こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

紫外線の強い季節になってきました。

「百害あって一利なし」と言われ、美容の敵とされる紫外線。
「今年は在宅時間も長いから、日焼けもなくて安心」と思っている皆さん、紫外線不足は、免疫力低下のリスクもはらんでいます。

それに、普段の日焼け止め、実は、皮膚にも、そして海の環境にも負担をかけているかも知れません。

1.紫外線はエイジングの大敵なだけじゃない

紫外線 太陽

紫外線を防ぐことは、どんな美容液にもまさる最強のエイジングケアだと言われます。
逆に、どんなに化粧品にお金をかけても、紫外線による肌ダメージが大き過ぎて、お金の無駄!だとも言われますね。

2.紫外線がエイジングを促進する

浴び過ぎた紫外線が、皮膚の老化や障害の原因になるのは確かです。

2-1.紫外線の急性障害

1.日焼け(サンバーン、サンタン)

ひどいとやけど状態になりますね。
それだけ、肌ダメージが大きいということです。

日焼けした肌

サンバーンは、紫外線にあたると数時間後から現れる赤くなる日焼けのことです。
炎症を起こしている状態です。

サンタンは、赤い日焼けが消失した数日後に現れ、数週間から数ヵ月続く肌が黒くなる日焼けのことです。

2-2.紫外線の慢性障害

1.シワ・タルミ
2.シミ、日光黒子
3.良性腫瘍
4.がんの前段階:日光角化症
5.皮膚がん

紫外線は、殺菌にも使われるほど、強力な細胞障害作用があります。
活性酸素が発生することでこの作用が起こります。

そのため、肌の表面から奥深くまで紫外線に曝露されることで、表皮から真皮まで皮膚が傷害されて、老化や皮膚の病気の原因になってしまいます。

3.有害な紫外線の種類

有害な紫外線 麦わら帽子

人体に有害な紫外線は、主に、UVAとUVBです。
UVCもありますが、オゾン層でブロックされています。

3-1.ガラスでも防げないUVA

紫外線の約9割を占めるのがUVA。
波長が長く、窓ガラスも通過して、肌の深くに届きます。

UVAを浴びると、肌は徐々に黒くなり、コラーゲンにもダメージを与えて、シワやたるみを引き起こします。

3-2.最も有害なUVB

UVAより波長が短く、速攻で日焼けや炎症を起こすのは、UVB。
屋外での日焼けの主な原因です。
皮膚の表面にダメージを与え、すぐに赤く炎症を起こし、メラニンをつくらせ、シミや色素沈着の原因になります。

4.薄曇りや地表からの影響も大

今日は曇っているから大丈夫なんて思ったら大間違い。
薄曇り程度の雲では、UVBの80~90%が透過します。
さらに、地表面の種類により紫外線の反射率は大きく異なります。

1.新雪: 80%
2.砂浜:10 ~ 20%
3.コンクリート・アスファルト:10%
4.水面:10 ~ 20%
5.草地・芝生・土 :10% 以 下 

日傘だけでは防ぎきれませんし、屋内にいてもガラスを通して影響がありますので、油断はできません。

5.紫外線のメリット

紫外線のメリット 太陽を浴びるひまわり

一方で、紫外線にも重要な働きがあります。
特に、骨の強さや免疫にも関わるビタミンDを皮膚で生成する働きです。

コロナ禍に在宅生活が長くなっているためか、ビタミンDを普段から測定している栄養療法医から「かつて見たことがないほどビタミンDの血中濃度が低い人が続出している!」との声が多数あります。
「測定基準値以下で、測れない!」というケースも多数です。

人がビタミンDを得るには2つの方法があります。

・食べ物から摂る方法
・日光を浴びてUVBによって皮膚で合成する方法

日に当たらない生活では、十分に合成ができないため、食事に頼るしかありません。

5-1.ビタミンDの働き

・骨の形成と成長の促進
・カルシウム・リンの吸収をサポート
・遺伝子の働きをサポート
 免疫機能・糖代謝・発癌の抑制など

つまり、不足することで、

乳幼児
・くる病

成人
・骨粗しょう症・骨軟化症

その他、関連が指摘されていることととして、

・免疫機能低下
・アレルギー疾患
・季節性うつ
・自閉症
・動脈硬化
・糖尿病

などが挙げられます。

5-2.ビタミンDを皮膚で合成するには

ビタミンDの合成のために、短時間は日に当たりたいところですが、皮膚へのデメリットもあります。
「理想的な日光浴の時間や方法は?」と聞かれますが、緯度や時刻、天気、皮膚のタイプによって違いますので一概には言えません。

参考までに、肌を10%ほど露出した状態で、東京都内で夏に直射日光を30分浴びると、700~800IUのビタミンDが体内につくられるといわれています。
手のひらでも構わないため、私は、顔などの皮膚は日焼け止めで守り、公園などで手のひらを太陽に向けて直接浴びることをお勧めしています。

5-3.ビタミンDは口からも補おう

ビタミンD摂取にきのこ

ビタミンDが豊富な食材は、シャケとキノコ類(天日干ししたもの)。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取の目安量として、18歳以上の男女ともに8.5㎍(マイクログラム)=400IU としています。
(これは、皮膚からの合成も加味した摂取量ですので、日光浴をしない場合はこれでは不足します)

・シャケ(1切れ80g)=25.6 μg
・さんま(1尾100g)=11μg
・しらす干し(10g)=6.1μg
・椎茸(乾燥)(2個6g)=1μg
・卵(1個65g)=2.5μg

▼【医師直伝】腸活レシピ決定版⑤免疫機能向上「ビタミンD強化きのこスープ」

https://wellmethod.jp/mushroom_soup/

6.紫外線を防ぐ日焼け止めの種類

日焼け止め

露出した顔などの紫外線曝露を防ぐには、日焼け止めが必要です。

6-1.日焼け止めの種類

日焼け止めの形状としては、リキッド・乳液・クリーム・ジェル・スティック・スプレー・シート状など、多くのタイプがありますね。

6-2.SPFとPAの違い

日焼け止めを選ぶ際の1つの目安になるのが、SPFとPAです。

・SPF:Sun Protection Factor
UVBを防ぐ効果の目安です。
日光に当たったときに、日焼け止めを塗らない場合と比較し、肌が赤くなるまでの時間が何倍かを示した数値です。
「1~50+」で表示されます。
SPF30なら、日焼け止めを塗らない状態と比較して、30倍、赤くなる時間を遅らせることができることを意味しています。

・PA:rotection Grade of UVA
UVAを防ぐ効果の目安です。
4段階の「+」マークで「+」の数が増えるにつれ、防御効果が高いことを意味しています。

効果が高いものは皮膚への負担もかかるため、レジャーで海に行くなどの場合を除いて、日常使いであれば、SPF30、PA++程度で十分とされています。
紫外線の強い季節に、炎天下でのスポーツや海水浴などを行う際には、高い数値のものを、また、水に入る場合には、耐水性のあるものを使いましょう。

2~3時間おきには塗り直すことが基本になります。

6-3.紫外線を防ぐ成分の違い

日焼け止め

いずれの日焼け止めにも、紫外線防止剤が配合されています。
紫外線防止剤には、紫外線吸収剤(有機系素材)と紫外線散乱剤(無機系素材)がありますが、一般的には数種類が組み合わさっています。

紫外線吸収剤は、白浮きせず、使いやすい反面、かぶれを起こす人も稀にいます。

一方、紫外線散乱剤は、白浮きしやすいものの、アレルギーを起こしづらいものです。
子供用や敏感肌用の日焼け止めは、紫外線散乱剤のみを含んでいるものが多くなります。
「紫外線吸収剤無配合」「紫外線吸収剤フリー」「ノンケミカル」と表示されています。

日焼け止めの成分

私は、肌がとても敏感なため、オーガニックコスメショップで、紫外線撹乱剤のみ使用したノンケミカルのものを購入しています。

しかし、白浮きしてしまうのが難点です。
最近では、白浮きしない紫外線撹乱剤も開発が進んでいますので、今後はもっと使い心地が良くなることを期待しています。

私が、ノンケミカルな日焼け止めを使うのには、環境面での理由もあります。

7.日焼け止めの河川・海洋への影響

7-1.日焼け止めが珊瑚にダメージを与える

珊瑚

実は、紫外線吸収剤の一部は、珊瑚にダメージを与えて生態系を撹乱するために、珊瑚礁を保護するために海洋国では使用禁止の動きが広がっています。

珊瑚の白化現象による珊瑚礁の減少は、世界中で問題になっていますが、オキシベンゾンとオクチノキサートの2つの成分が特に問題視されています。

パラオでは2020年1月からすでに使用・販売禁止となっており、違反して販売したら1000ドルの罰金刑となります。
観光客が持ち込む場合は、禁止された10種類の紫外線吸収剤を含むケミカル成分が配合されたものは没収されてしまいます。

アメリカ・ハワイ州では2021年1月から、オキシベンゾンとオクチノキサートが入った日焼け止めの販売を禁止しています。
観光客が持ち込むことは可能ですが、海にダメージを与えたくないものですね。

紫外線撹乱剤の原料である、酸化チタンや酸化亜鉛は、天然鉱物なので、ダメージを与えません。
しかし、ナノ粒子である場合、ナノ粒子でないものよりも海洋生物に影響を与える可能性も指摘されており、この点にも配慮が必要です。

7-2.マイクロプラスチックを流さない

河川や海洋を汚染し、生態系に影響を与えるマイクロプラスチック問題もあります。
日々、無意識に流している可能性が高いのが、「1次マイクロプラスチック」と呼ばれる化粧品類の基材に含まれるマイクロプラスチックです。

日焼け止めには、伸びを良くするためにポリエチレンが含まれている可能性があります。
ポリエチレンは、レジ袋にも使われる代表的なプラスチックです。

このマイクロプラスチックは、洗顔することで下水を通して河川から海洋に流れ出し、生態系に影響を与えています。
海水由来の塩にも、マイクロプラスチックは含まれているのです。

普段、レジ袋を断ってエコバックを使ったところで、無意識に日焼け止めを選んでいると、洗顔を通してマイクロプラスチックを海に流しているかも知れません。

生分解性のある素材で、化粧品のテクスチャーを改善する「セルロースアセテート」などの素材も開発されていますので、今後は、環境に優しい上に、使用感も良い化粧品が当たり前に手に取れる様になると思います。

▼いつものメイクが海を汚染?「マイクロプラスチック問題」と化粧品の関係

https://wellmethod.jp/cellulose_acetate/

プラネタリーヘルス 地球

自分の健康だけでなく、地球をも健康にという考えを「プラネタリーヘルス」と言います。
人と地球は、別々の存在ではなく、分断できない一つという考えに基づいています。

珊瑚礁にダメージを与えず、マイクロプラスチックを排出しない日焼け止めは、プラネタリーヘルスだと言えます。
自分のためだけではなく、他の生物や地球全体のために、心地よい消費がしたいものですね。

参照:環境省「紫外線環境保険マニュアル2020」

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか