春に感じるだるさは自律神経の乱れが原因! 「春バテ」チェックと予防策
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
「春になると、体がだるく感じる」
「春に限って不調の日が続く」
「季節の変わり目はだるくなる」
みなさまは春になるとこんな症状に悩まされることはありますか。
厳しく寒い冬を越え、あたたかな日差しとポカポカ陽気…さまざまな草木が芽吹き、花も咲き始め、穏やかな一日がはじまる…春は素敵な季節ですよね。
でもなぜだか、この時期に限って調子がイマイチ。
普段通り過ごしているはずなのに、だるい、眠い、スッキリしないなど感じる方がいるのではないでしょうか。
実は筆者も、春になると調子がいまひとつと感じる一人でした。
毎年、新年度を迎えるこの季節には「心も体も心機一転、頑張ろう!」と張り切るのですが、なぜだかだるさや疲労が残り、頭が冴えない、調子が上がらないことが多く、悩みの一つでもありました。
「春だから仕方ないね」なんて、同僚と話すことがありましたが、実はこの春のだるさは「春バテ」とも呼ばれており、きちんとした原因があります。
この春のだるさと体の不調はどのような関係があるのでしょうか。
今回は、季節の変わり目に起こる「春のだるさ」について、チェックリストや予防策なども含め解説していきます。
このだるさの原因を「春だから仕方ない」「精神的なものかな」とあきらめる前に、しっかりと理解して予防策を立て、素敵な春を過ごしましょう。
目次
1.春は1年の中でもっとも不調を感じやすい季節
四季のうち、春はもっとも気圧変動が大きく、寒暖差も激しい季節です。
この激しい気温の変化は、自律神経の日中活動時に働く交感神経と夜間のリラックスするときに働く副交感神経のバランスを乱れやすくします。
その結果、だるさや疲れなど体の不調を感じやすくなります。
さらに、春は入学や異動・転勤・新生活など生活が大きく変化する季節です。
環境的な変化により普段よりも緊張する機会やストレスを感じることが多く、自律神経が乱れやすくなります。
2.春にだるくなる原因とは
春にだるくなる原因として、寒暖差、気圧の変化、日照時間の変化、生活環境の変化などによる自律神経の乱れ、さらに花粉症などが影響していると考えられています。
花粉症などのアレルギーは、副交感神経の働きによって反応が強くなるため、関連しています。
2-1.激しい寒暖差
自律神経の働きの一つに、体温の調節があります。
例えば、寒い日は筋肉をふるわせて体温を上げようとし、暑い日は汗をかいて体を冷やそうと体温をコントロールしています。これは交感神経の働きです。
春は、基本的には寒さが緩むため、交感神経から副交感神経にモードチェンジするタイミングです。
しかし、寒暖差の激しい春では、その環境に順応するために交感神経と副交感神経の入れ替わりが激しくなり、その結果疲弊してしまうため、体は疲労を感じやすくなります。
自律神経は体温調節の他にも内臓や体の器官をコントロールしています。
この現象が長く続くと自律神経が乱れ、体調不良をはじめ内臓の働きが悪くなったり、精神的に不安定になりやすくなります。
2-2.気圧の変化
春にだるさを感じやすい原因には、気圧の変化もあげられます。
春は高気圧と低気圧が頻繁に入れ替わり気圧の変動が起こりやすい季節でもあります。
本来、気圧の変化は、耳の奥の「内耳(ないじ)」という部分で感知します。
内耳には三半規管(さんはんきかん)という平衡感覚を司る器官があり、内耳により感知した信号や視覚から得た情報、手足などの体の動きを脳で統合して処理する働きがあります。
さらに内耳には、気圧の変化を感知し、脳に信号を送り、体を環境に適応させるための働きがあります。
自律神経はこの送られた信号に対し、体の働きを調整します。
しかし、内耳の機能が低下していると、この信号がうまく伝わらず、環境への適応がうまくいかなくなります。
また、自律神経が乱れている人は、信号が伝わったとしてもうまく適応することができません。
さらに、気圧が変化したという信号が脳に送られたとしても、視覚的に問題なし、となると情報にズレが生じるケースもあります。
その結果、内耳と視覚からの情報にズレが生じることで、めまいを起こすという反応につながります。
2-3.日照時間の変化
春は冬に比べてだんだんと日照時間が長くなります。
人間の体内には、環境の変化に応じて体温コントロールやホルモン分泌を行い、1日の体のバランスを整えている体内時計が備わっています。
冬から春にかけて日照時間が変化することで、体内時計が調整され、内臓の働きが環境に適応するのですが、自律神経が乱れていると、この適応が難しくなります。
生活リズムが崩れると、自律神経が整いにくくなり、体調が崩れやすくなります。
2-4.生活環境の変化によるストレス
春は新年度がスタートする大切な時期です。
進学・卒業・就職・転勤など自分自身や家族など身の回りで大きな変化が起こる季節でもあります。
そのため、普段よりも気を使う、あれこれ考えるなど、緊張感やストレスをいつも以上に感じやすくなります。
緊張感やストレスは自律神経に影響を与え、バランスが崩れやすく体の不調を起こしやすくします。
2-5.花粉症の影響
花粉症を患っている場合、春はだるくなりやすい傾向にあります。
さらに、自律神経が副交感神経モードに傾くと、免疫の状態が変化しアレルギー反応を起こしやすくなります。
花粉症は、花粉から体を守ろうとしている防衛反応です。
花粉症は、鼻づまりによる息苦しさやくしゃみによる睡眠の中断など、睡眠の質が低下する原因にもなります。
その結果、日中は頭がボーっとしたりだるさが続いたりすることがあります。
また、花粉症の治療薬である抗ヒスタミン薬を飲んでいる場合、副作用により眠気が起こることがあります。
そのため日中の眠気や体のだるさを感じることもあります。
▼花粉症によるつらい眠気症状どうしたらいい? 快適に過ごすための花粉対策
https://wellmethod.jp/hay-fever-drowsiness/
3.そのだるさは春のだるさが原因? 春のだるさのチェックリスト
春にだるさが続いている場合、その症状は自律神経の乱れによるものなのでしょうか。チェックリストで確認してみましょう。
次にあげる10の質問のうち、2つ以上当てはまったら要注意です。
<自律神経の乱れチェックリスト>
(1)めまい・耳なり・立ちくらみが多い。
(2)呼吸が浅く、十分に吸えない感じがする。
(3)手足が常に冷たい感じがする。
(4)胃腸の調子が悪いときが多い。
(5)全身が重だるいときが多い。
(6)顔や手足だけ汗をかく。
(7)朝、起きるときに疲労感がある。
(8)季節・気候の変化に弱い。
(9)睡眠が浅く、寝ても寝足りない。
(10)更年期ではないが、月経が乱れている
生活リズムを整えることが基本ですが、日常生活に支障があるなど、気になる症状がある方はその症状にあった病院の受診をおすすめします。
4.春のだるさにならない予防策
春のだるさを解消するためには、自律神経を整えることが効果的です。
自律神経は、昼間など活動するときに活発になる交感神経、夜間などリラックスするときに活発になる副交感神経によりバランスが保たれています。
まずは、このリズムを整えることから意識しましょう。
4-1.睡眠のサイクルを見直す
自律神経を整えるためには、体内時計のリズムを崩さないことが大切です。
体内時計とは、もともと体に備わっている時計のことで体のさまざまな生体リズムを調節する働きがあります。
朝に自然と目が覚める、夜は自然と眠くなる現象も体内時計が関係しています。
体内時計を整えるために、朝起きたらまずはカーテンを開けて明るい日差しを浴びることが大切です。
また、夜は頭を使う仕事は行わず、ゆったりリラックスしてから就寝しましょう。
とくにスマホやPCのブルーライトは交感神経を刺激するといわれています。
夜は意識的に電源を落とすなどして、寝る前は使用を控えるようにしましょう。
▼【医師が解説】“良質な睡眠”をつくるために毎日やるべき習慣・やめるべき習慣
https://wellmethod.jp/sleep_hormones/
4-2.シャワーと入浴で自律神経のスイッチを切り替える
自律神経は、朝晩のお風呂の入り方によっても整えることができます。
朝は熱いシャワーを浴びることで交感神経が活発化します。
そのため、朝シャワーを浴びる方は熱めのシャワーで体を目覚めさせましょう。
一方、ぬるめのお湯にゆったり浸かることで体がリラックスする副交感神経が活発化します。
そのため、夜の入浴では、40度前後のぬるめのお湯にゆったり浸かりましょう。
さらにメリッサ・カモミール・ラベンダーといったアロマを使用すると効果的です。
お風呂の電球をオフにして、キャンドルを焚き、ゆらゆらした火をぼんやり眺めることも心身をリラックスさせるのに最適です。
就寝前には、内臓の温度が少し冷えることも必要です。そのため入浴は就寝の1時間前に済ませるようにしましょう。
4-3.夜の血糖値が上がらない食生活を意識する
「夕飯後のデザートはかかせない」と毎日食べている方はいませんか。
良質な睡眠をとるためには、食生活の見直しも大切です。
とくに体の血糖値を上げる食材には注意が必要です。
良質な睡眠は、睡眠時に分泌される成長ホルモンが影響しますが、血糖値が高いと成長ホルモンが上手く分泌されず、睡眠の質が低下します。
また、血糖値が高くなると、体内のインスリンが分泌されて低血糖になりやすくなります。
夜間に低血糖になると、交感神経が刺激され眠りが浅くなることがあります。
そのため、夜の炭水化物や糖質はできるだけ控えめにするよう心がけましょう。
また、ぐっすり眠るためには、寝る前の3~4時間前までに食事を終えるように意識しましょう。
4-4.食事は1日3回とる。とくに朝食はしっかり食べましょう
自律神経を整えるために1日3食をきちんと取ることが大切です。
とくに朝食は、寝ている間に下がってしまった体温や血糖値を上げ、体を目覚めさせる役割があります。
胃腸が目覚めない段階で「ガッツリ」と食べる必要はありませんが、消化の良い味噌汁やスムージーなど、何かしらお腹に入れて胃腸を刺激すると体内時計も調整されやすくなります。
さらに、リズムよく噛むことで脳では安らぎを感じるセロトニン分泌が高まります。
普段からしっかりと噛む習慣をつけましょう。
朝、体を目覚めさせるためには、コップ一杯の白湯を飲むことも効果的です。
血の流れが良くなり、体が覚醒するとともに腸も刺激されて便秘も改善します。
4-5.適度な運動を取り入れましょう
体を動かす機会がない方は、適度に運動する時間を取りましょう。
リズム感のある運動は、セロトニンが分泌されるだけではなく、睡眠が改善し、ストレス解消にもつながり、心身ともにリフレッシュすることができます。自律神経を整えるためにも効果的です。
ウォーキングや軽めのランニング、水泳などもおすすめです。運動する時間がなかなか取れない人はストレッチをするだけでも効果的です。
4-6.温度調節のできる服装を心掛けましょう
日中はポカポカ陽気でも朝晩は冬のように冷える…など、春は1日の寒暖差が大きい季節です。
このような温度変化に体を適応させるために、衣類による温度調節は必要不可欠です。
着脱のしやすい薄手のカーディガンやシャツを重ね着したり、ストールや手袋などを上手に活用しましょう。
5.春のだるさを解消し、スッキリした気持ちの良い春を過ごしましょう
春のだるさの根本的な原因となる季節の変わり目ですが、生きていく上では避けられません。
毎日をスッキリといきいきすごすためには、それに対応した予防策を行うことが大切です。
春はなにかと忙しい季節です。
なかなか自分のために時間がとれない私たちの世代であっても、ちょっとした心がけで生活の質が上がります。
「春だから仕方ない」「とても具合が悪いわけじゃないから大丈夫」と我慢するのではなく、できることから少しずつ心がけてみてはいかがでしょうか。
筆者自身も、朝起きたら陽の光を浴びる、夜に甘いものを食べないなど、生活のリズムを意識することで体がスッキリして調子がぐんと上がるようになりました。
生活習慣を見直して毎日の行動を意識することで、「今日は調子がいいな」など体のバロメーター代わりにもなりますよ。
自分の体を大切に、毎日を快適にいきいきした生活を送りましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。