こんにちは、WELLMETHODライターの吉岡です。
突然ですが、年齢を重ねるたびに「なんだか胃が重い」と感じることはありませんか?

若い頃はハンバーガーや揚げ物、ステーキなどをパクパク食べることができたのに、このような食事をすると、とたんに胃が重くなってしまう中高年は多いと聞きます。

また、脂っこい食事を控えているのに、食事のあとは決まって胸やけがするという人もいるようです。
実は、胃腸の調子は更年期と大きく関わりがあり、ホルモンバランスが崩れることにより胃が重くなることもあります。

ここでは、更年期における胃の不調やその理由、どうすれば胃のトラブルを防ぐことができるのかを、徹底解説します。胃が重い女性

1. 更年期になると胃が重くなる

更年期を迎えた女性の多くが、胃腸にトラブルを抱えていることがわかっています。
過去に厚生労働省が行った調査によると、50代女性における胃腸の不調を訴える人は3人に1人もいると発表されています。

そもそも胃腸は、40代を過ぎたあたりから胃の内部にある粘膜が減少してしまうため、男女を問わず胃腸機能は衰えてしまうのです。

特に女性の場合、更年期障害によってホルモンバランスが崩れ、自律神経が乱れることで胃の重さや痛みにつながることも多いです。
そのため、40代を過ぎた女性は、日頃から胃腸に負担をかけない生活が大切です。

2. 胃の重さはこのような症状がある

一言で「胃が重い」と言っても、人によって症状にはさまざまな違いがあります。次のような症状は、主に中高年に多い胃のトラブルです。 

2-1. もたれた感じ


胃がもたれた場合、胃が重苦しく張ったような症状を感じる人が多いです。

胃には「ぜん道運動」と呼ばれる消化を促す働きがあります。

この働きが鈍ることにより、食べ物が胃に溜まる時間が増え、胃もたれを感じてしまうのです。

また、常に胃もたれを感じる場合は、機能性ディスペプシア、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎や慢性胃炎胃潰瘍といった病気が隠れている可能性もあり、注意が必要です。


2-2. あまり食べていないのに満腹感がある


中高年の場合、それほど食べていないのにお腹が張って満腹感を覚えることもあります。
これは胃腸の機能が衰え、胃の拡張が遅れたり、十分に拡張しなかったりすることで起こるトラブルです。

少しだけしか食べていないのに胃が張っているような状態なので、食事をあまり楽しめないといったデメリットがあります。

2-3. みぞおちにおける痛み


「胃が痛い」といった症状はよく見聞きしますが、中高年に多いのが「みぞおち辺りの痛み」です。

食事をした後に出る胃酸が刺激を起こし、胃の壁を刺激することで痛みが生じます。

また、空腹時に常にみぞおち辺りに痛みを感じる場合は「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」といった可能性もあります。


2-4. 胸やけ


胸やけとは、胸のあたりが焼けるような感じであったり、食べ物が胸のあたりに止まっているような違和感を覚えたりする症状です。

主な原因は胃酸の食道への逆流によるものであり、酸に弱い食道の粘膜が出過ぎた胃酸が食道に逆流してしまうことで逆流性食道炎を起こすことで、胸やけや胸の灼熱感を起こしやすくなります。

3. 更年期に胃が重くなってしまう理由

更年期を迎える世代に胃腸のトラブルが多くなるのは、主に次の2つの理由があるからです。
まずは「年齢による胃粘膜の減少」、そして「更年期障害によるホルモンバランスの乱れ」が原因の胃腸トラブルです。
ここからは、それぞれの内容について詳しく見てみましょう。


3-1. 胃粘膜の減少


人は年齢を重ねると、身体の機能が徐々に衰えてきます。

胃腸も例外ではなく、40歳あたりを過ぎたころから「胃粘膜の減少」が起きるのです。
胃は、食べ物をとると「ぜん動運動」という波を打つような動きをして、食べ物を消化します。

胃の粘膜は、ぜん動運動の際に食物の移動をスムーズにし、胃酸からのダメージを保護する役割があります。
しかし、この胃粘膜が減少することにより、胃の内部は胃酸からの刺激を受けやすくなり、胃痛などを引き起こしてしまいます。

また、胃粘膜の減少によって、食べ物の消化時間も掛かるようになるため、胃が重くなってしまうのです。

胃の炎症を引き起こすヘリコバクター・ピロリ菌が感染している場合にも、萎縮性胃炎を引き起こします。
この場合は、放置するとがん化のリスクもあるため、消化器内科に受診の上、除菌の検討も必要になります。


3-2. ホルモンバランスの乱れ


女性は更年期を迎えると、多くの場合ホルモンバランスが乱れてしまいます。

ホルモンバランスが乱れると自律神経が影響を受け、イライラ感やホットフラッシュといったトラブルを引き起こしてしまうのです。

胃腸は自律神経に強く影響されるため、更年期における自律神経の乱れは、胃腸の不調にもつながります。
「緊張して胃が痛くなった」ということはよく聞きますが、それは緊張感が自律神経のうち交感神経を刺激して、胃の機能低下や胃酸過多といったトラブルを引き起こすからです。

更年期はこのような状態が長く続いている状態とも言えるもので、ホルモンバランスの乱れが胃腸トラブルを引き起こしてしまうことも少なくありません。

4. まずは予防が大切!胃が重くなるのを予防する対策4つ

40代になると、胃腸の機能自体が衰え、更年期障害などの自律神経の乱れから、どうしても胃腸トラブルが起きやすくなります。
起きてしまった胃のトラブルは薬などで改善することもできますが、繰り返すことにより慢性胃炎などを引き起こす可能性があります。

そうならないためには、日頃から胃が重くならないような対策をすることが重要です。


4-1. 年齢を重ねたらよく噛むことを意識しよう


40代を過ぎると、胃粘膜が減少することから、胃が食べたものを消化する時間は長くなります。

過食するのはよくありませんが、少食が続くと、栄養不足になってしまいます。

タンパク質が不足することで、タンパク質を原料に分泌される胃の消化酵素の分泌がますます悪くなり、ますます食事が保たれるようになるという悪循環になります。

そのため、適量の食事をよく噛むことによって、しっかりすり潰し、胃で消化しやすい状態にしてから飲み込むと良いでしょう。

中高年の食事風景


4-2. 胃を刺激するものを控える
胃に優しい食べ物を意識して摂る

胃の粘膜を刺激する、唐辛子などの香辛料はおすすめできません。

また、カップラーメンやスナック菓子などの加工食品に含まれる油は、酸化した状態になっている為、胃に負担をかけます。

逆に、普段から胃に優しい食べ物ばかりを意識していると、徐々に必要な栄養素であるタンパク質や油が不足してしまい、女性ホルモンの分泌が低下することで、更年期障害を悪化させる可能性もあります。

消化しづらいタンパク質や油は、控えるよりも負担をかけないように工夫をして摂りましょう。

よく噛んで食べる他、肉であればミンチにする。油は、酸化させないように新鮮なうちに使い切り、一度揚げ物をしたら捨てるようにしましょう。


4-3 . お酒の飲み過ぎに注意


胃薬の CM などを見ると「飲み会前に飲む」といったような、胃腸薬の宣伝も多いです。
アルコールの飲み過ぎは、胃の粘膜を直接傷つけるため、胃に負担がかかってしまうのです。

また、おつまみには唐揚げやキムチといった胃に負担や刺激を与えるものも多いため注意が必要です。
アルコールの量は適度にし、おつまみも枝豆や冷奴など、胃に負担をかけないものを選びましょう。


4-4. ストレスは胃の大敵


ストレスは万病のもと、ともいわれているように、胃腸に対しても悪影響を及ぼします。
胃潰瘍の原因はストレスであることも多く、なかにはストレスが原因で胃から大量に出血してしまうこともあります。

適度なストレス解消が見当たらない場合は、まずはしっかりと睡眠を取ってみましょう。眠ることは自律神経のうち、胃の働きを改善する副交感神経の活動を高め、結果的にストレス解消につながります。

5. 更年期を改善し、胃腸対策にもつなげてみよう

女性における胃腸の不調は、更年期障害とも密接な関係があります。
更年期の症状で苦しんでいる場合 、胃がもたれるといった胃腸の不調を訴える方も少なくはありません 。

そこで、更年期症状を改善し、胃の調子も整えていく方法もおすすめです。


5-1. まずは食生活の見直し


更年期で苦しむ女性のなかには、食生活が乱れているケースもあります。

パンやスナック菓子、洋菓子ばかりを食べている女性は、血糖値の乱高下から自律神経が大きく乱れる原因になります。

普段の食事はバランスの良い「和食」を中心にし、野菜やおかずもしっかり食べて血糖値が上がりにくい食生活を心がけましょう。

お菓子の代わりにフルーツを食べ過ぎるのも、糖質を摂り過ぎる原因になります。


5-2. 日常に運動を取り入れる


更年期障害において、日頃の運動習慣がとても大切であるといわれています。

特に水泳やウォーキング、ランニングといった有酸素運動は、更年期症状のストレスを和らげることに期待ができます。

ジムなどに通わなくても、普段の生活に歩くことを取り入れるといった工夫をしてみましょう。

6. 年齢を重ねるにつれ胃腸対策は重要!

年をとるごとに「だんだん脂っこいものが食べられなくなった」「お酒を飲めなくなってきた」という話は多いです。
そう考えると、胃のトラブルは一番年齢を感じやすい場所なのかもしれません。

胃の粘膜は40歳を過ぎたあたりから減少してしまうため、消化をサポートしながら栄養が不足しないように食べる人が必要になります。また、つらい更年期症状を放っておくことも胃腸へのダメージにつながりかねません。

丈夫な胃腸を保つために、普段からできることを心がけていきましょう。

この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか

吉岡 みゆき

【ライター】
ライター、コラムニスト。1974年生まれ。
大手出版社のファッション誌編集部を出産を機に退社後、フリーライターとして活動中。
食育に興味があり、子供達に食べる楽しみや体を作る大切さを伝えていきたいと思う。
趣味は料理、ショッピング。夫と飲むワインが元気の源。

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