キッチンに砂糖は不要!医師が実践するシュガーフリー生活ってどうやるの?
皆様こんにちは。
医師で、予防医療スペシャリストの桐村里紗です。
突然ですが、日本の家庭で最も消費量が多い調味料はなんでしょうか?
醤油?塩?味噌?
それらを差し置いて、実は砂糖が堂々の一位だそうです。
実はキッチンに砂糖を置いていない我が家ですが、「じゃあ、どうやって料理しているんですか?」と講演会などでよく質問を頂きます。
和食は砂糖を使いまくる料理ですので、それに慣れてしまったあなたは「物足りない」「味付けができない」と思われるかも知れませんが、逆に砂糖を使わなくなると砂糖を使った料理が気持ち悪いと感じるほどなのです。
目次
1.砂糖たっぷりの日本の食卓
コーヒーやお菓子づくりだけでなく、日本伝統の和食のレシピ本をみると、必ずと言っていいほど、材料に「砂糖」と書いてあります。
肉じゃがやすき焼きはもちろん、きんぴらゴボウに、煮物、白和、酢の物、照り焼きなど、何でもかんでも砂糖を使うのが和食レシピです。
江戸時代の後期から、味醂の代わりに砂糖を使って甘辛い味をつけるようになったとされますが、現代の和食のように砂糖を大量に使うのは、ここ数十年、砂糖が高級品ではなく安価な庶民の調味料になってからです。
洋食中心になると砂糖の消費量が減りますが、その代わりに欧米では砂糖たっぷりのデザートを食後に食べます。
戦後のミックスカルチャーである日本の食卓は、砂糖をたくさん使う和食を食べた後に、砂糖たっぷりのデザートを食べているのです。
欧米のパンは、シンプルな塩味が基本ですが、日本人がアレンジした食パンや菓子パンは、これまた砂糖をたっぷり使います。
こんな風に、日常の食事から砂糖をたくさん摂取しているのが現代人です。
2.田舎料理は砂糖まみれだった
私の母親は、戦後生まれで、まさに砂糖をたっぷり使った料理に慣れている世代です。
小さい頃、母は自分の病気と私のアトピーのために食養生的な田舎料理を作ってくれており、基本的には根菜を中心とした野菜たっぷり、海藻たっぷり、魚中心の伝統的な和食料理でした。
ところが、白砂糖こそ使っていませんでしたが、黒糖を使った母の料理は、甘い!
子供の味覚は敏感で繊細ですから「甘い!」「気持ち悪い!」と主張をしても、「味醂だけでは味が決まらないから」と、必ず黒糖を使っていました。
「砂糖を使わなければ料理はできない」という、思い込みが強かったのです。
母の父母、つまり、私の祖父母は、あまり食生活に気を遣っていない人たちで、私の母は小さい頃から砂糖たっぷりの食事に砂糖たっぷりのお菓子を大量に与えられて育っており、そのために病気になってしまったとも言えるのですが、幼少期からの味覚はなかなか変えられないようで、未だに健康志向を自負しながらも、砂糖とは完全に縁が切れないようです。
3.三温糖は白砂糖と同じ精製された糖
精製された白砂糖、その白砂糖に茶色い色素をつけただけの三温糖。
これらは、サトウキビやてんさい(砂糖大根)などの植物が持つビタミンやミネラル分をすっかり失っています。
三温糖は、「茶色いから体にいい」と勘違いしているかも知れませんが、上白糖、グラニュー糖と同じ、精製された糖の一種で、ショ糖以外の栄養を失っています。
糖質をエネルギーとして燃焼するにはビタミンB群やミネラル類が不可欠ですから、これらが不足した白砂糖や三温糖は、食べることで体内の栄養素を消費します。
4.黒い砂糖は栄養はあるが害もある
甘さの成分であるショ糖を抽出してしまう精製された砂糖「分蜜糖」に対して、原料から絞り出した蜜の成分を残して作られた砂糖が「含蜜糖」です。
黒砂糖やきび砂糖、てんさい糖などがあります。
これらは、ビタミン、ミネラルが残っているために、分蜜糖と比較したらマシではありますが、血糖値の上がりやすさや腸内環境を悪化させること、依存の原因になることは白砂糖と変わりありません。
分蜜糖と含蜜糖の違いは、栄養価のみ。
ショ糖を含むため、やはり摂り過ぎると色々な弊害があります。
4-1.腸内環境の悪化(カンジダ菌を増やす)
カンジダ菌は、アルコールを作る酵母菌の仲間で、糖が好き。
砂糖や炭水化物の過剰摂取で腸内で増殖してしまいます。
カンジダ菌は、アルカリ性の環境を作り、善玉菌が減り、悪玉菌が増えやすい環境を作ります。
▼その不調は腸がカビる「腸管カンジダ」?糖質摂りすぎは要注意5つのリスク【医師解説】
https://wellmethod.jp/intestinal-candida/
4-2.糖化反応を起こして老化を促進する
糖化とは、食事で摂取した糖が、体内のタンパク質にキャラメルのように絡みついてしまう反応です。本来身体を回す酵素やホルモン、遺伝子などの働きに不可欠なたんぱく質が、キャラメルが絡みついたがために働けなくなり、体は思うように回らなくなり、老化や疲労の原因になってしまいます。
4-3.血糖値の乱高下を引き起こす
血糖値の乱高下が、精神的な不安定さやパニック、倦怠感の原因になることがあります。
食後血糖値を上げにくい食生活をすることでそういった症状が落ち着くことはよくあります。
▼【医師解説】低血糖でうつやパニック? 糖質の摂りすぎが招く危険症状と6つの改善策|チェックリスト付
https://wellmethod.jp/hypoglycemia/
4-4.依存と中毒の原因になる
カンジダ菌の増殖、血糖値の乱高下、そして砂糖を摂取することで脳の快楽物質・ドーパミンが分泌されること。
これらは、いずれも依存と中毒を引き起こします。
もっと食べたい!もっと欲しい!砂糖がなければ生きていけない!
調理に砂糖が欠かせないと思い込んでるあなたは、もしかしてそんな風になっていませんか?
4-5.体を冷やす
砂糖は、東洋医学的には極陰の、体を冷やす食品。
敏感な方だと、例えばスイーツバイキングなどで一気に大量に砂糖をとると体が寒くて仕方なくなったという経験がある方もおられるかも知れません。
冷え性の多い女性には、砂糖は大敵と言えますよ。
5.我が家にある砂糖の代替品はこれ
我が家には、砂糖はもちろん、きび砂糖もてんさい糖などの含蜜糖もありません。
じゃあ一体、我が家には何があるのか?
5-1.煮物には本味醂。味醂風調味料ではない
まず、煮物などをする際には、本味醂を使います。
砂糖と比べると甘みは少ないですが、米を米麹で発酵させて作られ糖分とアミノ酸、そしてアルコールが精製する伝統的な製法の本味醂は、コクと旨味があります。
本味醂は、発酵による数種類の糖を含んでおり、ショ糖だけを含む砂糖と比較して甘みが少なく、同量の使用では、砂糖と比較して血糖値を上げづらい調味料です。
ちなみに、伝統製法ではない「味醂風調味料」は、発酵期間も短く、ブドウ糖や水飴など糖に旨味調味料、場合によっては酸味料やを加えてつくったもので、伝統的な本味醂とは別物です。
このタイプは、アルコールを含まないため、ハラル調理向けに使用されることもあるようです。
さらに、「発酵調味料(味醂タイプ)」と書かれたものもあります。
こちらは、本味醂に食塩を加えてあるタイプで、アルコールが含まれるものの、「酒コーナー」ではなく「調味料」として扱えるため、酒類免許のない店舗でも販売ができます。
私は、食塩を含まない本味醂を購入しています。
5-2.はちみつ
はちみつは、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖などの複合的な糖を含む甘味料です。
もちろん、こちらも食べ過ぎて良いわけではありませんが、砂糖と比べると血糖値を上げづらい上に、活性が高いのが嬉しいところです。
ビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、ポリフェノール類など150を超える栄養成分が含まれており、特に活性型のビタミンを含んでいるのがポイントです。
非加熱で生で食べる方が効果的。
グルテンフリートーストに1匙、ドレッシングの甘みに1匙などの使い方をして、少量を楽しんでいます。
5-3.オリゴ糖
血糖値上昇につながらず、大腸まで届いて腸内細菌のエサとなるプレバイオティクス食品であるオリゴ糖。
甘みのクセもなく、料理にも甘みづけにも使いやすくて重宝しています。
注意点は、「イソマルトオリゴ糖」という種類のオリゴ糖だけは、小腸で半分消化されてしまうため、効果が下がります。原材料表示をみて、それ以外のオリゴ糖であればOK。
また、原材料表示をみて、オリゴ糖以外の「ショ糖」「ブドウ糖」「アスパルテームLフェニルアラニン化合物」「アセスルファムK」「スクラロース」などその他の糖類、人工甘味料が入ったものは避けましょう。
思わぬ依存の落とし穴になることも。
5-4.羅漢果糖
羅漢果は、中国の桂林地方で伝統的に「神の果物」とされていたフルーツで、現在は、カロリーゼロの天然甘味料として人気があります。
砂糖の400倍の甘さがありながらも、実質ゼロカロリー。
特に抗酸化力が高く、甘味成分であるトリテルペン配糖体は、美容にも健康にも効果的です。
トレーサビリティのしっかりされている会社のモノを選ぶのがよいですね。
6.アガベシロップは糖化と肥満の原因に
最近、ヘルシー志向の人たちに「血糖値が上がらないヘルシーな天然甘味料」として人気の「アガベシロップ」ですが、ちょっと注意してください。
アガベシロップは、GI値が21と血糖値が上がりにくい上に、甘みは砂糖の1.5倍。
ブルーアガベと呼ばれる多肉植物の樹液由来の甘味料です。
ところが、成分の70~90%は果糖で、かなりの高果糖甘味料なのです。
果糖は血糖値としては反映されないものの、中性脂肪にかわり、肥満の原因に。また、糖化のしやすさはショ糖の10倍とされ、隠れた老化の原因になることがわかっています。
▼アガベシロップは肥満の元?砂糖よりも危険な果糖を控えるべき理由【医師解説】
https://wellmethod.jp/agave-syrup/
7.砂糖はなくても生きていける
結論として、砂糖はなくても、全くもってごきげん、かつヘルシーに生きていけます。
気づかない砂糖の蓄積は、思わぬ依存や腸内環境の悪化を招いてしまい、メンタルに影響することも稀ではありません。
砂糖は、摂れば摂るほどもっと欲しくなるものですから、一旦その負のスパイラルから抜け出すと、とっても自由な生活が待っています。
自分のためにも、お子さんのためにも、これを機に、ご家庭の砂糖と決別してみませんか?
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか