このニオイの原因は? ワキガを予防するための生活習慣の整え方と治療法
こんにちは、WELLMETHODライターの廣江です。
みなさまは汗をたくさんかいたあと、「あれ?もしかして自分臭いかも」と不安になったことはありませんか。
とくにこの蒸し暑い時期、身だしなみとして気を付けたいものが「ニオイ」です。
この「ニオイ」つまり体臭ですが、とくに有名なものが「ワキガ」です。
ワキガは、体臭の中でも特徴的で強烈なニオイを発するといわれています。
しかしながら、ワキガは自分で気が付くことが難しく、ワキガでなくても「もしかしたらワキガかもしれない」と不安に感じる人も少なくありません。
そもそも、ワキガとはどのような状態のことをいうのでしょうか。体臭との違いなどはあるのでしょうか。
自分がワキガであるかどうかを見極めるポイントや、治療方法や生活習慣、食べ物についてなども気になりますよね。
ワキガを予防するためには、ワキガになりやすい原因やメカニズムを理解することが大切です。
今回は、ワキガについての自分で予防できる対処法などをご紹介したいと思います。
これからの汗ばむ時期、ワキガへの対策をしっかり行い、ニオイを予防していきましょう。
目次
1.ワキガとは?
ワキガとは、汗をかいたときに脇の下から特有のニオイを発する状態のことです。
医学的には腋臭症(えきしゅうしょう)と呼ばれます。
人間は体を動したり、風邪で熱がでたりした場合、体を適応させるために汗をかきます。
この汗は、体温調節を行うために分泌されますが、このときに出る汗はワキガとは直接関係ありません。
1-1.ワキガのニオイ
そもそもワキガには具体的な数値など明確な定義はありません。ワキガ特有のニオイとは以下のようなニオイに例えられます。
・硫黄のようなニオイ
・香辛料のようなスパイスの香り
・玉ねぎのようなツンとするニオイ
2.ワキガや体臭の原因はアポクリン汗腺
体から汗が出る汗腺にはアポクリン汗腺とエクリン汗腺の2種類があります。
このうちエクリン汗腺からでる汗は体の体温調節に関係しており、一方でアポクリン腺はワキガに関連しています。
それぞれ汗腺の違いについてまとめてみました。
2-1.エクリン汗腺
エクリン汗腺はほぼ全身の表面に分布する汗腺です。
運動したときや病気になったときに体温調節を行うためエクリン汗腺から汗がでます。
いわゆる「汗をかく」ときに出る汗です。
エクリン汗腺から分泌される汗は99%が水分でできています。無色でサラサラしており、汗自体が無臭なことが特徴です。
このエクリン汗腺から分泌される汗は、皮膚表面にいる常在菌が増えることで、いわゆる酸っぱい汗臭となったり皮脂と混ざり合ったりすることで、汗と皮脂の混合臭として、「体臭」の原因になることがあります。
しかし、ワキガの原因に直接つながることはありません。
2-2.アポクリン汗腺
エクリン汗腺が全身にある一方で、アポクリン汗腺はわきの下や耳の穴の中(外耳道)、陰部など、毛が生えている特定の部分にのみ存在します。
アポクリン汗腺から分泌される汗には、タンパク質や脂質などが含まれており、エクリン汗腺からの汗とは違って、白色で濁っており、ベタベタとした粘り気を伴い、皮膚の常在細菌に分解されて、独特のニオイを発します。
アポクリン汗腺から分泌される汗に含まれる脂肪酸は、皮膚の常在菌により分解され、低級脂肪酸になります。
この低級脂肪酸こそがワキガの悪臭と呼ばれる原因になります。つまり、アポクリン汗腺の数や大きさによってワキガの発症確率が変わります。
3.ワキガが発生する要因
では、ワキガになる人となりにくい人はどのような差があるのでしょうか。
この章では、ワキガになりやすい原因についてご紹介します。
3-1.遺伝
ワキガは優性遺伝というタイプの遺伝的要因です。祖父母からの隔世遺伝もあります。
両親のどちらかがワキガの場合、50%は遺伝します。さらに両親どちらもワキガの場合は、75〜100%の割合で遺伝します。
世界的には、ワキガがない民族の方が珍しく、日本人は約10%ほどしかいませんが、欧米では8割、アフリカ系で100%がワキガです。
3-2.性ホルモンの活性化
性ホルモンはアポクリン汗腺の働きを活発化する作用があり、ワキガが起こりやすくなるといわれています。
そのため、アポクリン汗腺を多く持っていたとしても赤ちゃんの頃にワキガは発生しません。
しかし、思春期になり性ホルモンが活性化する年齢になると、アポクリン汗腺が刺激され、ワキガが発症します。
また女性の場合、妊娠や出産により性ホルモンが変動し、一時的にワキガになりやすくなることがあります。
3-3.生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れは、ワキガの悪化要因になることがあります。
運動不足の方が急に汗をかいたとき、毛穴の汚れが一気にでることでワキガが悪化することがあります。
不規則な生活でホルモン分泌が乱れることでも、アポクリン汗腺からの汗を刺激することがあります。
4.ワキガの可能性がある人の特徴
自分がワキガであるかどうか、多くの方は自覚があるものです。
しかし、疑わしいと思っていても家族や他人に尋ねるのは勇気がいるものです。
また、自分でワキガであると思っていても、実際はそうでない場合もあります。
ご自身で、近くの医療機関を受診することが確実ではありますが、その前に自分でワキガの可能性をチェックする方法をご紹介します。
以下の項目に当てはまるかどうかぜひ確認してみましょう。
4-1.耳垢が湿っている
ワキガの原因であるアポクリン汗腺は耳の中に存在しています。
エクリン汗腺は存在しません。
そのため耳垢の湿りはアポクリン汗腺が多いことが考えられ、その場合は脇にもアポクリン汗腺が多く、ワキガの可能性が高くなります。
4-2.洋服の脇に黄色い汗の染みが見られる
ワキガではないエクリン汗腺から発する汗は無色透明で、汗をかいても汗ジミはつきません。
一方で、アポクリン汗腺にはタンパク質や脂肪が含まれています。
そのため、アポクリン汗腺が多いワキガの人の場合、脇にできる汗ジミが黄ばみやすくなります。
4-3.家族や親せきにワキガの人がいる
前の章でも述べた通り、ワキガは遺伝するケースが多く見受けられます。
ご自身の家系にワキガの人がいる場合、遺伝によりアポクリン汗腺を多くもつことがあり、ワキガになる可能性は高くなります。
4-4.他人からニオイのことについて指摘されたことがある
ワキガは見た目では断定しにくい症状のため、他人からの意見も大切です。
ワキガは尋ねるにも勇気がいる上、相手も答えづらい内容でもあるため、気になる方は身近の家族や信頼のおける人に思い切ってきいてみるものも良いでしょう。
これらのセルフチェック項目はあくまでもワキガになりやすい体質や可能性が高いということであり、当てはまるからといって必ずしもワキガであるということではありません。
中にはニオイを気にするあまり、本当は臭っていないのに臭うと思い込んでしまう「自臭症」の可能性もあります。
もし自分がワキガかもしれないと気になる方は、専門の医療機関を受診しましょう。
また、医療機関でワキガかどうかチェックする際は、
・脇の一部を切り取り、アポクリン腺が多数あるか確認する
・耳垢の湿り具合
・両親がワキガであるか
・診察医の嗅覚(官能テスト)
で総合的に診断し、「本人がワキガで悩んでいるかどうか」「生活に支障をきたしているかどうか」をポイントに診断します。
5.ワキガ治療の選択肢
ワキガは体質であり、治療を行う必要はありませんが、自身がワキガで悩んでいたりする場合、手術によって根本的に治療をすることが可能です。
5-1.手術
ワキガの手術方法は、アポクリン汗腺自体を除去する方法や、機能を弱める方法が一般的です。
また、制汗剤や塗り薬の使用、内服薬を使う場合もあります。
手術の場合、ワキガだけを治療したいのか、ワキガと多汗症を治療したいのかによっても治療方法は異なります。
それぞれメリット・デメリットがあるため、検討される方は専門の医療機関の医師と相談しましょう。
治療方法 | メリット | デメリット | |
切開法 | わきの広い範囲を切開し、アポクリン汗腺を取り除く | ・アポクリン汗腺をほぼ除去できる ・治療が一度で終わる |
・切開をするので傷跡が残る ・切開するため入院や療養が必要など体のダメージが大きい ・術後のケアを行う必要がある |
剪除法 | わきの狭い領域を切開し、汗腺を取り除く | ・汗腺を確実に除去できる ・治療を一回で終えることができる |
・傷跡が残りやすい ・上手な医師に行ってもらう必要がある ・療養が数日間必要である |
レーザー・超音波治療 | 光を照射し、汗腺を破壊する | ・傷跡が残りにくい ・体への負担が少ない |
・療養が数日間必要 ・汗腺の一部は残る |
マイクロ波 (ミラドライ) |
マイクロ波を照射することで汗腺を破壊する | ・傷跡が残らない ・療養がほぼ不要 ・身体への負担が少ない |
・汗腺の一部は残る |
吸引法 | わきの狭い領域を切開し、汗腺を吸引し除去する | ・傷跡が小さく済む ・身体への負担が少ない |
・療養が数日間必要 ・汗腺の一部は残る |
シェービング法 | わきの狭い領域を切開し、レーザー照射で汗腺を除去する | ・傷跡が残りにくく、汗腺の大部分を除去できる | ・療養が数日間必要 ・汗腺の一部は残る |
注射法 | 脇の下にボトックス注射を打ち、汗腺をとめる | ・入院など必要なく、簡単に行うことができる | ・汗腺自体が減るわけではないため、根本的な解決にはつながらない ・効果が一時的 |
5-2.外用薬や内服薬
ワキガの治療方法として、外用薬(塗り薬)や内服薬による治療方法もあります。
外用薬には「汗を抑える作用」や「ニオイを抑える作用」の成分が使われている薬を使用します。
市販の制汗剤も、殺菌成分が入ったタイプであれば、常在細菌の活動を抑え、腋臭を一時的に抑えることが可能です。
内服薬では、汗をかく量を減らすために抗コリン薬を用います。
内服薬は1日3~4回ほど服用する必要性があります。また、副作用として汗をかかなくなるため体に熱がこもりやすくなるので注意が必要です。その他、排尿障害や便秘、口が乾くなど諸々の副作用があります。
いずれにせよ、外用薬も内服薬も一時的な対症療法であり根本的な治療ではありません。
根本的に治療をしたい場合は、手術を検討することになるでしょう。
6.普段の生活の中でできるワキガの予防法
ワキガはあくまでも体質であり、病気ではありません。
そのためワキガだからといって治療しないといけないわけではありません。
自分がワキガだから…と神経質ならず、普段の生活習慣の中でワキガのニオイを抑えるように意識することがまずは大切です。
普段からできる予防法では、ワキガの根本的な治療にはなりませんが、ワキガのニオイを軽減させることはできます。
ぜひ、今回ご紹介する方法を生活に取り入れていきたいものですね。
6-1.運動をしてストレスリリースを心がける
ストレスや生活習慣の乱れで、アポクリン汗腺からの汗の分泌が刺激されると、腋臭を悪化させる可能性があります。
ワキガ体質の人は、規則正しい生活をして、ストレスを溜めないように自分なりのストレスリリースの方法をみつけましょう。
6-2.禁煙・カフェイン飲料を控える
タバコのニコチンやコーヒーなどに含まれるカフェインは、大量に摂取すると、汗腺を刺激し、汗の分泌を促す作用があります。
そのため、たばこやカフェイン飲料を控えることは汗の分泌を抑えることができるため、ワキガのニオイを予防することにつながります。
6-3.脇を清潔に保つ
ワキガを予防するためには、ニオイが気になる部分を清潔に保ちましょう。清潔にするためには、以下のような行動が効果的です。
・毎日お風呂に入る
・汗をかいたあとはすぐにシャワーを浴びて汗を流す、もしくは清拭して乾燥させる
・市販のデオドラント製品(制汗剤や殺菌剤(イソプロピルメチルフェノール・塩化ベンザルコニウムなど)、消臭剤(酸化亜鉛、茶エキスなど))を利用する
・脇が蒸れないように風通しの良い服装を選ぶ
・汗パットをこまめに取り換える
・脱毛する
このように脇が蒸れないように衣類を工夫したり汗パットを使用したりすること、こまめに拭いたりシャワーを浴びるなど清潔を心がけると良いでしょう。
デオドラント製品は軟膏、ローション、スプレーなど市販のものがたくさん存在します。
場合によっては肌のかぶれやカユミを生じることもあるので、肌に異常がでるようであればすぐに中止しましょう。
服装は熱がこもりやすい化学製品を避け、風通しの良い綿製品を選びましょう。
また、脇の脱毛も汗の分泌を抑える効果があるため、ワキガの予防として効果的です。
7.生活習慣のちょっとした心がけでワキガを予防しましょう
ワキガは体質であり病気ではありません。
ニオイ問題は大変デリケートであり、誰にも相談できず1人で悩んでいる方も少なくありません。
筆者も汗っかきのタイプなので、夏場はデオドラント製品が欠かせません。
汗をかいたなと思うときにはすぐに拭いて乾燥できる服装にするよう心がけています。
また、生活習慣の見直しはワキガのニオイは予防することだけではなく、体調を整えるためにもぜひ取り組んでいきたいところです。
もしかして自分がワキガかもしれないと気になる方はぜひ、セルフチェックで項目に当てはまるかどうか見てみましょう。
思い切って家族や仲の良い友人に聞いてみるのも一つです。
みなさまが快適で明るい毎日を過ごせるように、これからも自分を大切にして日々をすごしましょう。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか