この「耳鳴り」更年期の症状? 女性ホルモン低下によるものとその他の病気の特徴
こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。
あの耳障りな高音の「キーン」
ずっと続く低音の「ザー」
みなさまは、ふいに聞こえるこれらの音に悩まされた経験はありませんか?
更年期やプレ更年期の多くの方が一度は経験している「耳鳴り」。
筆者は40歳になった頃から、何の前触れもなく起こる高音の「キーン」という耳鳴りに悩まされるようになりました。
いま思い返すとその頃は、若いときには感じることがなかっためまいや疲れを感じており、更年期に入り始めた時期だったように思います。
耳鳴りが気になって仕事や家事に集中することができず、イライラしたり気分が沈むということが何度もあり、ついつい家族にあたってしまうことも…。
筆者のように更年期かなと思われる症状が現れるようになってから、耳鳴りが気になりだしたという女性も少なくありません。
今回は更年期を迎える方が気になる耳鳴りの症状と原因、病院で受ける治療法や自分でできる対処法をご紹介します。
目次
1.耳鳴りとは?
実際には鳴っていない音が鳴っているように聞こえる現象を「耳鳴り」といいます。耳鳴(じめい)と呼ばれることもあります。
人によって耳鳴りの音の聞こえ方は異なりますが、耳鳴りの症状がある多くの方は「キーン」といった高い音が聞こえることが多いです。
最近まで、耳鳴りは大きく2つに分けて考えられてきました。
1-1.自覚的耳鳴り
自覚的耳鳴りは本人にしかその音は聞こえず、周りの人には聞こえません。耳鳴りのほとんどがこの自覚的耳鳴りです。
実は、この耳鳴りも、客観的に計測ができることが発見されたため、最近では「自覚的」だけとも言えなくなってきました。
耳鳴りが起こる原因は様々ですが、いずれも仕組みについては、完全には解明されていません。
1-2.他覚的耳鳴り
他覚的耳鳴りは他者でも聞くことができる耳鳴りのことです。医師が耳鳴りの症状が出ている人の耳に聴診器などを当てることで音を聞くことができます。
他覚的耳鳴りは耳周辺の筋肉がけいれんしたり、血液が流れるときに生じる雑音などによって起こります。
2.耳鳴りの症状とは?
耳鳴りの症状は原因によって異なります。
耳鳴りは両耳から聞こえるものもあれば、片耳のみの場合もあります。
一般的に多く聞かれる耳鳴りの音は高音で「キーン」となるものですが、低音で「ザー」といった音が聞こえる場合もあります。
その他にも耳鳴り以外の症状として耳が聞こえにくくなったり、自分の声が響いているように聞こえることもあります。
また耳に関する症状だけではなく肩こりやめまい、全身に不快感を感じるといった症状が起こる場合もあります。
2-1.更年期の耳鳴りの症状の特徴
更年期に伴う耳鳴りの特徴は、更年期もしくは生理前後などでホルモンバランスが乱れ、変化する過程で起こることです。
また疲れやストレスを感じると耳鳴りがするといったことも多くあります。
また耳鳴りだけではなくさまざまな症状が現れ、日によって症状が変わったり、耳鳴り以外の症状がいくつも重なることがあります。
更年期による耳鳴りの原因については次章にて詳しく解説していきます。
2-2.更年期が原因の耳鳴りか別の病気か見分けるには
耳鳴りがいつ、どこで、どのようなときに起こるのかを把握しておくことが大切です。
耳鳴りは、医師であっても診断が難しい病態です。
耳鳴りの原因が更年期であるのか、それとも別の病気によるものか見分けるには医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。
耳鼻科では聴力検査や耳鳴りの程度検査、中枢性めまいを疑うときはMRI検査を行うこともあります。
その他にも平衡検査などを行い、その他の耳鼻科疾患がないかを判断します。
中枢系の病気が疑われる場合は、脳外科などの他科受診をする必要があります。
原因が更年期である場合は、これらの検査を行ってもとくに異常が見られないことが多く、その他の耳鳴りの原因が否定されて残った可能性として、更年期の耳鳴りと診断されます。
3.更年期における耳鳴りの原因
更年期になるとこれまで感じることがなかった体の変化や不調を感じることが多くなります。更年期障害の症状はさまざまですが、耳鳴りもその中の一つです。
更年期の症状として起こる耳鳴りは、女性ホルモンの分泌が低下したことで自律神経の働きが乱れ、症状が現れることがあります。
また女性ホルモンの低下と更年期を迎える年代に起こりやすいその他の要因によって、耳鳴りが起こる可能性もあります。詳しくご説明します。
3-1.ストレス
更年期を迎える年齢になると家事や仕事、子育て・介護など社会的に見てもとても忙しい毎日を送っており、さまざまな場面でストレスを感じることも少なくありません。
強いストレスを日常的に感じていると自律神経が乱れ、耳鳴りやめまいなどが起こる場合があります。
耳鳴りが起こることでさらにストレスを感じ、耳鳴りの症状の悪化につながることもあります。
3-2.睡眠不足
毎日しなければいけないことがあるとそれをこなそうとして、睡眠時間を削ってしまうことはよくあることです。
女性ホルモンの低下は、睡眠ホルモン・メラトニンの分泌にも影響を与えます。
睡眠不足が続くとストレスと同じように、自律神経が乱れてしまいます。自律神経が乱れることで耳鳴りが起こる可能性があります。
3-3.高血圧
耳鳴りの原因の一つが高血圧です。
高血圧によって耳の周りの血管が硬くなり血流が悪くなると、血液が流れる音が耳鳴りとして聞こえます。
40代以降は高血圧になる方が多いため、更年期世代で耳鳴りの症状がある場合は高血圧かどうか注意しておくことも大切です。
耳の血流低下は、めまいを引き起こす原因にもなります。動脈硬化に伴うその他の症状として、肩こりも伴いやすくなります。
▼“女性の更年期高血圧”とは? 予防のための食生活・生活習慣
https://wellmethod.jp/menopausal-hypertension/
3-4.めまい
更年期の症状にみられるめまい。
めまいは体が一瞬ふわっと浮いたように感じたり、揺れているように感じる「浮動性のめまい」と天井などがぐるぐる回っているように感じる「回転性のめまい」があります。
めまいに関わる平衡感覚と聴覚をつかさどる器官が近い部分にあるため、めまいと耳鳴りが同時に起こる可能性があります。
しかし、めまいは耳が原因とも限らず、中枢性である可能性もあります。
原因の特定が必要なため、まずは耳鼻科に相談しましょう。
4.自分でできる耳鳴りの対処法
更年期における耳鳴りは、自律神経の乱れと深い関わりがあります。
まずは自律神経を整えるために日々の生活を見直すことが大切です。
耳鳴りだけではなく、健康的な毎日を送るためにも生活習慣を見直しましょう。
4-1.質の良い睡眠をとる
耳鳴りの改善だけではなく、健康的な毎日を送るためには質の良い睡眠を十分とることが大切です。
睡眠時間をしっかり確保することはもちろんですが、睡眠リズムを整えたり、睡眠の質を上げることも大切です。
毎日決まった時間に寝ることや、寝る前にテレビやパソコン、スマートフォンの使用を控えることで睡眠の質を上げましょう。
▼【医師が解説】“良質な睡眠”をつくるために毎日やるべき習慣・やめるべき習慣
https://wellmethod.jp/sleep_hormones/
4-2.運動をする
耳鳴りは血流が悪くなることで引き起こされることもあります。血流を良くするためには、動脈硬化を予防する生活習慣に加えて、第二の心臓といわれるふくらはぎを動かすことが大切です。
また多忙な毎日を送っていると運動をする時間を確保できない方も多くいます。意識的に運動をするよう心がけるようにしましょう。
時間を確保できる場合は、1日40分、うっすらと背中に汗をかくような運動をすることで血液の循環が良くなり耳鳴りを感じにくくなります。
運動習慣のない方は、無理のない範囲で運動をするようにしましょう。
腰や膝に不安のある方は、半身浴やサウナを利用するのもおすすめです。
4-3.ストレスを発散する
ストレスをため込むことにメリットはありません。
自分に合ったストレス発散方法を見つけ、ストレスをため込まないようにしましょう。
先にお伝えした睡眠をしっかりとることや運動をすることもストレス発散につながります。
その他にも規則正しい生活や、趣味などを楽しむこともストレス発散につながります。
5.耳鳴りの治療法
耳鳴りは決定的な治療法は確立されておらず完治が難しい病気です。
内科や婦人科でも相談が可能ですが、専門科は耳鼻科になるため、精密検査を行い原因を特定するには耳鼻科受診をする必要があります。
耳鳴りの原因を根本解決する治療法は残念ながらありませんが、本人が気にならなくなりQOLを高められる治療法も取り入れられるようになってきました。
一般的な治療法として、まず、薬物療法があります。ビタミンB12製剤・ATP製剤、脳循環改善剤、また、頚部の筋肉の緊張がある場合には筋弛緩剤。
耳鳴りへの感度を下げるために抗不安剤や抗うつ剤。
神経の興奮を抑えるために抗痙攣剤。
メニエール病がある際には、利尿剤。
急性の感音性難聴がある場合には、ステロイド剤などが使用されます。
その他にも症状に合わせて漢方薬が処方されることもあります。
耳鳴り以外にも難聴が認められ発症から2週間以内であれば、血流改善剤の点滴投与や星状神経節ブロック・ステイロイド・血流改善剤の内服が有効です。
その他にも最近注目されている耳鳴りの起こる原理に基づいた治療法として、ノイズを使うことで耳鳴りを遮蔽するマスカー療法や、ノイズによって耳鳴りへの慣れを導くTRT療法があります。
また、音響療法や心理療法なども併用されることがあります。
6.耳鳴りを引き起こす病気
耳鳴りやめまい・ふらつきなどは更年期障害の一つの症状として認識されていますが、この年代に起こるこれらの症状がすべて更年期によるものというわけではありません。
更年期になるとさまざな体の不調が起こり、日によっても症状が異なることも少なくありません。
そのため体や心の不調を感じても、更年期が原因と自己判断し、病気のサインを見逃してしまうこともあります。
耳鳴りは更年期の症状ではなく病気によって引き起こされている可能性もあります。
ここでは耳鳴りを引き起こす病気の代表的なものをご紹介します。
6-1.耳鳴りが片耳から聞こえる
・突発性難聴
キーンといった高音の耳鳴りや耳が聞こえにくくなるといった症状を伴うことがあります。
・メニエール病
回転性のめまいを伴うことが多いのが特徴です。
・聴神経腫瘍
初期症状として耳鳴りや聴力の低下がみられ、徐々に音が聞こえなくなります。
聴力以外にも顔面の麻痺やしびれなどの症状があり、腫瘍が大きい場合はめまいや歩行障害・嚥下障害が現れることがあります。
6-2.耳鳴りが両耳から聞こえる
・老人性難聴
耳鳴りの他に耳が聞こえにくくなります。
・騒音性難聴
機械音や工事音などの騒音にさらされることで耳が聞こえにくくなります。
6-3.ザーという低音の耳鳴りが聞こえる
・耳垢栓塞(じこうせんそく)
耳垢が耳の穴を塞いでいる状態です。耳が聞こえにくくなったり、耳が詰まったような感じになるなどの症状が現れます。
・耳硬化症(じこうかしょう)
鼓膜の内側にあるアブミ骨とよばれる耳小骨の動きが悪くなり、耳の聞こえが悪くなったり耳鳴りが現れたりします。
上記の病気は耳が聞こえにくくなるといった症状を伴うことがあります。
・耳管狭窄(じかんきょうさく)
鼻炎に合併しやすく、自分の声が響くといった症状を伴うことがあります。
6-4.その他にも気をつけたい病気
耳鳴りやめまいなどの症状が起きる病気には命に関わる病気もあります。
その代表的なものは脳梗塞や脳卒中です。
頭部外傷の後遺症などで耳鳴りを伴うこともあります。
耳鳴りが長く続く場合や耳鳴りが気にるときは、まず、耳鼻科に相談し、必要であれば神経内科や脳外科などに紹介してもらいましょう。
7.体のSOSをキャッチして、健康的な毎日を送りましょう
耳鳴りは突然起こります。
耳鳴りがない日もあれば、しばらくずっと続くことも…。
仕事に集中したいときや家事に追われているときも関係なく起こる耳鳴りに、気分まで滅入ってしまうこともありますよね。
更年期になるとさまざまな体や心の不調を感じることが多くなります。
しかしその不調が病気のサインだったということも少なくありません。
すべてを更年期の症状として捉えるのではなく「何かおかしいな」と感じたときは、医療機関を受診することが大切ですね。
また耳鳴りだけではなくこれからの先の人生を楽しく自分らしく送るために、健康は欠かせないもの。
自分の体の不調のサインを見逃すことがないように、忙しい毎日の中でも自分の体と向き合う時間を作るようにしましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか