こんにちは。WELLMETHODライターの廣江です。

「指輪のサイズがきつく感じるようになった」
「手がむくみを感じるようになってから、だるさや息切れが起こりやすくなった」
「生理前になると手がむくみ、生理が始まると症状がおさまる」

など、経験したことはありませんか。

筆者の場合、前日にお酒を飲んだり塩辛いものをたくさん食べたりして、翌朝、顔や手がパンパンにむくんで後悔した…という経験が何度もあります。

むくみが生じると身体がだるく、なんとなく気持ちがすっきりしないこともありますよね。

このように日常的に誰しもが経験するむくみですが、一体何が原因なのでしょうか。

今回はむくみの原因から予防法、むくみに関係する病気についてご紹介します。

1.むくみとは

むくみとは、血管やリンパ管の中にある水分が外側にしみ出し、細胞と細胞の間に過剰な水分が溜まった状態です。専門用語として「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれます。

むくみ

1-1.むくみのメカニズム

むくみが引き起こされるメカニズムはいくつかあります。

・血管外に水分を押し出す圧が増える
身体の何らかの原因により、血液が血管外へ水分を押し出す圧力静水圧が上がると、血管から水分が多くしみ出し、むくみが生じます。

・血管から水分が漏れ出やすくなる
血管の壁を通して、水分や栄養分が各細胞に運ばれますが、その移動のしやすさのことを血管の透過性と言います。血管透過性が亢進すると、血管は内側に水分を保つことができず、外側に水分が移動します。そのためむくみが生じやすくなります。

・血管内のタンパク質の低下
血液には体内で作られるタンパク質のアルブミンが存在します。アルブミンは血管内に水分を保持しようとする働きがあります。
何らかの原因により血液中のアルブミンが減少すると、血液中に保持していた水分が血管外にしみ出してしまうことから、むくみが生じます。

・リンパ管の閉塞
リンパの流れが悪くなり、リンパ液が皮膚の下などに溜まった結果、むくみが生じます。

1-2.むくみのタイプ

むくみは生じる場所と程度がさまざまです。もし自分の身体に腫れやむくみが現れた場合、自分のむくみがどのタイプなのか知っておけば、受診するときに役に立つかもしれません。

1-2-1.全身性、局所性

むくみは左右両側、すなわち全身にできる場合のむくみ(全身性浮腫)と一部分にできるむくみ(局所性浮腫)に分けられます。

1-2-2.圧痕性、非圧痕性

むくみの部分を指で数秒間押して、離したときの状態でもタイプが分かれます。

へこんだままになることを「圧痕性(あっこんせい)」と呼び、すぐに元に戻って跡が残らないことを「非圧痕性(ひあっこんせい)」と呼びます。

2.むくみを引き起こすさまざまな要因

むくみは、生活習慣の影響で生じるものや病気が原因で引き起こされるものがあります。

2-1.生活習慣に関係するもの

2-1-1.塩分、水分の摂りすぎ

塩分は身体の中の水分を溜め込む作用があります。

そのため、塩分を過剰に摂取すると、身体の中の水分が上手く排泄されず、むくみが生じやすくなります。また、血液中の塩分濃度を下げようと身体が水分を欲しがるため、のどが渇き、余計にむくみが生じやすくなります。

2-1-2.アルコールの摂取

アルコールは血管を拡張する作用があり、その隙間から血液中の水分が染み出し、むくみが生じます。
また、アルコールは身体の中でアセトアルデヒドに分解され、その後、水に変化して無毒化されます。

アルコールを分解する過程でも水分が生成されて、体内の水分が増加します。

それに、お酒のおつまみは塩分が強いものが多いため、総合的にむくみの原因になります。

シャンパン

2-2.むくみを引き起こす病気

むくみを引き起こす病気は頻度の高いものから、頻度が低いものまでさまざまです。

2-2-1.むくみを引き起こす病気のうち頻度の高いもの

・甲状腺機能低下症
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、体内の新陳代謝の調節をする働きがあります。
甲状腺機能低下症は、この甲状腺ホルモンが何らかの原因で低下した状態をいいます。

症状は寒気、だるさ、むくみ、イライラ、乾燥肌、無気力、情緒不安定などがみられます。むくみは左右対称に起こり、足だけでなく手や顔にまで起こり、指で押してもすぐに元に戻るのが特徴です。

・関節リウマチ
関節リウマチは自己の免疫異常により、関節で炎症が起こる病気です。
関節リウマチは手指や手首など小さな関節を中心に左右対称に炎症が起こります。

症状は関節の痛み、腫れ、朝の手の関節こわばりが特徴で、特に腫れは指全体がむくんだような状態に感じられることがあります。

・蜂窩織炎(ほうかしきえん)
蜂窩織炎は細菌が皮膚の毛穴や傷口から侵入し、皮膚の下の脂肪の層で感染を起こす病気です。
別名、蜂巣炎(ほうそうえん)とも呼ばれます。

症状は局所的で、感染により炎症した部分は赤くむくんだように腫れあがります。触ると熱や痛みを伴います。感染部位が深部にある場合や進行がすすんでいると発熱やだるさなど全身症状がでることがあります。

・月経前症候群(PMS) 
女性の身体では、月経前になるとプロゲステロンという女性ホルモンの分泌が増加します。プロゲステロンは身体の中の水分を保持する働きがあり、むくみにつながることがあります。生理後に症状がすっきりするのは、プロゲステロンの分泌が低下することが影響しています。

・更年期障害
更年期は閉経を挟む前後5年位のことをさします。この間に、女性はホルモンバランスが乱れ、身体にさまざまな症状が現れます。
ホットフラッシュ(ほてり)、だるさ、疲れ、イライラ、情緒不安定、不眠などはよく知られている症状ですが、手のむくみも更年期障害の症状の一つとしてみられます。

具合の悪い女性

2-2-2.むくみを引き起こす病気のうち、比較的頻度の低いもの

・心不全/腎不全/肝不全
心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。このポンプの機能が何らかの原因により、血液を十分に送り出せなくなる状態が心不全です。
心不全になると血の巡りがわるくなり、水分が身体にたまりやすくなるため、むくみが生じます。

また腎臓は体内の老廃物を身体の外へ尿として排出する役割を担っています。腎臓の機能が低下することで、身体の中の余分な水分が排出できなくなり、過剰にたまった水分の影響でむくみが生じます。

肝臓も機能が著しく低下すると、血液中の水分を保つアルブミンの合成が低下することから、むくみが生じる場合があります。

心不全・腎不全・肝不全によるむくみは全身性で、指で押すとへこんでしばらく元に戻らないことが特徴です。水分の貯留に応じて、体重も増加します。

・リンパ浮腫
リンパ浮腫によるむくみは、乳がんなどのリンパ切除術(郭清術)や放射線療法を受けた場合にリンパ管がダメージを受けることによるものがほとんどです。

リンパの流れが悪くなると、細胞と細胞の間にリンパ液がたまり、手足がむくみやすくなります。軽症の場合は気にならないことも多いですが、症状が悪化するとだるさや痛みを感じ、生活に支障が出るケースがあります。
手術や放射線治療を受けた局所に起こります。

・薬剤性
薬の中には、副作用としてむくみを引き起こしやすいものが存在します。
むくみを引き起こしやすい有名な薬としては降圧薬、非ステロイド性抗炎症薬、糖尿病治療薬の一部があります。症状は全身性から局所性と薬によりさまざまであることが知られています。

3. 注意!危険信号のむくみ~受診の目安~

手のむくみは、一過性で問題のないものから早期に受診が必要なものまでさまざまあります。

一日寝ていると元に戻るむくみは問題がないとされていますが、以下のような症状がある場合は早めに受診をおすすめします。

受診

3-1.危険信号(赤)~夜間・休日を問わず、すぐ受診~

・強い息苦しさがあり、横になれない
・急にキロ単位で体重が増加する
・突然、片方の手だけがむくみ、痛みや腫れを伴う

3-2.危険信号(黄)~診療時間内に受診しましょう~

・むくみがとれない(数日間以上)、むくんでからの体重増加が戻らない
・手のほかに顔、足など複数個所にむくみがある

また、症状が一日で治まり、その後繰り返さないむくみであっても気になる症状があれば、自己判断をせず、受診を検討しましょう。

4.むくみ予防のための日常生活のポイント

4-1.アルコールを控える

アルコールには、代謝の過程で水分を発生させる代わりに、利尿作用もあり、そのバランスが崩れると脱水傾向となって、余計にのどが渇きます。

そのため水分を過剰にとり、むくみを引き起こします。

また、前述のように塩分の高いつまみもむくみを引き起こす要因の一つです。アルコールを大量に飲まない、食べながら飲む、飲酒の間には適度に水を飲む、塩分の少ないつまみにする、休肝日をもうけるなど、日ごろの飲酒習慣を見直しましょう。

アルコール

4-2.水分、塩分量を控える

毎日の食生活の中で水分・塩分をとりすぎないように意識しましょう。
日本は他国に比べて食塩の摂取量が多いと言われています。

特に、体の中で塩分を排泄する役割があるカリウムなどのミネラル分を含まない精製塩を使うことも問題です。
精製されていない自然製法の海塩には、カリウムやマグネシウムなどのミネラルが多数含まれていますが、精製塩は99%が、塩化ナトリウム(いわゆる塩分)です。

むくみに直結しますので、なるべくミネラルバランスの良い塩を選ぶようにしましょう。

調味料を減塩に変更する、醤油は直接かけず、小皿に分けてその都度つけて食べる、ハーブやスパイス・薬味を利用するなど食事の中で出来ることから工夫しましょう。

18歳以上の女性場合、塩分摂取量は1日あたり7.0gの未満になることが望ましいといわれています(厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書より)。

また、心疾患・腎疾患・肝疾患がある方は食事について主治医と相談しましょう。

塩分の摂りすぎには注意

5. むくみを予防して、心身ともに健やかな生活を送りましょう

手のむくみは比較的問題のないものから病気により引き起こされるものまでさまざまあります。

生活習慣が原因で引き起こされる手のむくみは、普段の日常生活を見直すことで予防することが出来るでしょう。
いつまでたってもむくみが治らない場合は、決して無理をせず、一度病院に相談してみることをおすすめします。

大人女性は、ホルモンバランスなどの変化から、これまでとは違った体の変化や不調が出てしまう世代。

その状態を否定するのではなく、うまく付き合っていくことがつらい時期を乗り切るコツなのかもしれません。

これからも内面から美しく、生き生きとした日々をすごせるように、日常的に体からの声を聞くことを心がけていきましょう。

監修:内科医 桐村里紗

廣江 好子

【ライター】

美容・健康ライター。
ダイエッター歴○十年から脱却した、美を愛するアラフォー健康オタク。
趣味は料理と筋トレ。

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この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか