皆さま、こんにちは。
医師で予防医療のスペシャリスト・桐村里紗です。

年々暑くなる夏ですが、9月になってもまだまだ残暑が長引きます。

夏バテを持ち越す秋バテも毎年恒例になっていませんか?

「暑くて食欲がない」「喉越しの良い麺類しか喉を通らない」「冷たいものばかり摂ってしまう」という声も聞こえます。

夏バテ、秋バテには、栄養素の不足が関わっています。

そのために、細胞が電池切れの状態になります。

1.猛暑残暑に夏バテ秋バテを防ぐ

夏バテ秋バテの女性

1-1.夏バテ・秋バテとは?

気候変動の問題が深刻で、40度を超える地域も毎年出てしまうこの時期。

特に今年は、残暑が長引くようで、9月にも暑さとの戦いが必要のようです。

夏に、倦怠感が持続し、食欲がなくなり不調を感じることを「夏バテ」と言いますが、それが秋の時期にも持続してしまう状態は「秋バテ」と呼ばれています。

9月に入っても、暑さが長引くと急に「食欲の秋」には切り替わらない感じがしますね。

1-2.夏バテ・秋バテの症状は?

夏バテ、秋バテの症状は、消化器から精神に渡ります。

・疲労感・倦怠感
・食欲不振
・下痢・便秘
・立ちくらみ・めまい
・やる気・集中力の低下
・抑うつ、イライラ
・不眠 など

多くの人が経験するこれらの原因は、何なのでしょうか?

1-3.夏バテ・秋バテの原因は「〇〇失調」

夏バテや秋バテの原因は、高すぎる気温と湿度のせいだけではありません。その原因は、胃腸の冷えによる自律神経失調と、栄養失調です。

まず、一つ目は、自律神経失調です。

1.外気温とクーラーによる自律神経失調

夏バテの女性

まず、一つ目は、自律神経失調です。

自律神経は、体を環境に適応させ、環境の変化に応じて内臓の働きを変化させるために働く神経です。

そのため、外は猛暑で、部屋の中はクーラーでキンキンに冷やすなど、外気温と室内の温度の急激な変化によって、乱れが生じます。

気温が高いと、自律神経は、副交感神経モードに。気温が低いと、交感神経モードに、切り替わるものですが、温度差があまりにも大きいとその変化がストレスになり、自律神経の乱れが生じます。

2.冷たい飲み物、食べ物による自律神経失調

キンキンに冷えたビールが美味しい季節ですが、冷たい飲み物や食べ物を繰り返し食べることは、自律神経失調の原因になります。

腸内フローラ関連の記事でも繰り返しお伝えしているように、胃腸は、自律神経のうち副交感神経によって動いています。胃腸が十分に働いている状態は、副交感神経が活発な状態です。

胃腸を冷やしてしまい、胃腸の機能が低下すると、自律神経が乱れてしまうことになります。

こうして、胃腸機能が低下することにより、食欲がなくなり、栄養が偏ると栄養失調を引き起こすことになります。

3.夏バテ・秋バテによる栄養失調

食欲が低下すると、喉越しの良い麺類や水分の多いフルーツやジュース、スープなどの流動的な食事に偏りがちになります。

固形のご飯やおかず、肉、魚などのタンパク質が喉を通らなくなってきます。

夏バテ・秋バテになると、食べ物が糖質に偏りがちになり、不足しがちになるのが、ビタミンB群やミネラル類、そしてタンパク質、脂質です。

4.糖質に偏った食事で栄養素が不足する

そうめん

ビタミンB群は、葉野菜に多い葉酸をのぞいて、どちらかといえば動物性食品に多く含まれています。

その上、素麺やうどん、ラーメンなどの麺類で糖質を多く摂るとそれをエネルギーに変えるために、ビタミンB1を主に消費します。

エネルギー回路を回すには、その他のビタミンB群やミネラル類、タンパク質も不可欠になります。

玄米や雑穀などの未精製の穀物には、B1を含むビタミンB群やミネラル類も含まれますが、精製されると不足します。

そのため、白い麺類に偏った食事で、体内のビタミンB群やミネラル類、タンパク質が消費さレル一方になると、細胞のエネルギー産生工場であるミトコンドリアのエネルギー回路が回らなくなります。

それが、疲労感、倦怠感の原因になる「電池切れ」の状態です。

5.抑うつや不眠の原因は栄養失調

心の状態に関係する神経伝達物質・セロトニンやドーパミン、それから睡眠を誘導するホルモン・メラトニン。

セロトニンが不足すると抑うつになり、ドーパミンが不足すると幸福感が低下し、やる気や集中力も低下します。

これらは全て、タンパク質を原材料に、またビタミンB群や鉄、マグネシウムなどのミネラルが触媒になって作られます。

食欲低下から栄養が不足すると、これらの分泌が低下し、精神や睡眠、そして仕事のパフォーマンスにも影響を与えてしまいます。

2.夏バテ・秋バテを防ぐ日常の対策

今からでも全く遅くありませんから、日常生活から夏バテ・秋バテ対策をしていきましょう。

2-1.食事編

食事の工夫で、栄養素を補い、胃腸を温めていきましょう。

1.冷たいものはNG、常温も注意

胃腸を冷えから守るには、夏でもなるべく温かい飲み物を飲み、アイスクリームなどの冷たいものの食べ過ぎには注意したいものです。

「常温にしている」という方も、一気飲みをすると胃腸は冷えます。

胃腸が最適に働く温度は、37度。酵素が活発に働く温度です。
常温は、15〜25度とされますが、胃腸にとっては、十分に冷たいのですね。

常温であっても、一気飲みせずに、チビチビと飲むことをお勧めします。

少しずつ飲む方が、体への水分の定着も良く、脱水症予防にも効果的です。

2.麺類に不足しがちな栄養素を補う

錦糸卵つきのそうめん

喉越しの良い麺類は、食べやすいものです。

食べる場合には、タンパク質、ビタミンB群、ミネラルなど不足しがちな栄養素を補えるトッピングやおかずを追加しましょう。

素麺を食べる場合に、錦糸卵を添えることでタンパク質がプラスできます。

ぶっかけうどんならば、タンパク質とビタミンB群が補給できる納豆に、ミネラル豊富なわかめをトッピングすればいいですね。

3.栄養失調回復食材はコレ

1.ビタミンB1

ビタミンB1を多く含むのは、昔から夏の滋養強壮食材の代表である、ウナギ

最近は少々お高いのが悩みですが、食欲のない夏でも、ウナギであればなぜかスルスルお腹に入ります。

その他、納豆や豚肉。ゴマ、雑穀なども優秀な食材です。

ビタミンB群は、動物性食品に多いため、タンパク質を補うことができる以下の食材をプラスしたいところです。

2.タンパク質

肉や魚、豆類や卵はたんぱく質の補給になりますので、食欲がない時ほど意識して摂るようにしましょう。

固形が喉を通らない場合、私は、ずるっと入る納豆卵かけご飯。それから、魚の身をすり下ろして作る冷汁を暑いご飯にぶっかけて食べます。

冷汁と言っても、冷蔵庫では冷やさず、加熱しないだけというイメージです。

3.ミネラル

また、汗でも失われるミネラルは、海藻類を活用します。

さらに、複数のミネラルが同時に摂取できる自然海塩を料理に使うなど、工夫してみましょう。

私は、沖縄のマグネシウムが抜群に多い「ぬちまーす」や「雪塩」を使っています。

閉経前の女性は、鉄分不足があると、メンタルの不調や不眠を悪化させやすいので、解消したいところです。「隠れ貧血」かも?と思う方は、こちらの記事もご参照ください。

▼もしかして「隠れ貧血」?医師が教えるセルフチェックで不調の意味を考えよう

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4.腸内環境を改善する

みそ汁

胃腸機能が低下すると、腸内環境も悪化しがちになります。

栄養吸収が低下しているのに、腸内環境も悪化してしまうと栄養素を生み出す有用菌の代わりに、栄養素を奪う腐敗菌が増え、栄養失調を悪化させます。

腸内環境が悪化していると、栄養素を口から摂取しても、人の栄養になりません。

腸内環境を改善するには、シンバイオティクスという考え方で、善玉菌自体を補う発酵食品「プロバイオティクス」と腸内の有用菌のエサになる「プレバイオティクス」を両方摂取することです。

夏にお腹を温める発酵食品として、味噌、味噌汁がお勧めです。

プレバイオティクスは、食物繊維やオリゴ糖、そして冷やご飯です。

▼腸内細菌が健康を左右する! 腸を整える“シンバイオティクス”という食事法のすすめ

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2-2.生活習慣編

生活習慣からも冷えを防ぎ、自律神経を整えましょう。

1.エアコンの設定温度は高めに

エアコンの設定温度は外気温との気温差を小さくすることがポイントです。

気温差が5度以上になると、自律神経のストレスになります。
気温にもよりますが、27〜28度程度までにする方が良いでしょう。

湿度が下がり、汗が乾けば、自然に体温が下がりますので、除湿設定にするのも冷えすぎなくて良いですね。

2.バテ防止の温活に脚やお腹を温める

ストール

ビルや職場などで、寒さが回避できない場合は、レッグウォーマーや腹巻きを活用しましょう。

生足は、足の血液を冷やし、お腹も冷やしてしまいますので、避けましょう。

レッグウォーマーで足首から血管が皮膚に近い膝裏まですっぽり覆うと暖まりやすいですね。

クーラーの効いた室内でデスクワークをするならば、腹巻に加えて、首を冷やさないようにスカーフやマフラーも必要かもしれません。

▼夏にも温活しよう!クーラーに負けない温め食材と冷え予防の習慣

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3.自律神経を整えるリズムを作る

自律神経は、環境の適応するための体のリズムを作る神経です。

意図的に、リズムを整えて、自律神経の乱れを整えましょう。

1.睡眠で自律神経を整える

睡眠ホルモン・メラトニンは、自律神経よりも偉い、体内時計の司令塔です。

夏バテで睡眠リズムが乱れている人こそ、睡眠を整えることが大切です。
夜ぐっすり眠るためには、朝しっかり起きることこそが重要になります。
朝起きて、明るい太陽の光を目が感知すると、脳では「朝だ」と認識され、メラトニンの分泌が減ります。

そこから約15時間後に、メラトニンが分泌され、自然に睡眠に入れるように、脳のタイマーがセットされます。

睡眠リズムが一定であれば、自律神経も整ってきます。

2.食事で自律神経を整える

もう一つ、体のリズムを作るのが、食事です。

朝、昼、晩の食事時間を一定にすることで、体内時計が整います。
食欲がなくても、温かいスープや味噌汁などは摂りやすいですね。

何かしら、一定の時間にお腹に入れて、リズムを作ることが大切です。

3.お風呂で自律神経を整える

自律神経を整えるには、お風呂も使えます。

熱いシャワーや高い温度での入浴は、覚醒を促し、交感神経を高めます。
ぬるめの温度での入浴は、リラックスに繋がり、副交感神経を高めます。

朝は、熱いシャワーや42〜43度程度の入浴を。
これで、シャッキリと覚醒し、効率的に活動ができます。

夜は、38〜41度程度のぬるめの入浴を。
ゆったりとぬるめのお湯に浸かりましょう。

夏であっても、シャワーで済ませず、ゆったりとお湯に浸かることで内臓まで温めて冷えを解消しましょう。

3.まとめ

体調管理のためには、毎日のコツコツした積み重ねが大切です。

毎年、夏バテ、秋バテに悩まされている人は、一度自分自身の生活習慣を見直してみてください。

何かしら解消できるポイントが見つかるかと思いますよ。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか