「ストレス反応」を引き起こす3つの要因と日常を快適に過ごすための6つの知恵
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
皆さまは普段、ストレスを抱えていませんか?
多くの方は仕事や家庭内、経済状況や人間関係など何かしらの原因によって、ストレスを感じながら生活しているのではないでしょうか。
ストレスは自分にとって不快と感じることが原因で起こると思われがちですが、実はうれしい出来事や過去に体験したことが原因となることも少なくありません。
また同じような状況に遭遇した場合でも、それをストレスと感じる人もいればストレスと感じない人がいたり、同じ人でも、ある日はストレスと感じても、別の日にはストレスと感じないこともあります。
うれしい出来事のはずがいつもと違う環境にストレスを感じたり、いつもは気にならないことがとても気になったりと、日々ストレスに振り回されている…なんてこと、ありませんでしょうか。
そんなストレスによって起こる心身の不調を「ストレス反応」といいます。
今回はストレス反応の症状やメカニズム、ストレスへの予防・改善法について詳しくご紹介します。
目次
1. ストレス反応とは?
ストレス反応とは、日常生活で遭遇するさまざまな出来事や刺激を長時間に受けたり、過度な刺激を受けた場合に生じる生体反応のことです。
またストレス反応は、過度な刺激などに対する生体の自然な適応反応とも考えられており、ストレス反応を引き起こす原因の種類に関係なく、心身に同じような反応が起こることやその症状が全身に及ぶことから「汎適応症候群(はんてきおうしょうこうぐん)」とも呼ばれています。
2. ストレスが起こるメカニズム
人は人生の中でさまざまな出来事に遭遇しますが、その遭遇した出来事が自分の対処能力を超えた脅威であると感じたときに、ストレス反応が現れます。
こうしたストレス反応の原因となる出来事や刺激のことを「ストレッサー」といいます。
ストレスが起こるメカニズムは、ストレッサーを受けたときに自身にとってそれが自分の力で対処できるかどうかを認知します。
その結果、自分の対処能力を超えた脅威であると判断された場合、ストレス反応と呼ばれる症状や行動が生じストレスが起こると考えられています。
2-1. ストレスの原因となる3つのストレッサー
ストレスの原因となるストレッサーは、大きく3つの種類に分けることができます。
1. 生活環境ストレッサー
人生の中でもっとも多く受けるストレッサーといわれるのが、生活環境ストレッサーです。
生活環境ストレッサーとは、大切な人との別離や喪失、家族や職場・友人との人間関係や出産・結婚・転職・引っ越し・入学など環境の変化によるものです。
幸せな出来事でもあっても大きなストレッサーになることがあります。
2. 外傷性ストレッサー
外傷性ストレッサーは、その人の生命や存在に影響を及ぼすような強い衝撃をもたらす出来事をいいます。
・自然災害:地震・火災・台風・洪水・火山の噴火など
・社会的不安:戦争・紛争・事件など
・生命などの危機に関わる体験:暴力・事故・犯罪・性的被害など
・喪失体験:家族や友人の死・大切にしていた物の喪失など
3. 心理的ストレッサー
心理的ストレッサーとは、現実に遭遇していないことに対してわき起こる不安や恐怖・緊張といった感情により心理的ストレッサーとして作用し、ストレス反応を引き起こすことをいいます。
具体的には過去に体験したときの記憶がよみがえり、そのときの恐怖や緊張が生じるフラッシュバックなどがこれにあたります。
逆に、「巨大地震がいつ起こるかも知れない」など、まだ起きていない未来に対する不安も、ストレスになります。
上記の3種類のストレッサーは単体でストレス反応を引き起こすというよりは、すべてが加算され複合的に作用することで、ストレス反応を引き起こすと考えられています。
3. 症状による3つのストレス反応
ストレス反応への感受性や現れ方には個人差があり、心理面に出やすい人や身体面や行動面に出やすい人など人によりさまざまです。
ストレス反応は、その症状により大きく3種類に分けられます。
3-1. 心理面の反応
心理面の反応は不安・イライラ・恐怖・気分の落ち込み・緊張・怒り・罪悪感・孤独感・疎外感・無気力・外からの刺激に対して感情の反応がなくなる感情鈍麻(かんじょうどんま)などの症状が現れます。
その他に心理的機能の変化として、集中することができなくなったり思考力・判断力・決断力が低下したり、短期記憶が喪失するなどの障害が現れることもあります。
3-2. 行動面の反応
心理面の反応は行動面の変化として現れます。
行動面の変化とは、怒りの爆発・喧嘩などの攻撃的行動・過激な行動・泣く・拒食・過食・幼児返り・チック・吃音・引きこもり・ストレス場面からの回避行動などをいいます。
ストレスに対する行動として、闘ったり、逃走したりする反応は、交感神経の働きです。この場合は、環境を変えようとする力があります。
さらに、それを通り過ぎ、自分では環境を変えることができないと判断すると、フリーズする(凍りつき)という反応が起こります。これは、副交感神経系(正確には、背側迷走神経複合体)が過剰に働く防衛反応です。これが、引きこもりや心身の膠着などを引き起こします。
3-3. 身体面の反応
身体面の反応としてよく現れる症状は、動悸・異常な発熱・頭痛・腹痛・疲労感・食欲の減退・嘔吐・下痢・のぼせ・めまい・しびれ・睡眠障害・悪寒による震えなど全身にわたるものです。
4. ストレスの予防・改善方法
何かとストレスが多い社会の中で、ストレスをゼロにすることは難しいかもしれません。
だからこそいかにストレスをためずに生活を送れるかが、より豊かな毎日を送るために重要になってきます。
ここではストレスの予防・改善方法についてご紹介します。
4-1. 生活習慣を見直す
ストレスと自律神経には大きな関わりがあるので、自律神経のバランスを整えるために規則正しい生活習慣を身につけることが大切です。
人は日中活動しているときは交感神経が優位になり活動的に動き、夜になると副交感神経が優位になりリラックスすることができるため、心身の健康を維持することができています。
しかし自律神経のバランスが崩れると、ストレスに対して対応することが難しくなり、ストレスをためやすい状態となってしまうのです。
ストレスに対する抵抗力をつけるためにも生活習慣を見直してみましょう。
1. 睡眠
睡眠は人間にとって生命を維持するために欠かせないもので、ストレスを軽減するためにとても重要です。
睡眠時間は7~8時間とることが理想ですが、睡眠時間だけではなく睡眠の質を上げることも大切です。
睡眠の質を上げるためには、夕食は遅くても就寝の3時間以上前までに済ませ、スマートフォンやパソコンを寝る直前まで使用するのは控えましょう。
睡眠時間を確保するためには、休日も含め毎日同じ時間に起床し、睡眠リズムを整えるように心がけましょう。
2. 食事
栄養バランスのとれた食事は健康な体づくりの基本となります。
栄養バランスが偏った食事は病気や肥満の原因となります。心身の健康を維持するためには、適正体重を維持することが大切です。
また1日の活動のエネルギー補給のためにも、朝食を食べ、過度な間食や飲酒を避けるなど規則正しい食生活を心がけましょう。
3. 適度な運動
適度な運動を行うことで気分をリフレッシュする効果が期待できます。
定期的な運動は適度な疲労感を得ることができるため、質の良い睡眠につながります。無理のない範囲で運動を習慣化しましょう。
4-2. 自分の深層心理を客観的に理解する
同じ状況であってもストレスと感じる人と感じない人がいます。
ストレスとは、つまり「自分に対する脅威」ですから、同じ状況でも「安心・安全だ」と感じられるか「自分は傷つけられる・危険だ」と感じるかという受け止め方には個人差があります。
どこまでが自分が安全な領域かという潜在意識の認識によって、ストレスの感じ方が違います。
ですから、初対面の人ばかりの状況であっても、潜在的に人に対して信頼感があり「安心・安全」と分かっていれば、特にストレスとはなりません。
一方で、潜在的に「人は自分を傷つける存在だ」と認識してしまうと、クラスメイトや会社の同僚と一緒の環境にいるだけでも緊張し続けたり、他人といるだけでストレスに感じてしまいます。
人は、理性では物事が判断できない幼少期の家族関係や人間関係をモデルケースに、その後の人生の人間関係を構築します。ですから、今、目の前にいる人が実際には自分にとって危険でなくとも、過去の潜在的な記憶を元に「他人は危険だ」と判断している可能性があります。日常生活にも困難をきたしている場合は、心理療法やセラピーが必要なケースがありますが、まずは、自分がどのように世界を認識しているか、客観的に理解することが、第一歩と言えます。
また、根本的にありのままの自分を見せることは危険だと認識し、自分を発揮できないと、他人といるだけでストレスになります。
つまり、自分が好きになれない人や、自分に自信が持てない人はストレスを感じやすいといえます。
自分らしく行動しても、「安全だ」「受け入れられる」という認識ができるようになると、自分を偽らずに生きることができ、ストレスを感じにくくなります。
▼【医師解説】自分の感情が分からない「失感情症」とは?感情を回復する5つのステップ
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▼「愛」を上手にする為のレッスンSTEP1#ドクターLISAの心と体のウェル・メソッドvol.2
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4-3. 心地良い対人関係をもつ
人は周りの環境に大きな影響を受けます。家族や友人・職場の同僚からサポートや肯定的な評価を受けることができたり、問題が起こったときに相談できたりする対人関係をもつことは大切です。
自分一人ですべてを解決しようとせず、周りの人に助けを求めることを意識しましょう。
たくさんの友人は必要ありません。たった一人でも、良き理解者がいれば良いと考えてください。
それは、友人や家族でなくても、セラピストでも構いません。
その一人との対人関係をきっかけに、世界との関わり方を解きほぐしていくことができます。
4-4. ストレス解消法をもつ
自分がストレスを感じているということに気づくことはとても大切なことです。
ストレッサーを回避することができれば良いのですが、それは簡単なことではありません。
ストレスを感じているなと気づいたとき、自分に合ったストレス解消法でリラックスしましょう。
読書や音楽鑑賞・散歩・手芸・部屋の片付けなど自分がリラックスできるものがおすすめです。
▼【医師解説】心が疲れやすい人に必要な3つの心の持ち方|チェックリスト付
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5. 40代・50代はストレスを抱えやすい年代
ストレスはどの年代にもかかるものですが、とくに40代・50代はストレスを抱えやすい年代といえるのではないでしょうか。
この年代は仕事において周囲の期待が大きくなったり責任ある仕事や管理業務を任せられる機会が多くなることから、仕事におけるストレスを感じる方が増加する傾向にあります。
また子育てが一段落した頃に、親の介護や自身の健康問題、定年後の仕事・老後の問題などが現実味を帯びてきます。
これらのストレスから自分を守るためにも、ストレスの予防・改善法に取り組んでいきましょう。
6. ストレスと上手に付き合ってより良い人生を送りましょう
ストレスフリーな毎日を送れたらと思いますが、そう簡単なことではありませんよね。
しかしストレスを感じながら毎日を送っていると、心も体も悲鳴を上げてしまいます。
そんなストレスから自分を守れるのは、自分なのかもしれません。
ストレスをなくすことに目をむけることも大切かもしれませんが、いかにそのストレスをうまくかわすか、解消するかがより良い人生を送るためには重要なのだと思います。
「今日はもう頑張らない!」「今日は思いっきり自分を甘やかしてみよう」など、自分を労わる時間をもつことや、自分で解消することが難しいときは周りの人に話を聞いてもらうなど上手にストレスを軽減することが、上手な大人のストレスへの対処法ではないでしょうか。
これまで一生懸命人生を駆け抜けてきたからこそ、ほっと一息つく時間を大切にしたいものですね。
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この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。