こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

サツマイモが美味しい季節ですね。
私はとにかく、サツマイモさえあれば主食はいらないほどのサツマイモLOVERです。
この時期は、食べすぎてサツマイモ太りしないよう、とにかく自分の欲望と戦っておりますよ。

最近は、「サツマイモダイエット」や「冷やし焼き芋はレジスタントスターチが増えるから良い」などの話題も上がっています。

一方で、焼き芋の甘み成分は、砂糖以上に血糖値を上げやすいとも言えたり・・・。

大好きなサツマイモと上手に付き合うために、調理法や食べ方などを考えてみたいと思います。

1.サツマイモを科学する

サツマイモサツマイモ干し芋

1-1.まずい!蜜芋ブームでもはやスイーツに

戦時中の食糧難を救った、貧しい時の炭水化物補給源というイメージは、今や昔。
最近の蜜芋ブームの到来で、サツマイモは、もはや女子に人気のスイーツの一種になったと言えるのではないでしょうか?

昔は、サツマイモといえば、家で蒸すか、焼き芋屋さんがたまたま通りがかった時に逃さず捕まえるというスタイルだったものが、今では、常設の焼き芋専門店やサツマイモスイーツ店なども登場して、時には行列のできるスイーツに格上げされた感があります。

ホクホク系の鳴門金時や紅あずまから、主流は、ねっとり系の蜜をひく安納芋や紅はるかに移っています。

1-2.糖度60%超えも!蜜芋は当然、高糖度

焼き芋

関東で一般的なホクホク品種は、紅あずま。
ねっとり系の紅はるかは、比較するとかなり高糖度です。

糖度について、紅あずまは生で15度前後、加熱後に約30度程度なのに対して、紅はるかは、生で約40%、加熱後には、50~60度にもなることも。

それは、随分と甘いわけです。
だって、焼いたら、とろりと蜜が垂れますもの。

さつまいもの甘さは、気候や寝かせ度合い、また調理法によって大きく変化します。
焼き芋と蒸し芋、レンジ調理で加熱したサツマイモでは随分と甘さが変わりますよね。

1-3.サツマイモの甘さの理由は?

サツマイモの甘み成分は、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖、果糖。そして加熱によってデンプンが変化してできる麦芽糖です。

とれたてのサツマイモよりも、少し寝かせた方が甘みが増えるのは、含まれたショ糖が増えるためです。でも、これは、そんなに大きな変化ではありません。

調理の違いによって増える、麦芽糖の量の違いが、主な甘さの違いです。

生芋では、麦芽糖は、ゼロ。
加熱によって柔らかくなったデンプンが、βアミラーゼという酵素の働きで麦芽糖に変化します。
βアミラーゼは、芋の中心温度が約70度で最も活発に働きます。

蒸し芋では、12.6%に増加しますが、焼き芋では、15.4%に増加するという報告も。

※「サツマイモの栄養機能成分と焼き芋の美味しい焼き方理論」より

ゆっくりと時間をかけて加熱される焼き芋は、麦芽糖の生成に好条件な上、加熱により
水分が約15~30%少なくなるため、一層甘さを感じる調理法です。
蒸し芋の場合は、水分量がほとんど生芋と変わらないので、焼き芋と比べると甘さを少なく感じます。

一方で、レンジ調理では、デンプンが柔らかくなるより前に酵素が失活してしまうために、麦芽糖が発生しにくいので、甘みをあまり感じません。

1-4.麦芽糖は砂糖よりも血糖値の原料になりやすい

麦芽糖とは、あまり聞き慣れないかも知れませんが、ブドウ糖が2つくっついた「二糖類」です。
いわゆる「砂糖」は、ブドウ糖と果糖が1つずつくっついた「二糖類」。

砂糖の普及する前に、芋や穀類のデンプンから得られた麦芽糖は、芋飴や水飴として、お菓子や甘味料に用いられていました。

ちなみに、血糖値とは、血液中のブドウ糖の値になりますから、ブドウ糖が2つくっついた麦芽糖は、血糖値をあげる元になるわけです。

砂糖は血糖値を上げやすいイメージがあると思いますが、実は、麦芽糖は2倍のブドウ糖を持っていますので、血糖値の上げやすさに関しては、砂糖よりも上。
ちなみに、果糖は、血糖値を上げないとは言えども、むしろ脂肪に変わりやすいため、こちらも別に摂りすぎて良いわけではありません。

こうした血糖値が上がりやすい糖を含むと言えども、サツマイモには、糖の吸収を抑え、腸内細菌のエサになる食物繊維が含まれていることがメリットです。

1-5.調理法で変わるGI値、焼き芋は白ごはん並み

サツマイモ

サツマイモは、低GI食品と言われていますが、実際には調理法で変わってしまいます。
GI値とは「グリセミック・インデックス(Glycemic Index)」の略で、食品を50g摂取した後の血糖値の上昇度合いを表したものです。
ブドウ糖の100を基準として数値化しています。

GI値が高いほど血糖値が上がりやすいものですが、70以上が「高GI」とされています。

食パンは91、ご飯(白米)は84、うどんは80。

55以下が「低GI」ですが、サツマイモは、55とされています。

ただし、調理法によってGI値が上がってしまう場合があります。

茹でたり蒸したりしても、GI値は上がりませんが、焼くことによって、80~85に大幅アップし、白ごはんやうどんと同じ程度になってしまいます!

1-6.GL値はバナナ以上

バナナ

さらに、食べる量まで加味して血糖値の上がりやすさを計算した数値、GL値「グリセミックロード(Glycemic Load)」の方が実際的です。

GL値=食品に含まれる炭水化物の量(g)×GI値÷100

10以下の食品は「低GL」、11~19は「中GL」、20以上は「高GL」とされます。

ちなみに、白ごはんお茶碗1杯(150g)で、GL値は28と高GL。

茹でたサツマイモは、2分の1本(150g)食べた場合、GL値=22と、高GLです。
さらに、焼いた場合はもっと上がりますし、何よりも2分の1本で終わるのか?という話ですよ。
私はとても終わる自信がありません。
単純に1本食べたら糖質を倍含むことになりますから、十分に血糖値が上がる可能性がありますね。

ちなみに、小さいおにぎり1個 (75g)は、21。バナナ1本(120g)は16ですから、おにぎり1個よりも高い値になります。

なかなか悩ましいところです。

※GI値・GL値国際基準表より

1-7.とは言え食物繊維量はやっぱり多い

焼き芋を一人が一回に食べる量が100~500gとすると、食物繊維量の摂取量は3.5~17.5gになります。
焼き芋1本(約300g)を食べれば、10.5gが摂取できることになります。
これは、食物繊維量の一日の目標摂取量の約半分。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18g以上、男性21g以上(ともに18~64歳)を食物繊維の1日の摂取目標量としています。
でも、20~40代では、7gほど不足しています。

実は、1940年代の日本人は、1日30g弱ほど食物繊維を食べていたにも関わらず、戦後の食生活の変化で半分以下の摂取量になってしまったのです。

文部科学省の食品成分データベースによると、100gあたりの食物繊維量はそれぞれ、

・焼き芋100g(皮なし):食物繊維量3.5g(水溶性:1.1g、不溶性:2.4g)
・蒸し芋(皮なし):食物繊維量2.3g(水溶性:0.6g、不溶性:1.7g)

さらに食物繊維を摂るには、皮付きがよく、皮なしと比べると1.5gも食物繊維量が増加します。

・皮付きの蒸し芋:食物繊維量3.8g(水溶性:1.0g:不溶性:2.8g)

焼き芋の場合も同様です。

1-8.干し芋を少量おやつに

干し芋

干し芋は、水分が飛ぶので重量あたりの食物繊維量が多くなります。

・干し芋:食物繊維量5.9g(水溶性食物繊維2.4g:不溶性食物繊維3.5g)

先日、サツマイモをたくさん頂いたので、半分を干し芋にしました。
かみごたえがあるので、咀嚼回数も増えて、少量で満腹感も得られます。

干し芋は、サイズによって1枚で25~50g程度です。
おやつに50g程度食べると、食物繊維のポイントを稼ぐことができますね。

1-9.ご飯の代わりにサツマイモはアリ

ちなみに、主食にはどうでしょう。

主食の代表である、お米。

・白ごはん:食物繊維量0.6g(水溶性:未検出、不溶性:0.6g)
・玄米:食物繊維量1.4g(水溶性:0.2、不溶性:1.2g)

100gあたりでは、サツマイモは玄米よりも食物繊維量が多いのですね。

30代〜40代の女性の場合、 一食あたりの白ごはんの量は約150~250gなので、食物繊維量は、0.9~1.5g。
もし、白ごはんの代わりに、皮付きの蒸し芋を2分の1本(150g程度)食べたら、5.7gもの食物繊維になります。

不足した食物繊維を補うために、ご飯の代わりにサツマイモにスイッチするのはありですね。

豊富な食物繊維は、腸内細菌のエサとなり、便通を改善するので、腸を整えたい方にももってこいです。

1-10.「冷やし焼き芋」ダイエットブーム

冷やし焼き芋

消化吸収されづらいデンプン、レジスタントスターチは、人のエネルギーにならない代わりに、食物繊維のように大腸まで届き、腸内環境を改善する働きがあります。

レジスタントスターチには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の性質があるため、腸内細菌のエサとなるだけでなく、腸の運動を助け、便の排泄をよくします。

サツマイモに含まれるデンプンのうち、麦芽糖に変わらないデンプンが一度加熱された後で冷えることで、レジスタントスターチになります。

そのため、一度冷凍庫で焼き芋を凍らせて保存し、その後自然解凍してから食べることでレジスタントスターチ効果をえようという「冷やし焼き芋ダイエット」なるダイエットも登場しています。

半解凍の焼き芋は、シャーベットのような食感で好評で、各コンビニでも「冷やし焼き芋」が販売されるようになりました。
焼き芋といえば、冬!というイメージを完全に払拭するための工夫かな?とも思いますが。

ちなみに、一度冷やした焼き芋をレンジや蒸し器で温め直してしまうと、レジスタントスターチは再び、人間のエネルギーになるデンプンに戻ってしまいますので、熱々で食べるのは諦めるしかありません。

無理に冷凍しなくても、冬場の常温で冷やすだけでもレジスタントスターチが増えます。
私は、焼き芋は熱々で食べたい方ですが、蒸し芋は、むしろ常温が好みです。

食べた時の喜びも大切ですから、好みも加味して工夫してみてはどうでしょうか?

1-11.サツマイモは栄養の宝庫

サツマイモは、さらにあれこれ栄養素を含んでいます。
野菜と穀物の両方も栄養を併せ持つ「準完全栄養食」として、NASAの宇宙食としても研究対象になっているほど。
タンパク質と脂質が足りないので、「準」ですが、これはおかずで補えば良いですからね。

1.腸を動かすヤラピン

腸内環境

サツマイモを切ったときに皮の近くからにじみ出てくる白いネバネバした液、ありますね。
これは、ヤラピンという成分です。

腸を刺激し、運動を活発にする作用があります。皮ごと食べることで摂取できます。
加熱には強いので、焼いても残ります。

2.熱に強いビタミンC

ビタミンCは、通常加熱に弱いのですが、サツマイモに含まれるビタミンCは加熱に強いのが特徴です。
品種によりますが、生芋には、100gあたり20~35gほど含まれています。
紅あずまがNo.1で、約35gです。

30分程度蒸すことでも、60%は残存します。
焼き芋は、10分で60%、20~30分で50%、40分で40%台に減って行きますが、それでも他の食品に比べると、加熱しても多く残存しています。

茹でると煮汁に流れ出て行きますから、汁ごと摂ると良いですね。

※「サツマイモの栄養機能成分と焼き芋の美味しい焼き方理論」より

3.粘膜免疫に必須のβカロテン

ウイルス

ウイルス感染症の防御には、粘膜による防御が欠かせません。
粘膜を強くするのは、ビタミンAですが、βカロテンは体内で必要なだけビタミンAに変わる優れものです。

4.ビタミンEは1日量の4分の1

ビタミンEは、ビタミンCと共同で働き、それぞれの抗酸化力を補い合う優秀な抗酸化物質です。

特に、全身の細胞の膜に入り込み、細胞の酸化、老化を防ぎ、細胞の機能を高める働きがあります。

100gあたり蒸し芋で、1.5mg、焼き芋で1.3mgほど含まれており、1日の摂取目安(女性で6mg)の4分の1ほど含まれています。

5.皮に豊富なアントシアニン

皮の紫色を生み出すアントシアニンというファイトケミカルは、優秀な抗酸化物質です。
加熱にも強いので、食べる際にも残存しています。

眼精疲労や視力回復によく、ビタミンAに変化するカロテンと共に、目に効果があります。

眼精疲労の女性

コラーゲンを安定させる働きもあり、コラーゲンの合成を促進するビタミンCと共に、お肌や骨の弾力をアップする働きもありますね。

1-12.高機能ながら糖質には注意

さて、サツマイモについて考察してきました。
戦時中の食糧難を救ってきた食べ物だけあって、さすがの高機能です。

気になる点としては、やはり甘さの素となる麦芽糖。
砂糖よりも血糖値を上げる原因となるブドウ糖を2倍含んでいるので、やはり食べ過ぎには注意したいところです。

その上、嗜好品として、甘みを求め続ける消費者のニーズに応えて、サツマイモはどんどん品種改良され、糖度を増しています。
私としては、「やり過ぎ感」があると思います。

お米や小麦粉もそうですが、炭水化物は全体的に人間の嗜好に合わせて「もちもち」「ねっとり」「甘み」を増すように品種改良されています。
でも、これが、人間にとっては肥満や生活習慣病の原因となる上に、腸内の有用菌のエサになりづらいため、腸内環境が悪化していく原因にもなっています。

美味しさと健康の間で悩ましいところですが、高糖度の品種は、主食よりもおやつのように嗜好品として考える方が良いだろうと思います。

1-13.プラントベースホールフードとしてのサツマイモ

サツマイモ

でも、一般的なお菓子と比べると、色々な栄養素が含まれているので、それぞれの栄養素が相乗効果で体に良い働きをしてくれます。

コーネル大学の栄養学教授で『チャイナ・スタディ』や『Whole』の著者のコリン・キャンベル博士の提案する、精製や加工していない植物の全体を頂く食事を「プラントベースホールフード」と言います。
ホール(whole)とは、全体という意味です。
精製度が高まるほどに、食品の全体性は失われます。

1つの植物には、検査機では測定できる栄養素以外にも、様々な栄養素が含まれていて、これらが全体で機能して、力を発揮することが分かっています。
特定の栄養素が単独で働くよりも、全体で助け合いながら働くことでより高い効果を発揮してくれます。

多くのお菓子は、精製された小麦粉や砂糖を使うことで、植物の全体が持つ多様な栄養素を失っています。

普段のおやつをプラントベースホールフードにスイッチすることで、多くのメリットが得られますよ。
そのために、サツマイモはとてもお手軽で、優秀な食品と言えますね。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療を用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか