギーしか消費していないときの体温をいいます。
つまり、本来であれば寝ている間の体温を知りたいのですが、それは難しいため、起きたての安静時に熱を測る必要があります。
体を動かしてしまうと正しい基礎体温を測ることは難しいので注意しましょう。
一般的に女性の体温は、プロゲステロンの分泌に合わせて変動します。
毎日基礎体温を測ることにより低温期、排卵期、高温期の時期がわかり、体調を整えることにも役立ちます。
低温期から高温期へ移行する時期は排卵が起きるタイミングです。
排卵期は妊娠しやすい時期であることから、基礎体温をつけることにより、妊活にも役立てることができます。
3-1.正常な基礎体温と正常でない基礎体温
基礎体温を測ってグラフに記載すると、体のホルモンバランスが正常な場合は低温期と高温期の二層に分かれます。
例えば月経が28日周期の場合、月経の初日から排卵までの約2週間は36.0℃前後を中心とした低温期になります。
そして2週間目あたりに排卵が起こると、そのあとはプロゲステロンの分泌が始まり、低温期より0.3~0.5℃高い36.5℃以上の高温期が続きます。
この状態を1ヵ月間の表にすると、基礎体温が二層に分かれるのが判断でき、ホルモンバランスが正常なことがわかります。
しかし、二層に分かれない場合はホルモンバランスが乱れていることが考えられます。
なかなか体温が上がらず低温期が続く場合は無排卵の可能性もあり、反対に高温期が続く場合は、体調不良や炎症性疾患、また、妊娠していることも考えられます。
3-2.生理がきて基礎体温が下がっていれば生理による微熱
体に微熱が続くとき、それが生理前の微熱なのか、体調不良による微熱なのかわかりにくいこともあります。
それを判断するには、自分の基礎体温の変動をしっかりと知ることが大切です。
基本的に女性の身体は、生理のあとは体温が低い低温期となり、排卵が起こるタイミングで体温が上昇し、高温期が続きます。
つまり、微熱が続いても生理がきたときに基礎体温が下がれば、生理による微熱だったと判断できます。
反対に生理がきてもなかなか微熱が下がらないときは、他に原因があると考えられるでしょう。
3-3.生理以外の理由の微熱
生理が来ても微熱が下がらない場合は、
・自律神経失調(更年期障害に伴う場合、ストレスに伴う場合など)
・風邪などのウイルスや細菌などの感染症
・自己免疫疾患(膠原病やバセドウ病、血管炎など)
・慢性炎症を伴う疾患(悪性腫瘍など)
風邪をひいた場合は微熱だけでなく、寒気がしたり、喉がイガイガしたり、頭痛が起きたりもするでしょう。
しかしそのような症状がなく、年齢が40歳前後といったゆらぎ世代の場合は、更年期による微熱の可能性もあります。
更年期を迎えた女性のホルモンバランスは乱れており、自律神経が不調を起こすこともあります。
これにより本来は高温期から下がるはずの基礎体温が下がらず、生理が来てもなかなか体温が下がらないこともあるのです。
とくに微熱が続くだけでなく、普段から動機・息切れ・イライラや不安感が続く場合は要注意です。
これらは更年期障害によくみられる症状であり、ホルモンバランスの乱れが微熱を継続させていることも考えられます。
急な感染症であれば、急に熱が上がりますが、慢性的な感染症や自己免疫疾患や悪性腫瘍など慢性的に炎症が起きる疾患では、微熱がだらだら続く傾向があります。
更年期やその他の生理前以外の微熱の理由として考えられる原因についてはこちらをご参照ください。
https://wellmethod.jp/slight_fever/
4.生理前におけるつらいPMS症状
女性の微熱が続く原因はいろいろあるものの、生理前はエストロゲンの働きによりどうしても微熱が続きやすくなります。
こうした微熱は生理現象の一つであるものの、微熱と同時に生理前にはさまざまな不快症状が起きることもあり、それはPMS(月経前症候群)と呼ばれています。
PMSは、月経が起こる3〜10日前の黄体期の間に続く、精神的、身体的症状です。
イライラやのぼせ、下腹部痛、腰痛、頭痛、乳房痛、落ち着かない、憂うつなどが起こりやすくなります。
いずれも生理がくると症状は落ち着くことが多いのですが、生理のたびにこうした不調に悩まされている女性も多いです。
月経がある女性に多い「かくれ貧血」でも、PMSの症状が重くなる可能性があります。特に、イライラや落ち込みなどの精神症状が強ければ、鉄不足を疑ってみても良いでしょう。生活習慣が乱れている場合も、症状が悪化する可能性がありますので、まず日常生活を整えましょう。
▼もしかして「隠れ貧血」?医師が教えるセルフチェックで不調の意味を考えよう
https://wellmethod.jp/indefinitecomplaint_hiddenanemia/
あまりにもPMSの症状が重い場合はピルや漢方薬で治療ができることもあるので、無理をせず医師に相談しましょう。
PMSの詳しい対処法についてはこちらをご参照ください。
▼このイライラは更年期障害かPMSか!? わかりにくい症状の見分け方
https://wellmethod.jp/menopause-or-pms/
5.生理前のつらい時期を乗り切るための改善策
生理前の微熱は、基礎体温を測ることである程度、熱が上がる時期を予測することができます。
今月もまた微熱が続く、といった場合でも、基礎体温を測っていれば「生理前に起こるいつもの微熱」と判断できるため、不安にならずに済むでしょう。
しかし、生理になっても微熱が続く場合は、その他の理由が考えられるため自己判断は危険です。
とくに次のような症状が強いときは、医療機関に相談しましょう。
・頭痛や腹痛といった微熱以外の症状が強いとき
・微熱以外の症状が1週間以上続いて改善が見られないとき
・解熱剤を使っても薬の効果が切れるとまた熱が上がってしまうとき
(注:解熱剤をむやみに使うとリスクがありますので自己判断では使わないようにしましょう)
とくに2020年以降は新型コロナウイルスが流行していることもあり、生理以外の微熱が続くと不安なこともあります。
新型コロナウイルスの場合は、風邪のような上気道症状を伴うことが多く、一般的な風邪やインフルエンザとも見分けがつきづらくなります。
新型コロナウイルスを疑う場合は、一般の医療機関に受診しても診察ができません。
インフルエンザとの見分け方や、新型コロナウイルスを疑う発熱がある場合の対処は、こちらをご参照ください。
▼新型コロナの冬、インフルエンザとの見分け方や発熱時の対処法は?
https://wellmethod.jp/new-corona-and-influenza/
新型コロナウイルスを疑う場合を例外として、体調の不良が続くときは無理をせず医療機関に相談しましょう。
そして生理前の微熱であっても、人によっては頭痛の症状や不安感、腹痛などに悩まされることもあります。
こうした月経前に起こるPMSがつらい場合は、まず、鉄不足があれば補い、ライフスタイルを整えてみましょう。
それでも症状が軽快しない場合には、産婦人科に相談しましょう。
PMSはその人の症状に合わせてピルや漢方で治療ができます。
毎月起こる生理前の不調を我慢していると、婦人科系の病気がかくれていることもあるので、定期的に婦人科を受診することも大切です。
6.基礎体温をしっかりと測り、微熱とうまく付き合っていこう
生理がある女性では、毎月生理前の高温期に微熱が続くこともあります。
体調が良いときはその状態をうまく受け入れられるのですが、疲れていたり寝不足が続いていたりすると、微熱のある体をうまくコントロールすることができません。
そんなときはつい「この微熱は何からくるものなのか」と心配になってしまうでしょう。
微熱とうまく付き合うためには、毎朝しっかりと基礎体温を測ることが大切です。
自分のホルモン分泌のリズムを知ることで、微熱の時期も予想でき、体調をうまくコントロールすることができます。
まずは自分の体温を継続して測り、微熱が続く時期を予測することから始めていきましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか