医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗です。

コロナ禍において、世界的にウェルネスに関心が高まっている今、ライフスタイルそのものにウェルネスが定着しているアメリカの西海岸では、日常生活から心身を健康にして免疫を高めようという生活者がますます増えています。

その中でも、ロサンゼルスで最もウェルネス思考が高い人気スーパーマーケット「Erewhon Market(エレウォン)」の動向から学んでみたいと思います。

日本人観光客に有名な「Whole Foods Market」(通称「ホールフーズ」)以上のこだわりと品質の高さで、ハリウッド在住のセレブリティにも、自然派思考のL.A.っ子にも信頼が厚いスーパーマーケットです。  

1.コロナ禍に人気が増すErewhon(エレウォン)の秘密

エレウォン
(超高級住宅街ビバリーヒルズにほど近い、ロサンゼルス店)

コロナ禍において、普段の食生活からウェルネスを実現し、ストレスに強くなり免疫を高めたいと考える人が日本でも増えていると思います。
その考えが以前から定着しているのが、アメリカの西海岸。
地に足のついたライフスタイルを送りながら、自分にとっても地球環境にとっても良いものを選択することが日常化している人が多く、世界的にもこれからの生き方のお手本になっています。

カリフォルニア州の中心都市であるロサンゼルスには、たくさんの自然派のスーパーマーケットチェーンがあります。
その中でも、全てのプロダクトにおいて全面的に生活者からの信頼が厚いのが、ロサンゼルス限定で6店舗を構える「Erewhon Market(エレウォン)」です。

ローカル性を重視し、経営側からの目がしっかり届く範囲として、ロサンゼルス内のみに店舗展開することのこだわった高級自然派スーパーマーケットチェーンです。

1-1.名物 自社ブランドのフレッシュドリンクが並ぶ

エレウォン自社ブランドのフレッシュドリンク

まず、圧巻なのは、自社ブランドのコールドプレスジュースやスムージー、ショット類。
50種類以上をその日にその場で作っており、色とりどりのジュースが並びます。
もちろん、容器は使い捨てではなく、リサイクル可能な瓶。

デトックスを促す、チャコール(炭)入りの真っ黒なジュース

デトックスを促す、チャコール(炭)入りの真っ黒なジュースや、

スピルリナ入りドリンク

スピルリナのブルーの抗酸化色素「ブルーマジック」入りのジュースなど。
色とりどりのジュースには、そのキーとなるメリットとして、

・抗酸化
・デトックス
・腸内環境改善
・エネルギー補給

などの表記があり、自分の目的に応じて選べるようになっています。

もちろん、原材料は100%オーガニックでナチュラル。

1-2.人気の免疫系ショットは売り切れに

ショット系ドリンク

こちらは、ショット類です。
生姜の絞り汁をベースに、様々なスーパーフードを加えたジンジャーショットは、ナチュラルな栄養ドリンクとして、エナジードリンクとして人気が高まっています。
砂糖などの甘みは一切付けず、生姜のコールドプレスジュースがベースなので、びっくりするほど辛いのが特徴。

中でも、コロナ禍に売り切れとなっているのが、免疫系のショットです。

免疫系ドリンクは完売

感染防御のために粘膜免疫を高めるビタミンAや抗酸化食品を加え、免疫システムを意識した表記となっています。

生活者の日常生活から免疫を高めたいという意識が現れているようです。

2.自然療法医おすすめの免疫系やストレス対応製品

アメリカのスーパーマーケットは、どこも健康食品関連のコーナーが充実しています。

日本では、健康食品=サプリメントは、食品扱いで、一部の認可を受けた保険機能食品以外は、基本的に医薬品的な効果効能を謳うことが「薬機法」によって制限されています。

一方で、アメリカでは法律によって、サプリメントは、一般の食品とも医薬品とも区別されています。効果を表示して良い代わりに、品質や安全性の基準が設けられ、パッケージでもしっかりと確認できるようになっていますので、消費者は自分の悩みに応じてサプリメントを自分で選びやすい状況があります。

アメリカは、国民皆保険でないために、多くの人が簡単には病院にかかれない社会状況がありますが、その一方で、自分の健康は自分で守るという予防的な意識が高まりやすく、サプリメントもより身近なサポーターとして活躍しています。

「Erewhon Market(エレウォン)」の特徴は、自然療法医の資格を持ったスタッフが常駐していることです。
気軽に自分の悩みを相談でき、最適な商品を提案してくれます。

日本と違い、アメリカには、西洋医学の医学部とは別に、自然療法の医学部があり、自然療法医もより身近に相談できる存在として尊敬されています。

ロサンゼルス店には、カリフォルニア州の自然療法医ライセンスを持つDr.Anjali Kasunichが常駐しており、気さくな笑顔と専門的なアドバイスが人気です。

コロナ禍に彼女に免疫を高めながら、ストレスを緩和したいとお勧めを聞きました。
彼女は、腸内環境の改善や不安の解消、女性の健康などのアドバイスを得意としているそう。

2-1.プロバイオティクスは基本

プロバイオティクスドリンク

まずは、プロバイオティクスをお勧め頂きました。
有用菌の生存を維持するために、冷蔵保存されています。

プロバイオティクスコーナーには、たくさんのメーカーのたくさんの種類の製品が並んでいます。
「免疫」「ストレス」「女性用」「男性用」など、目的に応じて、特化した有用菌が複数ブレンドされたものがほとんどです。
選ぶのに迷いません。

「免疫機能もストレスへの抵抗力も腸から」ということが明らかになってきていますので、まずはプロバイオティクスを加えて欲しいとのアドバイスでした。

2-2.プレバイオティクスと腸のクレンズも忘れずに

腸のクレンズ商品

有用菌を外から摂取するのがプロバイオティクス。
自分の腸内にいる有用菌を活性化するのがプレバイオティクスです。
その代表が、発酵性の食物繊維。

また、腸管の機能を高めるために、クレンズ商品も人気です。

腸のクレンズ商品

水溶性食物繊維と非水溶性食物繊維のバランスが良いフラックスシード(亜麻仁)、90%以上水溶性のアカシアの木の食物繊維、穀物由来の食物繊維など、様々な食物繊維があり、それらを組み合わせた製品もあります。

腸内細菌は、水溶性食物繊維をエサとしますが、食物繊維も複数の種類を摂ることで様々な種類の有用菌が喜びます。

腸の粘膜細胞を修復するL-グルタミンやプロバイオティクスを含む製品も。

吸着効果のあるチャコール

クレンズのための製品としてまず人気なのは、吸着効果のあるチャコール。
先ほど、コールドプレスジュースにも配合されていましたね。
錠剤もありますし、パウダー状のものは、自宅でスムージーを作る際などに加えて使います。

吸着系の製品クレイ

もう1つの吸着系の製品は、クレイです。
クレイとは、泥のこと。
泥を肌に塗ってパックとして使うことは日本でも知られているかと思います。
泥には、マイナスに帯電したたくさんの穴が空いており、その中に腸内の不要なものを吸着除去する働きがあります。

私が学ぶバイオロジカル医療の分野でも、検査を行なって毒素負担の多い方には、クレイやチャコールをお勧めしています。

2-3.ストレスへの抵抗力を高めるアダプトゲン

ストレスへの心身の抵抗力を高めるハーブや生薬類アダプトゲン

ストレスへの心身の抵抗力を高めるハーブや生薬類をアダプトゲンと言います。
2021年のヘルスケアトレンドでもご紹介したと思います。
L.A.で人気のアダプトゲンショップ「Moon juice」の製品は、「Erewhon Market(エレウォン)」にも並んでいます。

Dr.Anjali Kasunicは、「免疫力やストレス対応力には、免疫物質やホルモンの産生にも欠かせないタンパク質も重要だから」と、アダプトゲンを配合したプロテインをお勧めしてくれました。

ココアっぽいお味で、プラントベースミルクに加えるとホットチョコレートのように美味しく頂けます。
プロテインが飲みにくいという方にも、これなら続けられそう。

2-4.自然療法医お勧めの免疫に不可欠な栄養素トップ5

「Erewhon Market(エレウォン)」のブログでは、生活者にとって役立つヘルスケア情報も発信しています。
Dr.Anjali Kasuniは、コロナ禍に役立つ5つの免疫機能に不可欠な栄養素を紹介しています。

Erewhon Marketのブログ『免疫システムを正しく機能させるためのヒント(Tips To Keep Your Immune System Working Just Right)』(June 15, 2020)に掲載された5つの栄養素を解説しましょう。

24時間、外敵やアレルゲンと戦う免疫システム。
それが正しく働けば、

・それらを攻撃するように指示する信号
・免疫システムに落ち着くように指示する信号

の2つの働きの間に、健康的なバランスがあります。
このバランスは、免疫システムがあらゆる脅威に迅速に対応し、脅威が解決されたときに元に戻るために不可欠です。

この免疫システムのバランスを維持するには、

1.栄養豊富な食品をたくさん食べ
2.水分を補給し、
3.十分な睡眠を取り、
4.体を動かすことが重要です。

これらを基盤にした上で、免疫システムのバランスを調整するための5つの栄養素が役立ちます。

1.ビタミンC

ストレスや感染症にかかった際に、血中のビタミンCは低下します。
これらによる細胞の損傷を守るために重要な抗酸化物質がビタミンC。
亜鉛と一緒に摂取すると風邪や肺炎などの気道感染の期間を短縮することが示されています。

桐村コメント:ビタミンCは水溶性のビタミンなのですぐに尿に排泄されます。摂取するなら1日量をいっぺんに摂取するのではなく、2〜3時間おきにこまめに分けて摂取するのが基本です。

 

2.亜鉛

亜鉛は、創傷治癒と健康な免疫機能のために体内で必要なミネラルです。
亜鉛は細胞を保護する抗酸化物質であり、免疫の過剰反応としての炎症を防ぎます。

桐村コメント:亜鉛の吸収力や利用率には、全く個人差があります。ちょっとした傷が治りづらく跡になりやすい人は亜鉛が十分に機能していない可能性が。

 

3.ビタミンD

ビタミンDは、日光にあたることで、体が自然に生成するホルモンです。
研究によると、ビタミンDが低レベルだと、自己免疫疾患や感染症のリスクの増加に関連します。多くの研究が、ビタミンDの摂取がインフルエンザや他の一般的な感染症のリスクを減らすのに役立つことを示しています。

桐村コメント:ビタミンDと免疫の関連については、以前からWELLMETHODでも繰り返しお伝えしています。日本では2月が日照の底ですので、この時期には特に、ビタミンD補給は意識することをおすすめします。

 

4.ターメリック

カレー粉に含まれるこのオレンジ色のスパイスは、健康的な炎症反応をサポートします。多くの研究によると、免疫系を調節し、健康な脳機能をサポートするその能力を示しています。  

桐村コメント:日本では、「ウコン」と言った方が馴染みがあり、肝機能をサポートするイメージだと思います。アメリカのヘルスケアコーナーの一角は、ターメリックで占められているほどに人気です。

 

5.N-アセチルシステイン(NAC)

体内の重要な抗酸化物質であり、解毒をサポートする強力な抗酸化物質であるグルタチオンに変換されます。
感染やストレスによって引き起こされる損傷から体を保護する抗酸化物質です。研究では、NACは、肺機能を改善し、呼吸器疾患を有する患者の粘膜機能をサポートすることも明らかになっています。

桐村コメント:NACは、バイオロジカル医療で使う解毒の三種の神器の1つです(クレイ・クロレラ・NACの3つ)。NACは、グルタチオンそのものよりもやや安価なので患者さんの負担を減らす目的もあります。

『Tips To Keep Your Immune System Working Just Right)』(June 15, 2020)
https://erewhonmarket.com/tips-to-keep-your-immune-system-working-just-right/   

3.毎日のライフスタイルから健康に

西海岸のライフスタイル

ウイルス感染の脅威が迫った2020年ですが、人間は決してそれに対して無力ではありません。
本来備わっている免疫システムが適正に働けば、ウイルスを自力で駆逐することもできます。

感染防御のために、マスク、手洗いなど、体にウイルスを侵入させないことだけが声高に言われていますが、例え口に入ったとしても、粘膜の防御力がしっかりと働き、細胞に侵入を許さなければ、「感染した」とは言えず、付着しているだけです。
さらに、感染を許したとしても、それを迅速に駆逐して平常状態に戻すのも免疫システムです。

そのためにできることは、特別なことではなく、日常のライフスタイルから健康的な心と体を目指すこと。
ウェルネスは、高級ホテルやバカンスで実現するものではなく、日常で実現できるものだということを、西海岸のライフスタイルが教えてくれますね。

この記事の執筆は 医師 桐村里紗先生

【医師/総合監修医】桐村 里紗
医師

桐村 里紗

総合監修医

・内科医・認定産業医
・tenrai株式会社代表取締役医師
・東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学講座 共同研究員
・日本内科学会・日本糖尿病学会・日本抗加齢医学会所属

愛媛大学医学部医学科卒。
皮膚科、糖尿病代謝内分泌科を経て、生活習慣病から在宅医療、分子整合栄養療法やバイオロジカル医療、常在細菌学などを用いた予防医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。
監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。
現在は、執筆、メディア、講演活動などでヘルスケア情報発信やプロダクト監修を行っている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。その他「とくダネ!」などメディア出演多数。

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著作・監修一覧

  • ・新刊『腸と森の「土」を育てるーー微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
  • ・『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』(光文社新書)
  • ・「美女のステージ」 (光文社・美人時間ブック)
  • ・「30代からのシンプル・ダイエット」(マガジンハウス)
  • ・「解抗免力」(講談社)
  • ・「冷え性ガールのあたため毎日」(泰文堂)

ほか