ハイヒールを履いても痩せません! 監修医・桐村里紗の「スニーカーのススメ」
皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。
新型コロナウイルスの感染拡大で続くこの自粛生活・在宅生活をポジティブに捉え、これまでの不健康や無駄をリセットしてライフスタイルを一新するための知恵と技をお伝えしたいと思います。
ハイヒール通勤やハイヒールでお洒落をしていた女性の皆さんへ。
今こそ、スニーカーに履き替えて、衰えた足の筋肉を動かして、むくんだ足をすっきりスリムにする時が来ました。
普段悩んでいた肩こりや頭痛、腰痛は、実はハイヒールで歩いていたからかも知れません。
地面を蹴りながら歩けば、肩こりや頭痛も解消し、顔のたるみの改善やダイエットにも!
1.ハイヒールはこんなにも不健康だった
「お洒落には我慢がつきものよ!」と、ハイヒールを頑張って履いていた女性の皆さんも、外出の機会と言えば、日用品を買うスーパーマーケットのみとなった今では、ヒールを靴箱にしまいがちになっているのではないでしょうか。
でも、ここで発想の転換です。
「お洒落には機能性も大切よ!」と考えるニューヨーカーをお手本にしてみてはどうでしょう?
通勤と言えば車というアメリカの他の地域とは違い、ニューヨークシティは日本の都市部と同じく、主に電車通勤です。
ニューヨークのキャリア女性達は、通勤時はスニーカーを履き、仕事時はハイヒールに履き替えるのが一般的なスタイル。
彼女達は、スニーカーを履いて、しっかりと足を使って健康的に歩いています。
ハイヒールは一旦大切に保管して、スニーカーをスポーティーに履きこなしながら、足を思いっきり使ってこれまでのヒールによる不健康生活をリセットしましょう。
1-1.ハイヒールにまつわる勘違い
ハイヒールは女性の立ち姿を美しく見せてくれる魔法の靴とは言え、ずっと履いていると逆に大根足の原因にもなります。
「筋トレ」や「美脚」目的で履いている人もいるようですが、ハイヒールを履いていると歩行時に足のふくらはぎの筋肉がうまく動かなくなる上に、姿勢を保てない為に、全身にも影響が出てしまいます。
1-1-1.勘違い①:ハイヒールで美脚になる
通常、フラットなシューズで歩行をすると、踵から足をつき、全体に体重を乗せ、最後にはつま先で地面を蹴るというように、足の裏全体を使って歩行します。
膝がしっかりと伸び、足全体の筋肉をバランスよくしっかり使うことができます。
ハイヒールを履くと、常に爪先立ちになり、足首の動きが固定されてしまう為に、ふくらはぎの筋肉が伸び縮みしません、また、歩行時に、膝が伸びきらず、太ももの前側の筋肉が緊張を強いられる一方で、太ももの外側から後ろ、臀部にかけての筋肉は十分に使うことができません。
つまり、フラットなシューズでは、足から臀部の筋肉をバランスよく使うことができる一方で、ハイヒールでは、特定の筋肉に過度な緊張を強いる一方で、その他の筋肉は使わないことになるので、アンバランスになってしまうのです。
太ももの前側が筋肉質に太く張り、お尻の硬い女になるとお伝えしておきましょう。
1-1-2.勘違い②:ハイヒールで痩せる
太ももの前側と後ろ側、そして臀部の筋肉は、全身の筋肉の50%をも占める大きな筋肉です。このうち、太ももの後ろ側のハムストリングスと呼ばれる筋肉と臀部の筋肉を十分に使えないことは、筋肉によるエネルギー消費を低下させる原因になります。
1-1-3.勘違い③:ハイヒールでヒップアップする
さらに、太ももの後ろ側の筋肉が動かないと、ヒップアップどころかタレ尻になるリスクもあります。お尻の内側にある筋肉は硬直する一方で、一番外側にある筋肉は緩んでしまうことになります。
ヒールを履き続けると、ヒールを脱いだ後も、筋肉を上手に使えなくなり、姿勢も悪いままになる為、筋肉のアンバランスから歪みを引き起こし、全身に様々なデメリットを引き起こしてしまいます。
2.ハイヒールのもたらすデメリット
2-1.むくみ足
ハイヒールを履いて歩くと、歩行で足を前後に動かす際に、足首が動きません。
足首を動かす動作は、ふくらはぎの筋肉・ヒラメ筋を伸び縮みさせます。
ヒラメ筋は、第2の心臓と呼ばれ、伸び縮みすることでポンプの役割を果たし、足の血液を重力とは逆に上へ上へと戻す働きをしています。
ヒールを履いて足首が動かないと、このポンプが働かない為に、血液やリンパ液がひざ下にたまり、むくみの原因になります。
夕方だけのむくみに止まっているうちならまだマシですが、そのうち戻らなくなると足首のくびれがなくなり、大根足化してしまうことに。
2-2.冷え性
同様に、ヒラメ筋のポンプ作用が働かないと、足の血流だけでなく全身の血流が滞ります。
末端冷え性に止まらず、全身の筋肉の冷えに繋がります。
2-3.外反母趾
筋力が弱く、関節も柔らかい傾向のある女性は、ハイヒールによって外反母趾にもなりやすい為、足に痛みを抱えがちです。
足の指が前に滑り、圧迫されることで、足の骨のアーチが消失し、親指が内側に傾き、外反母趾になります。
2-4.うおの目・タコ
外反母趾傾向になると、足の人差し指の付け根部分の足の裏の骨が突出します。
ここに体重がかかることで、うおの目やタコができ、歩くたびに痛みが出ると、歩行にも支障が出ます。痛みが出ないように歩くことで足の筋肉の使い方がおかしくなると、全身もアンバランスになります。
2-5.腰痛
人の姿勢は、足をしっかり地面についた状態で、踵と土踏まずの間あたりのやや内側に重心が来るのが理想的な状態です。
この重心にしっかり体重が乗ることで、姿勢よく保つことができます。
ハイヒールを履くと、体重をつま先で支えることになります。すると姿勢を保つことが難しくなり、膝が曲がり、腰が折れ、姿勢が悪くなりがちです。
腰の骨が前方に沿った状態になると腰に負担がかかる為に、腰痛にもなりやすくなります。
2-6.猫背
つま先立ちで体重を支えることはとてもアンバランスになりますから、体はこれを支える為に骨盤を前傾させると同時に、背中を丸めてバランスを取ろうとします。
極めて、意識を持って立たない限り、ハイヒールではピンと背筋を張った美しい姿勢を保つことができません。
2-7.肩こり・頭痛
姿勢を保つ為に、背筋にも余計な力が必要です。背中側の筋肉がこわばる為、腰から肩、後頭部にかけての筋肉がかたまりがちになり、こりの原因になります。
足のヒラメ筋のポンプ作用も働かないと、全身の筋肉の血流も低下してしまいますので、ますます凝り固まってしまいます。
その上にデスクワークなどで肩周りの筋肉を動かさないでいると、筋肉のコリによる筋緊張性頭痛まで引き起こしてしまいます。
2-8.顔のたるみ
全身の筋肉は、筋膜によって一つに繋がっており、顔の表情筋は足の筋肉とも連携しています。ハイヒールによって、足、足首やふくらはぎ、そして背部、首、頭の筋肉が十分に使えないと、額から連続する表情筋のたるみに繋がります。
3.健康にも美容にも悪かった
人間がつま先立ちで歩くのは極めて不自然です。ただでさえ、4足歩行の動物と違い、2足歩行になった人類は骨格に負担を抱えているのに、さらに負担を上げている状態です。
特に、踵が細いピンヒールは、上手く体重を支えられない為に、ゆらゆら揺れながら歩く姿勢がセクシーさの元にもなっていますが・・・。
下半身がなかなか痩せない原因として、骨盤の歪みや姿勢の悪さがありますが、これらはハイヒールを履き続けることにより起こります。
ハイヒールを履いて「美しさを誤魔化す」のではなく、本当にバランスのとれた美しさを目指すには、正しく脚を使い全身のバランスを取ることがとても大切になります。
4.スニーカーはこんなに嬉しい
お洒落の為に履くハイヒールは、実は健康にも美容にも悪いということを知った上で、「いざ!」という勝負時にポイント使いするのが良さそうです。
では、その代わりに、今から履く習慣をつけたいのが、スニーカーです。
人間にとって、足の裏をしっかり使って立つことは、全身の骨格のバランスをとり、筋肉をしっかりと使う為に重要です。
4-1.スニーカーを履くメリット
スニーカーを履くことで、これまでの不健康がリセットされて、メリットが色々とあります。
4-1-1.ハイヒールによるデメリットの解消
スニーカーを履いて歩くと、足首が動く為にヒラメ筋がしっかりと伸び縮みしますし、立位でのバランスが取れる為、ハイヒールの影響で起きていた以下のデメリットは、軒並み改善されていきます。
・むくみ
・冷え性
・外反母趾(改善までは難しく予防といったところでしょうか)
・うおの目・タコ
・腰痛や肩こり、頭痛
・猫背・姿勢
・顔のたるみ
それだけではありません。
しっかりと筋肉を使い、全身の血流が改善することでその他にもメリットがあります。
4-1-2.軽い有酸素運動効果を狙う
歩きにくい靴では、長時間歩くことはできません。
ヒールを履くと引き締め効果が!と言われますが、足の筋肉を正しく使って長時間歩くことができないため、有効な運動になるかと言えば、そうはなりません。
足にフィットした歩きやすいスニーカーを履くことで、普段よりたくさん歩こうという気になり、歩数を稼ぐことができます。
スニーカーを履いて、正しい姿勢で大股で腕を振りながら軽く息が上がる程度の早歩きをすると、それだけでも軽い有酸素運動になります。
外出の機会が少ない今、すぐにスーパーに直行するのではなく、少し遠回りして公園や河川敷などを一周してみるのも良いですね。密にならないように社会的距離をとり、人と接する際はマスクを着用して配慮しながら、上手に身体を動かしたいですね。
4-1-3.脳機能の改善を狙う
家で座りっぱなしの生活を送っている人は、脳の様々なあらゆる機能が低下してしまいます。
西オーストラリア大学のグループの研究で、中強度の歩行を日常に取り入れることによって、記憶や学習などの脳機能を維持するために必要な神経栄養因子(BDNF)が増加することがわかっています(※)。
だらだらと歩くのではなく、キビキビと大股で早歩きで歩くことが大切で、その為にも、歩きやすいスニーカーが理想的と言えます。
※British Journal of Sports Medicine(29,April,2019)Wheeler MJ, et al.
5.お気に入りのスニーカーで歩こう
私自身も、最近はハイヒールを日常で履くことがかなり少なくなりました。
ハイヒールで歩くと肩こりも酷くなる上に、外反母趾になりやすいエジプト型の足も手伝ってか、右足がやや外反母趾気味で長時間のハイヒールは足が痛くて歩くことができません。
コロナの自粛期間前に、セレクトショップで購入していたナイキのスニーカーは、デザイン性も可愛い上にエアがしっかりと入り、クッション性も抜群。長時間歩いても全く疲れません。
履くだけで気分も上がりますし、歩くとどんどん元気になります。
カジュアルなスタイルだけでなく、スカートやかっちり目のジャケットスタイルにも、このスニーカーを合わせています。
各スポーツブランドでは、機能性もファッション性も兼ね備えたスニーカーが取り揃っていますし、普段のオフィススタイルにも使えるようなデザインのものも発売されています。
これを機に、ハイヒールには少しお休み頂いて、スニーカーを相棒にしてみてはいかがでしょうか?
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
- facebook
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか