その不正出血の原因は? 生理以外の出血に潜む危険な理由と分類別特徴
こんにちは、WELLMETHODライターの和重 景です。
「生理でもないのに、ショーツに血がついている…」
「お腹が痛くて、ショーツを見たら血がついていた」
「生理が終わったはずなのに出血している」
ということを経験したことはありますか?
生理でもないのに出血があると急に不安になりますよね。
筆者も、生理ではない日に出血があると「もしかして自分の体に異常があるのでは」と不安に思いつつも、「更年期の影響かな」と考えたり、「出血がどのくらい続いたら病院にいけば良いのか」「腹痛がなければ、気にしなくていいのだろうか」など悩んだ時期がありました。
不正出血を経験すると、「妊娠が関係しているのだろうか」「ストレスの影響だろうか」「なにか重大な病気が関係しているのだろうか」「どの程度で病院を受診すべきなのだろうか」などと考え、受診のタイミングについて迷うことが多々あると思います。
不正出血の原因は、生理的な現象のものから生理不順やホルモンバランスの乱れ、場合によっては早期に受診した方が良いような重大な疾患が隠れているケースまでさまざまあります。
そんな女性の悩み不正出血について、今回は不正出血の原因、受診のタイミングや日常生活でできる対処法についてご紹介します。
目次
1.不正出血とは
ホルモンの異常やなんらかの病気により、生理以外のときに性器から起こる出血のことを不正出血といい、婦人科受診の際には「生理不順」や「おりものの異常」と並んで訴えの多い症状の一つです。
出血は大量の鮮血であるようなケースや、おりものに少量まざった茶色の血のようなものまで、さまざまあります。
症状によっては、「一度様子をみてみようかな」と考えることもあると思います。
しかし、その出血は、重大な病気が隠れている体からのサインの場合もあります。
不正出血がある際は、自己判断は行わず、一度婦人科を受診するようにしましょう。
2.不正出血の種類
不正出血の種類には、大きく分けて「機能性出血」「器質性出血」「中間期出血」「その他の出血」と4つに分類されます。
2-1.機能性出血「ホルモンバランスの乱れ」
女性生殖器に物理的な原因がなく、ホルモンバランスの乱れにより起こる出血のことをいいます。
卵巣機能の未発達や低下により、ホルモンバランスが不安定になる思春期や更年期の女性に多くみられます。
ストレスがかかる状況でも起こりやすくなります。
脳下垂体や卵巣などのホルモン分泌に関連した機能のトラブルによるもので、無排卵月経で出血が続くケースや、黄体機能不全で生理前に少量の出血が続くケースがあります。
2-2.器質性出血「なんらかの病気が隠れている」
「器質性」とは、構造・形状のことです。
膣や子宮、卵巣などになんらかの構造・形状が異常となる物理的な病気があるために起こる出血のことをいいます。
器質性出血の代表的な疾患には、子宮筋腫、子宮内膜症、膣炎、子宮頸部びらん、子宮頸管ポリープ、子宮頸がん、子宮体がんなどがあります。
2-3.中間期出血(排卵期出血)「排卵期に出血する場合」
生理と生理の間の排卵期に、卵胞ホルモンの分泌が急激にアップダウンするために、子宮内膜が剥がれることで起こる出血のことをいいます。
体の生理的な出血で病的なものではありません。
ちょうど排卵の頃にいつも出血するようであれば、中間期出血の可能性が高いため、気になるときは基礎体温をつけて出血の時期を確認しましょう。
2-4.その他の出血「妊娠時の着床出血」「性交による膣内が傷ついた場合の出血」
不正出血の原因には、上記以外にも考えられます。
妊娠時に子宮内膜に受精卵が着床するときにおこる着床出血、性交のあとに膣の一部が傷ついて起こる出血、甲状腺ホルモン異常などの病気による出血などがあります。
不正出血が起こる原因と特徴について詳しくは4章でご紹介していきます。
3.出血する場所と関連する主な疾患
不正出血が起こる場所は、疾患により異なります。
出血している部位と考えられる疾患についてまとめました。
生理の場合は子宮体部からの出血になりますが、不正出血の場合は、子宮頸部、膣、外陰部からの出血も考えられます。
起こりやすい疾患は以下のようなものがあります。
子宮体部とは生理のときに出血する場所でもあるため、不正出血も起こりやすいとされています。
・子宮体部から出血する疾患…機能性出血・子宮内膜炎・子宮内膜ポリープ・子宮筋腫・子宮体がん
・子宮頸部から出血する場合…子宮頸管ポリープ・子宮頸管炎・子宮頸がん
・膣からの出血で考えられる疾患…膣炎・老人性膣炎・膣がん
・外陰部…外陰炎・外陰部の創傷・外陰がん
4.不正出血の原因と特徴
2章で紹介しましたとおり、不正出血の原因は主に、「機能性出血」「器質性出血」「中間期出血」「その他の出血」の4つに分類されます。
ここではそれぞれの原因と特徴について詳しく紹介していきます。
4-1.機能性出血「ホルモンバランスの乱れによるもの」
生理は卵巣内の卵胞から分泌されるエストロゲンと排卵後に黄体から分泌されるプロゲステロンという女性ホルモンのバランスによって周期が保たれています。
1.無排卵性出血
無排卵出血は、ホルモンバランスによる出血としては頻度の高いものになります。
ストレスや環境の変化、加齢により排卵が障害されると、卵胞は黄体に変化せずプロゲステロンを分泌しないまま退縮します。
プロゲステロンがない状態では、子宮内膜が増殖を続けますが、その後、子宮内膜が脱落して出血が起こります。
それと同時に、卵胞から分泌されていたエストロゲンの分泌量も低下するため、出血が起こります。
無排卵出血の場合、生理が長引く、生理と生理の周期が不規則にことがあります。場合によっては大量に出血することもあります。
40歳代後半になり更年期にさしかかると、次第に無排卵になり生理周期も短くなることがあり、不正出血が頻回に起こることがあります。
ただし更年期は、婦人科悪性腫瘍が好発する時期でもあるので、不正出血があるときはきちんと検査を受けることが大切です。
更年期世代の女性に起こりやすい不正出血について詳しくはこちらをご参照ください。
▼生理がなかなか止まらない! 更年期の女性に起こりやすいトラブル回避の対策
https://wellmethod.jp/menstruation-doesnt-stop/
2.黄体機能不全
黄体とは、排卵後の卵胞が変化して形成される組織です。
この黄体はエストロゲンとプロゲステロンを分泌し、子宮内膜をより厚く、成熟させ、妊娠に適した状態をつくります。
黄体機能不全とは、この黄体からのエストロゲンとプロゲステロンの分泌が十分に分泌されない場合、また子宮にプロゲステロンが上手く作用しない場合にも起こり、不妊・不育の原因にもなる疾患です。
黄体機能不全になると、子宮内膜が保持されず、生理よりも短い日数で出血が起こることがあります。
4-2.器質性出血「腫瘍やポリープなどによるもの」
不正出血の中には、腫瘍やポリープが原因で起こるものがあります。
1.子宮頸がん
20~30歳代に多い子宮の入り口にできるがんです。
多くは性交渉によりHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することが原因で発症します。
初期は無症状のことが多く、数年かけてがんに進展します。
進行の途中では、不正出血や茶色いおりものが多くなるなどの症状が現れます。
子宮頸がんは、性活動が活発で、生理のある若い年齢層に発症率が高いため、必ず頸管検診を受けて早期に発見しましょう。早期発見すれば、完治する疾患です。
2.子宮体がん
子宮体がんは、40歳後半から発症率が高くなり(若い人にもまれに発症します)、子宮頸がんとは異なり、がんの初期から不正出血が起こることが多くあります。
40歳代後半の更年期は生理周期がゆらぐ時期でもあるため、ホルモンバランスによる出血なのか子宮体がんによる出血なのかをきちんと検査することが大切です。
閉経後に不正出血があれば、必ず子宮体がんを疑い、早期に婦人科受診をしましょう。
3.子宮頚管ポリープ
子宮の入り口(頸管)から発生するポリープですが、性交渉の刺激や腟の炎症などでポリープの表面から出血することがあります。
4.子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープは超音波検査で見つけることができます。
悪性を否定するため子宮内膜検査(子宮体がん検査)を行います。子宮内膜ポリープがあると、生理の出血が多かったり、長引いたりする傾向にあります。
5.子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮にできる良性腫瘍です。
子宮筋腫の中でも子宮内膜に近いところに発生する粘膜下筋腫は、筋腫の大きさにかかわらず生理の量が多くなったり、生理が長引いたりします。
下腹部痛を伴い、出血量が多いため貧血を起こすこともあります。
また、子宮の外側にできる子宮筋腫は大きくなるまで自覚症状もなく、出血も起こりません。
ただし、大きくなるまで無自覚であることが多く、周囲の臓器にも影響を及ぼし、頻尿や排尿・排便時の痛み、腰痛を起こすことがあります。
6.膣炎を起こしている場合
「大腸菌などの雑菌」「カンジダ」、また「クラミジア」「淋菌」「トリコモナス」など性感染症が原因で出血することがあります。
本来、膣の中は膣の自浄作用と呼ばれており、デーデルライン桿菌という菌により酸性に保たれ、他の病原菌が感染しない環境となっています。
しかし、性交渉やストレスにより、この自浄作用が弱まると、膣内や子宮の入り口に菌が増殖し炎症が起き、出血が起こりやすくなります。
痒み、オリモノの異常に加え、感染が悪化すると下腹部痛や微熱・腰痛を伴うこともあり、治療をせず症状が悪化すると、子宮内膜炎や、さらに炎症が骨盤にまで広がると、高熱と急激な腹痛を伴う骨盤腹膜炎を起こすことがあります。
4-3.中間期出血
1.排卵期による出血
排卵期には卵巣内の卵胞からエストロゲンの分泌量が急激に増え、減少します。
この急激なエストロゲンの分泌量の変化により、一部の子宮内膜が剥がれ落ち、生理のような出血が起こることがあります。
これが排卵期の出血の原因と考えられており、中間期出血と呼ばれます。
4-4.その他の出血
1.妊娠に関するもの
妊娠時に受精卵が子宮内膜に着床するときにも不正出血を起こすことがあります。
また、2ヵ月以上生理がなく、妊娠の可能性が高いのに、腹痛を伴う不正出血が続く場合は、流産・切迫流産・子宮外妊娠の疑いがあります。
この場合にはすぐに産婦人科を受診しましょう。
2.裂傷によるもの
性行為などによる外陰部や膣壁の裂傷により出血することがあります。
3.甲状腺ホルモン異常などの生殖器以外の病気によるもの
甲状腺とは、喉のところに左右にまたがっている臓器で、甲状腺ホルモンというホルモンを作り、全身の新陳代謝を調節します。
この甲状腺ホルモンは代謝の調節以外にも、妊娠の成立や維持に大きく関係しています。
そのため、甲状腺機能低下症などの甲状腺の異常がみられる場合、生理不順を起こし、不正出血がみられることがあります。
また、プロラクチンと呼ばれる乳汁分泌に関わる下垂体由来のホルモンの分泌が何らかの原因で高まっても、不正出血が起こることがあります。
ストレスや多嚢胞性卵巣、甲状腺機能異常症、下垂体腺腫などが原因となります。
5.不正出血に関連する検査
不正出血で行われる検査には以下のようなものがあります。ただし全部の検査を行うわけではなく、疑われる疾患により必要な検査が行われます。
・子宮がん検査…子宮頸がんや子宮体がんの検査を行います。がんは早期発見早期治療が大切であり、命にかかわる病気なので定期的に検診を受けることが大切です。
・超音波検査…子宮や卵巣に不正出血の原因となる疾患の有無を確認します。
・おりもの検査…細菌感染をおこしている場合、子宮の入り口(びらん部分)がただれ、性行為の刺激で出血することがあるためチェックします。
・性感染症検査…クラミジア・淋菌・トリコモナスによる感染で子宮の入り口(頸管部分)が炎症を起こし出血を起こすことがあります。
・妊娠反応検査…受精卵の着床出血などであるか区別するために行われます。
・血液検査(女性ホルモン検査など)…エストロゲン・黄体化ホルモン・卵胞刺激ホルモンの分泌量、腫瘍マーカーなどをチェックします。出血量が多く長引いている場合は鉄欠乏性貧血の有無を確認する検査も行います。
6.こんなときは病院へ
不正出血は生理的な現象により起こることもありますが、体からの病気のサインの場合も多くあります。
自己判断は大変危険ですので、不正出血がある場合は、すぐに婦人科の診察を受けることをおすすめします。
とくに以下のような症状がある場合はすぐに婦人科を受診しましょう。
・10~14日以上不正出血が続く
・毎月のように不正出血を繰り返す
・生理周期でもないのに、生理のような出血が続く
・夜用のナプキンが対応できない程の出血量
・更年期や閉経後におこる不正出血
また、普段から基礎体温表をつけておくと、異常の早期発見や治療につながります。
7.日常生活で私たちができる予防法
7-1.ストレスをためすぎない
女性ホルモンはストレスの影響を受けやすく、バランスが崩れがちになります。
そのため普段からストレスをためない生活を心がけることが大切です。
好きな音楽を聴く、読書を楽しむ、ストレッチやウォーキングなどで体を動かす、テレビや映画を楽しむなど自分なりのストレス解消法を見つけて、ストレスを軽減するように努めましょう。
7-2.年に一度は婦人科の定期健診を受けましょう
子宮頸がん、子宮体がんは自覚症状が現れる頃には進行していることがあります。
これらのがんは早期発見・早期治療でほぼ100%治癒できるがんでもあるため、年に一度は定期検診を受けるようにしましょう。
とくに子宮頸がんは若い女性にも多く、厚生労働省は子宮頸がんと乳がんの定期健診を20歳以上の女性に勧めており、多くの自治体や会社の健康保険組合などが助成金の制度を設けています。
8.いつもと違う出血があったら診察・検査を受けることが大切です
生理は周期的にあるものですが、歳を重ね閉経に向かうと生理のリズムも乱れがちになるものです。
しかし、ホルモンバランスの乱れだけでは説明できない不正出血もたくさんあります。
とくに、生理以外の不規則な出血では「がん」でないとわかることが大切です。
40~50代の私たちは常に多忙を極めているため、ちょっと出血があったとしても体調に異変がなければ見過ごしてしまうことも多いかと思います。
しかし不正出血には子宮がんを含め、命にかかわる疾患も多く存在します。
少しでも気になることがあれば、迷わず婦人科にいって相談しましょう。
筆者も以前は「生理の乱れだけで婦人科を受診するのは恥ずかしいな」と躊躇していた時期もあったのですが、毎年定期的に受けています。
普段、婦人科にかからない方であれば毎年検診を受けることで、自分の体と向き合う良い機会になるのではないでしょうか。
この記事の監修は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
- tenrai株式会社
- 桐村 里紗の記事一覧
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか
和重 景
主に、自身の出産・育児やパートナーシップといった、女性向けのジャンルにて活動中のフリーライター。
夫と大学生の息子と猫1匹の4人暮らし。
座右の銘は、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」。