サイコバイオティクスでストレスに負けない!ストレスフルな今こそ、この善玉菌で腸活しよう
こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
社会全体がストレスフルな昨今。
感染症以上に、社会的な孤立やストレス障害やうつ、不安神経症、睡眠障害など、メンタルヘルスの危機が続いていますね。
ストレスに負けないために、うつうつと不安な気分を和らげるために、睡眠の質を上げるために、味方になってくれるのは、有用菌です。
目次
1.拡大中のストレスを悪化させてない?
本当に、ストレスフルな世の中です。
私の周りでも、「ストレスで発狂しそう」とか「ストレスで過食気味」とか「ストレスで眠れなくなってしまった」という声をたくさん聞きます。
上手に生活リズムが作れている方も中にはいるようですが、人と人とのコミュニケーションが絶たれ、行動が制限されることは、社会生活を送る人間にとってはとても辛いことです。
その上、経済も深刻に低迷している状況で、不安の多い世の中です。
1-1.ストレス・メンタルヘルスの必要度がアップ
株式会社ユーキャン(本社:東京都新宿区)が、20代~50代の男女430名を対象に行った意識調査によると、コロナ禍以降に、「今の企業で働き続けられるか不安になる機会が増えた」と回答したのは55.8%。また、「ストレスを感じる機会が増えた」と回答したのは53.5%だったそうです。
また、「withコロナ時代、社会で活躍するに際して重要だと思う能力は何か」という問いに対しては、1位が「ストレスに負けない精神力」(39.1%)、2位「自分自身で業務をこなすための自己管理能力」(37.0%)、3位「問題を解決するための論理的な思考力」(27.9%)という結果。
1位と2位は、コロナ前には同列一位だったものですが、コロナ以降に「ストレスに負けない精神力」がややリードしています。
さらに、ユーキャンらしい調査として、「withコロナの中で取得すべきだと思う資格」について、1位には「メンタルヘルス・マネジメント(R)検定」(14.0%)が選ばれ、これから誰しもが必要になるスキルになるだろうという回答が得られたと報告されています。
総合すると、目まぐるしく変化する世の中で、仕事においてもストレス対応が重要だと考えられていることがわかります。
1-2.ストレス反応は全身に
ストレスは万病の元と言われますね。
適度な運動などの軽くて良いストレスは、心身を強くする良い働きがありますが、長引く悪いストレスは、心身を徹底的に弱らせます。
心も体もフリーズし、消化不良や便秘など内臓もフリーズすることは自覚できると思います。
でも、目には見えませんが、この時に、内臓や神経、ホルモン、免疫などの全身の働きが一気にフリーズしてしまっています。
それによって様々な症状が起きてしまいます。
1.全身症状
疲労感、倦怠感など
2.筋肉系症状
肩こり・首こり・手足のだるさ・関節痛・頭痛など
3.感覚器系症状
疲れ目、めまい、音に敏感になる、皮膚が過敏になるなど
4.精神・中枢症状
抑うつ感、不安感、記憶力の低下、集中力の低下、思考力の低下など
不眠症状(寝付きが悪い、途中で起きる、眠りが浅いなど)
5.循環器系症状
動悸や胸の痛み、不整脈、高血圧など
6.呼吸器系症状
呼吸が浅くなる、過呼吸など
7.消化器系症状
食欲不振、胃もたれ、吐き気、便秘や下痢など
8.免疫系症状
風邪などの感染症にかかりやすい
9.内分泌系症状
月経の乱れや月経前症候群などの悪化、性欲や性機能の減退
体の症状はもちろんですが、心の症状が起きると、世界がモヤがかかったように暗くなり、これまで楽しめていたことも全く楽しめなくなってしまいます。
動く気力もなくなりますから、ストレス発散も上手くできなくなり、どんどん負のスパイラルに陥ってしまいかねません。
この時期に大切にしたい免疫力も落ちてしまうので、かなり危機的状況と言えますね。
1-3.ストレス発散でむしろ不健康が悪化する?
ストレスを食べて発散!と過食に走ったり、甘いものが増えている人も多いようです。
でも、当然ながら、これは不健康な対策です。
ストレスがかかると分泌される副腎ホルモン・コルチゾールは、血糖値をあげるために食欲を増して過食にさせます。
また、ストレスによって、脳内の快楽物質・ドーパミンが減少してしまうのですが、これをあげるために、脳はご褒美を欲しがります。
それが、砂糖たっぷりの甘いもの。砂糖は、麻薬のような働きで脳のドーパミンを分泌させて、一時的なご褒美によって脳は快楽を得ることができます。
でも、その効果は一時的。
血糖値が下がると、今度は気分が落ち込み、うつうつ、イライラ。
血糖値が下がりすぎて低血糖になると、動悸や発汗などパニックのような症状が起こることもありますし、また血糖値をあげるために甘いものが欲しくなると言う悪循環に陥ります。
さらに、砂糖は、腸内のカンジダ菌の大好物のエサ。
カンジダ菌が増えると、腸の有用菌が暮らしやすい弱酸性の環境が保てなくなり、腸内環境が乱れ、ますますストレスに弱くなり、心も不安定になります。
ストレスやそれに伴うメンタルヘルスに対しては、運動やヨガ、瞑想。入浴や音楽を聴く、笑うなど、健康的な方法をおすすめします。
2.心に効く腸活「サイコバイオティクス」
2-1.ストレスには腸から対応する
ストレスへの対応力やメンタルヘルスは、腸内環境によって左右されます。
腸内環境が悪いと、ストレスにも弱くなり、ストレスがかかると腸内環境も悪くなる。
また、腸内環境が悪いと、うつ病などメンタルの不調も起こりやすくなります。
ですから、ストレスがかかった時に暴飲暴食に走るのは、さらにリスクを高める行為になってしまいます。
ストレスがかかった時こそ、腸内環境を改善するための食事を意識することがとても大切です。
2-2.心に効く腸活「サイコバイオティクス」
以前に、気分や脳の機能に影響を与える有用菌(プロバイオティクス)である「サイコバイオティクス」についてご紹介しました。
『「心に効く腸活」メンタルを強化する「サイコバイオティクス」』
https://wellmethod.jp/psychobiotics/
プロバイオティクスには、たくさんの種類があり、ストレスやメンタルヘルスへの改善効果が期待される種類もあります。
2-3.ビフィズス菌・乳酸菌の減少はうつ病リスク
うつ病患者と健常者を比較すると、「ビフィズス菌の菌数が有意に低いこと」、さらに「ビフィズス菌・乳酸桿菌ともに一定の菌数以下である人が有意に多いこと」が報告されています。
いわゆる、「善玉菌」と呼ばれるこれらの腸内細菌が少ないとうつ病リスクが高まることが示唆されています。
※Journal of Affective Disorders:Vol.202(15 ),254-257,September 2016
2-4.サイコバイオティクスとして研究される有用菌
一言で、ビフィズス菌や乳酸菌と言えども、色々な種類があります。
各種のヨーグルトやプロバイオティクスサプリメントに含まれている菌の種類も様々です。
このうち、「心に効く」として研究されている種類には、以下のようなものがあります。
・乳酸菌の仲間
サーモフィルス菌
ラクトバチラス(アシドフィルス菌・プランタルム菌・ロイテリ菌・カゼイ菌・パラカゼイ菌)
ラクトコッカス・ラクティス菌
バチルス・コアグランス菌(有胞性乳酸菌)
・ビフィズス菌の仲間
ビフィドバクテリウム(ビフィダム菌・ロンガム菌)
・酪酸菌の仲間
クロストリジウム ・ブチリカム
他
※Trends in Food Science & Technology:vol.103,386-387, September 2020
ビフィズス菌や乳酸菌の仲間は、発酵食品や発酵飲料にも含まれる種類が並んでいます。
菌の種類は、パッケージに明記されていますので、確認してから選ぶと良いですね。
1.漬物を発酵させる乳酸菌・プランタルム菌
ラクトバチルス・プランタルム菌は、植物に付着する代表的な土壌の有用菌の仲間です。
耐塩性を持つため、しっかりと発酵した伝統的な漬物や韓国のキムチ、ドイツのザワークラウトなどの発酵の元にもなっています。
最近は、調味液につけただけで発酵していない浅漬けも多いため、ご注意を。
冷蔵庫で置いておいて、だんだん酸っぱくなる漬物を買うか、これを機に自分で漬けてみるのも良いですね。
2.加熱にも強い土壌菌・有胞性乳酸菌
バチルス・コアグランス菌(有胞性乳酸菌)も同じく土壌の有用菌の一種で、米や野菜など畑で取れる農作物に付着しています。
熱にも酸にも強く、加熱調理でも死なず、生きて腸まで届いて腸内で働くことが特徴です。
3.ヨーグルトの代表菌・ビフィズス菌ロンガム
ビフィズス菌・ロンガム種は、ヨーグルトを発酵させる代表的なプロバイオティクスです。
健康なボランティアに、ビフィズス菌・ロンガム種(1714)を4週間摂取させたところ、主観的な不安と毎日のストレスが軽減されるだけでなく、ストレスホルモン・コルチゾール産生と記憶を司る海馬の働きが改善されることが報告されています。
※Translational Psychiatry, 6 (11),,939–939,2016
4.発酵飲料などに含まれるラクトバチルス ・ガセリ菌
ラクトバチルス・ガセリ(CP2305)を、激しいトレーニング期間中の18〜22歳の49人の男子大学生に摂取させたところ、倦怠感からの回復と不安や抑うつ気分の緩和に効果的だったこと。また、これを含む錠剤を長期間使用すると、慢性ストレスにさらされた60人の学生の精神状態と睡眠の質が改善されましたことなどが報告されています。
※journal of Functional Foods, 57,465-476,2019
Nutrients, 11 (8)p. 1859, 2019
同じストレス状況下であっても、ストレスに強い人、弱い人の違いの一つは、腸内環境にあると言われています。
私自身も腸内フローラ検査で乳酸菌がとても少ないタイプです。やはり、ストレスには弱いことを自覚しています。
元々定着している乳酸菌が少ないため、腸内細菌のエサとなる食物繊維をしっかり摂ってもなかなか増えてくれません。
そのため、普段から、乳酸菌を含む発酵食品を毎日摂ることを意識しています。
2-5.最も大切なのは腸内細菌の多様性
一方で、特定の種類の菌だけが活躍するわけではなく、たくさんの種類の腸内細菌が活躍する「多様性」こそが、健康な人に共通の腸内環境だと言うこともわかっています。
腸内細菌の多様性を維持するためには、様々な種類の野菜や海藻、きのこ、豆類、穀類などの食物繊維をしっかりと摂取すること。そして、土や森、海などで様々な種類の環境の有用な微生物に健康的に触れることが大切です。
ペットと暮らすことも、腸内細菌の多様性を育むために役立ちます。
殺菌・消毒を徹底していると、一方で、有用な微生物との触れ合う機会が減ってしまいます。
食品や安全な自然環境で、効果的に微生物と触れ合うことをおすすめします。
今だけでなく、ストレスとに付き合いは一生続きます。
ストレスを踏み台に飛躍するためには、ストレスに負けない腸内環境を作っていきたいですね。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか