皆さま、こんにちは。
医師で予防スペシャリストの桐村里紗です。

この度、発売となりました、新著『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書) は、Amazonの「胃と腸の医学」で1位・ベストセラー入りをし(8月18日発売日において)、発売5日で重版が決定致しました。
多くの方に共感のお声をいただき、ありがとうございます。

『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』

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毎日のトイレで、体からアウトプットされる尿や便などの排泄物を観察して、体の内側の変化を早期に発見する方法を伝えします。
前回は、たくさんの情報がある尿の色や性状、ニオイの観察により、体内環境を推測する方法をお伝えしました。

▼【医師解説】家庭でチェック!毎日の尿の観察で病気や不調を発見

https://wellmethod.jp/urine-check/

今回は、便です。
以前から「トイレでは、毎日観便しましょう」と著書やclubhouseなどを通じて、皆様におすすめして来ました。

1.便の色や性状・ニオイの変化

便チェック

尿は、血液を濾過して作られるため、まさに体内の状況を反映しています。

便は、口から摂取した食べ物を消化管と腸内細菌が協力し合いながら分解して、栄養素を人の体内に供給した残りとして排泄されるものです。

便は、人にとっての「土壌」ですから、便の色や性状、ニオイが悪いということは、土壌が腐敗していることを意味します。
これでは、土壌に由来する体内環境も、細胞も健康にはなりません。

2.健康な便とは?

健康な便は、色は黄色〜黄土色に近く明るく、ニオイはなく、形はバナナ状で、水に浮き、拭いてもつかない。
これ以外であれば、食事や消化管に何かしらの機能的・基質的異常がある可能性があります。

便チェック トイレットペーパー

2-1.便の色は病気を見分けるサイン

1.白色

便が黄土色なのは、胆汁の色です。胆管閉塞などがあり便に胆汁が混ざらないと便が白くなります。
この場合、胆管に悪性腫瘍や結石などの異常がないか、精密検査をしなければ危険です。
皮膚や目が黄色くなる黄疸を伴います。

2.黒色

上部消化管出血の可能性があります。

胃や十二指腸などで潰瘍や悪性腫瘍から出血した血液が酸化されると真っ黒になります。
「海苔の佃煮」のような色の便が出たら、すぐに消化器科を受診して内視鏡を受けることを強くお勧めします。

3.赤色

便全体に赤色が混ざっている場合、大腸などの下部消化管からの出血による場合があり、潰瘍性大腸炎や大腸がんなどの疾患の可能性もあります。
ゼリー状の粘液を伴う粘血便があり、下痢や腹痛を伴う場合、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や大腸の赤痢など感染症の場合があります。

新鮮な血液が混ざっている場合、いわゆる切れ痔の場合や、肛門近くのがんなどの炎症に伴う場合もあります。

消化器科での内視鏡や肛門鏡検査(消化器外科・肛門科)受診をお勧めします。

4.黒褐色

真っ黒ではなく、焦げ茶色から黒褐色の場合は、「腸内環境が悪い」と考えた方が良いでしょう。
腸内に有用菌が多く弱酸性であれば、黄土色に近くなりますが、腐敗菌が多くアルカリ性に近いと色が濃くなります。
胆汁分泌が多いと、発がん性の高い二次胆汁酸が発生している可能性もあり、将来のがんのリスクにもなります。 
食生活を見直し、有用菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖などを含む食品をしっかり食べること。

2-2.便の形の異常

1.カチカチ・コロコロ

便チェック コロコロビー玉

カチカチ、コロコロは、便秘のサインです。
水分摂取量が少ない場合や、腸の機能異常によって便の中の水分を吸収しすぎてカチカチになってしまうこともあります。

精神的なストレスによって、コロコロとした鹿のような便が出るけいれん性便秘は、便がコロコロになりがちです。過敏性腸症候群の便秘型ではコロコロ便がみられます。

2.ヒョロヒョロ

便が細くヒョロヒョロの場合、進行した大腸がんなどの原因で物理的に消化管が細くなり便が細くなる場合があります。
また、筋肉が弱ってしまい、便を押し出す力が低下しても、便はヒョロヒョロになりがちです。

ヒョロヒョロ便が続く場合は、大腸がんの可能性も考えて、消化器外科を受診して精密検査を受けることをお勧めします。

3.べちゃべちゃ

べちゃべちゃの場合は、急性の場合は、ウイルスや細菌の感染症、飲酒のし過ぎなど。
慢性の下痢症の場合は、過敏性腸症候群などの機能的な異常や冷えなどにより消化機能が低下していることがあります。

急激な腹痛を伴う場合、発熱を伴う場合、感染症や炎症性腸疾患で炎症が強く起こっている可能性があります。

消化器科に相談してみましょう。

4.カチカチコロコロべちゃべちゃ

便秘と下痢を繰り返す場合、過敏性腸症候群の便秘と下痢を繰り返す不安定なタイプの可能性があります。
消化管の機能が一定せず、ストレスによって水分の吸収の異常が起こり、便秘と下痢を繰り返します。

2-3.便のニオイ

便チェック ニオイを気にする女性

多くの人は、「便はくさいもの」と考えていると思います。
でも、これは大間違いで、腸内環境が良い人の便はニオイません。

「トイレの後、臭~い!」などと、家族や子供に嫌がられることがあるかもしれません。
こんなやりとりは、家庭でよく、笑いの種になりますね。しかし、これは腸内の土壌の腐敗が起こっている証拠です。将来のがん化のリスクの表れであって、ちっとも笑えません。

便臭の原因となるにおい成分は、食べ物の中のタンパク質が、腸内細菌によって腐敗した結果の腐敗臭と言えます。

アンモニアや、腐った魚のようなニオイであるアミン、インドール、スカトール、腐った卵臭である硫化水素、刺激臭であるアセトアルデヒドなどを発生させます。

これらのにおい成分は、いずれも、有毒物質・発がん物質となり、活性酸素を発生させ、細胞を傷つけます。

腸内に発酵を起こす有用菌のバランスが多い場合は、水素などの無臭のガスが発生しますので、便はニオイません。

3.腸内環境を改善するためのライフスタイル

便の状態から、疾患が疑われる場合は、消化器科などで精査が必要になります。

概ねの場合、便の状態が悪い場合、食生活を改善して土壌改良することで改善します。
これが、腸の炎症を予防し、炎症性腸疾患や大腸がんなどの病気も予防することに繋がります。

3-1.プレバイオティクス食品で上手に発酵させる

便チェック 糠漬け

主に大腸にいるビフィズス菌や酪酸菌などの有益な発酵を起こす有用菌は、食物繊維やオリゴ糖、植物性の多糖類を好みます。
これらをしっかり食べていれば、腸内はこれらの有用菌が産生する乳酸、酪酸・酢酸などの短鎖脂肪酸といった有益な酸によって弱酸性に傾きます。

すると、腐敗を引き起こす菌は大人しくなって、あまり悪さをしません。

3-2.“まごわやさしい”を基本に

日本の伝統的な健康食「まごわやさしい」を聞いたことがあると思います。

ま:豆類
ご:ごま、つまり種子類・ナッツ類
わ:わかめ、つまり海藻類
や:野菜、特に食物繊維が豊富な根菜類
さ:魚 これは食物繊維ではありませんが、天然の魚に含まれる脂肪EPAやDHAは、腸の炎症を抑えてくれます。
し:椎茸、つまりきのこ類
い:いも類 

これらは、主に食物繊維が豊富で腸内の土壌改良にぴったりの食事です。
これに、雑穀類も加えて、日々の食卓を一汁三菜とは言わなくとも、具沢山の一汁一菜にすれば、便の色は黄色に近くニオイはしなくなります。

発酵食品であるプロバイオティクスも、腸内環境を整えるのに役立ちますから、味噌などの発酵調味料や発酵食品を加えるといいですね。

便チェック 味噌

3-3.タンパク質は適量を消化できる程度に

肉、卵、魚、乳製品、豆類などのタンパク質をしっかり消化するためには、「咀嚼」「胃の働き」、「膵臓と腸の働き」が大切です。

1.しっかり咀嚼する

食物の消化には、まずしっかり奥歯ですり潰すことが基本に異なります。奥歯は、臼歯と言われるように、石臼のような役割があります。

早食いの人が増えていますが、1口30回は噛み、すりつぶしたものを胃に運びましょう。

2.胃はタンパク質分解に重要

次には、胃での消化が待っています。タンパク質の消化においては、胃の働きは極めて重要です。

胃では、酸の海で食物を溶かすだけでなく、タンパク分解酵素・ペプシンが、タンパク質を消化しやすいペプチドにまで分解します。

ピロリ菌の感染や、アルコールの飲み過ぎ、暴飲暴食、ストレスなどによって、胃の機能が低下すると、タンパク質が不消化になり、腸内で腐敗が起こりやすくなります。

3.消化力が弱い人は特に注意

消化力が弱い人が、急にタンパク質中心の糖質制限食に切り替えることは腸内環境悪化のリスクがあります。食事を変えて、便が臭くなったら、十分に消化が出来ていない可能性があります。

消化酵素自体も、タンパク質でできていますから、タンパク質不足の人は、ますます消化力が低下します。
この場合、少しずつタンパク質の量を増やすことや、消化酵素を一時的に補いながら食べることで、腸内環境を腐敗させないように注意するようにした方が良いでしょう。

そして、その後、膵臓でトリプシン、小腸でペプチダーゼなどの消化酵素が作用し、アミノ酸にまで分解されます。

アミノ酸にまでなると小腸で吸収されますから、大腸の腐敗を防ぐことができます。

3-4.ストレスをリリースする 

便チェック ストレスリリースをする女性

消化管は、自律神経のうち、副交感神経モードで動いています。
交感神経モードの時には、動きは抑制されます。

ストレスがかかると、交感神経が高まり、消化管の動きは抑制され、消化は悪くなります。

そのストレスは、腸内細菌にも伝達されます。
腸内環境が悪化し、炎症を起こし、便通や便のニオイが悪化する原因になります。

今は、ちょっと外出するだけでも、感染防御のためにマスクが必要であったり、ストレスフルな社会です。

ストレスの根源とは、「自分の命が危険だ!」という本能による防衛反応です。
自分以外の他人やモノと触れ合う環境の中で、どこまで安全で安心であると身体が認定するかによって、同じ状況でもストレスの感じ方は人それぞれです。

ぜひ、可能な範囲で、自然に触れてください。
森や海などで自然にふれ、浅くなった呼吸を深く深く。深呼吸してください。

自分が身を置く環境が安全であり、安心感の中で抱かれる。
その体験が、危機モードのスイッチを切り、身体の緊張を緩め、消化管の働きを良くしてくれます。

4.腸の土壌改良のためには毎日観察を

便チェック

新著『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)では、自律神経やストレス・トラウマ社会についても触れながら、人と環境を一体と捉え、実践的に腸の土壌と地球の土壌を改良する方法をお伝えしています。

ぜひ、ご参考になさってください。

『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』

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この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか