【医師解説】家庭でチェック!毎日の尿の観察で病気や不調を発見
皆さま、こんにちは。
医師で予防スペシャリストの桐村里紗です。
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多くの方に共感のお声をいただき、ありがとうございます。
毎日のトイレで、体からアウトプットされる尿や便などの排泄物を観察して、体の内側の変化を早期に発見する方法を伝えします。今回は「尿」です。
目次
1.毎日の尿の観察で未病のうちから予防
生命とは、インプット(食べる)→プロセス(消化・代謝)→アウトプット(排泄)を繰り返す動的システムです。
下流にあるアウトプットをみれば、その上流の異常が分かります。
体内の異常は、検査をしなければ中々見える化しませんが、アウトプットされた排泄物から、類推することはできます。
家庭ではこれが最も簡便で、毎日観察できます。
普段との違いを早期発見して、未病のうちから予防したいものです。
2.尿の色や性状・ニオイの変化
まずは、尿について。
2-1.健康な尿の色や性状・ニオイ
最初に、健康な状態とはどんな尿でしょう。
尿は血液を濾過して作られますから、その時々の血液の濃度、水分量にもよりますが、健康な尿は、薄い黄色で、濁らず、ニオイについてはかすかにニオイがするかしないか程度です。
濁りがある、色が変化している、刺激臭がする場合は、何らかの異常がある可能性があります。
2-2.尿が泡立つ
「尿が泡立つと病気?」と心配になることがあるかと思います。
1.問題なし
ただ排尿による尿の勢いが良いだけ、トイレの水の粘度が高い、トイレ掃除に使った洗剤成分が残っているだけ、という場合もあります。
尿の勢いが良いだけであれば、泡はすぐに消えてしまいます。
継続的でなければ、あまり心配しすぎないでください。
2.尿が濃縮している
水分摂取不足などで、尿が濃いと泡立つ可能性もあります。尿の色が一時的に濃く、濃縮している場合、水分を摂取した状態で、まだ泡立つかを観察してみましょう。
尿が希釈されて改善するのであれば、尿が濃かっただけということになります。
3.尿にタンパク質が混ざっている
尿には、通常、タンパク質は含まれません。
タンパク質が混ざっている場合、何かしら腎臓機能に異常があると考えられます。
腎臓の機能に異常があると、腎臓の尿をろ過する機能が低下して、尿の中にタンパク質が漏れ出てます。
ネフローゼや急性・慢性腎臓病(CKD)など様々な原因での腎機能障害が考えられます。
尿が慢性的に泡立って消えない場合は、腎臓内科を受診するようにしましょう。
4.尿に糖が混ざっている
尿に糖が混ざっている場合も泡立ちやすくなります。
一般的にも、尿が泡立つと「あれ?糖が混ざっているのかな?」と疑う方が多いようですね。
尿に糖が混じる原因は糖尿病です。
また、血糖値は高くないながら、腎臓から尿に糖が排泄される腎性糖尿病や、妊娠期間中に血糖値が高くなる妊娠糖尿病のケースもあります。
一般的な糖尿病は、血糖値が高くなる病気です。食後血糖が高いと尿に糖が混ざりますから、尿糖は比較的初期から出るようになります。
血液中の糖の濃度があまりに濃くなると漏れ出てきてしまい、尿の粘度が高くなるため、泡立ちやすくなります。
その他の症状として、「口渇・多飲・多尿」という三大症状も特徴的です。
尿糖の濃度が高くなると、体内の水が尿に引っ張られて、尿量が多くなります。
脱水になると口が乾き、それを補うために、水分を摂取するためにたくさん飲むようになります。
その水分がジュースなど糖分を含む場合はますます血糖値が高くなります。
糖尿病を疑う場合、糖尿病内科を受診しましょう。
2-3.尿の色の変化がある
尿の色には、色々な情報があります。
1.白濁している
白濁の主な原因は、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路の細菌感染症の場合。
女性の場合は膀胱炎になりやすく、また性交後には一時的に細菌が膀胱に入り白濁する可能性があります。
水分を摂取し、長引かなければ問題ないでしょう。
シュウ酸を多く含む色の濃いほうれん草などアクの強い野菜を日常的に摂取している場合、尿中にシュウ酸カルシウムの結晶ができると、白濁します。尿路結石の原因になりやすいため、注意しましょう。
ある時、激痛となり、救急車で病院に運ばれることになるかも知れません。
また、タンパク尿が出るような腎機能障害の場合にも白濁することがあります。
2.茶褐色に色付く
壊れた赤血球のヘモグロビンや壊れた筋肉のミオグロビンが混ざると、最初は赤いのですが、時間が経つと褐色になってきます。また肝臓由来のビリルビンが尿に混ざると、茶褐色となる場合があります。
赤血球が壊れる溶血性貧血、また、ランナーの場合、足裏で赤血球が壊れて起こるランナー貧血、さらに激しい運動で筋肉痛が起こっている場合は必ず筋肉が一時的に壊れています。
肝臓から分泌されるビリルビンが何らかの肝臓や胆管などの異常で分解、排泄されないと、ビリルビンが血液中に増えて尿にも排泄されます。
血液検査が必要になりますので、まずは、内科を受診した上で、必要であれば専門科を紹介してもらうことになります。
3.赤色に色付く・血尿
尿が赤い場合には、血液の場合とそうでない場合があります。
・赤血球が混ざる:血尿
・ミオグロビンが混ざる
・ビートなど赤い食品の色素
・薬剤
・ポルフィリン症
特に、血尿の場合は、その量によって全く色が変わらない顕微鏡的血尿。
ややピンク色、赤色、そして大量に混ざると便器が真っ赤になるほどはっきりとした肉眼的血尿となる場合があります。
尿路感染症から腎機能障害、また尿路結石、悪性腫瘍など原因は様々です。
IgA腎症などの腎機能障害の場合には、尿検査で引っかかり気付く場合も多いのですが、自身で尿の赤い変化に気付いたら、腎臓内科・泌尿器科を受診してみましょう。
2-4.尿のニオイが普段と違う
尿のニオイが普段と違う場合には、代謝の変化や細菌の増殖などが原因となっている可能性があります。
1.ツンとしたニオイがする
尿には尿素という無害なアンモニアの元が含まれるものの、こちらは無臭です。ニオイがするということは、細菌による代謝が起きていることを示します。
最初からつんとした刺激臭がある場合、膀胱など尿路に細菌が繁殖している可能性や尿路に炎症を起こしている場合があります。
尿路感染を疑う場合、尿の白濁やひどい場合は、尿に血が混ざる可能性もあります。
軽度のうちは、水分をたくさん摂取したら治りますので、水分摂取を十分にしましょう。
朝方だけ、という場合は、脱水により少々尿が濃縮気味ということもありますので、水分補給を心がけましょう。
2.微かに甘いニオイがする
尿に糖が混ざるのが糖尿病です。
少量では気づかない程度でしょうが、尿に多くの糖が混ざり始めると、微かに甘いニオイがしはじめます。よほどコントロールの悪い状態で、こうなると「口渇・多飲・多尿」という糖尿病に特徴的な症状が現れます。
こうした症状を伴う場合は、迷わず、糖尿病内科・代謝内科を受診しましょう。
▼「糖尿病」その初期症状は? 具体的な治療法と予防のために必要な生活習慣
https://wellmethod.jp/diabetes/
先天性のメイプルシロップ尿症という代謝異常でも尿がメイプルシロップのような甘い匂いを伴いますが、これは人生の途中で起こる変化ではなく、新生児の段階から起こるものです。
3.腐敗臭がする
この場合、尿路感染による細菌増殖による腐敗臭の可能性もありますが、尿路内の悪性腫瘍(ガン)によって、尿に腐敗臭がすることがあります。
悪性腫瘍は独特の腐敗臭を発生させる可能性があります。
血尿などを伴う場合もありますが、何かしらニオイが継続する場合は、泌尿器科を受診して尿検査を行いましょう。
魚が腐ったようなニオイがする場合、多くは細菌感染や炎症に由来しますが、症例は少ないですが、代謝障害・トリメチルアミン尿症(魚臭症)の可能性もあります。先天性と後天性があり、先天性は乳児期からですが、後天性は肝機能の低下や女性ホルモンに関連し女性に多いとされています。
食事に含まれる成分が分解され、トリメチルアミンとなり肝臓で代謝されますが、肝機能が弱ることで代謝ができなくなり、口臭や体臭、そして尿臭となって現れます。
肝臓の負担の原因となるストレスや飲酒、場合によっては薬剤などを控えたり変更したり、また、原因となる食事に含まれるコリンやレシチンなどを控える必要があります(魚介、肉、卵、乳製品など)。
3.まとめ
毎日のトイレでアウトプットされる尿を観察することは、体内の異常をリアルタイムで知ることができるとても良い方法です。
重要なサインを見逃さず、早期発見し、できれば未病のうちに解決したいですね。
次回は、毎日の便の観察についてお伝えします。
この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

桐村 里紗
総合監修医
・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属
愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。
- 新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)』
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著作・監修一覧
- ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
- ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
- ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
- ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
- ・「解抗免力」(講談社)
- ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)
ほか