こんにちは。
医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

ビタミンやミネラルは、食事やサプリメントとして口から摂取するものというイメージがあると思いますが、実は、腸内環境の違いによって、体内のビタミンやミネラルのレベルや活性が変わってしまいます。

同じ食生活をしても、同じサプリメントを飲んでも、体内でビタミンやミネラルが十分に活用できるかどうかは腸内環境次第です。

ビフィズス菌などの有用菌がビタミンB群を分泌することは以前から知られていましたが、免疫機能の維持・向上に必須のビタミンDの活性にも腸内環境が影響することが、科学誌『Nature』に報告され注目されています。

1.ビタミン&ミネラルの活用は腸内環境次第

ビタミンミネラル不足は腸内環境のせい

栄養学では、“You are what you eat.”(あなたはあなたの食べたものでできている)とよく言われます。

これは、もちろん正しくて、食品の栄養素から体が作られるには違いありません。

1-1.発酵?腐敗?有益か?有害か?

ビタミンミネラル不足は腸内環境のせい

でも、ここに抜けているのが、その食べ物を人間よりも先に食べて、分解する腸内細菌の働きです。
彼ら次第で、人間が最終的に吸収できる栄養素の内容や質、吸収率も変わってしまいます。

「発酵」が起これば、人にとって有益な栄養素が元の食品よりもさらに増え、「腐敗」が起これば、有益な栄養素は減り、有害な物質が増えてしまうのです!
腸内細菌が食べ物から余分なエネルギー源を取り出し過ぎると、「少ししか食べていないのに太る」という怪現象が起きることも。

また、食品に含まれるミネラルの吸収も腸内環境次第です。
腸内環境が悪い人は、どんなにミネラルサプリメントを摂ろうとも、腸から体内に吸収ができず、お金を無駄にしてしまうことになるかも知れません。

1-2.腸内細菌とビタミンミネラル

甘酒

発酵食品は、発酵を促す有用菌の働きで、元の食品よりも栄養素が増えます。
例えば、甘酒は、米麹がお米を発酵させたものですが、ビタミン・ミネラル類、アミノ酸、有機酸など様々な栄養素が増えるために「飲む点滴」とも呼ばれていますね。

逆に、お米に腐敗菌がついてしまうと、食べたら有害なものに変化します。
それと同じ現象が、腸内でも起きていると思ってください。

1.ビタミンを生み出す有用菌

ビフィズス菌

有用菌として、知名度の高いビフィズス菌類は、ビタミンを作り出す代表的な腸内細菌です。

ビタミンB群(ビタミンB1,B2,ナイアシン,パントテン酸,B6,ビオチン,葉酸,B12)、ビタミンC、ビタミンKを合成します。
ビタミンB12を除いて、これらは人が吸収でき、最大、成人の1日の所要量の約4割を産生しているとされています。

葉酸以外のビタミンB群は、動物性の食品でしか十分にとれないとされているので、「ベジタリアンはビタミンB群不足になる」と言われます。
ただし、ベジタリアンと言えども、明らかに栄養が足りていなさそうなベジタリアンと、明らかに栄養が足りていそうなベジタリアンがいますね。

この違いは、腸内細菌の違いにあると考えられています。
誰かに合っている食事が、自分に合うとは限りません。

2.免疫力に必須なビタミンDの活性に腸内細菌が重要?

ビタミンD

最近の研究で、ビタミン類は、合成だけでなく、体内における活性化にも腸内環境が関連していることがわかってきました。

特に、感染症対策やアレルギーの抑制に必須のビタミンD。
血清のビタミンDレベルが低い人は、感染症、アレルギー、自己免疫疾患、骨粗鬆症、肥満、炎症性腸疾患、糖尿病、心血管疾患、不妊症などの様々なリスクが高いため、健康にとって大切なトピックスです。

ビタミンDは体内で必要に応じて活性型になって活躍します。
この活性度に腸内細菌の種類や多様性が関わっていることが報告されています。

2020年11月にカリフォルニア大学のサンディエゴ校の研究チームが高齢男性を調査したところ、血液中の活性型ビタミンDレベルが高い人は、

・腸内細菌の多様性が高い
・高頻度に酪酸菌を保有している

ことがわかりました。

アメリカのことですので、被験者の多くはビタミンDのサプリメントを飲んでおり、血中濃度の低下はなかったそうですが、ビタミンDの作用は、それを体内で活性型に変えることで発揮されます。

医療用以外のビタミンDは、活性型になる前の前駆体の状態で配合されています。
その方が副作用がなく安全なのですが、必要なとき、必要なだけ活性型に変えて利用しなければなりません。

腸内フローラ

この研究を踏まえると、ビタミンDを十分に活用できるかどうかは、腸内細菌の多様性と酪酸菌が十分に活躍しているか次第と言えそうです。

私自身も免疫力のためにビタミンDを飲んでいますし、多くの方にビタミンDをおすすめしてきました。これまで、その吸収率や利用率の違いに、遺伝的な体質が関連していることは指摘されていましたが、腸内細菌も関連していることは新しいニュースでした。

※:Nature Communications volume 11, Article number: 5997 (2020)

腸内細菌の多様性と、代表的な有用菌である酪酸菌が重要であることは、WELLMETHODでも繰り返しお伝えしてきました。
まだまだ知られていない多くの健康への作用がありそうです。

こちらの記事もご参考に>>>

『腸内環境改善に最重要!若さと健康のカギは菌の「多様性(ダイバーシティ)」にあり』

「免疫力低下や肥満を防ぐ! 腸内環境のエース「短鎖脂肪酸」6つの働き」

3.ミネラルが吸収できる人とできない人の腸

ミネラルサプリ

ビタミンだけでなく、ミネラルについても腸内環境が重要です。

栄養療法を行なっていると、ミネラルサプリが無駄になる人が一定数いることがわかってきます。
血液検査で、ミネラルの不足が分かり、単純にミネラルを補給しても、一向に改善しないのです。

ミネラルを補給する前に、まず、腸内環境が整っているかどうかが重要です。
腸内環境が悪いのを放置して、ミネラルを補給してもお金の無駄になりますし、逆に腸内環境を改善するだけで体内のミネラルが回復してくる場合もあります。

人も植物も同じなのですが、根っこから土壌のミネラルを吸収するには、微生物の助けが必要です。
有用菌はいずれも、有機酸と呼ばれる酸を分泌します。
この酸の働きで、腸内のpHが弱酸性になることによって、ミネラルが水に溶け、ようやく吸収しやすい状態に変化します。

有用菌はエサであるプレバイオティクスを食べることで、代わりに有機酸を生み出し、腸内を弱酸性にします。
プレバイオティクスである水溶性食物繊維、難消化性オリゴ糖、難消化性デンプンなどをしっかり食べることが重要です。

水溶性食物繊維を含むこんにゃく

貧血気味の女性大学生に4週間、プレバイオティクスである難消化性デキストリンを食事と一緒に食べてもらったところ、貧血の指標である赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットが回復したという研究もあります。

※日本未病システム学会誌,16, 404-406 (2010).

これまで食物繊維は食事中のミネラルを吸着し排泄する可能性が指摘されていましたが、それは、通常摂取するはずないほど大量を与えた研究結果に基づくもので、常識的な量の食物繊維を食品や健康補助食品として摂取することではそのようなことはないと明らかになってきました。

それどころか、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の吸収率もプレバイオティクスの摂取で回復することがわかっています。

※応用糖質科学 第 5 巻 第 4 号 (2015)

2.豊かな土壌を育もう

豊かな土壌

農作物の良し悪しは、土壌の状態によって決まります。
微生物の活性が豊かな土壌は、栄養が豊富になり、さらにその栄養が根っこから吸収しやすい状態になるので、植物もすくすく育ちます。

人間も同じです。

人間の土壌は、口から摂取した食事を腸内細菌が発酵させて作られます。
その土壌の栄養分を腸の上皮細胞という根っこが吸収し、細胞の栄養とします。

細胞の良し悪しは、結局は腸内環境によって決まります。
腸内細菌の多様性が豊かであること。
酪酸菌やビフィズス菌、乳酸菌など、有機酸を分泌し、栄養素を生み出す有用菌がしっかりと活躍していることが重要です。

そのためには、何度も繰り返しますが、プロバイオティクスとプレバイオティクス、合わせてシンバイオティクスな食品を普段から十分に摂取することです。

基本をコツコツ日々実践!
これに尽きます。

腸内フローラ関連記事もご参考に>>>

https://wellmethod.jp/tag/gutdiversity/

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか