食後の鋭い痛みに注意! 40代以降の女性に多い「胆石症」の症状
こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。
みなさまは、胆石症という疾患をご存じでしょうか。
聞いたことがない、という方もいると思いますが、知っている方は「とにかく痛い」といったイメージがあるのではないでしょうか。
胆石症は、胆汁に含まれる成分が凝縮し、結晶が集まってできた塊によって、痛みが生じる症状のことを指します。
実は胆石症は、私たち40~50歳代の女性にこそ知っておいていただきたい病気の一つです。
なぜなら、女性は40歳代を迎えると女性ホルモンが減少し、コレステロール代謝が悪くなります。
そのコレステロール代謝の低下が胆石症と密接な関係があるからです。
「胆石症の痛みってどこの場所に出る?」
「痛みの他に症状はない?」
「胆石症で気を付けるべき食事方法はあるのだろうか?」
「胆石症を放っておくとどうなるの?」
「胆石症の治療方法はあるのかな?」
など、胆石症について知らないこともありますよね。
今回は、女性に身近な病気、胆石症とその症状についてご紹介したいと思います。
目次
1.胆石症とは
胆石とは、胆嚢や胆管にできた石(結石)のことです。
痛みやさまざまな症状を起こし、無症状も含めて胆石症と呼びます。
胆石症は、石が存在する部位によって呼び名が代わり、結石が胆嚢にある場合は「胆嚢結石症」、胆管にあるときは「胆管結石症」、胆嚢から総胆管に出てきた石や総胆管にできた石を「総胆管結石」、肝臓内の肝管にあるときは「肝内結石症」と呼ばれます。
国内の統計によると、このうち、もっとも多くみられるものが胆嚢結石(78%)、次いで総胆管結石(21%)、肝内結石の発生頻度は他に比べまれ(1.3%)です。
この胆石ができる場所により、症状も治療法も異なります。
参考)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tando1987/11/2/11_133/_pdf
1-1.胆嚢とは?
胆嚢とは、握りこぶしぐらいの大きさ(長さ約8cm)のナスのような形の袋で、胆管から枝分かれして存在し、一部は肝臓にくっついて固定されています。
胆汁は、水分・コレステロール・ビリルビンの他、胆汁酸やレシチンという成分で構成されており、内臓の中でもっとも大きな臓器の肝臓で1日に約600~800ml程、胆汁が作られています。
この胆汁を一時的にためておくところが胆嚢で、ため込んだ胆汁を濃縮する働きがあります。
胆汁は食事をしたときに胆嚢から押し出され、すい臓の出口で膵液とともに十二指腸へ分泌し、脂肪や炭水化物の消化を助ける働きをします。
2.胆石症が起こる原因
胆石は、構成成分によって「コレステロール結石」と「色素性結石」に分類され、色素性結石は「ビリルビンカルシウム石」(大腸菌の感染)と「黒色石」(溶血性疾患)があります。
そのうち、胆石の種類の中でもっとも多いのがコレステロール結石で、約80%を占めます。
肝臓の働きの一つにコレステロールの代謝(排泄)があります。
コレステロールは水に溶けないため、一部は胆汁の中に溶け込ませて肝臓の外に排泄します。
胆汁の中のコレステロールと胆汁酸のバランスが崩れると、コレステロールが結晶化し、胆石のもとになります。
このコレステロールの結晶が胆嚢粘膜から分泌されるムチンというタンパク質によってくっつきあい、コレステロール結石ができます。
3.胆石症を引き起こす危険因子(リスクファクター)
胆石症のリスクファクターとして「Fatty(太った)」「Female(女性)」「Forty(40歳代)」「Fair(白人)」「Fecund(多産婦)」の頭文字をとった5Fが知られています。
この他にも、美食家や糖尿病患者・脂質異常症・非アルコール性脂肪性肝疾患患者・血縁者に胆石患者がいる人は注意が必要です。
近年、日本人の胆石保有率は増加傾向にあり、その原因として生活習慣や食事の欧米化などの食事習慣が大きく関与しているといわれています。
・1日の摂取総カロリー数の増加、脂質や糖質が過剰な食生活、それに伴う肥満
・運動不足
・夜間の長時間にわたる絶食
・肥満者における低カロリーダイエットによる急激な体重減少
などが、胆石生成のリスクを増加するとして報告されています。
また、胆石症は加齢とともに発症率は高まる傾向にあり、とくに50~60歳代で肥満傾向にある女性のリスクが高いといわれています。
とくに女性であることや女性ホルモンは胆石形成に関連するリスクファクターとして挙げられ、妊娠や妊娠回数に影響を受けると報告があります。
参考)
https://aasldpubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/hep.20534
4.胆石症の症状
胆石症の症状は、2~3割の人はほぼ症状がありません(無症状胆石)。しかし、半数以上の人は「胆道痛」と呼ばれる特徴的な痛みを感じます。
ここでは胆石症の症状についてご紹介します。
4-1.食後の心窩部・右季肋部痛
胆石症の自覚症状でもっとも多いものが、心窩部(みぞおち)と右季肋部痛(右上腹部)に差し込むような鋭い痛みを感じ、放散痛とよばれる背中に抜けるような痛みを伴うこともあります。
これ以外にも、肩、腰などに痛みがでることがあり、筋肉痛や肩こり、心臓病のように感じる人などもいます。
痛みは数十分から数時間にわたって続きそのうちに落ち着きます。
食後や夜間に起こることが多く、とくに脂っこい食事を食べたあとは注意が必要です。
4-2.吐き気・食欲低下・だるさ
胆石症の症状には、吐き気や嘔吐・だるさなどもしばしば伴います。
4-3.発熱
発熱は胆石症でしばしば認められる症状です。
胆石により胆嚢内の胆汁が滞り、細菌感染が起こった場合に起こります。
症状が悪化すると、急性胆嚢炎になり、腹痛とともに38℃以上の熱がでることもあります。
痛みがはっきりせず熱だけがでるような場合は診断が難しいので、胆嚢結石(胆石)による発熱を「風邪」として治療して症状が増悪することもあります。
右の肋骨の下あたりのおなかを触ると他の部分よりおなかが硬く感じたり、押すことによって痛く感じたり(圧痛)することによって診断される事もありますが、自覚症状として腹痛がないとなかなか気づきにくい(診断されにくい)のです。
4-4.黄疸(おうだん)/肝機能異常
胆石が胆道にはまり込み、胆嚢が炎症を起こし、胆汁の流れが悪くなると「黄疸(おうだん)」や「肝機能異常」などの症状を起こすことがあります。
肝機能異常は、採血で肝逸脱酵素(GOT/GPT)を測定して判断します。
黄疸は、胆汁の流れが滞ると、十二指腸に排泄されずに血液中に流れた結果、現れる症状です。
採血により、ビリルビンを測定することでわかりますが、黄疸が進行すると、白目や皮膚が黄色くなるなどの症状がでる、皮膚がかゆくなる、ビリルビン尿という褐色~黒色の尿が出ることがあります。
このように、胆石症では症状が人によりさまざまです。
胆嚢結石を持っており、普段症状を感じない人は、発熱やおなかの痛みなどの症状を感じたら「胆石のせいかも?」と、担当の医師に相談したほうが良いでしょう。
「おなかのかぜ」と胆嚢炎の区別は往々にして難しいことがあります。
5.検査
5-1.超音波検査(US)
超音波検査は胆石症の検査でもっとも標準的な方法で、とくに胆嚢結石の診断には腹部超音波検査が有効です。
この検査は、プローブと呼ばれる小さな装置を聴診器のようにおなかにあてるだけの検査で、患者さんの体への負担がないというメリットがあります。
5-2.血液・生化学検査
血液・生化学検査にて、炎症反応やGOT、GPTなどの肝酵素や胆道系酵素(ALP、LAP、γ-GPT)の上昇が見られれば、胆石の存在を強く疑います。
時に、胆嚢から落下した胆石が総胆管の出口を塞ぎ、黄疸や急性膵炎を合併すると、ビリルビンやアミラーゼの上昇も見られることがあります。
5-3.腹部単純X線検査
腹部単純X線検査では、カルシウム含量の多い色素胆石(ビリルビンカルシウム石、黒色石)を確認することができます。
一方で、カルシウム成分が少ないコレステロール胆石は写りません。
治療方針の決定や、他の場所の胆石(肝臓内、胆管)のチェックをするために、他の検査を行うことがあります。多くの場合は下記のうち一つか二つの検査を行います。
・CT検査…X線とコンピュータを使い、体の輪切り写真を撮影します。
・MRI検査(MRCP)…強力な磁石でできた筒の中に入り、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影します。
・内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)…内視鏡(胃カメラ)を使った造影検査です。
・静脈性胆道造影(DIC)…点滴による造影検査です。
6.胆石症の治療法(一般的な治療)
胆石症は、無症状の場合多くは定期的に経過観察がすることが多いですが、おなかに痛みがあるなどの症状がある場合、根治治療として外科的手術が原則です。
また、手術以外にも胆石の状態などによって、いくつか治療法があります。
6-1.外科手術
胆石の手術は、胆石だけを取り除いても再発することが多く、再手術になってしまうことから、基本的に胆嚢ごと取り出します。胆嚢を取り除く手術は全身麻酔下で行います。
おなかの中心部分に4~5箇所の穴を開けて、臍部から挿入されたスコープにて、腹腔内をモニター画面に描出しながら、別の穴より鉗子と呼ばれる専用の器具を挿入して、胆嚢摘出します。
術後痛みが少ない、日常生活への復帰が早いことが特徴です。
一方開腹手術は、以前に胃や腸の手術を受けたことがあったり、胆嚢の炎症や癒着が強かったりする場合に行われることが多くあります。
傷口は大きくなりますが、直接手で触れながら治療ができるため安全性に優れています。
6-2.胆汁酸溶解療法
胆汁酸製剤(ウルソデオキシコール酸)を用いて、溶解効果する方法です。
コレステロール石では胆汁酸製剤の溶解効果が認められていますが、石の大きさが15mm以下・石灰化のないコレステロール石で胆嚢の動き(収縮機能)が正常な場合に適応となるなど条件があります。
また、再発のリスクもあることから、胆石が溶けた後も胆汁酸製剤の内服を続ける必要があります。
6-3.体外衝撃波粉砕療法(ESWL)
体の外から衝撃波を胆石に照射して胆石を砕く方法もあり、これを体外衝撃波胆石破砕療法(ESWL)といいます。
単発(結節が一つ)・直径20mm以下・石灰化のないコレステロール石で胆嚢の収縮機能が正常な場合、1年後の消失率は63~90%です。
手術が高リスクなどでできない人に対しては選択肢の一つとして考えられる一方、問題点として10年間で54~60%ぐらい再発の可能性があることがあります。
参考)
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/GS2_re.pdf%23page=25
6-4.内視鏡的乳頭括約筋切開術
胃カメラを十二指腸の乳頭部まで挿入し、乳頭を切開し、拡張した後に結石を除去する方法で、胆管結石の治療に利用されています。
7.胆石症の治療法(自然療法)
上記のような一般的な治療法の他に、自然療法についてご紹介します。
ここでは、胆汁の流れを刺激する食材や胆汁を補充する方法、胆嚢の機能を改善させる食事、また、胆石症と腸内環境の関係性と腸内環境を改善させる食事などについてご紹介しています。
すでにできてしまった胆石に対しても有効ですが、未然に防ぐためにぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
ただし、すでに胆石を持っていて典型的な症状がある場合には、緊急処置が必要な場合がありますので、主治医にご相談ください。
胆石症の自然療法について詳しい解説はこちらをご参照ください。
▼【医師解説】〇〇な女性に多い?胆石症|原因・治療法と食事療法
https://wellmethod.jp/cholelithiasis/
7.胆石症を予防するための日常生活
胆石の形成を未然に防ぐためには、日常生活においても意識できることがあります。
7-1.適度な運動を行い、肥満を防止しましょう
運動を全くせずに長時間テレビを見ている、仕事でずっと座っているなどの運動不足は、肥満につながります。
肥満はコレステロール合成の増加、胆汁へのコレステロール分泌の増加、コレステロール過飽和胆汁の産生を促し、胆石の形成を促します。
そのため、胆石症を予防するためは、無理のない範囲で適度に運動し、肥満を防止することが大切です。
ウォーキングなどの適度な運動は、体重コントロールに効果的で、かつ自身のストレスの解消や、自律神経のバランスを整えるなど、体にうれしい効果が期待できます。
ご自身のできる範囲でできるだけ毎日続けることが肥満防止につながります。
7-2.規則正しい生活習慣を送る
胆石の形成を防ぐためには、規則正しい生活習慣を身に着けることが大切です。
とくに食事の回数は1日3回きちんと取るようにしましょう。
食事を抜く・過度なダイエットなどは、胆汁の排泄する時間が不規則となり、かえって胆石の形成を促す誘因となります。
過食や暴飲暴食にならないよう、食事の際はゆっくり噛んで食べるようにしましょう。
胆嚢機能を改善させる食事、胆石症と関係のある腸内環境を改善させる食事についてはこちらをご参照ください。
▼【医師解説】〇〇な女性に多い?胆石症|原因・治療法と食事療法
https://wellmethod.jp/cholelithiasis/
8.生活習慣を見直し、胆石症を予防できる体づくりを目指しましょう
胆石症は日頃の生活習慣がリスク要因になることがあり、予防するためには日々の心がけが大切です。
「いまは全く問題ないから大丈夫」「時間がなくて、考えられる余裕がない」そう思う人も少なくないのではないでしょうか。
筆者も、忙しい日が続き疲れがたまると、「夕飯は簡単に済ませてしまおう」「食後にデザートもつけたい」と思ってしまうことがあります。
しかし、40歳、50歳と女性の体は年齢を重ねるごとに変化していることは事実です。
とくに、女性は40代になるとホルモンが減少し、コレステロールの代謝が低下し、肥満傾向になりやすく、胆石ができやすくなる年代でもあります。
40~50歳代の女性である「いま」の私たちだからこそ、これからの自分の体をつくるために生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
毎日を健やかに過ごすためにも、自分の体と向き合うようにしましょう。
この記事の監修は 医師 城谷 昌彦先生

城谷 昌彦
監修医
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・認定内科医・認定産業医
ルークス芦屋クリニック院長
腸内フローラ移植臨床研究会専務理事
NPOサイモントン療法協会理事
ヒュッゲ・ラボ株式会社代表取締役
主な所属学会
日本内科学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本抗加齢医学会・日本統合医
療学会・日本先制臨床医学会 など
東京医科歯科大学医学部卒業。
神戸大学病院内科、京都大学病院病理部、兵庫県立塚口病院(現・尼崎総合医療センター)消化器科医長、城谷医院院長などを経て、2016年ルークス芦屋クリニック開設。
消化器病専門医でありながら、自ら潰瘍性大腸炎発症によって大腸全摘術を経験。
西洋医学はもとより、東洋医学、心理学、分子栄養学、自然療法等の見地からも腸内環境を健全に保つことの大切さを改めて痛感し、腸内環境改善を柱とした根本治療を目指している。
2017年からは腸内フローラ移植(便移植)による治療を開始。腸内細菌が人体に及ぼす多大な機能改善力に着目し、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患だけでなく、うつ、自閉症、自己免疫疾患、がんなど多岐にわたる疾患の治療を行なっている。
- ルークス芦屋クリニックHP
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著作・監修一覧
- ・『腸内細菌が喜ぶ生き方』(海竜社)
- ・『骨スープで楽々やせる!病気が治る!』(マキノ出版)
- ・『専門医伝授「アミノ酸豊富!骨だしスープで腸内フローラを再生」』(WEB女性自身)